悪役令嬢の幸せ

深月カナメ

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馬車での話、そしてこれから……

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「ありがとうございます、アーサー様」

 国王となる王子を支えて、立派な王妃にならなくてはならない。周囲の大人達のプレッシャーに加えて、学園では貴族の嫌味や王子の罵りで正直まいっていた。
 そんな中、二人はいつも笑顔で楽しい話をしてくれた。
 どんなに、心を救われたかわからない。

「カールさんとマリーさんが学園で、側にいてくれてよかった」
「おおらかで、よい二人だろう。あの二人が私の幼馴染みでよかった」

 アーサー様は握った私の手の甲にキスを落とす。それは、一回では終わらなかった。

「ア、アーサー様!」
「本当は君の唇を奪いたいが今は我慢している。これだけは許してくれ……ああ。もっと、君に触れたくなる」

 彼はなんて正直なのかしら……その言動で、行動で、どれだけ鼓動の速さを増すことを知っているの。
 キスの嵐が終わると、今度は手を頬に持っていき目を瞑った。

「……この小さな手でたくさんのものを書き、学び、たくさんの本を読んできたのだな。先ほどの本は隣国の経済の本だった。王妃になるべく毎日やってきたんだ」

 私の掌を頬に当てながら彼はそう呟いた。その手を離すことなく彼の瞳が私を見た。それに応えるべく私は口を開く。

「ええ、私に務まるかはわかりませんでしたが、応えれるように努力はしたつもりです。その努力が今度は、アーサー様の国で役立つといいのですが……」

「絶対に役立つさ、これからは私が側にいるし、カルやマリだっている。父上と母上もリーナ嬢に会う時を楽しみに待っている……少々私の書いた手紙に母上は御立腹だったみたいだかな」

(アーサー様の書いた手紙に、王妃様が御立腹?)

「その内容は、なにを書かれたのですか?」

「私にはまだ、婚約者がいなかったから分からないことだ。王妃になるにはどれくらいの努力が必要だとか、キリム王子のことや、後はリーナ嬢を奪いたいとも書いた」

 奪いたいだなんて、アーサー様は本当に正直だわ。王妃様はどんなことを書いたのかしら?

「いつも温厚な母上から返ってきた手紙に驚いたよ。婚約者がいながら他の女ですって⁉︎ から始まり。第一王子の婚約者イコール王妃です。幼少の頃から毎日王城に呼ばれて、習い事の毎日になり、自分の時間は待てません。時には挫折もします、その時に婚約者がーー王子がよそ見など言語道断。王子が支えなくて誰が支えるのですか! このことは陛下に伝えます。アーサー、貴方らしく彼女を守りなさいと書いてあったよ」

 そう、王子の婚約者になってからは城で過ごす時間が多くなり、学ぶことが多すぎて自分の時間なんて持てなかった。
 王子に嫌われてからも、婚約者として彼の隣に笑顔で、立たなくてはならなかったわ。
 キリム王子は不機嫌面を隠そうともしなかっだけど。

「父上はリーナ嬢の両親を極秘にある場所に呼び、私もそこに加わり話をした。君の両親は噂を知っていたよ。しかし国王陛下の勅命には逆えず、頭を抱えていたみたいだ」

「お父様やお母様が? そんな話は聞いたことがないわ」

「まだ私との婚約は確定ではなかったからね。残るは国王陛下の説得だーー陛下と王妃はリーナ嬢がお気に入りらしくてね。なかなか首を縦に振ってはくれなかったんだ」

 国王陛下と王妃様は私に優しくしてくれた、いつも、何か変わったことはないかと聞いてくださった。

「そこで、父上はある条件を出した。それは『平和』だ。少しばかり私の国の方が貿易なり、資源、武力など優位に立っている。それを平等として互いの国の間で『平和』を保とう。私の国がそちらの国を守る」

 国を守る? それがどれだけ大変かを知っているわ。他の国との会合。周りの情勢。
 常に、目を光らさなければならない。
 どんなことにも落ち着き、相手との交渉が上手くないといけない。
 国を一つ守るのにどれだけの人が動いて、家族に、国民を守らなくてはならない。

「私、一人のためになぜ?」
「それは君を愛しているのから。それに私と同じく国を思い努力家で、勉強熱心なところに惹かれる……一番は君の笑った顔なんだ、私のつまらない話を笑顔で聞いてくれた」

「つまらない話? アーサー様の国の話がですか?」

 彼はそうだと頷く。私はアーサー様の国民思いの話や貿易の話は面白かった。
 常に新しい物事を考えている。
 この方は素敵な国王になると、密かに尊敬をしていた。

「あれは、つまらなくなんてなかったわ。貴方の発想が面白かったもの」
「あの話がか? 他の令嬢に話をしたら、そんな話より私のドレスはどこぞのデザインだと、違う話に切り替えられたよ」

 彼が笑い、それに釣られて笑った。従者席の二人にも聞こえたみたいで、楽しく笑い馬車は進んだ。
 そして彼は教えてくれた。

「父上が申した平和と言ってもね。今の国王陛下は頭が良く、人柄も良く、周りの人材も良い……しかし、キリム王子が国王となった時に、状況がガラリと変わるだろうな」

 あの、ご様子では国王になったとしても国は回らない。
 あの子も王妃になれないし、向いていない。
 だって、あの子の頭の中は「これはゲームなの」という、甘えた思考が大半を占めている。
 チヤホヤされたい、私はそうされるために生まれた特別な存在。あの子自身も乙女ゲームに囚われていて、自分を見失っている。

「あれでは優秀な人も集まらないだろう」

 アーサー様はさらに渋い顔をした。
 そうなってくると、国庫が減り赤字が増え、国民を守れなくなる。

「まあ、最終的には私がーー国王となった私が国を吸収することになる。今の国王陛下は国の未来がどうなるか気付いてる。しかしながら、なにを言ってもキリム王子は話を聞かないと申していた。国民を守るために早々に見切りをつけたのだな」

 学園にヒロインが現れるまで、キリム王子は優しい普通の王子だった。
 ヒロインとの出会いで彼は変わる。国のことなどを考えない、ダメでお花畑王子に一瞬で変化した。

 でも、同じ攻略者対象のアーサー様は、なぜ変わらなかった。

「……リーナ嬢、リーナ」
「えっ、ひゃっ」

 考え事をしていて、彼に呼びれていることに気づくのが遅れた。手を掴まれて、引き寄せられて、気付けば互いに向き合う形で座っている。
 
(こ、こ、これは……ア、アーサー様⁉︎)

 焦る私に彼は。
 
「やっと、こっちを向いたな。んっ甘い、いい香りだ。私はこれからもリーナ嬢を大切にする。私に一生ついてきて欲しい」
「嬉しい、私だってどこまでもアーサー様について行きます。私からは離れませんよ」

「ああ、私からも離してやるものか」

 彼は微笑み、私の胸にポフッと顔を埋めた。

「ん、柔らかい」
「ア、アーサー様⁉︎」

 ♢

 ものすごく堪能したのか彼は上機嫌だ。だってあのままの格好で、屋敷に着くまで離してくれなかった。
 
 そして我慢できないと、ごめんねと。
 キスを何度もして、色々なことを彼にされた。

(これから、私の両親に会うというのに)

 身体中真っ赤な私と、幸せいっぱいでニヤけてしまったアーサー様。二人が元に戻るまで馬車から降りれなかった。

 しっかり、カールさんとマリーさんにも見られた。

「アーサー様!」
「嫌では、なかったろう?」

「うっ……」

 言い返せない。そう、嫌じゃなかった。もっと、もっとって、私はこんなに欲張りだったんだわ。

 両親にはしばらく待ってもらい。
 落ち着きを取り戻したアーサー様を食堂に案内をして、食事をしながら両親と今後の話をした。
 アーサー様は今の学園をすぐに出て国に行き、彼と国の勉強を始めるこのになると、両親に説明をした。

 納得はしているようだけど、隣国に行く私を心配する両親に対して
 
「リーナ嬢のことを心配でしょう。部屋はすでに城に用意してあります。ご自由にいらして滞在してください」

 アーサー様は先手を取る。彼の用意周到さには驚くことばかりだった。


 そして、一ヶ月後にはすべてが片付き。
 私の隣国への引っ越しの日。両親もついて来て、アーサー様の国でのんびりと滞在するのだった。

「リーナ嬢、今日こそは私の部屋で夜を過ごすんだ!」

「それは、アーサー様が我慢できずに私の部屋に来るからですわ。私は今日の日誌を付けているので、今しばらくお待ちください」

「うむ。私はもう書類の整理に日誌も書いて来たよ。書くことといっても、リーナのことばかりだがな」

 扉一つを隔てた隣同士の部屋。
 着替えや、お風呂上がり彼の部屋で過ごすための準備の最中に、いつも突撃をするのはアーサー様の方。
 
 外ではしっかりし者で頼りになる王子の彼は、二人きりになるとひっつき虫に変わる。
 
「待てぬ。リーナとの明日のダンスレッスンも楽しみだ、その後は書庫で本を読もう」

 言いたいことを言うと、アーサー様はゴロリと私のベッドに寝転んだ。
 そして、そこに私が加わり仲良く朝まで寝てしまう。

 二人で学ぶことは多い。しかし、二人だから乗り越えれる……日誌を書く手が止まる。それに気が付くと彼は私を呼んだ。

「リーナ、早く来い」
「今行きます、アーサー様!」

 日誌を片付けて、ベッドに横になる彼の胸に擦り寄ると、彼はもっと近くにと私を抱き寄せた。

「君を愛している」
「愛しています、アーサー様」

(ああ、なんて幸せなの)

 私はーー愛する人と最高の幸せを手にした。

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感想 5

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みんなの感想(5件)

深夜 朔
2020.04.29 深夜 朔

話はとても面白いと思います……が、誤字報告を少しだけ。

話名「私の婚約者」
「仲むずましい」→「仲睦まじい(むつまじい)」
「ええ、極力。」→「え、極力、(「ええ」にすると肯定の意味に取る人もいるのでひとつだけか「えぇ?」などのほうがわかりやすいと思います。最後の句読点は個人的にはなくてもいいと思います)」
「私が用意した契約の書類に陛下の半も押された」→「私が用意した契約の書類に陛下の判もおされた」
「一年も放置されて貴方への気持ちは覚めてしまいましたの」→「一年も放置されて貴方への気持ちは冷めてしまいましたの」

細かい上に個人的な意見も挟んでごめんなさい。応援してます。

2020.04.29 深月カナメ

コメントありがとうございます。
誤字を訂正させていただきました。

応援ありがとうございます^ - ^

解除
伊予二名
2020.04.28 伊予二名

アーサーさんがヒロインに反応しなかったのは彼も中の人が変わっていたから?

2020.04.29 深月カナメ

コメントありがとうございます^ - ^
アーサー王子のカトリーナ嬢への初恋は深く、ヒロインなんて気にも留めなかったのです。

解除
ちびたん
2020.04.28 ちびたん

ゆくゆくは平和条約を😅
結んだ隣国に、吸収合併される
のも已む無し。( ̄∇ ̄)この国を
治める王様は、為政者として苦渋の決断をしたのですね…。

国の行く末と我が子を
天秤に掛けて…息子よりも
国民(国全体)を選んだ!(>_<)
不出来な🌸お花畑満開王子🌸を
切り捨てる決断に…葛藤したであろう両陛下の気持ちが切ないですね。‘‘親の心😢子知らず’’

努力しても報われず
愛されず、無視され浮気する
お花畑男から解放されて本当に良かった!( ´艸`)心から愛し愛され、共に未来を歩める伴侶を得られて良かったです(//∇//)
幸せに成って下さいね。🌱🐥💮

2020.04.28 深月カナメ

ご感想ありがとうございます^ - ^
カトリーナちゃんは幸せ一直線です。
ありがとうございました。

解除

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