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45. アンダーソン
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地区に戻ってきた俺たちは、数日平穏に過ごした。
どうやら前回の兵士交代からは二週間経ったらしい。
兵士の馬車がまたやって来た。
「やあひさしぶり」
「お。おま、アンダーソン騎士様」
「また来たよ。この任務は基本ローテーションなんだ」
「いや、歓迎するよ」
アンダーソン騎士だ。
長身、金髪碧眼。人間だけど、イケメンの三拍子揃ったって感じのお兄さんだ。
「びよーん」
しかし手にはヨーヨーを装備していた。ギャップがすごいな。
「ヨーヨーは家族にも好評だったよ。兵士たちはいまいちの反応だったけどな」
「あはは」
「んじゃ、引き継ぎしてくる」
「いってらっしゃい」
アンダーソンがヘルベルグと宿舎で話をしていた。
さすがに宿舎の中までは見ないので、よく分からない。
「あぁああ。ワシはコーヒーとはもうお別れだな。町でコーヒーショップなんて、どんな値段で飲まされるかわかったものではないし」
うちは適正価格だけど、高級品を扱う店は当然のように利益率も高いから、末端価格はかなり高価だ。
元値が高いものは、販売額も余計高い。
「すまないが、最後にもう一杯だけ」
「いいよ、アンダーソン騎士もどうですか?」
「ああ、じゃあいただこうかな」
「アンダーソン騎士からはお金を取らないのかね」
「いや、だって、こっちから誘うんだし、歓迎を兼ねてるから。普段から飲みたいっていうならもちろん取るよ」
「だろうな、まあいい」
「今回はヘルベルグ騎士もサービスさせてもらいます」
「話が分かるじゃないか坊主」
「へいへい」
俺の家でコーヒーを三つ出す。
ちなみにこのコーヒーはインスタントコーヒーみたいにして淹れて溶かすタイプらしく、コーヒーミルとかサイフォンとかなくても飲むことができるので大変便利だ。
ドドンゴから最近購入したティーポットを使ってコーヒーを淹れる。
「あ、そうだ。今日はヤギミルクがあるんだけど」
冷蔵庫様様だ。なんとか賞味期限以内っぽい状態のヤギミルクがあった。
「ああ、それじゃあミルクもいただくよ」
「私もミルク入りで頼むよ」
「はいよ」
こうしてみんなでミルク入りのコーヒーを飲む。
「実に、うまい」
「おいしいな」
「美味しいよな、うん」
コーヒーのうまさが分かる人に悪い人はいない。
そういえば最初悪口言ってたけど、あばばば。
「どうですか、ここの生活は」
アンダーソン騎士がヘルベルグ騎士に話しかける。
「最初はテントでどうなるかと思ったが、この家に泊めてもらってな。今は宿舎が完成したから快適だよ。領都のうるさい上官殿もいないから、精神的にも快適そのものだ」
「なるほど。それはよかったですね」
「ああ、戻らなければならないと胃がキリキリしてくるな」
「ご自愛ください」
とにかくこうしてヘルベルグのおっさんも戻っていった。
「それでブランダン君」
「なんでしょう、アンダーソン騎士。改まって」
「ヨーヨー他、そのリバーシ、コマとかどうだ。売り出さないかい、うちのコネを使って」
「ほほう、詳しく」
俺からは木琴も候補に加えてもらった。
俺が生産するのは最初の見本のみ。
町の暇そうな木工職人に仕事をさせる。アンダーソンはあのマーリング辺境伯と親交があるらしいので、権利は販売額の二割を俺がアンダーソン騎士が一割もらう、領内で有効な覚書を作ってもらう。
製造者は基本的には許可制だけど、新規業者を拒むことは基本的にはしない。ただし質が悪い悪徳業者は締め出すようにするらしい。
普通は特許制度とかないので、こういう利権は、上を説得できるかどうかにかかっている。
偉い人が決まりを決定したら、下々は従うほかない。封建制度だからできることでもある。
コネがないとできない。
「木板物語も、こっちの伝手で販売すればよかったな」
まあ木板物語は単価が安いという性質があるから、まあいっか。
しかも孫業者の海賊版が出てくるのは防ぎようがない。
領主の御旗のもと許可があるというのは、かなり大きい。
違反するということは、すなわち、領主に盾突くことに他ならない。
最悪の場合、違反者は打ち首とかになることもある。
「えへへ、儲かるかな」
「木琴はけっこう高め。コマとかはそれほど高く売れないだろうから、利益もおまけ程度だと思うが、ないよりはいいだろう。ついでだついで」
「ですよね」
「とりあえず、ここ二週間はここで下準備だけ。私用で馬を走らせるわけにはいかないけど、報告書のついでに送ることぐらいはできるから、辺境伯やうちの家族宛ての手紙は出しておくよ」
「助かります」
今度は猫じゃらし茶を出して、まったりする。
最近は気温もすっかり涼しくなったから、こういう温かいお茶は美味しい。
「本当にこの集落は不思議だな。貧困ど真ん中かと思って来てみれば、なかなか豊かな野菜、それにいつもある肉。さらにコーヒーに各種お茶と、嗜好品もあると」
「俺が趣味でやってるんです。でも人生懸けてますよ、これには」
「人生懸けてたか、さすがだな」
「まあ、それほどでも」
とにかくこうして、リバーシとかコマの権利の販売をすることになった。
どうやら前回の兵士交代からは二週間経ったらしい。
兵士の馬車がまたやって来た。
「やあひさしぶり」
「お。おま、アンダーソン騎士様」
「また来たよ。この任務は基本ローテーションなんだ」
「いや、歓迎するよ」
アンダーソン騎士だ。
長身、金髪碧眼。人間だけど、イケメンの三拍子揃ったって感じのお兄さんだ。
「びよーん」
しかし手にはヨーヨーを装備していた。ギャップがすごいな。
「ヨーヨーは家族にも好評だったよ。兵士たちはいまいちの反応だったけどな」
「あはは」
「んじゃ、引き継ぎしてくる」
「いってらっしゃい」
アンダーソンがヘルベルグと宿舎で話をしていた。
さすがに宿舎の中までは見ないので、よく分からない。
「あぁああ。ワシはコーヒーとはもうお別れだな。町でコーヒーショップなんて、どんな値段で飲まされるかわかったものではないし」
うちは適正価格だけど、高級品を扱う店は当然のように利益率も高いから、末端価格はかなり高価だ。
元値が高いものは、販売額も余計高い。
「すまないが、最後にもう一杯だけ」
「いいよ、アンダーソン騎士もどうですか?」
「ああ、じゃあいただこうかな」
「アンダーソン騎士からはお金を取らないのかね」
「いや、だって、こっちから誘うんだし、歓迎を兼ねてるから。普段から飲みたいっていうならもちろん取るよ」
「だろうな、まあいい」
「今回はヘルベルグ騎士もサービスさせてもらいます」
「話が分かるじゃないか坊主」
「へいへい」
俺の家でコーヒーを三つ出す。
ちなみにこのコーヒーはインスタントコーヒーみたいにして淹れて溶かすタイプらしく、コーヒーミルとかサイフォンとかなくても飲むことができるので大変便利だ。
ドドンゴから最近購入したティーポットを使ってコーヒーを淹れる。
「あ、そうだ。今日はヤギミルクがあるんだけど」
冷蔵庫様様だ。なんとか賞味期限以内っぽい状態のヤギミルクがあった。
「ああ、それじゃあミルクもいただくよ」
「私もミルク入りで頼むよ」
「はいよ」
こうしてみんなでミルク入りのコーヒーを飲む。
「実に、うまい」
「おいしいな」
「美味しいよな、うん」
コーヒーのうまさが分かる人に悪い人はいない。
そういえば最初悪口言ってたけど、あばばば。
「どうですか、ここの生活は」
アンダーソン騎士がヘルベルグ騎士に話しかける。
「最初はテントでどうなるかと思ったが、この家に泊めてもらってな。今は宿舎が完成したから快適だよ。領都のうるさい上官殿もいないから、精神的にも快適そのものだ」
「なるほど。それはよかったですね」
「ああ、戻らなければならないと胃がキリキリしてくるな」
「ご自愛ください」
とにかくこうしてヘルベルグのおっさんも戻っていった。
「それでブランダン君」
「なんでしょう、アンダーソン騎士。改まって」
「ヨーヨー他、そのリバーシ、コマとかどうだ。売り出さないかい、うちのコネを使って」
「ほほう、詳しく」
俺からは木琴も候補に加えてもらった。
俺が生産するのは最初の見本のみ。
町の暇そうな木工職人に仕事をさせる。アンダーソンはあのマーリング辺境伯と親交があるらしいので、権利は販売額の二割を俺がアンダーソン騎士が一割もらう、領内で有効な覚書を作ってもらう。
製造者は基本的には許可制だけど、新規業者を拒むことは基本的にはしない。ただし質が悪い悪徳業者は締め出すようにするらしい。
普通は特許制度とかないので、こういう利権は、上を説得できるかどうかにかかっている。
偉い人が決まりを決定したら、下々は従うほかない。封建制度だからできることでもある。
コネがないとできない。
「木板物語も、こっちの伝手で販売すればよかったな」
まあ木板物語は単価が安いという性質があるから、まあいっか。
しかも孫業者の海賊版が出てくるのは防ぎようがない。
領主の御旗のもと許可があるというのは、かなり大きい。
違反するということは、すなわち、領主に盾突くことに他ならない。
最悪の場合、違反者は打ち首とかになることもある。
「えへへ、儲かるかな」
「木琴はけっこう高め。コマとかはそれほど高く売れないだろうから、利益もおまけ程度だと思うが、ないよりはいいだろう。ついでだついで」
「ですよね」
「とりあえず、ここ二週間はここで下準備だけ。私用で馬を走らせるわけにはいかないけど、報告書のついでに送ることぐらいはできるから、辺境伯やうちの家族宛ての手紙は出しておくよ」
「助かります」
今度は猫じゃらし茶を出して、まったりする。
最近は気温もすっかり涼しくなったから、こういう温かいお茶は美味しい。
「本当にこの集落は不思議だな。貧困ど真ん中かと思って来てみれば、なかなか豊かな野菜、それにいつもある肉。さらにコーヒーに各種お茶と、嗜好品もあると」
「俺が趣味でやってるんです。でも人生懸けてますよ、これには」
「人生懸けてたか、さすがだな」
「まあ、それほどでも」
とにかくこうして、リバーシとかコマの権利の販売をすることになった。
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