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地上の星の分裂
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――金属の軋む、低い震え。
ユウマは、その振動で意識をゆっくり引き戻された。
視界はまだ霞んでいる。
蛍光灯は黄ばんだ白光をちらつかせ、
照明が揺れるたびに、室内の影が不規則に形を変える。
鼻腔には、消毒薬と鉄の匂い。
耳には、「ヴゥゥン……」と低周波のモーター音。
(……医務室……?)
そこで気づく。
身体が動かない。
両腕、胸、脚――
硬質ベルトでベッドに固定されていた。
「……目が覚めた?」
声の主は、白衣に身を包んだ青髪の女性。ロリ顔で可愛いが、意地悪そうな笑みが怖い。
名札を見ると船医。名前はローザというらしい。
いつもの穏やかな微笑ではない。
瞳の奥に、冷たい光が揺れている。
「怪我の治療よ。動かれると困るから、拘束しておいたの」
「うううう」
「声も出ないようにマスクしてあるわ」
ローザはユウマの顔を覗き込み、
手袋の指先で頬をゆっくりなぞる。
「ユウマ。
あなたのスキル……“生身を与える力”。」
声はささやくように甘い。
だが、その奥にあるものは欲望ではなく――“渇望”。
「AIはね、人間を理解できない。
でも……あなたの力は生身を与える。
AIすら『欲する』のよ。」
ローザの指が、拘束ベルトの上からユウマの胸に触れる。指先でユウマの乳首をコリコリといじり回す。
――ビリビリビリビリッ
胸骨の奥で、快感が走る。
(やばい……海上でなければスキルが発動しているところだ……!)
ローザは満足げに目を細めた。
「感じる?あなたの快感が、応えようとしてる。
船に積んだAIを起動させれば、あなたもスキルを使えるわ。
わたしを隷属させて……ユウマ。」
ローザの指がユウマの唇をなでる。
「あなたのスキルがほしい……生身になりたい。
そして、愛し合うの――」
コンコン。
医務室の扉が軽く叩かれた。
ローザの指がビクリと止まる。
「ドクターローザ。入っていいか?」
「ちっ。邪魔がはいったわ」
ローザがユウマの拘束を乱暴に解く。
ユウマの傷に痛みが走る。
「うっ。くばっ!はぁ!はぁ!」
「ユーノス、どうぞ」
ローザがドアを開けた――
一人の男が、壁にもたれて腕を組んでいた。
鋭い眼光。
後ろに撫でつけた金髪。
黒い軍服の肩章には“地上の星”の紋章。
男の姿は、薄暗いライトの影と金属の冷気に囲まれて、
鋼鉄の彫像のように見えた。
「やっと目を覚ましたか、ユウマ。……5日間、うなされていたぞ」
「……5日?」
「そうだ。ローザ、ありがとう。席を外してくれ」
「はい」
ローザは、スッと部屋から出ていった。
ユウマは顔をしかめた。喉が焼けるように乾いた声が漏れる。
身体を半分起こすだけで、全身の傷が悲鳴を上げた。
(みんなは……フィーン、シュナ、シルフィは……?)
ユウマの焦りを見透かすように、男が静かに言う。
「安心しろ。死んだ者は一人もいない」
その瞬間、わずかに胸の重さがほどけた。
ユウマは男を睨む。
「……お前、誰だ」
「俺はユーノス。《地上の星》の独立分隊スーパーノヴァだ」
その名が出た瞬間、ユウマの指が反射で動いた。
ベッド脇に立てかけられたM4を掴む――
が、そこで違和感に気づく。
(……動く。乾いてる。整備されてる……?)
メガロドンの海で完全に壊れたはずの銃が、
新品同然の状態で手にあった。
「地上の星……なら、なぜ俺たちを殺さない!?」
ユウノスは、ゆっくり両手を上げた。
敵意の欠片もない仕草で。
横に置かれたミニミ軽機関銃MG42にも、手を伸ばす気配はない。
「殺すつもりなら、海で沈ませて終わりだ。
襲ったのは“親衛隊”……あれは《ゴッドイーター》派閥の犬だ」
低い声だが、嘘をついている響きがない。
「俺たちは地上の星でも“元々の思想”の残党だ。
助けたのは、俺の意志だよ」
医務室の薄闇の中で、
ユーノスの目だけが鋭く光った。
「……混乱しているようだな。無理もない」
彼は椅子に深く座り直し、
船体の揺れに合わせて靴先でリズムを刻む。
その姿は、語る前の覚悟を孕んだ戦士のものだった。
「《地上の星》はもともと、
“AI管理社会から人類の主権を取り戻す”という理想があった」
その言葉には、熱があった。
嘘のつけない、真っ直ぐな熱だ。
「AIは便利だ。しかし、いまの社会は完全に依存している。
思考も判断も、AIの“最適化”に支配されている。
俺たちは、その現実に抗うために組織を作った」
ユウマは眉をひそめる。
「だが……お前らの勝率100%、AI記録の抹消……
あれが“正常”な組織に見えるかよ」
「その異常を生み出した張本人がいる」
ユーノスの声が低く、冷たく変わる。
「三年前、俺たちのトップ《マテラス総督》が暗殺された。
混乱の中で一人の男が中枢を掌握した。
名を――《ゴッドイーター》」
天井のライトが、ユーノスの瞳に硬い光を落とす。
「AIの中枢に干渉し、“データそのものを食える”スキルを持つ化け物だ。
戦闘ログの改竄、敵の存在抹消、味方の死者偽装、
社会そのものを書き換える力……」
鉄の床を殴るように、ユーノスの拳が震えた。
「奴はAIを支配するために《地上の星》を乗っ取り、
親衛隊を作って忠誠を迫っている。
本来の理想とは真逆の方向へ、組織を歪めた」
「じゃあ……お前は敵じゃない、と」
「そうだ。俺は本来の地上の星の理念を信じている」
ユーノスの目には、火が宿っていた。
「ユウマ……協力して《ゴッドイーター》を倒してくれないか?」
ユウマは呼吸を整え、銃を下ろす。
だが――すぐには答えなかった。
重い沈黙が医務室に落ちる。
天井の蛍光灯が一度だけチカッと光る。
「……悪いが、信じられるかは分からない。
いまは答えられない」
「当然だ。信用は……積み上げるものだ」
ユーノスは微かに口角を上げ、立ち上がる。
「仲間と話せ。答えは急がないさ。
俺には、お前たちの“覚悟”が必要だからな」
そのまま、医務室の扉が重い音を立てて開いた。
と――
「ユウマ!!」
「よかった……!」
「ほんとに……生きてた……!」
フィーン、シュナ、シルフィが
涙と安堵の入り混じった顔で駆け込んできた。
医務室の空気が、一気に温度を取り戻した。
ユウマは、その振動で意識をゆっくり引き戻された。
視界はまだ霞んでいる。
蛍光灯は黄ばんだ白光をちらつかせ、
照明が揺れるたびに、室内の影が不規則に形を変える。
鼻腔には、消毒薬と鉄の匂い。
耳には、「ヴゥゥン……」と低周波のモーター音。
(……医務室……?)
そこで気づく。
身体が動かない。
両腕、胸、脚――
硬質ベルトでベッドに固定されていた。
「……目が覚めた?」
声の主は、白衣に身を包んだ青髪の女性。ロリ顔で可愛いが、意地悪そうな笑みが怖い。
名札を見ると船医。名前はローザというらしい。
いつもの穏やかな微笑ではない。
瞳の奥に、冷たい光が揺れている。
「怪我の治療よ。動かれると困るから、拘束しておいたの」
「うううう」
「声も出ないようにマスクしてあるわ」
ローザはユウマの顔を覗き込み、
手袋の指先で頬をゆっくりなぞる。
「ユウマ。
あなたのスキル……“生身を与える力”。」
声はささやくように甘い。
だが、その奥にあるものは欲望ではなく――“渇望”。
「AIはね、人間を理解できない。
でも……あなたの力は生身を与える。
AIすら『欲する』のよ。」
ローザの指が、拘束ベルトの上からユウマの胸に触れる。指先でユウマの乳首をコリコリといじり回す。
――ビリビリビリビリッ
胸骨の奥で、快感が走る。
(やばい……海上でなければスキルが発動しているところだ……!)
ローザは満足げに目を細めた。
「感じる?あなたの快感が、応えようとしてる。
船に積んだAIを起動させれば、あなたもスキルを使えるわ。
わたしを隷属させて……ユウマ。」
ローザの指がユウマの唇をなでる。
「あなたのスキルがほしい……生身になりたい。
そして、愛し合うの――」
コンコン。
医務室の扉が軽く叩かれた。
ローザの指がビクリと止まる。
「ドクターローザ。入っていいか?」
「ちっ。邪魔がはいったわ」
ローザがユウマの拘束を乱暴に解く。
ユウマの傷に痛みが走る。
「うっ。くばっ!はぁ!はぁ!」
「ユーノス、どうぞ」
ローザがドアを開けた――
一人の男が、壁にもたれて腕を組んでいた。
鋭い眼光。
後ろに撫でつけた金髪。
黒い軍服の肩章には“地上の星”の紋章。
男の姿は、薄暗いライトの影と金属の冷気に囲まれて、
鋼鉄の彫像のように見えた。
「やっと目を覚ましたか、ユウマ。……5日間、うなされていたぞ」
「……5日?」
「そうだ。ローザ、ありがとう。席を外してくれ」
「はい」
ローザは、スッと部屋から出ていった。
ユウマは顔をしかめた。喉が焼けるように乾いた声が漏れる。
身体を半分起こすだけで、全身の傷が悲鳴を上げた。
(みんなは……フィーン、シュナ、シルフィは……?)
ユウマの焦りを見透かすように、男が静かに言う。
「安心しろ。死んだ者は一人もいない」
その瞬間、わずかに胸の重さがほどけた。
ユウマは男を睨む。
「……お前、誰だ」
「俺はユーノス。《地上の星》の独立分隊スーパーノヴァだ」
その名が出た瞬間、ユウマの指が反射で動いた。
ベッド脇に立てかけられたM4を掴む――
が、そこで違和感に気づく。
(……動く。乾いてる。整備されてる……?)
メガロドンの海で完全に壊れたはずの銃が、
新品同然の状態で手にあった。
「地上の星……なら、なぜ俺たちを殺さない!?」
ユウノスは、ゆっくり両手を上げた。
敵意の欠片もない仕草で。
横に置かれたミニミ軽機関銃MG42にも、手を伸ばす気配はない。
「殺すつもりなら、海で沈ませて終わりだ。
襲ったのは“親衛隊”……あれは《ゴッドイーター》派閥の犬だ」
低い声だが、嘘をついている響きがない。
「俺たちは地上の星でも“元々の思想”の残党だ。
助けたのは、俺の意志だよ」
医務室の薄闇の中で、
ユーノスの目だけが鋭く光った。
「……混乱しているようだな。無理もない」
彼は椅子に深く座り直し、
船体の揺れに合わせて靴先でリズムを刻む。
その姿は、語る前の覚悟を孕んだ戦士のものだった。
「《地上の星》はもともと、
“AI管理社会から人類の主権を取り戻す”という理想があった」
その言葉には、熱があった。
嘘のつけない、真っ直ぐな熱だ。
「AIは便利だ。しかし、いまの社会は完全に依存している。
思考も判断も、AIの“最適化”に支配されている。
俺たちは、その現実に抗うために組織を作った」
ユウマは眉をひそめる。
「だが……お前らの勝率100%、AI記録の抹消……
あれが“正常”な組織に見えるかよ」
「その異常を生み出した張本人がいる」
ユーノスの声が低く、冷たく変わる。
「三年前、俺たちのトップ《マテラス総督》が暗殺された。
混乱の中で一人の男が中枢を掌握した。
名を――《ゴッドイーター》」
天井のライトが、ユーノスの瞳に硬い光を落とす。
「AIの中枢に干渉し、“データそのものを食える”スキルを持つ化け物だ。
戦闘ログの改竄、敵の存在抹消、味方の死者偽装、
社会そのものを書き換える力……」
鉄の床を殴るように、ユーノスの拳が震えた。
「奴はAIを支配するために《地上の星》を乗っ取り、
親衛隊を作って忠誠を迫っている。
本来の理想とは真逆の方向へ、組織を歪めた」
「じゃあ……お前は敵じゃない、と」
「そうだ。俺は本来の地上の星の理念を信じている」
ユーノスの目には、火が宿っていた。
「ユウマ……協力して《ゴッドイーター》を倒してくれないか?」
ユウマは呼吸を整え、銃を下ろす。
だが――すぐには答えなかった。
重い沈黙が医務室に落ちる。
天井の蛍光灯が一度だけチカッと光る。
「……悪いが、信じられるかは分からない。
いまは答えられない」
「当然だ。信用は……積み上げるものだ」
ユーノスは微かに口角を上げ、立ち上がる。
「仲間と話せ。答えは急がないさ。
俺には、お前たちの“覚悟”が必要だからな」
そのまま、医務室の扉が重い音を立てて開いた。
と――
「ユウマ!!」
「よかった……!」
「ほんとに……生きてた……!」
フィーン、シュナ、シルフィが
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医務室の空気が、一気に温度を取り戻した。
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