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51. 美少女天使合唱団
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翌日朝。
今日も緊張して、はっきりわかる豪華な食事をとった。
やはり全員に召集が掛かっていた。
あの辺境伯はフットワークが軽いから、こういうことがあると喜んで飛びついてくるタイプだ。
朝から高級そうな馬車が迎えに来ていた。
「すごい、この馬車、真っ黒!!」
「すごーい」
「すごい、ですね。そんなにはしゃがないでくださいな」
ドロシーは興奮気味、リズはもう頭が回っていないで本能で答えている。
メアリアはちょっとそれを見て引いている。
一人でも冷静なのがいると心強い、俺から見て。
「あはは、みんな緊張しすぎだよ」
アンダーソンはどこ吹く風だ。
なかなか大物だな、アンダーソン騎士。
俺たちはちゃんと荷物も持ってきている。
馬車はすぐに平城に通されて、中に入っていく。
「わあ、すごい広いおうちだね」
ああ、ドロシーはエンジン全開だな。
お城というか屋敷の入り口前に止まって、扉を開けてくれる執事さんみたいな人がいる。
それを見たとたん、ドロシーがひゅっっと静かになった。
どうやら緊張してしまったらしい。うるさいよりはいいかもしれない。頑張れ。
静かに列になって、正面玄関、うん、こっちは初めて通る。
前回は御用商人の裏門みたいなほうだった。
屋敷に入ると、執事とメイドさん軍団が一斉に礼をしてくる。
すごいなこれ。
メイドさんの列とか前世の俺からしたら感動ものだけど、この緊張感は勘弁願いたい部類のものだ。
やっぱり前も見たけど、メイドさんはいいな。うん。
俺も成長したドロシー、リズ、メアリアをこのメイド服に着替えさせて、一国一城プレイとかしてみたいな。
あ、なんか半分実現しそうな気がして来たら、ちょっと寒気が。
いや、夢は夢だから、いいんだな。ああ、本当に実現したら引くかもしれない。
彼女たちが「ブランダン様」とかないな。いつも「ねえ、ブラン、ブラン」とかフランクに言ってる姿しか想像できないし。
かしずかせたら、なんか悪い気がする。
俺もわりと、尻に敷かれるタイプになりそうだ。なむなむ。
適当に考えていたら、いつの間にか、報告会場入りしていた。
隅にはアンダーソン隊の隊員たちも並んでいる。
ドドンゴの応接室と全然違うじゃん。どう見てもこれ謁見室だろう。
いやあ騎士様ともなれば、形式が面倒だな。
「格式ばったことはいい、報告を頼む」
「はい」
アンダーソン騎士が任務のほうの報告をする。
「そっちはわかった。本題のほうを」
「はい、新しい遊具をお持ちしました。こちらの販売権の設定をお願いしたく」
「内容は手紙で聞いている。実物を頼む」
「はっ」
俺たちが反応してリュックからコマ、リバーシ、ヨーヨーを取り出した。
そして木琴も並べる。
アンダーソンがうれしそうに、それらを実践して教えていく。
木琴の番になった。
「まずは木琴だけで演奏してみます」
今や俺よりうまいので、リズにお願いする。
「ほほう、なかなかいい音がするな。このような楽器は見たことがないな」
へえ、領主でもみたことないのか。これはいけそうだ。
「次は美少女天使合唱団の歌と演奏を披露します」
「ちょ」
ちょっと待ったと言いそうになったが口をつぐむ。
もう言っちゃったから、取り消すわけにもいかない。
こうなりゃやけだ。というかファンタジー世界で安易に天使とか名づけるんじゃなかった。
実在した場合、ヤバいことになる。
「ではブランダン頼みます」
アンダーソンに丸投げされた。
この木琴は地面に置いていると座って演奏するしかない。
そして歌は立って歌うほうがいいので、リズは今回伴奏はしない。
「ららららら~♪」
俺が前奏から入って、いつも通りのセットリストの曲順で弾き始めるとみんなも歌いだす。
よかった。真剣な顔になって、でも普通に歌えている。
声が震えちゃうとかだったら目も当てられない。
こういうときの三人の集中力はちょっとうらやましい。
こうして俺が教えた曲は全曲、それからリズが考えた曲が二曲だ。
そして曲自体は一緒だけど最後に輪唱の曲を一曲、披露した。
「美少女天使合唱団とな、確かに」
領主様はいたくご機嫌で、ほめてくださった。
「では、次はアレだな」
領主様はもったいぶって言った。
「報告があった兵士たちの歌も聴こう」
本当にやるんですね。知らないですよ。
こうして兵士たちも横で一緒に歌うことが確定した。
兵士たち含めてみんなで歌う。
アンダーソンはイケメンな上に声もいい。すごいやつだよ。
もしかしたら兵士は戦場で命令とかするから、大きな声が出ないとだめなのか。
こうして男女混合合唱が歌われるのだった。
「さて、楽しかったな。では次はそのあれだ。エルフの少女の件、ぜひ見てみたい」
やっぱりきたか。
今日も緊張して、はっきりわかる豪華な食事をとった。
やはり全員に召集が掛かっていた。
あの辺境伯はフットワークが軽いから、こういうことがあると喜んで飛びついてくるタイプだ。
朝から高級そうな馬車が迎えに来ていた。
「すごい、この馬車、真っ黒!!」
「すごーい」
「すごい、ですね。そんなにはしゃがないでくださいな」
ドロシーは興奮気味、リズはもう頭が回っていないで本能で答えている。
メアリアはちょっとそれを見て引いている。
一人でも冷静なのがいると心強い、俺から見て。
「あはは、みんな緊張しすぎだよ」
アンダーソンはどこ吹く風だ。
なかなか大物だな、アンダーソン騎士。
俺たちはちゃんと荷物も持ってきている。
馬車はすぐに平城に通されて、中に入っていく。
「わあ、すごい広いおうちだね」
ああ、ドロシーはエンジン全開だな。
お城というか屋敷の入り口前に止まって、扉を開けてくれる執事さんみたいな人がいる。
それを見たとたん、ドロシーがひゅっっと静かになった。
どうやら緊張してしまったらしい。うるさいよりはいいかもしれない。頑張れ。
静かに列になって、正面玄関、うん、こっちは初めて通る。
前回は御用商人の裏門みたいなほうだった。
屋敷に入ると、執事とメイドさん軍団が一斉に礼をしてくる。
すごいなこれ。
メイドさんの列とか前世の俺からしたら感動ものだけど、この緊張感は勘弁願いたい部類のものだ。
やっぱり前も見たけど、メイドさんはいいな。うん。
俺も成長したドロシー、リズ、メアリアをこのメイド服に着替えさせて、一国一城プレイとかしてみたいな。
あ、なんか半分実現しそうな気がして来たら、ちょっと寒気が。
いや、夢は夢だから、いいんだな。ああ、本当に実現したら引くかもしれない。
彼女たちが「ブランダン様」とかないな。いつも「ねえ、ブラン、ブラン」とかフランクに言ってる姿しか想像できないし。
かしずかせたら、なんか悪い気がする。
俺もわりと、尻に敷かれるタイプになりそうだ。なむなむ。
適当に考えていたら、いつの間にか、報告会場入りしていた。
隅にはアンダーソン隊の隊員たちも並んでいる。
ドドンゴの応接室と全然違うじゃん。どう見てもこれ謁見室だろう。
いやあ騎士様ともなれば、形式が面倒だな。
「格式ばったことはいい、報告を頼む」
「はい」
アンダーソン騎士が任務のほうの報告をする。
「そっちはわかった。本題のほうを」
「はい、新しい遊具をお持ちしました。こちらの販売権の設定をお願いしたく」
「内容は手紙で聞いている。実物を頼む」
「はっ」
俺たちが反応してリュックからコマ、リバーシ、ヨーヨーを取り出した。
そして木琴も並べる。
アンダーソンがうれしそうに、それらを実践して教えていく。
木琴の番になった。
「まずは木琴だけで演奏してみます」
今や俺よりうまいので、リズにお願いする。
「ほほう、なかなかいい音がするな。このような楽器は見たことがないな」
へえ、領主でもみたことないのか。これはいけそうだ。
「次は美少女天使合唱団の歌と演奏を披露します」
「ちょ」
ちょっと待ったと言いそうになったが口をつぐむ。
もう言っちゃったから、取り消すわけにもいかない。
こうなりゃやけだ。というかファンタジー世界で安易に天使とか名づけるんじゃなかった。
実在した場合、ヤバいことになる。
「ではブランダン頼みます」
アンダーソンに丸投げされた。
この木琴は地面に置いていると座って演奏するしかない。
そして歌は立って歌うほうがいいので、リズは今回伴奏はしない。
「ららららら~♪」
俺が前奏から入って、いつも通りのセットリストの曲順で弾き始めるとみんなも歌いだす。
よかった。真剣な顔になって、でも普通に歌えている。
声が震えちゃうとかだったら目も当てられない。
こういうときの三人の集中力はちょっとうらやましい。
こうして俺が教えた曲は全曲、それからリズが考えた曲が二曲だ。
そして曲自体は一緒だけど最後に輪唱の曲を一曲、披露した。
「美少女天使合唱団とな、確かに」
領主様はいたくご機嫌で、ほめてくださった。
「では、次はアレだな」
領主様はもったいぶって言った。
「報告があった兵士たちの歌も聴こう」
本当にやるんですね。知らないですよ。
こうして兵士たちも横で一緒に歌うことが確定した。
兵士たち含めてみんなで歌う。
アンダーソンはイケメンな上に声もいい。すごいやつだよ。
もしかしたら兵士は戦場で命令とかするから、大きな声が出ないとだめなのか。
こうして男女混合合唱が歌われるのだった。
「さて、楽しかったな。では次はそのあれだ。エルフの少女の件、ぜひ見てみたい」
やっぱりきたか。
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