異世界辺境村スモーレルでスローライフ

滝川 海老郎

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66. 小麦団子

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 ちょっと思いついた。小麦でお団子を作ろう。
 といっても普通に小麦団子を作って食べるだけではない。

「こうやって、こうして、こうだ」
「何やってるのブラン?」
「これ、小麦団子の下準備」
「ふぅん」

 ドロシーも興味津々で見てくる。
 リズ、メアリアそれからジェシカも飛んでくる。

 小麦粉に水を入れこねる。ちょうどいい硬さになったら四センチくらいの大きさに丸めて並べていく。
 できるだけ多く作ってみる。

「はい、今日の作業は終わり」
「楽しみにゃ」

 リズが舌なめずりをした。
 一晩置いて水分を飛ばす。

 翌日の朝。

「どれどれ、一個焼いてみるか」
「これを焼くんですか?」
「うん」

 ジェシカが質問してくる。
 火で炙って小麦餅を焼いていく。香辛料などを混ぜたものを塗ると途端にいい匂いが部屋中を包み込んだ。

「いい匂いです」
「だろ」

 ドロシー、リズ、メアリアも集まってきていた。
 小麦団子をほどよく乾燥させることで、あとは焼くだけで食べられる簡易食料になるのだ。
 保存食だね。目安は二週間くらいだろうか。

「どんどん焼いちゃおう」

 ただ今回は試作品だから、家を建てている人や警備で来ている人にも持っていく。

「うまいなこれ」
「もちもちしてて美味しい」

 さっきから順番を待っていた四人娘にも食べさせる。

「ブラン、これ美味しい」
「美味しいにゃ」
「美味しいです」
「美味しいな、僕も好きだ」

 みなさんにも好評いただいたようでなによりだ。
 もちもちの食感、ほんのり甘い小麦、外はパリッとしている。
 甘辛いタレもなかなか美味しい。
 それから表面が少し焦げて、香ばしい。

 なんでこれを思いついたかというと、よく街では「肉串の屋台」があるのが定番だと思う。
 そういう屋台みたいなお店を最近人通りも増えつつあるし、この辺境でもやってみようと思ったのだ。
 日持ちするけれど焼くだけですぐに用意できるものが何かないかと考えたわけ。

「えいしょ、えいしょ」
「何やってるにゃ?」
「え、これ? のぼりだよ」
「旗にゃね?」
「うん」

 幟には「焼き団子あります」と書かれている。
 これを昼間、家の前に出しておけば、うちに泊まらないでそのまま通過する人にも目に留まると思うんだ。
 最後に布を木の棒に吊るして完成。

「これでよし」

 これでうちも立派なお団子屋だ。
 さながら峠の茶屋だな。うん。というかまんまそうだったわ。

「また作らなきゃ」
「手伝うよ」
「手伝うにゃ」
「手伝います」

 三人娘が手伝ってくれるらしい。

「それじゃよろしく」

 こうしてみんなで小麦粉をこねて団子にしていく。

「こねこね~」
「こねこねこねこ~」

 鼻歌なんて歌って上機嫌で作業を進める。
 うん。そこそこ売れるとして二週間分が完成した。
 全員が毎日三食この団子を食べたら足りないけど、たまに売りに出すならこれくらいでなんとか足りるだろう。
 足りなかったらまた小麦粉をこねればいいしね。

 これが家の建設の作業員と兵士さんたちに人気になった。
 みんなお昼はこれで済ますようになったのだ。
 手で持てるし、簡単に食べられる。なにより美味しい。

 うちでは毎日お昼に人数分焼くのにけっこう忙しい。

 こうして峠の茶屋の営業は思ったより順調に進んだ。

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