ダンジョン配信のTS美少女リオンの冒険者生活 〜女の子になっちゃったから、配信してみる。ついでにダンジョンで最強目指しちゃうもんね〜

滝川 海老郎

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第11話 静岡ダンジョン祭り、メイン会場

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 静岡市街地の広場は「静岡ダンジョン祭り」の熱気で沸き立っていた。
 色とりどりのテントが並び、トカゲ丼の香ばしい匂いやヒカゲタケのスープを試食する市民の笑い声が響く。
 冒険者ギルドのブースでは、魔鉄のナイフやマジック・バッグが展示され、子供たちが目を輝かせて眺めている。
 広場には大型のスクリーンが設置され、ここからダンジョン内の配信を中継していた。
 それを並べられたテーブルと椅子でご飯を食べながらお客さんたちが大勢見ている。

 僕たちは最初に本部テントの偉いさんたちに挨拶に行った。
 その後、マジシャンズ・ハンドのブースでマジック・バッグのお礼を言って、ブース内を見て回る。

「これ、アダマンタイトの軽鎧」
「ああ、斎木さんのに似てる」
「そうですね。斎木さんのはひとつ前のモデルですね。この肩の部分が少し異なっていて、今のほうが動きやすい形になっています」
「なるほど」
「それから斎木さんは大きいですから、あれも一点ものでして」
「だよね」

 斎木さんの軽鎧もマジシャンズ・ハンド製だったらしい。
 しばらく防具談義をして楽しんだ。

 メイン会場の大型スクリーンでは、午前中の配信はデモンストレーションらしく、今はシルバー級冒険者『ルミナス』が地下五階でモンスターをギッタギタにしている映像が流れていた。
 ルミナスはなるべく血が飛び散ったりするのを防ぐ、非常に上手い戦い方をしていて、一般視聴者に配慮していた。
 僕たちはもっと首をはねたりすることもあるので、もっと血が飛び散ったりすることがあった。
 ルミナスの強さは圧倒的で、これなら余裕でモンスターを狩れるだろう。

「ルミナス強いね、お兄ちゃん」
「うん。やっぱりシルバー級は違うや」
「そうですね」

 斎木さんもシルバー級だったのだから、同じくらい強かったのだろう。
 それは僕たちよりも格上で、尊敬に値する。

「これおいしい!」
「うん」
「もぐもぐ」

 今食べているのはトカゲの串焼きで、次々焼いては、一般客にも振舞われていた。
 一本百円という激安価格である。
 塩コショウ味でいわゆる焼き鳥風だった。
 焼き鳥は白っぽいが、これは牛肉に近い風味で、そういう意味ではむしろ牛肉の肉串に近いかもしれない。
 よくサービスエリアの露店で売っている例のアレだ。

 僕はトカゲの串焼きを手に、祭りの喧騒の中でふと斎木直樹のことを思い出した。
 串焼きの香ばしい匂いが、かつて斎木さんと一緒に食べたダンジョン村のトカゲ丼の記憶を呼び起こした。
 あの時、斎木さんはいつもの怖い顔で、でもどこか優しい目で、僕にこう言ったっけ。

「リオン、冒険者は腹が減ってちゃ戦えねえ。しっかり食っとけよ」

 斎木直樹の過去は、ミリアから少しずつ聞いていた。
 斎木家は元々、静岡市郊外で小さな町工場を営んでいた。精密機械の部品を作り、地元の企業と細々と取引を続ける家族経営の工場だった。
 しかし、ダンジョンが現れてからの経済の激変で、魔道具や魔法金属を使った新技術が台頭。古い機械では太刀打ちできず、斎木さんの両親は工場の廃業を余儀なくされた。借金だけが残り、家族は貧困に喘いだ。
 当時、直樹は二十歳そこそこ。まだ冒険者としては駆け出しだったが、妹のミリアを養うため、そして両親の負担を少しでも減らすため、彼はダンジョンに潜ることを決意した。
 冒険者ギルドの講習を終え、ブロンズ級の免許を取得した直樹は、誰とも組まず、単独で日本平ダンジョンの上層階を回り始めた。ソロでの探索は危険で非効率だと誰もが言う中、直樹は「仲間を待ってる時間があったら、魔石一つでも多く稼ぐ」と言い切った。

「兄は、よく無茶してたんですよ」

 ミリアが串焼きを手に、ぽつりと呟いた。

「家に帰ると、いつも鎧に新しい傷が増えてて。母さんが『危ないからやめなさい』って泣いても、兄は『ミリアの学費くらい、俺が稼ぐ』って笑ってました」

 僕は黙ってミリアの話を聞く。
 鎧は多くの人はギルドのロッカーに置きっぱなしだが、直樹はメンテナンスのために頻繁に持ち帰っていたそうだ。
 直樹の無茶は、冒険者仲間の中でも語り草だった。
 ある時は、ブラック・マウスの群れに囲まれながらも、魔石を一つ残らず回収して帰還。別の日には、ハイシープの群れに突っ込んで、たった一人で十匹以上を仕留めたこともあった。
 ブロンズ級の装備で、シルバー級のモンスターに挑むことも珍しくなかった。ギルドの受付嬢、山田マリコが「あんた、命がいくつあっても足りないよ!」と叱ったことも一度や二度じゃなかったらしい。

「斎木さん、なんでそこまで……」

 僕が呟くと、ミリアは串焼きを握りしめて答えた。

「兄、家族のことしか考えてなかったんです。父さんが工場を失ってから、ずっと落ち込んでて。母さんも体が弱くて働けなかった。私の学費、教科書、制服……全部、兄がダンジョンで稼いだお金で賄ってた。『ミリアにはちゃんとした教育を受けさせたい』って、いつも言ってました」

 マナミが目を丸くして聞いている。

「ミリアちゃんのお兄さん、めっちゃカッコいいね……でも、危なすぎるよ!」
「うん、危なかった」

 ミリアの声が少し震える。

「でも、兄は『冒険者は自分の命を賭けて、誰かを守る仕事だ』って信じてた。だから、ソロでも平気だって。仲間がいれば楽かもしれないけど、仲間を危険に晒すくらいなら、一人で戦うって……」

 僕は串焼きを口に運びながら、胸が締め付けられる思いだった。
 斎木さんがソロにこだわった理由。それはただの頑固さじゃなかった。
 家族を背負い、誰にも頼らず、自分の力だけで道を切り開こうとした男の覚悟だった。
 あの怖い顔の下には、妹や家族への深い愛があったんだ。

「そういえば、斎木さん、僕に一度だけ言ったことあったな」

 僕が思い出したように口を開く。

「『リオン、お前は仲間を大事にしろ。俺みたいに一人で突っ走ると、いつか後悔するぞ』って。あの時、なんか目が遠くを見てた気がする」

 ミリアが小さく頷く。

「兄は、きっと自分の選択に迷いもあったんだと思います。でも、引き返せなかった。家族のために、ダンジョンに潜り続けるしかなかったんです」

 祭りの喧騒の中、ルミナスの配信映像がスクリーンで流れ続ける。キングオーガを一閃で倒す小野田さんの姿に、観客が沸く。増田さんの魔法が派手にモンスターを焼いた。海野さんが珍しい金色に光るアダマンタイト・ダガーを一閃した。再び歓声が上がる。
 僕は思う。斎木さんも、こんな風に誰かを守るために戦ってたんだ。自分を犠牲にしてまで。

「ミリアちゃん、斎木さんの分まで、僕たちで冒険続けよう。で、斎木さんが守りたかったものを、ちゃんと見せてやるよ」
「はい、リオンさん。兄の誇り、私も継ぎます」

 ミリアが微笑む。
 マナミが串焼きを掲げて叫ぶ。

「よーし、私たちで、トーナメントで優勝して、斎木さんに見せつけるよ!」

 三人で笑い合い、串焼きを高く掲げる。祭りの青空は清々しく、斎木直樹の記憶は、僕たちの絆の中に確かに息づいていた。

 午後からは僕たちブロンズ級によるトーナメント戦があった。
 間に合うように、そうそうに切り上げ、日本平ダンジョン行きのバスにみんなで乗り込む。

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