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28. 物語
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メアリアの読み書きとみんなの復習は順調に進んだ。
もうメアリアも基本的な文字は読むことができる。書くこともほぼ問題ない。
これはこの言語のスペルがとても素直な仕様だからだ。
英語みたいに発音と文字が一定でない場合は難しいが、ひらがなに近い感じといえばいいだろうか。
ひらがなも実は細かいことはとても難しいんだけど、今は置いておく。
俺は薄い木の板を新しくして、文字を書く準備をした。
「ブラン、何してるの?」
ドロシーが質問してきた。
「ああ、これはね。物語を書こうと思って」
「え、なになに物語なの?」
「そそ、物語」
「ふうん、どんな話なの?」
「書いてからのお楽しみ」
「うん。分かったわ」
ということでみんなが見てる中、どんな話を書こうか考える。
この集落では物語をちゃんと読み聞かせてくれる人なんてのもあまりいない。
農村出身の若者が冒険者になり、手柄を立てて勇者になり、魔王を倒して、お姫様と結婚するっていう超ベタな話にした。
地球のそれも日本の昔話を書いても、あんまり共感されないだろうし。
文字の勉強はしたけど、文の勉強はほとんどしていないので、一生懸命にまずドロシーが読みだした。
「えっと、田舎の農村の出身だった男の子、ダリエルは……」
まだ読むのはたどたどしい。でも読めてはいる。
それを見ながら自分でも確認しているリズとメアリア。
こういうのを見ると、なんとも微笑ましい。小学校に戻ってきたような気分だな。
「せっかくだから人数分作るか」
リズとメアリアも家で復習とかできるように、人数分物語を書いていった。
内容は同じだ。ドロシーのものを横目で見て確認しつつ書いていく。
他の話も書くか。
勇者になったダリエルに、ドラゴン退治の仕事が舞い込んだ。ドラゴンと山で戦闘するも、もう少しのところで取り逃がしてしまう。
ドラゴンの情報を求め、町を歩いて回り領主たちのお悩みを解決して歩き、ついに、東の大森林での目撃情報を得る。
大森林でドラゴンと戦闘し、なんとか勝つが、ドラゴンは話の出来るやつで、友達になり、仲良くなって、終わりという話。
まあ創作にしてはよくできてると思う。
「ブラン、すごい、よくこんな話知って、ますね!」
メアリアが俺を見ていう。
「知ってるというか、今考えた」
「え、今考えたんですか。天才、ですね!!」
「そんなことないよ」
「ありますって」
「あはは」
何やらとても感激しているらしい。
なに、ラノベ類を読んで鍛えたファンタジー力をちょっと活用しただけだよ。と説明しても、わからないから誤魔化すほかない。
「もっと、もっとです。いっぱいお話読みたい、です」
「そ、そうか」
「はい!!!」
いつも引っ込み気味のメアリアがぐいぐい来てる。
「わかった。わかったから、何か思いついたら書くよ」
「お願いしますね」
「う、うん」
「メアリアは町出身だろ」
「そう、ですね」
「だから町でも色々な物語とか聞いたことない?」
「んー、あるといえばありますね」
「だろだろ、だから見聞きしたことや自分で考えた話を書いてほしいんだ」
「わ、私が、書くんですか?」
「そそ、メアリアが書くんだよ」
「は、はひぃ」
ちょっとおっかなびっくりだけど、メアリアも書く気になったようだ。
木の板を渡したら、何やら考え込んでいる。
しばらく見ていたら何やら書き始めた。お姫様と出入りの商人の話みたいだ。
主人公はお姫様だ。王家の一人娘みたいで、王様のお気に入り。そこに出入りの商人の見習いとして一緒に来ている若いイケメン青年がやってくる。
なるほど、なあ。異世界でも女の子はやっぱそういう話好きなんだな。ふんふん。
こうしてメアリア渾身の第一作目が完成した。
これ以降、メアリアは木の板に入る長さの物語をしばしば書いているらしい。
メアリアを同人作家沼に引き込んでしまったようだ。こりゃあ遅かれ早かれ、オタク街道をひた走りそうだな。
どんなオタクに成長して、俺に楽しい物語を読ませてくれるか、楽しみだ。
メアリアの書いたお姫様が主人公の話は、リズとドロシーが気に入って、自分で複製を作っていた。
簡単な話は、手書きコピーがしやすくていいよね。
「あ、そうだ。メアリアたち」
「なんですか?」
「複製で思い出したんだけど、ついでにその物語の木の板」
「この板がなんです?」
「たくさん複製書いて、ドドンゴに売ってみたら?」
「売るんですか? 私の話を?」
「そそ。文字の勉強用にも、本の代わりにもいいと思うんだ」
「なるほど、わかりました。メアリアにお任せを」
「お、おう、任せたよ」
「じゃあブランの勇者とドラゴンの話も複製しておきますね」
「あ、俺の話な、あ、ああ」
俺のはしなくていい恥ずかしいから。とは言えずに、あれが売れるのかという疑問はある。まあいいか。
メアリア先生は、マーリング辺境伯領では知る人ぞ知る同人木板物語の作者となるのだった。とかありそうだな。ふふん。
もうメアリアも基本的な文字は読むことができる。書くこともほぼ問題ない。
これはこの言語のスペルがとても素直な仕様だからだ。
英語みたいに発音と文字が一定でない場合は難しいが、ひらがなに近い感じといえばいいだろうか。
ひらがなも実は細かいことはとても難しいんだけど、今は置いておく。
俺は薄い木の板を新しくして、文字を書く準備をした。
「ブラン、何してるの?」
ドロシーが質問してきた。
「ああ、これはね。物語を書こうと思って」
「え、なになに物語なの?」
「そそ、物語」
「ふうん、どんな話なの?」
「書いてからのお楽しみ」
「うん。分かったわ」
ということでみんなが見てる中、どんな話を書こうか考える。
この集落では物語をちゃんと読み聞かせてくれる人なんてのもあまりいない。
農村出身の若者が冒険者になり、手柄を立てて勇者になり、魔王を倒して、お姫様と結婚するっていう超ベタな話にした。
地球のそれも日本の昔話を書いても、あんまり共感されないだろうし。
文字の勉強はしたけど、文の勉強はほとんどしていないので、一生懸命にまずドロシーが読みだした。
「えっと、田舎の農村の出身だった男の子、ダリエルは……」
まだ読むのはたどたどしい。でも読めてはいる。
それを見ながら自分でも確認しているリズとメアリア。
こういうのを見ると、なんとも微笑ましい。小学校に戻ってきたような気分だな。
「せっかくだから人数分作るか」
リズとメアリアも家で復習とかできるように、人数分物語を書いていった。
内容は同じだ。ドロシーのものを横目で見て確認しつつ書いていく。
他の話も書くか。
勇者になったダリエルに、ドラゴン退治の仕事が舞い込んだ。ドラゴンと山で戦闘するも、もう少しのところで取り逃がしてしまう。
ドラゴンの情報を求め、町を歩いて回り領主たちのお悩みを解決して歩き、ついに、東の大森林での目撃情報を得る。
大森林でドラゴンと戦闘し、なんとか勝つが、ドラゴンは話の出来るやつで、友達になり、仲良くなって、終わりという話。
まあ創作にしてはよくできてると思う。
「ブラン、すごい、よくこんな話知って、ますね!」
メアリアが俺を見ていう。
「知ってるというか、今考えた」
「え、今考えたんですか。天才、ですね!!」
「そんなことないよ」
「ありますって」
「あはは」
何やらとても感激しているらしい。
なに、ラノベ類を読んで鍛えたファンタジー力をちょっと活用しただけだよ。と説明しても、わからないから誤魔化すほかない。
「もっと、もっとです。いっぱいお話読みたい、です」
「そ、そうか」
「はい!!!」
いつも引っ込み気味のメアリアがぐいぐい来てる。
「わかった。わかったから、何か思いついたら書くよ」
「お願いしますね」
「う、うん」
「メアリアは町出身だろ」
「そう、ですね」
「だから町でも色々な物語とか聞いたことない?」
「んー、あるといえばありますね」
「だろだろ、だから見聞きしたことや自分で考えた話を書いてほしいんだ」
「わ、私が、書くんですか?」
「そそ、メアリアが書くんだよ」
「は、はひぃ」
ちょっとおっかなびっくりだけど、メアリアも書く気になったようだ。
木の板を渡したら、何やら考え込んでいる。
しばらく見ていたら何やら書き始めた。お姫様と出入りの商人の話みたいだ。
主人公はお姫様だ。王家の一人娘みたいで、王様のお気に入り。そこに出入りの商人の見習いとして一緒に来ている若いイケメン青年がやってくる。
なるほど、なあ。異世界でも女の子はやっぱそういう話好きなんだな。ふんふん。
こうしてメアリア渾身の第一作目が完成した。
これ以降、メアリアは木の板に入る長さの物語をしばしば書いているらしい。
メアリアを同人作家沼に引き込んでしまったようだ。こりゃあ遅かれ早かれ、オタク街道をひた走りそうだな。
どんなオタクに成長して、俺に楽しい物語を読ませてくれるか、楽しみだ。
メアリアの書いたお姫様が主人公の話は、リズとドロシーが気に入って、自分で複製を作っていた。
簡単な話は、手書きコピーがしやすくていいよね。
「あ、そうだ。メアリアたち」
「なんですか?」
「複製で思い出したんだけど、ついでにその物語の木の板」
「この板がなんです?」
「たくさん複製書いて、ドドンゴに売ってみたら?」
「売るんですか? 私の話を?」
「そそ。文字の勉強用にも、本の代わりにもいいと思うんだ」
「なるほど、わかりました。メアリアにお任せを」
「お、おう、任せたよ」
「じゃあブランの勇者とドラゴンの話も複製しておきますね」
「あ、俺の話な、あ、ああ」
俺のはしなくていい恥ずかしいから。とは言えずに、あれが売れるのかという疑問はある。まあいいか。
メアリア先生は、マーリング辺境伯領では知る人ぞ知る同人木板物語の作者となるのだった。とかありそうだな。ふふん。
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