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番外・シャルロットの休暇 (短編)
不思議な種 (前編)
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「小娘にこれをやろう」
お師匠様から貰ったのは、ピンク色をした不思議な種だった。
♢
竜人の森でシーラン様達との昼食中。
突如現れた魔法陣からやって来たお師匠様。
「これはチビ達と昼食中だったのか、小娘邪魔をしたな」
「いいえ、お師匠様も何か召し上がれますか?」
マリーと一緒に作ったお弁当を見せたけど、お師匠様は首を横に振った。
「いいや。小娘の手料理を食べてチビ達に睨まれたくないのでな。それに用事が済んだら直ぐに家に帰る。家でアオが首を長くして待っている」
アオに一週間ぶりに会えると言って、人の里で貰った種をわたしに渡して、お師匠様はアオさんの元へと帰って行った。
それは一週間前の事。
『各国の毒花は青桜のお陰ですべて枯れた。しかし、人の里への被害がないか私とラーロ、師匠で調査してくる。私がいない間は、竜人王ロワが場を仕切る。ロワ、何かあったら水晶玉に連絡してね』
アル様は、わたし達を魔法協会に集めてそう、伝えた。
毒花による、人の里への被害がないかの調査。
アル様とラーロさん、お師匠様、三人で、人の里に出向かわれた。
その調査が終わって、戻って来られたんだ。
「調査が無事に終わったのだな。何も俺達に言わないとなると、人の里の被害はなかったようだ」
「そうみたいですね」
よかった。
前に私達が青桜の木を採りに人の里に行った時、襲われて戦うことになった、マルという魔族。
その時、毒花が咲いた町。
被害は最小限に抑えたけど、その後が気になっていたんだ。
「ほんと、何も無くてよかったね。でっ? お師匠様に何貰ったの」
「気になりますね、シャルロット様」
みんながお師匠様に貰った、わたしの手の中の物を気にした。
「これだよ!」
と、手を広げてみんなに、お師匠様から貰った物を見せた。
「種?」
「ピンクの種だ!」
「何の種でしょう?」
「お昼を食べ終わったら、この種を植えてみよう!」
みんなは頷いた。
「ねぇ、シャルロットちゃん。その種を何処に植えるの?」
「なんの種か分からないからなぁ」
わたしの言葉にみんなも頷く。
「変わった色の種だからな」
「そうだね、ピンク色の種だもんな」
(そう、このピンクの種をどこに植える? わたしの候補は湖近くか畑近く?)
「あっ今度、銭湯を作るところは?」
この森で、一番木が生い茂った西の奥に銭湯というか。
みんなで水着を着て入れるプール? の様な露天風呂を作ることに、アル様達と会議を重ねて決まったんだ。
「変な植物じゃなきゃいいが……」
「もう、シーラン様! 植えてみないとわかんないよ、ダメだったら移動すればいいの! 取り敢えず植えてみよう!」
と、シーラン様の背中を押して、西の奥に移動した。
西の奥、木々が生い茂り小鳥達が歌を奏でていた。
「この先に作るプールだっけ? ここの木々は切らずに魔法で土地を広げるんだよね?」
「少し前の会議で、そうだと竜人王様は言っていた」
でも、露天風呂を作るのはみんなの仕事が落ち着く、来年の夏頃に決定したんだ。
来年の夏が来る前に、マリーに頼んで、水着を用意しなくちゃね。
あー! 来年が待ち遠しい!
「シャルロット、そこはどうだ?」
シーラン様が少しひらけた場所を見つけて、指差しした。
その場所に穴を掘り種を植えて、水魔法で先ずは水を与えた。
みんなが静かに見守るなか、大きく息を吸った。
【植物を育てる魔法】
「なんの種かは分かんないけど、生えろ、育て、育って!」
もう一度「育って!」と、唱えた。
土がモコモコ盛り上がり、ぴょこんと、ふたばが顔を出した。
「芽が出たわ!」
その後も続けて唱えていくうちに、それは、一本の若い木に育つ。
(結構育ったけど、まだ半分かな?)
だけど、今日は……
「これで終わり! これ以上やると魔力切れする!」
ふうっと息を上げて、その場に力尽きてぺたんと座った。
「お疲れ様、シャルロットちゃん!」
「お疲れ様です、シャルロット様」
「お疲れ、シャルロット」
シーラン様の手を借りて立たせてもらい、育った木をみんなで眺めた。
あれ、この木……
「なんだか、この木は青桜の木に似ていますね」
「リオさんも、そう思った? わたしもいま、そう言おうと思ってた!」
「はい、俺もっ!」
「兄上は気付いてないでしょ」
「バレた、はははっ!」
お師匠様から貰った不思議なピンク色の種。
その種を育ててみると、その木は青桜の木に似ていた。
お師匠様から貰ったのは、ピンク色をした不思議な種だった。
♢
竜人の森でシーラン様達との昼食中。
突如現れた魔法陣からやって来たお師匠様。
「これはチビ達と昼食中だったのか、小娘邪魔をしたな」
「いいえ、お師匠様も何か召し上がれますか?」
マリーと一緒に作ったお弁当を見せたけど、お師匠様は首を横に振った。
「いいや。小娘の手料理を食べてチビ達に睨まれたくないのでな。それに用事が済んだら直ぐに家に帰る。家でアオが首を長くして待っている」
アオに一週間ぶりに会えると言って、人の里で貰った種をわたしに渡して、お師匠様はアオさんの元へと帰って行った。
それは一週間前の事。
『各国の毒花は青桜のお陰ですべて枯れた。しかし、人の里への被害がないか私とラーロ、師匠で調査してくる。私がいない間は、竜人王ロワが場を仕切る。ロワ、何かあったら水晶玉に連絡してね』
アル様は、わたし達を魔法協会に集めてそう、伝えた。
毒花による、人の里への被害がないかの調査。
アル様とラーロさん、お師匠様、三人で、人の里に出向かわれた。
その調査が終わって、戻って来られたんだ。
「調査が無事に終わったのだな。何も俺達に言わないとなると、人の里の被害はなかったようだ」
「そうみたいですね」
よかった。
前に私達が青桜の木を採りに人の里に行った時、襲われて戦うことになった、マルという魔族。
その時、毒花が咲いた町。
被害は最小限に抑えたけど、その後が気になっていたんだ。
「ほんと、何も無くてよかったね。でっ? お師匠様に何貰ったの」
「気になりますね、シャルロット様」
みんながお師匠様に貰った、わたしの手の中の物を気にした。
「これだよ!」
と、手を広げてみんなに、お師匠様から貰った物を見せた。
「種?」
「ピンクの種だ!」
「何の種でしょう?」
「お昼を食べ終わったら、この種を植えてみよう!」
みんなは頷いた。
「ねぇ、シャルロットちゃん。その種を何処に植えるの?」
「なんの種か分からないからなぁ」
わたしの言葉にみんなも頷く。
「変わった色の種だからな」
「そうだね、ピンク色の種だもんな」
(そう、このピンクの種をどこに植える? わたしの候補は湖近くか畑近く?)
「あっ今度、銭湯を作るところは?」
この森で、一番木が生い茂った西の奥に銭湯というか。
みんなで水着を着て入れるプール? の様な露天風呂を作ることに、アル様達と会議を重ねて決まったんだ。
「変な植物じゃなきゃいいが……」
「もう、シーラン様! 植えてみないとわかんないよ、ダメだったら移動すればいいの! 取り敢えず植えてみよう!」
と、シーラン様の背中を押して、西の奥に移動した。
西の奥、木々が生い茂り小鳥達が歌を奏でていた。
「この先に作るプールだっけ? ここの木々は切らずに魔法で土地を広げるんだよね?」
「少し前の会議で、そうだと竜人王様は言っていた」
でも、露天風呂を作るのはみんなの仕事が落ち着く、来年の夏頃に決定したんだ。
来年の夏が来る前に、マリーに頼んで、水着を用意しなくちゃね。
あー! 来年が待ち遠しい!
「シャルロット、そこはどうだ?」
シーラン様が少しひらけた場所を見つけて、指差しした。
その場所に穴を掘り種を植えて、水魔法で先ずは水を与えた。
みんなが静かに見守るなか、大きく息を吸った。
【植物を育てる魔法】
「なんの種かは分かんないけど、生えろ、育て、育って!」
もう一度「育って!」と、唱えた。
土がモコモコ盛り上がり、ぴょこんと、ふたばが顔を出した。
「芽が出たわ!」
その後も続けて唱えていくうちに、それは、一本の若い木に育つ。
(結構育ったけど、まだ半分かな?)
だけど、今日は……
「これで終わり! これ以上やると魔力切れする!」
ふうっと息を上げて、その場に力尽きてぺたんと座った。
「お疲れ様、シャルロットちゃん!」
「お疲れ様です、シャルロット様」
「お疲れ、シャルロット」
シーラン様の手を借りて立たせてもらい、育った木をみんなで眺めた。
あれ、この木……
「なんだか、この木は青桜の木に似ていますね」
「リオさんも、そう思った? わたしもいま、そう言おうと思ってた!」
「はい、俺もっ!」
「兄上は気付いてないでしょ」
「バレた、はははっ!」
お師匠様から貰った不思議なピンク色の種。
その種を育ててみると、その木は青桜の木に似ていた。
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