21 / 30
二十一
しおりを挟む
「自分自身が助かる為に母さんを人間に渡した親父も、義母上、弟達もみんな無能すぎる……その行いの悪さで、人を傷付けて友のシアを怒らすんだ」
シア? 弟?
「ブランから聞いた話だと、兄弟はお兄様達ではないの?」
私を見るブランの瞳が悲しんでいた。
「ブラン、興奮すぎ。全部、嫁にしゃべるよ」
「ロン師匠、俺は嘘が嫌いだ、ずっと胸が痛い。……ヒーラギ俺は嘘をついていた、ごめんな、母さんの力を受け継ぎ、強力な聖女となったヒーラギが人間の国にいては、俺達の計画が台無しになる……」
ブランのお母さんの力?
私が強力な聖女?
計画が台無し?
「話がよくわからないわ、私の力が必要で城に連れて行くんじゃなかったの? それに私の力が強力なのも……」
「昨夜、まだ眠っていないヒーラギに城に連れて行くと、俺は嘘を言った。本当は人の国で聖女ヒーラギが守る結界は魔王ですら破壊できなかった。だから当初の計画の内容を変えたんだ、魔王に頼んでアリカを召喚してもらった……王子はヒーラギを嫌っているし、新しい聖女が現れれば、王子は必ずヒーラギを国から追い出すと思った」
苦しそうに語るブランの後に、ロンが話してくれた。
「アリカにどうして呼んだかを説明して、聖女役を頼んだんだ……彼女は楽しそうにやると言ってくれたんだ。それでね、自分が危ない目に遭いそうになったら、部屋から出るなと言ってある」
二人の話に私の頭は混乱した。
待って、魔王がアリカを召喚した? 彼女が来たのは異世界とか言っていた。魔王は次元を曲げて他所の国から自分達の計画のためにあの子を呼び寄せた……。
私が聞いたブランの話は嘘……信じていたものが覆って悲しい。
「何がなんだか訳がわからない、ブランは何をしようとしているの?」
「いいんだ、ヒーラギはわからなくていい……魔王、竜人、俺達の思惑は一致してる。お互いに願うことがあるから手を組んでいる」
思惑?
「ニュ」
「十年か……もっとかな、長い計画だったね」
スラとロンも。
「ちょっと待って、人の国に魔王軍が攻めてきているのでしょう? 私は王族はどうなってもいいけど、国に住む国民はどうなるの?」
「それについては大丈夫だ。魔王は国民には手を出さない、そういう約束だ。誰も争いなんて求めちゃいないんだ。だけど……人を傷付けると倍になって返ってくることを、アイツらに叩き込んでやりたい。母さんを物のように扱った人間は許せない……そして、俺が愛するヒーラギまで、物のように扱っていたなんて許せるかよ!」
ブランの瞳に怒りの炎が見えた。
+
私の力はあの日、急に芽生えたものではなかった。ブランのお母さんの力が私に移ったらしい。その力でブランの怪我を治して私が聖女となり、その力は魔王すら跳ね返す物だった。
ブランとロンの話からして。
魔王には魔王の野望がある、新しく話に出てきた竜人は黒狼族に恨みがある。ブランはお母さんの事で、人間と自分の家族を恨んでいる。
「ブラン、お母さんの力がどうして、私に移ったのか理由は知っているの?」
「それはわからないんだ、ヒーラギと出会う五年にロンとスラで母さんを王城から助け出した。ヒーラギの祖父母の屋敷に精神と体がボロボロな母さんは匿われていた……あの日、俺が魔物を連れて怪我をして、死にそうになった俺を助けたいと願った、お母さんとヒーラギ、二人の心が重なったんだとロンは言う……実際にはわからない。母さんの力はなくなりヒーラギに移ったんだ」
「じゃ、ブランのお母さんは?」
「元気にしてるよ……村で優しい伴侶ができて幸せに暮らしているよ……あの日、俺のせいでヒーラギは聖女となり八年もの間あんな場所で、一人でごめんな、辛かったろ」
ブランは真っ赤な目をして、自分の唇をギリッと噛んだ。
シア? 弟?
「ブランから聞いた話だと、兄弟はお兄様達ではないの?」
私を見るブランの瞳が悲しんでいた。
「ブラン、興奮すぎ。全部、嫁にしゃべるよ」
「ロン師匠、俺は嘘が嫌いだ、ずっと胸が痛い。……ヒーラギ俺は嘘をついていた、ごめんな、母さんの力を受け継ぎ、強力な聖女となったヒーラギが人間の国にいては、俺達の計画が台無しになる……」
ブランのお母さんの力?
私が強力な聖女?
計画が台無し?
「話がよくわからないわ、私の力が必要で城に連れて行くんじゃなかったの? それに私の力が強力なのも……」
「昨夜、まだ眠っていないヒーラギに城に連れて行くと、俺は嘘を言った。本当は人の国で聖女ヒーラギが守る結界は魔王ですら破壊できなかった。だから当初の計画の内容を変えたんだ、魔王に頼んでアリカを召喚してもらった……王子はヒーラギを嫌っているし、新しい聖女が現れれば、王子は必ずヒーラギを国から追い出すと思った」
苦しそうに語るブランの後に、ロンが話してくれた。
「アリカにどうして呼んだかを説明して、聖女役を頼んだんだ……彼女は楽しそうにやると言ってくれたんだ。それでね、自分が危ない目に遭いそうになったら、部屋から出るなと言ってある」
二人の話に私の頭は混乱した。
待って、魔王がアリカを召喚した? 彼女が来たのは異世界とか言っていた。魔王は次元を曲げて他所の国から自分達の計画のためにあの子を呼び寄せた……。
私が聞いたブランの話は嘘……信じていたものが覆って悲しい。
「何がなんだか訳がわからない、ブランは何をしようとしているの?」
「いいんだ、ヒーラギはわからなくていい……魔王、竜人、俺達の思惑は一致してる。お互いに願うことがあるから手を組んでいる」
思惑?
「ニュ」
「十年か……もっとかな、長い計画だったね」
スラとロンも。
「ちょっと待って、人の国に魔王軍が攻めてきているのでしょう? 私は王族はどうなってもいいけど、国に住む国民はどうなるの?」
「それについては大丈夫だ。魔王は国民には手を出さない、そういう約束だ。誰も争いなんて求めちゃいないんだ。だけど……人を傷付けると倍になって返ってくることを、アイツらに叩き込んでやりたい。母さんを物のように扱った人間は許せない……そして、俺が愛するヒーラギまで、物のように扱っていたなんて許せるかよ!」
ブランの瞳に怒りの炎が見えた。
+
私の力はあの日、急に芽生えたものではなかった。ブランのお母さんの力が私に移ったらしい。その力でブランの怪我を治して私が聖女となり、その力は魔王すら跳ね返す物だった。
ブランとロンの話からして。
魔王には魔王の野望がある、新しく話に出てきた竜人は黒狼族に恨みがある。ブランはお母さんの事で、人間と自分の家族を恨んでいる。
「ブラン、お母さんの力がどうして、私に移ったのか理由は知っているの?」
「それはわからないんだ、ヒーラギと出会う五年にロンとスラで母さんを王城から助け出した。ヒーラギの祖父母の屋敷に精神と体がボロボロな母さんは匿われていた……あの日、俺が魔物を連れて怪我をして、死にそうになった俺を助けたいと願った、お母さんとヒーラギ、二人の心が重なったんだとロンは言う……実際にはわからない。母さんの力はなくなりヒーラギに移ったんだ」
「じゃ、ブランのお母さんは?」
「元気にしてるよ……村で優しい伴侶ができて幸せに暮らしているよ……あの日、俺のせいでヒーラギは聖女となり八年もの間あんな場所で、一人でごめんな、辛かったろ」
ブランは真っ赤な目をして、自分の唇をギリッと噛んだ。
80
あなたにおすすめの小説
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。
ぽっちゃりおっさん
恋愛
公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。
しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。
屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。
【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。
差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。
そこでサラが取った決断は?
聖女の妹によって家を追い出された私が真の聖女でした
天宮有
恋愛
グーリサ伯爵家から聖女が選ばれることになり、長女の私エステルより妹ザリカの方が優秀だった。
聖女がザリカに決まり、私は家から追い出されてしまう。
その後、追い出された私の元に、他国の王子マグリスがやって来る。
マグリスの話を聞くと私が真の聖女で、これからザリカの力は消えていくようだ。
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
夏灯みかん
ファンタジー
生まれながらに強い魔力を持つ少女レイラは、聖女として大神殿の小部屋で、祈るだけの生活を送ってきた。
けれど王太子に「身元不明の孤児だから」と婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」
追放の道中で出会った冒険者のステファンと狼男ライガに拾われ、レイラは初めて外の世界で暮らし始める。
冒険者としての仕事、初めてのカフェでのお茶会。
隣国での生活の中で、レイラは少しずつ自分の居場所を作っていく。
一方、レイラが去った王国では魔物が発生し、大神殿の大司教は彼女を取り戻そうと動き出していた。
――私はなんなの? どこから来たの?
これは、救う存在として利用されてきた少女が、「自分のこれから」を選び直していく物語。
※スピンオフ外伝を連載中です
『悪食エルフと風魔法使いの辺境遺跡探索記』
肉も魔物も食べる“悪食エルフ”エドラヒルと、
老魔法使いオリヴァーの若き日の出会いと冒険を描いた物語です。
▼外伝はこちら
https://www.alphapolis.co.jp/novel/417802211/393035061
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる