竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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第四章 獣人の国に咲いた魔女の毒花(竜人王祭編)

第14話

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「いた、いた、シャルロット様!」
「あ、チャコちゃん、ユリアちゃんみんな!」

 なんと! チャコちゃん達は可愛い、竜の妖精になっていた。可愛い。


「シーラン様、皆様、シャルロット様をお借りします」

 と、彼女達はとことこと近付き、わたしだけを連れて、シーラン様達から離れた場所まで連れて行く。

 そして顔を寄せ合った。

「シャルロット様どうでした? シーラン様に熱いキスさちゃった?」

「キ、キス⁉︎」

 みんなは楽しそうにどうなの? どうなの? と爛々な期待の目を向けてくる。

「えーっと、ほっぺた……」
「ほっぺ?」

「シーラン様にほっぺたにキスされました」


「「ほっぺた、だけ⁉︎」」

 大きな声をチャコちゃんが上げて、みんなに口を押さえられた。


「なーんだ。シャルロット様の余りの可愛さに、かばっと行くかと思ったけど。シーラン様って案外奥手なのかな?」

「そうかも」
「そうだね」

 みんなはチラチラと、シーラン様を見てる。シーラン様、気付いてるのか眉を潜めた。

「あーあれかも、シャルロット様に一途過ぎて手を出せない。出したら後に引けないくて、最後まで⁉︎」


「「きゃーっ⁉︎」」


 彼女達の間で、わたし達の凄い妄想が繰り広げられてる。聞いている本人はかなり恥ずかしいのだけど。

 最後までとか……んん? 最後までシーラン様と⁉︎ いや、待てわたし達はまだ成人前だよ。

 毒花のことで、それどころじゃなくなって、婚約だって正式にしていないし。

 竜人王様が仰っていたことも、まだ終わっていない、


 今は、シーラン様の側に入れるだけで幸せ。


 日が暮れ初めて、彼女達は空を見上げた。

「そろそろかな?」
「そろそろだね。シャルロット様もうすぐ一日目の終わりの花火が上がるよ。わたし達はお邪魔にならない様に退散するね」

「チャコちゃん⁉︎ あ、みんな行っちゃった」

 みんなは「またね」と、手を振り人混みに消えていった。

 竜人王祭は王都と王都外で、計三日開催される。一日目の終わりの花火か楽しみ。
 日本の花火とは違い、竜人王様の魔法使い達が魔法で夜空に打ち上げる。

 ちょっと見た目も違って楽しい。星の形とか、渦巻、空全体にキラキラ輝くものまである。わたしだったら、どでかいのを上げたいな。

「シャルロット、みんなとの話は終わった?」

 一人になりシーラン様達が来る。

「はい、もうすぐ一日目の終わりの花火が上がるそうですよ」

「花火がいいな」
「なぁ、花火。どこで見る?」


 ♢


 みんなで花火の見える場所まで移動をした。


 辺りが暗くなり、花火の上がる直前。


 音もなく、夜空の星が消えて漆黒に染まった。わたし達の周りに見た事のない、ぽわっとオレンジ色に光る花が咲く。


 漆黒の空には真っ赤な月。


 これは、前の時と同じだ……前に戦った奴が来たの?

「こ、れは……なに?」

 赤い月を見上げていた、隣でドサッと音を立てて、何かが崩れ落ちた。

 わたしはそれを見て、声が出なくなる。


 ドクンと音が聞こえるくらいの鼓動、あの赤い夢と同じだ。

 はぁ、、はぁ、息が上手く吸えない。

「い、、いや……いや、いやだぁーー! シーラン様、リズ様、リオさん⁉︎」


 今まで楽しくおしゃべりをしていたのに、みんなは動かず、足元に倒れている。
 体を揺さぶっても、反応が返ってこない。


 やだ、やだ、やだよ。


「「シーラン様! シーラン様って目を開けてよ。リズ様目を覚まして笑って、リオさん、目を開けて!」」


 呼びかけも、目を開けてくれない。


「いやぁぁーーっ‼︎」


 泣き崩れる、私の背後にバサァッと羽の音を聞いた。


「あららー無様ね、シャルロット!」


 聞き覚えのある声が聞こえた。
 振り向くと……見目が、かなり変わったモフカがいた。
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