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模索
【閑話】8月29日は「焼き肉の日」。
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8/29は焼き肉の日だそうです。年に一度だそうですw
語呂合わせ、楽しいですね(^-^)
二人の焼肉ネタ、行ってみましょう!
さぁ、どーぞぉ~。
ーーーーーーーー
『堂島ぁ、今日外食したい。すっごく焼き肉が食べたいッ』
終業時間まで間がある中途半端な時間に電話だった。こんな時間帯に彼から電話なんて緊急か?と、慌てて出た。
汗をかきながら、外周りを終えて帰社途中の路上で、電話を受けていた。
焼き肉……。
俺が焼かれそうだ。
学生服の姿も最近よりも見かける。ああ、学校が始まったのか。
怠いやテストがなどと言ってる集団がそばを通り過ぎていく。
少しでも日陰が欲しくて、建物の日陰に避難する。
「びっくりするじゃないですか。何かと思えば、」
目の前がコーヒーショップだった。
扉を潜る。涼しい……。
店内の時計を見る。
時間には余裕がある。休憩していくか。
「どうしたんですか?」
『堂島、お前冷たいぞ。ボクがお願いしてるというのにッ』
どうも変だ。いつもの晶だったらこんな風に言う事はない。何かあったんだ。
「分かりました。定時には上がれると思いますが、そちらは?」
頭の中は、仕事の優先順位と振り分けを組み立てつつ、カウンターへ。メニュー表を差しながら、店員さんにお願いする。
慣れてるのか、笑顔で対応してくれる。
申し訳ないと、目で謝る。
『定時に上がる。上がってやるッ』
電話の向こうで息巻いてる。
可愛い…。
ごめん。でも可愛くって、顔がにやけそうだ。
カードで精算。
ニヤけそうな自分を隅に押し込む。
何か溜まってるのか、何かあったのだな。
ゆっくり話を聞いてやった方がいいな。
店の候補をいくつか頭に思い浮かべながら、商品を受け取って、空いてる席に向かう。
「では、駅前の広ば…コーヒーショップの中で待ってて下さい」
まだ暑い。広場では遮る物がない上に、変なのに目をつけられでもしたら大変だ。
電車の外だからと油断は出来ない。
これは俺が悪いんだが、最近の彼には、可愛さにエロさが加味されてる。本人に自覚がないところが危険だ。
『分かった。頑張って終わらせて行く。頑張るぞぉ』
唐突に通話が切れた。元気になったようで良かった。
涼みながら、予約の電話をかけた。
黄昏てた。
ピョコっと跳ねた髪も、ちょっとズレた伊達眼鏡も、その横顔がなんだか憂いが含まれてて……なんとも……唆られる。
気のせいにしたいが、あちこちから良からぬ視線が彼に向かってる気がする。
「お待たせしました」
邪な気持ちを悟らせないように、静かに声をかける。
俺の晶に手を出すなと周りに牽制しておく。
「おぅ、さっき来たところだ」
手元のカップは空だ。随分待たせてしまったようだ。
「そろそろいい時間なんで、行きましょうか?」
仲間のフォローに時間が押してしまった。
余裕があるように予約を入れたのに、余裕がなくなってしまった。
「予約入れてくれたのか? 堂島チョイスなら、美味いんだろうなぁ」
パタパタと支度している。
ビジネスバッグが可愛く見える。
ピンク系のシャツの所為でもない。
滲み出るこの人の可愛さだ。決して、俺の目が腐ってる訳ではない。
「評判はいいですよ。実は、接待で同席した事があるだけで。あの時は味わえませんでした」
正直に告白。
「ほぉお、じゃあ、一緒に堪能しよう」
晶が跳ねるようにカウンタースツールを降りる。
肩を抱き寄せてしまいそうに蠢く手を無理やり向きを変え、トレイを受け取る。
「ピンクのどこが悪いんだよ。店員さんが真剣に選んでくれてるんだ。他の店でも何故かピンク系だけど…さ。
それに、ボクの彼女はハイヒール履けなくて可哀想だってなんなんだよ。可愛らしくしてたら、彼女さん困るよ?って。あー、もう!」
くぴくぴ。モグモグ。
「磨いた所でお子様な感じは抜けないかな?って、ちんちくりんだけど、きちんと働いてるんだってんだ。
まだ成長期?って、ウキィィィ……大人だっつーの」
パクパク。
「アイツ嫌い! 社長はいい人なんだよぉ~。頑張れって思っちゃうね。ボクは応援してんだ。
その横で、ちくちくと、笑いとりにいってる気か?!
ボクは聞かなかった事にして、仕事の話したぞ」
ぐびびーっと、ジョッキを空けている。
ドカッと置いた。
「な? 堂島、理不尽だろ? 腹が立ったけど、我慢したんだ。誰も褒めてくれないけど、頑張ったんだぞ。ボクは、大人だからな」
管を巻きながら、パクパクと肉が消えて行く。
クライアントに同席してた人物が晶に絡んできたらしい。
確かに腹立たしい。
俺は焼きに徹する。食べてはいるんだが、晶の食べっぷりと飲みっぷりが豪快で、嬉しいやら心配になるやらで…。
まだまだあるのか?
しっかり聴いてやらねば……。
休日前でもないんだが、大丈夫だろうか。
「晶はいつも頑張ってるって。みんなキミの良さは分かってるって。今日はお腹いっぱい食べて」
「堂島も食えよ。ボクが焼くッ」
酔っているだろうに、器用に焼いて行く。
酔ってるからだろうか。なんだか無心に焼きだした。
気が晴れるなら、彼のやりたいようにしたらいいと見守る。いや、愛でていた。
真剣な顔が可愛い。
ハァァ…、重症だな。晶にベタ惚れだよ。
たまたまだったようだが、今までにこんな事を愚痴られる事はなかった。否、ここまで心を開いてくれたって事かもしれない。
嬉しい。
嬉しさを噛み締めながら、しっかり焼いてくれた噛み応えのある肉を口に運んだ。
個室を予約して良かった。
こんな可愛い晶を独占で愛でる事が出来る。
肉は美味いと思うんだが、今回も味がよく分からなかった。
「食べたなぁ。飲んだ。気分も晴れたッ。聴いてくれてありがとうなッ!」
にこやかな晶と駅に向かう。
不味い。腹が満たされて、心も満たされて……。肉を食べたのが不味かったか。
こう…なんというか……ムラムラと……。
電車でいつも通り晶の後ろで壁になりながら、俺が痴漢になりそうで、本気で困っていた。前が大変不味い事になりつつある。
もうすぐ、晶が降りる駅だ。
不意にネクタイを引っ張られた。
下を見ると、そばかす顔が、ほろ酔いに頬を染めて見上げている。
クイッと更に引っ張られ、背伸びする晶の身体がピッタリくっついてきて、耳元で囁かれる。
「ごめんな。……今度しよ? ありがとう。また明日」
ガタンと停車。プシューと扉が開く。
ゔぐぅぅ……!
降りて行く晶を見送りながら、鞄で前をカバーする。
閉じた扉の向こう。晶の背をいつまでも見ていた。
彼は悪くない。無自覚にやらかしてくれてるが、悪くない……悪くない…んだ。
降りる駅を通り過ぎてしまったが、致し方ないだろ?
ひたすら素数を数えて落ち着くのを待った。
窓の外を光が流れ行く。
ーーーーーーー
次の更新がいつになるか分からなくなったので、一旦完結にしますm(_ _)m
再開時はよろしくお願いします。
語呂合わせ、楽しいですね(^-^)
二人の焼肉ネタ、行ってみましょう!
さぁ、どーぞぉ~。
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『堂島ぁ、今日外食したい。すっごく焼き肉が食べたいッ』
終業時間まで間がある中途半端な時間に電話だった。こんな時間帯に彼から電話なんて緊急か?と、慌てて出た。
汗をかきながら、外周りを終えて帰社途中の路上で、電話を受けていた。
焼き肉……。
俺が焼かれそうだ。
学生服の姿も最近よりも見かける。ああ、学校が始まったのか。
怠いやテストがなどと言ってる集団がそばを通り過ぎていく。
少しでも日陰が欲しくて、建物の日陰に避難する。
「びっくりするじゃないですか。何かと思えば、」
目の前がコーヒーショップだった。
扉を潜る。涼しい……。
店内の時計を見る。
時間には余裕がある。休憩していくか。
「どうしたんですか?」
『堂島、お前冷たいぞ。ボクがお願いしてるというのにッ』
どうも変だ。いつもの晶だったらこんな風に言う事はない。何かあったんだ。
「分かりました。定時には上がれると思いますが、そちらは?」
頭の中は、仕事の優先順位と振り分けを組み立てつつ、カウンターへ。メニュー表を差しながら、店員さんにお願いする。
慣れてるのか、笑顔で対応してくれる。
申し訳ないと、目で謝る。
『定時に上がる。上がってやるッ』
電話の向こうで息巻いてる。
可愛い…。
ごめん。でも可愛くって、顔がにやけそうだ。
カードで精算。
ニヤけそうな自分を隅に押し込む。
何か溜まってるのか、何かあったのだな。
ゆっくり話を聞いてやった方がいいな。
店の候補をいくつか頭に思い浮かべながら、商品を受け取って、空いてる席に向かう。
「では、駅前の広ば…コーヒーショップの中で待ってて下さい」
まだ暑い。広場では遮る物がない上に、変なのに目をつけられでもしたら大変だ。
電車の外だからと油断は出来ない。
これは俺が悪いんだが、最近の彼には、可愛さにエロさが加味されてる。本人に自覚がないところが危険だ。
『分かった。頑張って終わらせて行く。頑張るぞぉ』
唐突に通話が切れた。元気になったようで良かった。
涼みながら、予約の電話をかけた。
黄昏てた。
ピョコっと跳ねた髪も、ちょっとズレた伊達眼鏡も、その横顔がなんだか憂いが含まれてて……なんとも……唆られる。
気のせいにしたいが、あちこちから良からぬ視線が彼に向かってる気がする。
「お待たせしました」
邪な気持ちを悟らせないように、静かに声をかける。
俺の晶に手を出すなと周りに牽制しておく。
「おぅ、さっき来たところだ」
手元のカップは空だ。随分待たせてしまったようだ。
「そろそろいい時間なんで、行きましょうか?」
仲間のフォローに時間が押してしまった。
余裕があるように予約を入れたのに、余裕がなくなってしまった。
「予約入れてくれたのか? 堂島チョイスなら、美味いんだろうなぁ」
パタパタと支度している。
ビジネスバッグが可愛く見える。
ピンク系のシャツの所為でもない。
滲み出るこの人の可愛さだ。決して、俺の目が腐ってる訳ではない。
「評判はいいですよ。実は、接待で同席した事があるだけで。あの時は味わえませんでした」
正直に告白。
「ほぉお、じゃあ、一緒に堪能しよう」
晶が跳ねるようにカウンタースツールを降りる。
肩を抱き寄せてしまいそうに蠢く手を無理やり向きを変え、トレイを受け取る。
「ピンクのどこが悪いんだよ。店員さんが真剣に選んでくれてるんだ。他の店でも何故かピンク系だけど…さ。
それに、ボクの彼女はハイヒール履けなくて可哀想だってなんなんだよ。可愛らしくしてたら、彼女さん困るよ?って。あー、もう!」
くぴくぴ。モグモグ。
「磨いた所でお子様な感じは抜けないかな?って、ちんちくりんだけど、きちんと働いてるんだってんだ。
まだ成長期?って、ウキィィィ……大人だっつーの」
パクパク。
「アイツ嫌い! 社長はいい人なんだよぉ~。頑張れって思っちゃうね。ボクは応援してんだ。
その横で、ちくちくと、笑いとりにいってる気か?!
ボクは聞かなかった事にして、仕事の話したぞ」
ぐびびーっと、ジョッキを空けている。
ドカッと置いた。
「な? 堂島、理不尽だろ? 腹が立ったけど、我慢したんだ。誰も褒めてくれないけど、頑張ったんだぞ。ボクは、大人だからな」
管を巻きながら、パクパクと肉が消えて行く。
クライアントに同席してた人物が晶に絡んできたらしい。
確かに腹立たしい。
俺は焼きに徹する。食べてはいるんだが、晶の食べっぷりと飲みっぷりが豪快で、嬉しいやら心配になるやらで…。
まだまだあるのか?
しっかり聴いてやらねば……。
休日前でもないんだが、大丈夫だろうか。
「晶はいつも頑張ってるって。みんなキミの良さは分かってるって。今日はお腹いっぱい食べて」
「堂島も食えよ。ボクが焼くッ」
酔っているだろうに、器用に焼いて行く。
酔ってるからだろうか。なんだか無心に焼きだした。
気が晴れるなら、彼のやりたいようにしたらいいと見守る。いや、愛でていた。
真剣な顔が可愛い。
ハァァ…、重症だな。晶にベタ惚れだよ。
たまたまだったようだが、今までにこんな事を愚痴られる事はなかった。否、ここまで心を開いてくれたって事かもしれない。
嬉しい。
嬉しさを噛み締めながら、しっかり焼いてくれた噛み応えのある肉を口に運んだ。
個室を予約して良かった。
こんな可愛い晶を独占で愛でる事が出来る。
肉は美味いと思うんだが、今回も味がよく分からなかった。
「食べたなぁ。飲んだ。気分も晴れたッ。聴いてくれてありがとうなッ!」
にこやかな晶と駅に向かう。
不味い。腹が満たされて、心も満たされて……。肉を食べたのが不味かったか。
こう…なんというか……ムラムラと……。
電車でいつも通り晶の後ろで壁になりながら、俺が痴漢になりそうで、本気で困っていた。前が大変不味い事になりつつある。
もうすぐ、晶が降りる駅だ。
不意にネクタイを引っ張られた。
下を見ると、そばかす顔が、ほろ酔いに頬を染めて見上げている。
クイッと更に引っ張られ、背伸びする晶の身体がピッタリくっついてきて、耳元で囁かれる。
「ごめんな。……今度しよ? ありがとう。また明日」
ガタンと停車。プシューと扉が開く。
ゔぐぅぅ……!
降りて行く晶を見送りながら、鞄で前をカバーする。
閉じた扉の向こう。晶の背をいつまでも見ていた。
彼は悪くない。無自覚にやらかしてくれてるが、悪くない……悪くない…んだ。
降りる駅を通り過ぎてしまったが、致し方ないだろ?
ひたすら素数を数えて落ち着くのを待った。
窓の外を光が流れ行く。
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次の更新がいつになるか分からなくなったので、一旦完結にしますm(_ _)m
再開時はよろしくお願いします。
応援ありがとうございます!
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