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1. 転生の記憶
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俺はブランダン十歳。苗字は無いらしい。
村の中を走り回っていた帰り、石に躓いて転んで頭を打った。
「うおおお、いってええええ!!」
その瞬間、すべてを思い出した。
星の名前は地球、国は日本。高校卒業からの引きこもり歴五年の二四歳。
趣味はPCとスマホ、無料ゲームと実質無料のネット小説。
家とコンビニと近所のパトロールが日課。引きこもりといいつつ、太陽には当たる生活。
俺は狭い個室の中から広い異世界を想像して、妄想して、そしてスローライフを夢見ていた。
そのため色々な知識を読み漁ったり、よくあるマヨネーズの作り方を調べたり、ちょっとそういうことにハマっていた。
庭に生えている猫じゃらしを収穫しているところまでは記憶にあるがその後は思い出せない。
女神様と会い転生の話をした。俺は原因不明だけど死んだらしい。ユニークスキル「器用貧乏」を取得した。なんでもできるけど特に優れたことはできない、そんなスキルだった。
普通なら頭がおかしくなったと思うかもしれない。でもはっきりと思い出せた。
日本語もこの世界の言語、厳密にいうならこの地域の言語、マールラ語も分かる。
大丈夫。ちゃんと現在の主人格も残ってる。ただ過去の記憶が甦っただけだ。前の自分に乗っ取られたりもしていない。
「ちょっと、ブラン大丈夫?」
「う、うん……、まぁなんとか」
「ほんと? なんか変な顔してたけど、そんなに痛かった? 頭とか打ってない?」
「打ったけど大丈夫」
「大丈夫ならいいけど、しっかりしてよねっ、よしよし」
この子はドロシー、ザ・異世界での定番種族のエルフで俺と同じ十歳。
ドロシーは心配しながら俺の頭を撫でてくれる。
くすぐったいけど、ちょっぴりうれしい。
元の世界では女の子と触れ合う機会なんて一年にいち日すら無かった。
たんこぶはできていないようだ。
まだ小さいけど、顔はびっくりするほど可愛い。可憐な感じ。
このド田舎というか国の中で一番の辺境の村にいるのに純血のエルフの血は争えないらしい。
ドロシーは美少女で金髪碧眼。まだ十歳だから胸はぺったんこだ。将来に期待しよう。
髪は伸ばしてて肩よりちょっと長いくらいのストレートだ。
この村にはもう一人の女の子リズと合わせて三人だけの子供たち。
リズも同じくたぶん十歳ぐらい。背丈もドロシーと同じくらい。
明るい赤茶色の髪の毛を首にかかるかどうかぐらいまで伸ばしてる。
猫耳族なので、耳は頭の上に生えてて、あと長いしっぽも生えている。
丸顔で可愛い顔をしている。ひげとかωみたいに割れたりはしていない。
村に家は三軒。俺んちと、ドロシー親子と、おばばとリズの家だけしかない。
村というか「スモーレル地区」といい、いわゆる集落というやつだった。
今は、ドロシーの父ちゃんとうちの父ちゃんが農作業の合間に四軒目を建築中だった。
家が建ったら住民を募集するらしいよ。
開拓村であり、近くのちゃんとした村から半日の距離歩いた山の麓にある。
少し下れば川が流れていて、村の横には沢が流れている。井戸は無い。
あとは三世帯分の小さな傾斜面の畑があるだけだ。
「この石ころめ」
俺は何となく躓いた石を拾って眺めてみる。普通の石だ。
結局、何にするでもなく石は庭に転がしておいた。
家に帰って、父ちゃんと麦ワラを編んで袋にする内職をして待つ。
母ちゃん、ナターシャが部屋の隅で、薪を燃やしながら、スープを煮込んでいた。
「おーい、ご飯できたわよ」
「はーい」
畑は主に小麦で、他の野菜を申し訳ない程度に育てている。
だから俺んちは貧乏で、いつも小麦の薄焼きパンと野菜と肉の煮込んだ塩味のスープばっかり食べている。
美味しいといえば、それなりに美味しい。
肉は父ちゃんが山で仕留めてきたイノシシ肉を乾かしたものだ。
薄焼きパンは、いわゆる白パンよりも発酵が悪くて固いので、丸くするんじゃなくて薄くガレットみたいにして食べる。
ナン、トルティーヤみたいな感じといえばそんな感じでもあると思う。
異世界日本の記憶が甦った今、今までの生活とくに食生活は貧しかったんだ。
ずっとそうだったから、そんなものだと思ってた。
味も塩と肉と野菜の出汁ぐらいしかなかったけど、もっとおいしい料理がたくさんあるのを思い出してしまった。
こうなりゃ、自力で地球の知識を応用して、美味しい食生活をなんとしても、したい。
「ごちそうさま」
そうして、すぐに寝る時間になった。
布団を被って考える。
美味しい、ごはんが食べたい。
まずは記憶が戻ったのでスキルについて考える。
ユニークスキル「器用貧乏」。何ができるかと言うと、とりあえずアイテムボックスは使えることが分かった。
これは大きい。十歳児が背負ったり手に持てる荷物の量には限界がある。おそらく器用貧乏なので最大容量とかに制限があるのだろうけど、無いよりずっといい。
とりあえずは、当面はこのことは秘密にしようと思う。アイテムボックスというものがあるなんて、話題にすらなったことが無いのでレアだと思う。
基本属性魔法とかも使えそうな気配がある。
魔力感知、体に魔力があるのを感じる。今までは、ほとんど何も考えないで生きてきたようなものだったけど、前から魔力そのものは感じていた。ただ当たり前すぎて気にしていなかった。
魔力量もおそらく、多すぎず、少なすぎないそこそこの量だと思う。
ただ生活するだけでは、魔法はあまり使わないかもしれないけど、前途洋洋というところか。
こうして、俺の生活改善計画が発動するのだった。
村の中を走り回っていた帰り、石に躓いて転んで頭を打った。
「うおおお、いってええええ!!」
その瞬間、すべてを思い出した。
星の名前は地球、国は日本。高校卒業からの引きこもり歴五年の二四歳。
趣味はPCとスマホ、無料ゲームと実質無料のネット小説。
家とコンビニと近所のパトロールが日課。引きこもりといいつつ、太陽には当たる生活。
俺は狭い個室の中から広い異世界を想像して、妄想して、そしてスローライフを夢見ていた。
そのため色々な知識を読み漁ったり、よくあるマヨネーズの作り方を調べたり、ちょっとそういうことにハマっていた。
庭に生えている猫じゃらしを収穫しているところまでは記憶にあるがその後は思い出せない。
女神様と会い転生の話をした。俺は原因不明だけど死んだらしい。ユニークスキル「器用貧乏」を取得した。なんでもできるけど特に優れたことはできない、そんなスキルだった。
普通なら頭がおかしくなったと思うかもしれない。でもはっきりと思い出せた。
日本語もこの世界の言語、厳密にいうならこの地域の言語、マールラ語も分かる。
大丈夫。ちゃんと現在の主人格も残ってる。ただ過去の記憶が甦っただけだ。前の自分に乗っ取られたりもしていない。
「ちょっと、ブラン大丈夫?」
「う、うん……、まぁなんとか」
「ほんと? なんか変な顔してたけど、そんなに痛かった? 頭とか打ってない?」
「打ったけど大丈夫」
「大丈夫ならいいけど、しっかりしてよねっ、よしよし」
この子はドロシー、ザ・異世界での定番種族のエルフで俺と同じ十歳。
ドロシーは心配しながら俺の頭を撫でてくれる。
くすぐったいけど、ちょっぴりうれしい。
元の世界では女の子と触れ合う機会なんて一年にいち日すら無かった。
たんこぶはできていないようだ。
まだ小さいけど、顔はびっくりするほど可愛い。可憐な感じ。
このド田舎というか国の中で一番の辺境の村にいるのに純血のエルフの血は争えないらしい。
ドロシーは美少女で金髪碧眼。まだ十歳だから胸はぺったんこだ。将来に期待しよう。
髪は伸ばしてて肩よりちょっと長いくらいのストレートだ。
この村にはもう一人の女の子リズと合わせて三人だけの子供たち。
リズも同じくたぶん十歳ぐらい。背丈もドロシーと同じくらい。
明るい赤茶色の髪の毛を首にかかるかどうかぐらいまで伸ばしてる。
猫耳族なので、耳は頭の上に生えてて、あと長いしっぽも生えている。
丸顔で可愛い顔をしている。ひげとかωみたいに割れたりはしていない。
村に家は三軒。俺んちと、ドロシー親子と、おばばとリズの家だけしかない。
村というか「スモーレル地区」といい、いわゆる集落というやつだった。
今は、ドロシーの父ちゃんとうちの父ちゃんが農作業の合間に四軒目を建築中だった。
家が建ったら住民を募集するらしいよ。
開拓村であり、近くのちゃんとした村から半日の距離歩いた山の麓にある。
少し下れば川が流れていて、村の横には沢が流れている。井戸は無い。
あとは三世帯分の小さな傾斜面の畑があるだけだ。
「この石ころめ」
俺は何となく躓いた石を拾って眺めてみる。普通の石だ。
結局、何にするでもなく石は庭に転がしておいた。
家に帰って、父ちゃんと麦ワラを編んで袋にする内職をして待つ。
母ちゃん、ナターシャが部屋の隅で、薪を燃やしながら、スープを煮込んでいた。
「おーい、ご飯できたわよ」
「はーい」
畑は主に小麦で、他の野菜を申し訳ない程度に育てている。
だから俺んちは貧乏で、いつも小麦の薄焼きパンと野菜と肉の煮込んだ塩味のスープばっかり食べている。
美味しいといえば、それなりに美味しい。
肉は父ちゃんが山で仕留めてきたイノシシ肉を乾かしたものだ。
薄焼きパンは、いわゆる白パンよりも発酵が悪くて固いので、丸くするんじゃなくて薄くガレットみたいにして食べる。
ナン、トルティーヤみたいな感じといえばそんな感じでもあると思う。
異世界日本の記憶が甦った今、今までの生活とくに食生活は貧しかったんだ。
ずっとそうだったから、そんなものだと思ってた。
味も塩と肉と野菜の出汁ぐらいしかなかったけど、もっとおいしい料理がたくさんあるのを思い出してしまった。
こうなりゃ、自力で地球の知識を応用して、美味しい食生活をなんとしても、したい。
「ごちそうさま」
そうして、すぐに寝る時間になった。
布団を被って考える。
美味しい、ごはんが食べたい。
まずは記憶が戻ったのでスキルについて考える。
ユニークスキル「器用貧乏」。何ができるかと言うと、とりあえずアイテムボックスは使えることが分かった。
これは大きい。十歳児が背負ったり手に持てる荷物の量には限界がある。おそらく器用貧乏なので最大容量とかに制限があるのだろうけど、無いよりずっといい。
とりあえずは、当面はこのことは秘密にしようと思う。アイテムボックスというものがあるなんて、話題にすらなったことが無いのでレアだと思う。
基本属性魔法とかも使えそうな気配がある。
魔力感知、体に魔力があるのを感じる。今までは、ほとんど何も考えないで生きてきたようなものだったけど、前から魔力そのものは感じていた。ただ当たり前すぎて気にしていなかった。
魔力量もおそらく、多すぎず、少なすぎないそこそこの量だと思う。
ただ生活するだけでは、魔法はあまり使わないかもしれないけど、前途洋洋というところか。
こうして、俺の生活改善計画が発動するのだった。
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