その温もりで抱きしめて。【時々番外投稿〜♡】

アキノナツ

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恋の奮闘

7】ケジメって難しいです。(後)

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「こんな?」

 ダグがボクのお口を拭き拭きしながら、返事してます。
 至れり尽くせりのダグは当たり前で、ぼんやりのボクは、気づくとこうなってます。

「付き合って…ないんだったな?」

「うん、お友だち」
 ボクがお返事。
「セフレじゃないよ。お友だち。フウグゥ…」

「ス? ん? これが友だち?」

 お口をダグの大きな手で塞がれてしまいました
「こいつの話は、まともに聞くな。こんがらがるゾ」

「タッくん、オレと友だちって言ってたな」

 口を塞がれたまま頷く。
 目で手を離してとダグに訴えれば、そっと離してくれた。

「うん、ダグのお友だちの友だち。セフレじゃなくて、フレンドね。もうあんなバイトもしないよ。友だちには嫌な事しちゃダメだからね」

「ん? んー? ーーー分かった」
 サクの眉間に珍しく皺が刻まれてる。痕が付きそうで、思わず手を伸ばしたら、そっとダグにとめたれた。

「分かるのか?」
 ダグが変な声出してる。
「オレ、なんとなく分かったけど。タッくん面白いけど、危ないなぁ~」

 ニヤニヤしてるサクと変顔のダグを交互に見てたけど、トイレに行きたくなったので、二人の間から抜けた。

 帰って来たら、二人が折り合いついたようです。
 サクがマイク持って、端末弄ってます。歌うんですね。

「タクト、終わった」
 晴れ晴れした表情のダグ。

「そうなんだ」

 帰りの廊下でポスターとか見ながら帰ってたら、遅くなっちゃったかも…? お話終わって良かったです。

 ダグさんの前を通って元の席に戻ります。

 テーブルの封筒が消えてる。ダグの表情から受け取ってくれたらしい。
 これでサクに遠慮しなくて暴れられるらしい。暴れなくていいんだけど…。

 戻る途中、ダグのお膝に座っちゃったけど、ダグがボクを抱えるように移動してくれて無事に席につけました。

 サクがボクの頭に手を置いてグリグリして来ます。嬉しそうです。歌いながら、グリグリです。
 緩くなったり激しくなったりのグリグリは、サクの気持ちがそのままのようで、禿げそうだと思っても、やめてとは言えませんでした。

 歌い終わって、ぎゅっと抱きつかれた時は、流石にびっくりしました。ダグさんが透かさず剥がしてくれましたが、サクの耳元で囁く声に、言葉は聞き取れませんでしたが、なんだか安心したです。

「ダグ、大丈夫です。ありがとう」
 ぐちゃぐちゃの頭のまま笑顔でお礼。なんだか仏頂面で「ああ」と言ったきり、手櫛でボクの髪を整えてくれました。サクにさっき「ありがとう」って言われた気がします。なんとなく…。

 穏やかなカラオケは終了して、バーで飲んでます。

『アプリコット』の文字が飛び込んで来ました。あんず。この前読んでた本の主人公と同じ名前です。
『アプリコット・クーラー』を二人にお伺いせずにオーダーしました。横でダグが何か言ってますが、気にしません。カクテルは美味しいのは知ってます。甘い系というのはお店の人に確認してるので大丈夫です。
 ワクワクして待ってると、長く細いガラスコップに氷がいっぱいで、山吹色の液体が満たされてます。

 ひと口含めば、炭酸のさっぱりした刺激とフルティーな香りが広がります。美味しいです。背の高いスツールの上で行儀悪く脚が揺れてしまいます。サクとダグの間で挟まれて飲んでる事を忘れる程にボクはこの飲み物に夢中になってしまいました。

「ダグ、難しいな…」
「ゆっくりでいいよ」
「ゆっくりか…。返済ゆっくりで「それは済んだ」
「そうだな…」

 ボクの頭の上で会話が交わされてます。まだ揉めてるのでしょうか。
 不安になって、二人を見れば、なぜか二人に頭を撫でられました。
 何故ですかね?

「ダグ、受け入れたら?」
「なに言ってる?」
「そのまんまッ。また連絡するわ。じゃ」
 サクが支払い済ませてます。帰るようです。

 ダグが絶対連絡しろよって念押してる。サクが笑ってるから大丈夫だと思う。
「お友だちだもんね」ってボクが言うと「そう、ダチだ。話はつけとくから安心しろ」って爽やかサクでした。

「話?」
 よく分からない単語をダグに尋ねました。

「危ない芽を潰すって事」

「ふーん?」
 よく分かりませんが、ダグが優しいクマさんの笑顔なので、ボクは嬉しいです。

「ダグ」
 ボクはポフッとダグに抱きつきました。お胸が柔らかく受け止めてくれます。
「大好きです」
 大きな手が頭を撫でてくれます。

「酔ったのか? ちょっと度数がキツかったか」
 心配そうな声。ボクが頑張って口説いてるというのにお返事は難しいですね。

「大好きです。ボクを好きになって欲しいです」
 上を向いて、お胸に顎を立ててダグを見詰めます。唇を尖らせて、文句を告げます。
 いつになったら、好いてくれるのでしょう。

 ダグさん視線が横にずれてしまいます。寂しいですね。でも、ボクを撫でる手が耳の後ろを掠ります。ほっぺたも撫でられてます。優しい感触にうっとりです。
 ダグさん、酔ってしまったのでしょうか。ブランデーをロックで呑んでました。

 親指がボクの唇の上を辿ってます。
 ん? どうしたのでしょうか?
 ゆっくり往復してます。

 何往復しましたかね…。思わずパクッと咥えてみました。指がピタっと固まってしまいました。

 ダグさんの視線が戻って来ました。
 固い表情です。手を引っ込めようとするので、指を吸い付いてチロリと舐めてみました。
 見る見る真っ赤になって、指が引き抜かれてしまいました。ちゅぽッと音がしてしまいました。

 黙ってグラスを傾けてます。
 ボクもその横で、ちょっと炭酸が抜けかけたカクテルの残りを喉に流します。なんだか変な気分です。

 ゆっくりした時間が流れてます。
 なんだかダグとの間の何かが薄くなった気がしました。

 ボクは、ダグが好きです。
 こんな時間も好きです。
 どうすれば、好きになってくれますか?





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ちょいと、また投稿が遅くなりますm(_ _)m

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