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黒い森
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僕は、黒い森をターニュ、アシュリ、ラカン、カリンと歩いていた。
晴天の下なのに闇が深く、空気は湿り気を帯び、周囲の木々が不気味な影を作り出していた。
鳥の鳴き声もなく、静寂が森全体を包んでいた。
先代女神様の館へ大鵬に乗ってみんなで飛んできたけど、館を取り囲む鬱蒼とした黒い森の上空には結界が張られていて、徒歩でしか近づくことができなかった。
ラカンの案内で、館に続くわずかに踏みならされた道をいく。途中途切れたり、分かりにくくなったりするから注意深く進む必要がある。
カリンが僕の服の袖を引っ張る。
「ピッケル、アレ、ちゃんともった?」
「ちゃんと,持ってるよ」
大丈夫。ちゃんと手紙がポケットに入っている。
ターニュがラカンと手を繋ぎながら歩いている。なんだか馬が合うみたいだ。
「ラカンと再会できてよかったわね。。。怒るラカンの気持ち分かるわ。むしろ、よく許してもらえたわね」
今にも燃やされそうだったよ。
「危うく焼かれそうだったけどね」
ナミが笑う。
「喰われそうでもあったわね。あの時、死を覚悟したピッケルから預かったメッセージ、今から言っていい?」
「いやいや、恥ずかしいからやめてよ」
カリンが話に乗っかってきた。
「なになに?どんなメッセージ?気になる!」
いやー!やめて。恥ずかしい。
ラカンが豪快に笑う。
「あっはっは。雨降って地固まるというやつじゃ。のう?我がピッケル」
そ、そうだね。喧嘩するほど仲がいいっていうもんね。。。
「あははは」
女を怒らせると恐ろしい。
カリンがヤキモチを焼いて突っかかる。
「なによ、我がピッケルって。あたしのピッケルよ」
ターニュも不満そうだ。
「ちょっと!独り占めなしよ?」
アシュリも頬を赤らめて言う。
「わ、私の。。。でもあるわ」
照れながら言うところが、可愛い。
ラカンがニヤリと笑う。
「ちゃんと全員分、ピッケルクローンを渡したじゃろう?」
アシュリが深くうなずく。
「確かに、本当に精巧にできていてびっくりしたわ」
カリンがあっけらかんと言う。
「そうそう。よくよく思えば、ピッケルって結構無口だし、聞き上手だから、ゴーレムになったクローンピッケルとあんまり変わらないのよね」
なぬ!おいおい。
ターニュが相づちを打つ。
「そうそう!分かる!」
分かる!じゃないよ。え、本当に?
アシュリも神妙な面持ちでうなずく。
「確かに」
アシュリまで!!
「何を言っておる。全然違うではないか」
お。まさかのラカンが。そうだよね。やっぱり本物は違うよね。うんうん。
「実は、クローンピッケルの男性器は本物よりわずかに長く太く設計してあるのじゃ!」
え?そんな魔改造やめて。
カリンがハッとして、赤い顔になる。
「え!確かに。。。」
確かにじゃねぇ!
ターニュがゆっくりとうなずく。
「それで具合が。。。」
なんの具合だ。
みんな頬を赤らめて、怪しく笑う。
「うふふ」「あはは」「。。。」
ラカンがしたり顔で笑う。
「ふふふ。そうじゃろう、そうじゃろう」
もう笑うしかない。
「あははは」
でも、彼女たちは、知るまい。ゴーレムの記憶を断片的にではあるけど僕の夢に出ることを。いや、ラカンは、そこまで分かっているのか。
最近は、ゴーレムとしてクローンに入ったとき、本当の自分なのかクローンなのか、自分でも分からない時がある。
ラカンに言って、クローンには数字を刻印してもらったけど、何を思ったのか、お尻に小さく刻印されていて、自分でも身体を大きく捻らないと見ることができない。
確かに普段は無口だし、会話でも相槌をしていることが多いから、ふと、「あれ?今、本当の自分だっけ」と思うことがある。
それほどにクローンは、よくできている。
しゃべることができない以外は、触覚や味覚などの感覚も備えていた。
もちろん性の快感も。。。
アシュリが足を止め、辺りを見回す。
「この森、何か変な感じがするわ。」
ターニュも警戒しながら周囲を見渡す。
「注意しろ。草木が生い茂って、視界が狭くて、先が見えない」
カリンが不安そうに茂みを見つめる。
「この道、本当にあってるの?」
ラカンは、楽しそうに歩く。
「大丈夫、間違いないはずじゃ。どんどんいくぞ!」
アシュリが顔をしかめる。
「なんだか、さっきから見られているような気がするわ」
ターニュも周りを見渡す。
「見られてるって?でも、たしかに。。。」
黒い森の中を歩いていた僕たちは、周囲の静寂に不安を感じながら進んでいた。
突然、木々の間から不気味な音が響き渡った。
その瞬間、上から植物のツルが降りてきて、僕たちを襲った。
植物のツルが無数に降りてきて、僕たちを絡め取った。
ツルは、トロトロとした粘液を分泌し、あっという間に全員が粘液まみれになって、宙吊りになった。
アシュリが驚きの声を上げる。
「きゃあ!何これ!?」
カリンが呆れる。
「もうやだ!またこれ?」
ツルは素早く僕たちに絡みつき、逃げる暇もなく全員を捕らえた。
ツルはまるで生き物のように動き、滑りやすい粘液をニュルニュルと分泌していた。
「きゃあ!」
アシュリの腕に巻き付いたツルは、彼女の動きを封じるように強く締め付ける。アシュリの爪先からダラリと透明な粘液が地面に垂れる。
カリンが必死に抵抗しながら、「いやぁ!助けて!」と叫んだ。
カリンの身体にもツルが巻き付き、動きを封じ込めていた。
透明でヌラヌラと光る粘液がカリンの肌にべったりと張り付き、冷たくて不快な感触が広がってる。
ラカンもツルに捕らえられていた。でも、ラカンは、ちょっと楽しそうだ。
「おお。なんだこれは、ヌルヌルして、なんだか気持ちいいな。はぁぁ。なんだかうっとりするぞ」
ツルがラカンの体に絡みつき、服の中にジュルジュルと入り込んでいく。
「あぁぁ!」
ラカン、それは変態すぎる!
ターニュは冷静に状況を見極めようとしているけど、またツルに捕まり、体を動かすことができない。
粘液にはどうやら幻覚を見せる毒があるみたいだ。
「あぁ!なんだこれは。。。身体が熱い。。。はぉひぁ」
僕自身もツルに絡め取られ、動くことができない。
ツルは僕の腕や足に絡みつき、粘液がべったりと付着していた。
その冷たさとヌルヌルとした感触が不快で、必死に振り払おうとしたが、ツルはしっかりと僕を捉えていた。
全員が身動きが取れない。
これは、まずい。
幻覚で意識がふわふわしてくる。
頭の中が淫乱な妄想で満ちていく。粘液の毒に催淫や多幸感を与える効果があるのか?ダメだ、今そんなこと。。。
「まずい。。。ラトタス、助けろ。。。」
ポシェタからこぼれ落ちるように飛び出したラトタスが地面にガシャンと着地した。
磨かれた甲冑が美しく光る。
ラトタスが剣を抜き、ツルをバッサバサと切り始めた。
まずは、僕がツルから解放された。すぐにポムルスをかじる。
「待ってろ、今助ける!」僕は声を張り上げ、全力でツルを切り裂いていった。
ツルは切り離されると、アシュリが粘液を飛び散らせながら地面に落ちた。
「はぁはぁ!いゃぁ」
アシュリが幻覚をみてガクガク震えている。
やっとのことで、ツルを切り終わり、全員を助け出すことができた。
僕たちは息を切らしながらも、再び立ち上がった。ツルの粘液が体に残っている。
こんな時は、魔法に限る。
「キュア!」
全員がポムルスをかじって息を整えて、魔法で身体を清潔にした。
やっと人心地ついた。
ふぅっと息をついたのも束の間だった。
次には巨大なスライムに飲み込まれた。透明な粘液が全身を覆い、まるでローションのようにヌルヌルとした感触が広がる。
アシュリがスライムから顔を出して叫ぶ。
「うわっ、これ何!? 全身がヌルヌルしてる!」
ターニュの怪力でも抜け出せない。
「くそっ、動けない!この粘性が厄介だ!」
ラカンはやっぱり楽しんでいる。
「このヌルヌル、使えるな。試料として採取しておこう」
何に使うんだ!
カリンは、悲しさに暮れている。
「もうやだぁ!森なんか大嫌いよ!」
ラトタスが僕をスライムの中からズボッと引き抜いた。
「みんな、落ち着いて!何とかして抜け出すんだ!」
アシュリは全力で足を引き抜こうとする。
「動こうとしても、全然進まない!ヌルヌルが。。。」
ターニュが力を込めて体をひねる。
「このスライム、また毒がある。。。幻覚が。。。あぁ」
ラカンがうっとりしている。もう幻覚に身を任せて、むしろ愉しんでいる。
「あぁぁん」
アシュリが口からよだれを出している。
「はぁはぁ。。。あぁぁん」
まずい。早く助けないと。
でも、どうやって?
1人ずつ引っこ抜くしかない。
「ラトタス、同時に力を入れてスライムを押しのけるんだ!せーの!」
まず、ターニュを引っこ抜く。
「はぁはぁ。ふぁぁんっ」
ポムルスでターニュを正気に戻す。
「ターニュ、手伝って!」
次にカリンを助け出して、何とか全員スライムから引っこ抜いてポムルスを齧らせた。
全員スライムでヌルヌルになっている。なんだか妙に艶めかしい。
「みんなでスライムを焼き払おう」
ターニュは、まだガクガクへたりこんでいる。
ラカンが少し震えながら僕にしがみつく。
「た、頼んだ」
このスライムめ。
「せーの!ゾゾファイガスでいくわよ!」
僕とカリンとアシュリとラトタスでゾゾファイガスを放つ。
「うおおおおおおお!」
力を合わせた瞬間、スライムが弾けるように僕たちを解放した。
僕たちはスライムの粘液をつけたまま、地面に転がった。
全身がヌルヌルして気持ち悪かったが、自由になれた喜びがそれを上回った。
アシュリが安心して言った。
「やった、抜け出せた!」
ターニュが息を切らしながら言った。
「もう、スライムは勘弁してほしいな。」
ラカンだけは違ったようだ。
「でも、楽しかったな。うふふ」
カリンが怒りをぶちまける。
「最悪よ!どうして森はいつもこうなの?!」
みんなの顔を見て、無事を確かめる
「さあ、これからも進もう。
この長い旅が終わろうとしているかもしれない。
でも、まだやるべきことがあるんだ。」
アシュリが言った。
「そうね。人生は、終わりのない旅だけど、一区切りつけてもいいはずよ」
全員がうなずき、再び一歩を踏み出した。スライムの粘液を魔法でキレイにして、僕たちは進んでいった。
晴天の下なのに闇が深く、空気は湿り気を帯び、周囲の木々が不気味な影を作り出していた。
鳥の鳴き声もなく、静寂が森全体を包んでいた。
先代女神様の館へ大鵬に乗ってみんなで飛んできたけど、館を取り囲む鬱蒼とした黒い森の上空には結界が張られていて、徒歩でしか近づくことができなかった。
ラカンの案内で、館に続くわずかに踏みならされた道をいく。途中途切れたり、分かりにくくなったりするから注意深く進む必要がある。
カリンが僕の服の袖を引っ張る。
「ピッケル、アレ、ちゃんともった?」
「ちゃんと,持ってるよ」
大丈夫。ちゃんと手紙がポケットに入っている。
ターニュがラカンと手を繋ぎながら歩いている。なんだか馬が合うみたいだ。
「ラカンと再会できてよかったわね。。。怒るラカンの気持ち分かるわ。むしろ、よく許してもらえたわね」
今にも燃やされそうだったよ。
「危うく焼かれそうだったけどね」
ナミが笑う。
「喰われそうでもあったわね。あの時、死を覚悟したピッケルから預かったメッセージ、今から言っていい?」
「いやいや、恥ずかしいからやめてよ」
カリンが話に乗っかってきた。
「なになに?どんなメッセージ?気になる!」
いやー!やめて。恥ずかしい。
ラカンが豪快に笑う。
「あっはっは。雨降って地固まるというやつじゃ。のう?我がピッケル」
そ、そうだね。喧嘩するほど仲がいいっていうもんね。。。
「あははは」
女を怒らせると恐ろしい。
カリンがヤキモチを焼いて突っかかる。
「なによ、我がピッケルって。あたしのピッケルよ」
ターニュも不満そうだ。
「ちょっと!独り占めなしよ?」
アシュリも頬を赤らめて言う。
「わ、私の。。。でもあるわ」
照れながら言うところが、可愛い。
ラカンがニヤリと笑う。
「ちゃんと全員分、ピッケルクローンを渡したじゃろう?」
アシュリが深くうなずく。
「確かに、本当に精巧にできていてびっくりしたわ」
カリンがあっけらかんと言う。
「そうそう。よくよく思えば、ピッケルって結構無口だし、聞き上手だから、ゴーレムになったクローンピッケルとあんまり変わらないのよね」
なぬ!おいおい。
ターニュが相づちを打つ。
「そうそう!分かる!」
分かる!じゃないよ。え、本当に?
アシュリも神妙な面持ちでうなずく。
「確かに」
アシュリまで!!
「何を言っておる。全然違うではないか」
お。まさかのラカンが。そうだよね。やっぱり本物は違うよね。うんうん。
「実は、クローンピッケルの男性器は本物よりわずかに長く太く設計してあるのじゃ!」
え?そんな魔改造やめて。
カリンがハッとして、赤い顔になる。
「え!確かに。。。」
確かにじゃねぇ!
ターニュがゆっくりとうなずく。
「それで具合が。。。」
なんの具合だ。
みんな頬を赤らめて、怪しく笑う。
「うふふ」「あはは」「。。。」
ラカンがしたり顔で笑う。
「ふふふ。そうじゃろう、そうじゃろう」
もう笑うしかない。
「あははは」
でも、彼女たちは、知るまい。ゴーレムの記憶を断片的にではあるけど僕の夢に出ることを。いや、ラカンは、そこまで分かっているのか。
最近は、ゴーレムとしてクローンに入ったとき、本当の自分なのかクローンなのか、自分でも分からない時がある。
ラカンに言って、クローンには数字を刻印してもらったけど、何を思ったのか、お尻に小さく刻印されていて、自分でも身体を大きく捻らないと見ることができない。
確かに普段は無口だし、会話でも相槌をしていることが多いから、ふと、「あれ?今、本当の自分だっけ」と思うことがある。
それほどにクローンは、よくできている。
しゃべることができない以外は、触覚や味覚などの感覚も備えていた。
もちろん性の快感も。。。
アシュリが足を止め、辺りを見回す。
「この森、何か変な感じがするわ。」
ターニュも警戒しながら周囲を見渡す。
「注意しろ。草木が生い茂って、視界が狭くて、先が見えない」
カリンが不安そうに茂みを見つめる。
「この道、本当にあってるの?」
ラカンは、楽しそうに歩く。
「大丈夫、間違いないはずじゃ。どんどんいくぞ!」
アシュリが顔をしかめる。
「なんだか、さっきから見られているような気がするわ」
ターニュも周りを見渡す。
「見られてるって?でも、たしかに。。。」
黒い森の中を歩いていた僕たちは、周囲の静寂に不安を感じながら進んでいた。
突然、木々の間から不気味な音が響き渡った。
その瞬間、上から植物のツルが降りてきて、僕たちを襲った。
植物のツルが無数に降りてきて、僕たちを絡め取った。
ツルは、トロトロとした粘液を分泌し、あっという間に全員が粘液まみれになって、宙吊りになった。
アシュリが驚きの声を上げる。
「きゃあ!何これ!?」
カリンが呆れる。
「もうやだ!またこれ?」
ツルは素早く僕たちに絡みつき、逃げる暇もなく全員を捕らえた。
ツルはまるで生き物のように動き、滑りやすい粘液をニュルニュルと分泌していた。
「きゃあ!」
アシュリの腕に巻き付いたツルは、彼女の動きを封じるように強く締め付ける。アシュリの爪先からダラリと透明な粘液が地面に垂れる。
カリンが必死に抵抗しながら、「いやぁ!助けて!」と叫んだ。
カリンの身体にもツルが巻き付き、動きを封じ込めていた。
透明でヌラヌラと光る粘液がカリンの肌にべったりと張り付き、冷たくて不快な感触が広がってる。
ラカンもツルに捕らえられていた。でも、ラカンは、ちょっと楽しそうだ。
「おお。なんだこれは、ヌルヌルして、なんだか気持ちいいな。はぁぁ。なんだかうっとりするぞ」
ツルがラカンの体に絡みつき、服の中にジュルジュルと入り込んでいく。
「あぁぁ!」
ラカン、それは変態すぎる!
ターニュは冷静に状況を見極めようとしているけど、またツルに捕まり、体を動かすことができない。
粘液にはどうやら幻覚を見せる毒があるみたいだ。
「あぁ!なんだこれは。。。身体が熱い。。。はぉひぁ」
僕自身もツルに絡め取られ、動くことができない。
ツルは僕の腕や足に絡みつき、粘液がべったりと付着していた。
その冷たさとヌルヌルとした感触が不快で、必死に振り払おうとしたが、ツルはしっかりと僕を捉えていた。
全員が身動きが取れない。
これは、まずい。
幻覚で意識がふわふわしてくる。
頭の中が淫乱な妄想で満ちていく。粘液の毒に催淫や多幸感を与える効果があるのか?ダメだ、今そんなこと。。。
「まずい。。。ラトタス、助けろ。。。」
ポシェタからこぼれ落ちるように飛び出したラトタスが地面にガシャンと着地した。
磨かれた甲冑が美しく光る。
ラトタスが剣を抜き、ツルをバッサバサと切り始めた。
まずは、僕がツルから解放された。すぐにポムルスをかじる。
「待ってろ、今助ける!」僕は声を張り上げ、全力でツルを切り裂いていった。
ツルは切り離されると、アシュリが粘液を飛び散らせながら地面に落ちた。
「はぁはぁ!いゃぁ」
アシュリが幻覚をみてガクガク震えている。
やっとのことで、ツルを切り終わり、全員を助け出すことができた。
僕たちは息を切らしながらも、再び立ち上がった。ツルの粘液が体に残っている。
こんな時は、魔法に限る。
「キュア!」
全員がポムルスをかじって息を整えて、魔法で身体を清潔にした。
やっと人心地ついた。
ふぅっと息をついたのも束の間だった。
次には巨大なスライムに飲み込まれた。透明な粘液が全身を覆い、まるでローションのようにヌルヌルとした感触が広がる。
アシュリがスライムから顔を出して叫ぶ。
「うわっ、これ何!? 全身がヌルヌルしてる!」
ターニュの怪力でも抜け出せない。
「くそっ、動けない!この粘性が厄介だ!」
ラカンはやっぱり楽しんでいる。
「このヌルヌル、使えるな。試料として採取しておこう」
何に使うんだ!
カリンは、悲しさに暮れている。
「もうやだぁ!森なんか大嫌いよ!」
ラトタスが僕をスライムの中からズボッと引き抜いた。
「みんな、落ち着いて!何とかして抜け出すんだ!」
アシュリは全力で足を引き抜こうとする。
「動こうとしても、全然進まない!ヌルヌルが。。。」
ターニュが力を込めて体をひねる。
「このスライム、また毒がある。。。幻覚が。。。あぁ」
ラカンがうっとりしている。もう幻覚に身を任せて、むしろ愉しんでいる。
「あぁぁん」
アシュリが口からよだれを出している。
「はぁはぁ。。。あぁぁん」
まずい。早く助けないと。
でも、どうやって?
1人ずつ引っこ抜くしかない。
「ラトタス、同時に力を入れてスライムを押しのけるんだ!せーの!」
まず、ターニュを引っこ抜く。
「はぁはぁ。ふぁぁんっ」
ポムルスでターニュを正気に戻す。
「ターニュ、手伝って!」
次にカリンを助け出して、何とか全員スライムから引っこ抜いてポムルスを齧らせた。
全員スライムでヌルヌルになっている。なんだか妙に艶めかしい。
「みんなでスライムを焼き払おう」
ターニュは、まだガクガクへたりこんでいる。
ラカンが少し震えながら僕にしがみつく。
「た、頼んだ」
このスライムめ。
「せーの!ゾゾファイガスでいくわよ!」
僕とカリンとアシュリとラトタスでゾゾファイガスを放つ。
「うおおおおおおお!」
力を合わせた瞬間、スライムが弾けるように僕たちを解放した。
僕たちはスライムの粘液をつけたまま、地面に転がった。
全身がヌルヌルして気持ち悪かったが、自由になれた喜びがそれを上回った。
アシュリが安心して言った。
「やった、抜け出せた!」
ターニュが息を切らしながら言った。
「もう、スライムは勘弁してほしいな。」
ラカンだけは違ったようだ。
「でも、楽しかったな。うふふ」
カリンが怒りをぶちまける。
「最悪よ!どうして森はいつもこうなの?!」
みんなの顔を見て、無事を確かめる
「さあ、これからも進もう。
この長い旅が終わろうとしているかもしれない。
でも、まだやるべきことがあるんだ。」
アシュリが言った。
「そうね。人生は、終わりのない旅だけど、一区切りつけてもいいはずよ」
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「ストレートすぎだろ、それ……」
「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」
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