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二人っきり
第1話
しおりを挟む休みだー!
なんだかんだと色々重なって気づいたら、1週間程学校もバイトも無くなってしまった。
ぽっかり空いたスケジュール。
予期せず舞い込んだ休みにどうしていいかわからなくなるオレ。
友達に連絡を取ってもバイトとかで遊んでくれそうに無い。
ひとり、遊んでくれそうなヤツはいるにはいるが、最近なんだか反りが合わないので避けてる。
だから、そいつは除外!
どうしようかなぁとスマホを弄ってて、あっ!と思い出す。
ムフフっとアドレスを開く。
一番に思い出してもいい相手をなんで思い出さないかなぁ。
優太、今、何してっかなぁ~。
心が弾む。
『山田 優太』
コール画面にする。
宅飲みの約束したのに、全然時間合わなくて、映画とか行ったりしてるけど、結局出来てないんだよな。
これって決行の機会だよね?
あー、優太の都合が合えば、だな。
自分の都合ばかり押し付けるのはダメだね。
おっと、電話掛けそうになった。
コールボタンの上を指が踊る。
返事は急がないから……メッセージで、と。
ポチポチと打って送る。
今日は部屋の掃除とかして、明日からの休日をゆったりと過ごそうではないか。
昼、洗濯物の揺れるベランダを窓越しに眺めて、ソファでぼんやりしていた。
暇だ。
掃除も終わりました。もうやる事がない。
ゲームでもしようかな…。
カタカタとカーソル動かしてサクサク進めていく……。
寂しい。
どっか遊びに行こうかな。
ゲーセンかファミレスだったら、気が紛れるかな…。
「寒……ッ」
コントローラ握ったまま寝てたみたいだ。
ブルっと震えがきた。
夕方か。
洗濯物取り込むか。
のっそり起き上がって、ソファで伸びぃ。。。
ふとスマホを見ると通知のお知らせでチカチカしていた。
驚いた。
何件着てるねん。
全部、優太から。
暇か?
えーと、留守電にはメッセージ無しと。
メッセージアプリを立ち上げて、ザッと内容チェック。
既読がついたから、なんらかのアクションがあるかも知れないけど。
メッセージに目を通す。
なんか心配してる?
なんで?
休みが出来たーって送っただけだよ?
振動!
優太から電話。
「優太、電話出れなくてごめん。寝ちゃっててさぁ」
出てすぐ言い訳!
向こうは『り…』って言ったきり黙ってくれてた。
「……」
言い訳したから、もういう事が……。なんだっけ?
なんか言って?
『……』
無言?
見合っちゃった。
「優太?」
なんとなく、恐る恐る呼びかけてみる。
『倫、心配した』
落ち着いた声が返ってきて、ホッとした。
でも、少し固い。
なんだか怒らせた?
「うん」
メッセージもなんか心配してたけど…何故?
『今、玄関の鍵どうしてる?』
「開いてるよ?」
当たり前だけど?
そう言えば、前も戸締りがどうのって言ってたな。
『前にも言ったけど、戸締りはしないか? バイトとか大学行ってると留守してるから、まだマシってだけで…』
うんうんと相槌打って聞いてるけど、何を言ってるか分からん。
玄関締めてないけど、共同玄関はオートロックだし、なんかココって部屋的な感じ?
……あれ?
前は締めてたよね…。
あれ?
なんでしなくなったんだっかかな……。
ふらっと立ち上がると、玄関に向かう。
鍵を掛けた。
鍵を掛ける音を拾ったのか、向こうでぐだぐだ続いてた優太の言葉が途切れた。
『ありがとう』
何故お礼?
「どういたしまして」
反射。
「暇になったんだけど、優太は明日から何してる?」
やっと訊きたい事言えた!
コレ訊きたかったんだった。
『どっか行きたいのか?』
「んー、宅飲みの予定入れていい?」
『ああ、なるほどね。…いいよ。調整するよ』
ちょっと声が遠くなった。
予定とか調べてるのかなぁ。
「やった。ーーーでさ、ひとりで1週間も部屋って、暇で寂しいから、優太んとこで過ごしていい?」
気分良く、もう一つの用件をツラツラ~っと話す。
『はぁあ?!』
ちょっと耳がキーンとした。
急に声デカ!
沈黙が流れる。
ん?
返事がない……。
聞こえなかったのかな?
「暇だし、寂しいからさ。優太んとこなら寂しくないだろ? 優太出掛けても帰ってくるし。オレんとこ、今誰も来てくれそうにないから」
キーンとした耳とは反対側にスマホを当て直す。
『…………』
む、無言?
長いな。
えーと、優太? どうした?
呼びかけようとしたら。
『倫って帰省してる?』
???
急に何?!
「えーと、成人式の時に帰ったきり?」
なんか疑問形になっちゃった。
オレんとこの市民会館が改修工事入るからって、春、ゴールデンウィークに前倒しの成人式したんだよ。
ビックイベント無くなって、なんとなくバイト入れて、夏も正月も帰ってなかった。
わぁお! オレ帰ってなかったわぁ。びっくり。
『帰省して、あちこち行くとか?』
「んー、面白そうだけど…」
『だけど?』
「あんま帰りたくない」
気乗りしないなぁ。
地元に残ってる友達とは遊べるか分かんないし。
『どうして?』
「家誰もいないもん」
『居ない?』
「仕事で居ないと思う。夜帰ってくると思うけど。ここより広い所にひとりは更に寂しすぎる」
ちょっと間があって、
『俺も帰るから、一緒に出かけるのは?』
なんて魅力的な提案がされた!
「えっ、楽しそう!」
一気に乗り気!
『……訊いてみないとなんとも言えないけど、ウチに泊まっても良いし」
「良いの? 優太ん家初っ!」
ワクワクが止まらん。
座ってた尻が浮いてきた。
『弟居るから、喧しいぞ』
なんか優太の声弾んでる?
「えっ、兄弟居たんだ」
立ち上がって、話してた。
『うん。弟が一人いる』
初めて知った。
もう初めてだらけ!
「帰る! 親に連絡する! 優太はいつ行ける?!」
ウロウロを歩き回る。
壁のカレンダーの前で、仁王立ち。
『あー、ちょっと待って……明日の朝ちょっと大学に顔出さないといけないのがあるけど、そこから以降はオフにする』
やっぱ、調べてたんだ。
「イイの?!」
『良い。あとは一人でするからパソコンあればどこでも出来る』
言い切る優太かっこいいな!
「電源無かったら出来ねぇじゃん」
冗談言ってやる。
『紙と鉛筆あればいいよ』
笑ってる。バッカな返しにも真面目に返す優太。ムフフ。
『じゃ、準備しろよ。電話切るぞ』
「経過はメッセージで送るねぇ」
電話を切った後、アドレス帳から『母さん』を表示。
さて、母上さまに電話? メール?
んー、メールかな。
おお?
こちらから連絡するの初?
またまたびっくりである。
只今、駅に居ます。
優太を待っています。
なんとなく予想はしてたんだ。
優太は何気に忙しい。
オレもいつもはバイトとかを満遍なく入れて時間が潰れてるから、人の事は言えないけどね。
朝、大学に行くって連絡があったきりウンともスンともない。
窓口でチケットの時間をずらして貰った。
変更はこれが最後だな。
実家の方は、泊まれる様に準備してくれてるみたいだから、今日帰らないと。
両親は、なんだか喜んでたし、ガッカリさせたくない。
先に行く旨をポチポチ打ち込む。
嬉しい誤算。
両親、めちゃくちゃテンション高く、揃って帰りが早かった。
こっちが引くよ。
両親も寂しかった?
母親とはよく電話で話してたから、そんなに喜んで貰えるとは思わなかったよ。
笑っちゃう。親子似てんな。素直じゃないな。寂しがり屋だったみたい。
寿司とって、物凄くしゃべりまくった。
お酒も出たよ。
両親と飲むのって照れる。
父さんがめっちゃ喋ってた。
こんなに喋る父親、初めて見たかも。
酒の力恐ろしいけど、面白い。
優太の提案に乗って良かった。
で、肝心の優太は『明日行く』って短いメッセージのみ。
時間の記載無し。
期待はしない。
なーんも無い状態なのに、イラつきも、腹立たしさもない。
不思議と不安もザワつきも何もない。
気持ちは静かに凪いでる。
寧ろほんわか…あったかい……安心感?
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