悪役令嬢には攻略対象達の○○○が通じない?

深月カナメ

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「リアちゃんこの香りどう?」
「いい香り、でも、こっちも捨てがたいわ」

 王都に出て、パンケーキの前にカルザード様はここの店今女の子に人気の店なんだと、髪用の石鹸を売る店に連れてきてくれた。

 入るや否やカルザード様いらっしゃいませと、店長らしき人が挨拶をした。

 まさかカルザード様、このお店を貸し切ったの? 私の視線にカルザード様は微笑んだ。

「そう、リアちゃんの思った通り。一時間だけど、この店を貸し切っちゃった。ゆっくり見れるよ」

 私のために?

「す……ううん。ありがとうございます、カルザード様」

 ここは謝るのではなく、自分の今の気持ちを素直に告げた。

「よかった。喜んでくれて嬉しいよ」

「リア、こっちに薔薇の香りの石鹸があるぞ」

「リアさん、こっちは桃だよ」

「薔薇の香りも、桃の香りもどちらもいいですわね」

 だろうと、皆さんも買い物を楽しんでるみたい。では、私も楽しみます。

 化粧水、洗顔料、髪用と体用の石鹸。どれもいい香りで選べませんわ。

「はははっ、リアちゃん! 買い過ぎたよ」

「ほんと、袋パンパンにするまで買うなんてね」

「荷物を貸して」

 皆さんだってたくさん買われたのに! 私だけ欲張ったみたいに言うなんて。

「お母様と私の専用のメイドに……あとは、これを買いましたの」

 袋の中から四つ取り出す。皆さんの好きな香りを聞いたらラベンダーが一番だったので、プレゼント用のラッピングしていただいた物を掌の上に乗せた。

「一つは私のなの、お揃いの香りを選びました」

 部屋に置いてもよし、使ってもよし、少し小さめのを選んだ。 
 のだけど……どうしたのでしょうか? 皆さんこっちを見ずに明後日の方を見ていた。

 そのあと、きっちり受け取ってくださいました。

  
 私の目の前に薄めのパンケーキが三枚、生クリームの山がそびえました。
 その山に苺のソースをかけて。

「可愛い」
「リアちゃん、どう? 美味しい」

 私の口には頬張ったパンケーキが入っているので、喋らずこくこくと首を縦に振った。

 ここでもカルザード様は特別な部屋を予約してくれた、落ち着いて食べたいからね、だそうです。

 カルザード様とマサク様はシンプルなパンケーキを召し上がっている、タイガー様はコーヒーだけ?

「タイガー様は甘い物が苦手なの?」

「いや、今日の夜に国王陛下と会食が入ってるんだ」

 え、お忙しいのに買い物に付き合ってくれたんだ。

「おっと、リアさん落ち込まないで。久しぶりに外に出て、みんなと買い物ができて喜んでる。二人が護衛をしてくれてるからね」

 カルザード様とマサク様を見た。

「一応その話で外に出てるよ。でも、外にはちゃんとした騎士がいるだろうね」

 隣国の王子様って大変なんだ。ありがとうとお礼を口にしようとした。

 そのとき、特別室の扉が開き、アルフレッド様が乱入して声を上げた。

「貴様ら、ルリア嬢となにしている?」

 と、テーブルを見回したけど、私の姿はないことに気づく。

「いきなりなんですか? アルフレッド王子」

「いや、お前達がルリア嬢を連れて、王都に出たとローリス嬢に聞いたんだ。ルリアはどこだ?」

 探してもいないはず、私はマサク様の変化の魔法がかかって、いつもとは違う子になっていますもの。

「いたか? アルフレッド王子。せっかく私の大事な友人が来てるんだ、帰ってくれないかな?」

「タイガー王子……いないのならいい。一言申す。あなたはルリア嬢に騙されてる、あの女はローリス嬢にいろいろ悪さをしている。一緒にローリス嬢を守ろうではないか?」

「断る。それに君は婚約者のルリアさんをあの女と、いつから呼ぶようになったのだ?」

 アルフレッド王子を睨み、タイガー様の尻尾が怒りを表していた。

「うるさい、婚約者をどう呼ぼうが俺の勝手だ!」

「そんなに嫌ならさぁ、アルフレッド王子は婚約を破棄しちゃいなよ、そしてローリスさんと婚約すれば?」

「そうだよ、そうすればいい。婚約が嫌なんでしょ? 嫌なのに無理しなくてもいいよ」

 二人の言葉に、アルフレッド王子は顔を青くさせた。

「カルザード、マサク! お前達まであの女に……いや、魔女に騙されやがって!」

 魔女? それ違うわ。
 そこは悪女と、言うのが正解ですアルフレッド王子。

 喚き散らす王子を見て。
 お店に迷惑とアルフレッド王子の世間体にキズが付くと判断した、タイガー様の騎士とアルフレッド王子の従者にカルザード様が加わり、王子を外に連れ出し馬車に押し込んだ。


 部屋に戻ってきたカルザード様は一言。

「アルフレッド王子はもうダメだ。入学する前と言っていることが正反対になった。マサク様は何か見えた?」

 コクリと頷く。

「王子はローリスの魅了の魔法にかかってたよ。ルリアを大切にしたかったら、気を付けてとあれほど言ったのに、僕は解かないから」

「当たり前だ解かなくていい。あの出所がわからぬ女性の、お粗末な魔法にかかる王子など……呆れてしまうよ」

 魅了の魔法? ローリスさんは魔法が使えたの? ゲームでそんなことがあったかしら?

「ルリア、アルフレッド王子が言ったことは、気にしなくていいからね」

「そうだよ、ルリアちゃん」
「ルリアさんは私が守るからね」


「私は平気ですわ。それと今日はリアですわよ皆さん」


 いずれは、その様になると思っていたのだし。婚約破棄まであと二年、あの二人を眺めるのもよし、皆さんと過ごすのもいいですわね。

「そうだなリア。夏休みに入ったら俺の国においで、一緒に水浴びをしよう」

(邪魔な、アルフレッド王子が粗末な魅了にかかったのは、私にとっていい誤算だ。国王陛下にそれとなく伝えてみるか。一番の問題は、あとの二人をどうやって蹴散らすかだな)

「タイガー様と水浴びですか?」

 それは楽しそう。

「あ、俺はリアちゃんの護衛として付いて行こう、リアちゃんとルリアちゃんの水着姿も見たい!」

(タイガー王子め、独り占めにはさせないよ。俺がルリアちゃんを守る。そして俺だけのルリアちゃんにする!)

 両方とも私なのですが……カルザード様はよろしいのかしら?

「ルリアの水着はいいね。僕もリアになる魔法をかけなくちゃいけないからね、当然ついていくよ」

(抜け駆けはさせない。僕がルリアを幸せにする、そうだ二人ともローリスの魅了にかけるとか? ……それだと、ルリアが悲しむかな) 


 三人の気持ちは果たして、当の本人。ルリアに届くのでしょうか?
 
 
 ルリアはパンケーキを頬張りながら、これから始まる、楽しいことに心を躍らせたのだった。

(この、姿は案外使えるわね)と。
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みんなの感想(1件)

Marron
2022.02.08 Marron

とても楽しく読ませて頂きました。
ただこれでお話は完結だと判ってはいるのですが
魅了にかかったアルフレッド王子とかけたゲームヒロインさんが
今後どうなっていくのかな?だとか、ルリアさんに想いを寄せる
攻略者さん達との今後はどうなり誰と結ばれたりするのかな?とかが
非常に気になってしまい、続きをを読んでみたいという思いが
物凄く募ってしまいました…スミマセン💦

2022.02.09 深月カナメ

コメント、お読みいただきありがとうございます。

続きが読みたいと言っていただき、とても嬉しいです。

いつになるかわかりませんが、書いてみようと思います。気長にお待ちください。

解除

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