異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ

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「デカい腹の音だな。ヒーラギは腹減ってるのか? ……そうだよな魔力ずっと使いながらでここまで来て、俺の傷も癒したしな。よし、俺が美味いものを作ってやる」

 ブランは自分の鞄を漁り、小さなテーブル、折りたたみの椅子、ナイフ、まな板、鍋、フライパン、調味料を次々と出した。

 テーブルと椅子をセットして、まな板とナイフを置き。火を起こさないとな、ブランは近辺に落ちている落ち葉や木の枝を集め始めた。

 一連の無駄のない動作にヒーラギは、ボーッと見ていたけどある事に気付く。

 ――ブランの鞄、私の鞄よりも小さくない。

 それなのに容量が明らかにちがう、道具があのカバンから出たわ。

「ねえブラン。その小さなカバンから次々ものが出てくるの? 私を見てよ!」

 と言ったのは。ヒーラギのいまの格好は片手にアタッシュケース、肩にパンパンな鞄をかけていたからだ。

「大荷物だな、ヒーラギ。これはマジックバッグと言って、なんでも収納できる魔法の鞄さ、いいだろう」

「魔法のカバン! そのマジックバッグって本で読んだことがあるわ。なんでもカバンに収納できて、食材も腐らないって書いてあったわ、それはほんとうなの?」

「お、よく知ってるな。正解、ヒーラギのパンパンなカバンの中身は何入ってんだ?」

 ブランに聞かれたヒーラギは"見てみなさい!"とアタッシュケースを開けた。その中身を見たブランは瞳を大きくする。

「はぁ? なんだ! その何種類ものパンばかりが入ったアタッシュケースは? そっちのカバンの中身はなんだ?」

「こっちは道中で、傷を癒した村でいただいた食べ物です」

「そっちも食いもんか? お前、着替えは? 雨具は? 護身用のナイフくらい持っていないのか?」

「ナイフ? あ、あとは薬草の本と魔法の本がニ冊と、書き溜めたメモ帳が入っています」

 ほんとうか? と、ブランの目が点になった。ヒーラギは今日中に別荘に着けば、昔着ていた服などが、別宅に置いてあるから必要ないと思っていた。

「ぷっ、はははっ! おもしれ聖女だな」

「だって、ブランに会わなかったら、国境近くの別宅に行くだけだから必要がないわ」

 作業の手を止め、ツカツカと近寄ってきたブランに、人差し指でおでこをツンツンと押された。

「な、なに?」

「ヒーラギには護衛がいないんだぞ、自分の身を守る護身用ナイフくらいは持っておけ、何かあってからでは遅いんだぞ!」

「それは大丈夫。私はそんな輩に効く、目眩しの魔法を知っています!」

「目眩し?」

 ブランに見てくださいと"ライト!"と、自信満々に魔法を唱えたのだが、ますますブランの表情が曇る。本に光の魔法だと書いてあったし、魔力が少なくても使えそうだったから覚えたのだけど……。

 呆れた顔と、ポリポリ頬をかくブラン。

「それは明かりのないダンジョンとか、夜に使う光源の魔法だ。見てみろ、ヒーラギの前に丸い灯りの玉しかでねぇだろ?」

 ブランの言う通り、ヒーラギの目の前には丸い光の玉が、プカプカ浮かんでいるだけだった。

「え、ああ……ほんどうだ」

「クックク……ヒーラギはいままで祈りとか癒しかして来なかったんだろ? しかたねぇ、国に行く道中で俺が魔法を教えてやる、その前に腹ごしらえだな……俺の食材は少ないなヒーラギ、そのパンパンなカバンの中身見せて」

「はい」

 ブランにカバンを渡すと中を漁り目を輝かせた。それは村の酪農のおっちゃんに貰った牛肉の塊だ。

「これは人間の国にしかない牛から取れる牛肉だ! 浄化とかハーブに漬けないと食べられない魔物の肉と違って、癖ながなくて油が乗っていて美味いんだろ?」

「……え、」

 そんなキラキラな目で聞かれても、昔に食べた記憶しかない私にはわからない。

「……多分、美味しかったかな?」

「はぁ? ヒーラギは牛肉の味を忘れたのか? いつもなに食ってたんだ?」

「パンとスープと野菜。誕生日の日にパンケーキでした」

 ブランの瞳が鋭く座る。

「パンとスープ、野菜だけなんて……俺たちよりもひでぇ食事だな。だからそんなに体の線が細いのか……待ってろ、いま作ってやる」

 ブランは牛肉を使い調理を始めた。
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