【R18】ルーシェの苦悩 ~貧乏男爵令嬢は乙女ゲームに気付かない!?~

ウリ坊

文字の大きさ
29 / 113
本編

聖女

 
 本日2話更新してます。よろしくお願いします。

 ****************









 それから何週間か経ったある日。とうとうクレアが『聖女』として表に立つことになった。
 
 彼女が失われた王家の指輪を見つけたからだ。先代の王妃が何者かに奪われた《女神の指輪》と呼ばれるもの。代々王妃に受け継がれていた国宝級のものなのだが、ある時盗まれ、そこから国家権力の全てを使い探したが、今に至るまで見つかることがなかったのだとか。

 『先見』に続き、王家の指輪も見つけ出したクレアを疑う者は格段に減った。
 今の第一王子にも第二王子にもすでに婚約者が決まっているが、王太子はどちらになるかは決まっていない。第二王子が卒業してから決定する予定だ。
 
 このまま第一王子か第二王子のどちらかと婚約させ、ゆくゆくは王妃として取り込もうと周りは考えているらしい。
 
 だが、ここにそれを疑う者がいる。

 第二王子のエミリオだ。兄である第一王子のミランとは仲の良い関係を築いており、将来は国王になるだろうミランの腹心として仕えるつもりだ。
 だからどうにも怪しいクレアを、このまま兄の妃にするべきなのか深い猜疑心を持っていた。
 
 まず、国宝である指輪をどこから見つけ出したのか問い詰めたが、クレアは答えなかった。神の啓示だ御神託だと言いはり、それ以上の追求は出来なかった。
 
 そしてあのクレアの行動。兄であるミランに心酔している態度もとっているが、一歩学園に戻れば自分や他の有力貴族の子息にちょっかいをかけ、周りの反感を買っている。
 これでは王妃どころか、聖女かどうかすら怪しい。


 

 

 そんな中、エミリオは側近であるウィルソンの屋敷にお忍びで訪れていた。

 クロウド侯爵家の応接間の一室で、密談が繰り広げられる。
 ここにいるのは第二王子であるエミリオと、側近のウィルソン、そして護衛のグレンの三人のみ。






「本当に参ったよ、あの聖女には。僕を出し抜こうと必死に媚を売ってきて。煩わしいったらないね」

 エミリオがソファーに優雅に腰掛け、脚を組みながらウンザリとした口調で話す。

「確かに見ていてもヒドイもんですよね。聖女様は…可愛い顔してるんですがね」

 こちらも呆れた様に向かいのソファーに座りながら話す護衛のグレン。お互いに辟易している様だ。

「しかし、確証がない以上こちらも強くは出れないのが事実。せめて指輪の出所だけでもわかれば」

 ウィルソンはグレンの隣に腰掛け、腕を組んでいる。

「そうだね。そうすればそこから聖女の思惑を崩せそうなんだけど…中々これが難しくてね」
「『影』からの報告は?」
「いや……『影』をつける以前の行動らしいんだ。だから尚のこと疑わしくてね」
「うーん。これはお手上げですね~」

 三人は苦悶の表情を浮かべるのであった。
 そんな中、エミリオが思い出したかの様にウィルソンに話題をふる。

「そういえば、ウィル…機嫌直ったの?最近いつにも増して機嫌悪かったけど」

「………」

 ウィルソンはブスッとした顔をして黙っている。見かねたグレンがエミリオにこっそり話す。

「あのー殿下…ダメみたいですよ、その話題。聞くの禁止らしいんで」
「えぇ~!なになに、なんで?余計に気になっちゃうよ!」


 ◇

 ◇


 その一方、そんな国の一大事に関わる話し合いをしているなど全く知らないルーシェ。 
 今日は学園の休日なのだが、朝からお菓子作りをしている。
 ウィルソンに、大切な客人が来るのでお菓子を作ってほしいと言われたからだ。
 ウィルソンともまだぎこちないが、少しずつ前の状態に戻りつつある。
 自分でなかったことにしてくれと言ったわけだし、お互い悪くないからこそ、ルーシェとしても早く忘れて今まで通りにしたいのだ。
 
(大切なお客様って誰だろう?また偉い人なのかな?)

 何も知らないので、楽しく調理している。

 せっかく甘い物と一緒に出すのだからしょっぱい物の方が良いだろう。細かい好みまでは聞いてないし。
 せっせと作り、出来上がりに満足した。これなら文句は言われないだろう。

「クラウスさん、出来上がりました!後はよろしくお願いします」
「おやおや、これは美味しそうですね。坊っちゃま方もさぞお喜びになることでしょう」
「そうだと良いのですが」

 クラウスがワゴンを引いて二階まで運ぶ。
 ルーシェは調理場で作り終えた疲労感に浸っていた。

「ルーシェちゃん、ご苦労様!」
 
 調理場の入り口からマーサがヒョイッと顔を出す。
 
「あ、マーサさん。お菓子余分に作ったから皆さんで食べましょ?」
「まぁ!嬉しいね♪みんな呼んでくるよ」

 マーサが使用人の皆を呼んでくる。休日だからいつもより少ない。
 皆で和気あいあいとデザートを頬張っていると、クラウスがやってきた。

「お楽しみのところ申し訳ございません。ルーシェさん、坊っちゃまがお呼びでございます」
「え?私、ですか?」
「はい………なんでも先ほど作ったお菓子の説明をしてほしいと仰られております」

(坊っちゃんの大切なお客様。ってことはもしかしたら要人かもしれないってことだよね?そんな人に私が話して大丈夫なの?)

 
 イヤな予感しかしない。
 
 
 不安を抱えながらも、呼ばれたのだから行かなければならない。

 逃げ出したい気持ちを押さえて応接室へと向かった。




あなたにおすすめの小説

一妻多夫の獣人世界でマッチングアプリします♡

具なっしー
恋愛
前世の記憶を持つソフィアは、綿菓子のような虹色の髪を持つオコジョ獣人の令嬢。 この世界では男女比が極端に偏っており、女性が複数の夫を持つ「一妻多夫制」が当たり前。でも、前世日本人だったソフィアには、一人の人を愛する感覚しかなくて……。 そんな私に、20人の父様たちは「施設(強制繁殖システム)送り」を避けるため、マッチングアプリを始めさせた。 最初は戸惑いながらも、出会った男性たちはみんな魅力的で、優しくて、一途で――。 ■ 大人の余裕とちょっと意地悪な研究者 ■ 不器用だけど一途な騎士 ■ ぶっきらぼうだけど優しい元義賊 ■ 完璧主義だけど私にだけ甘えん坊な商人 ■ 超ピュアなジムインストラクター ■ コミュ力高めで超甘々なパティシエ ■ 私に一生懸命な天才年下魔法学者 気づけば7人全員と婚約していた!? 「私達はきっと良い家族になれます!」 これは、一人の少女と七人(…)の婚約者たちが、愛と絆を育んでいく、ちょっと甘くて笑える逆ハーレム・ラブコメディ。 という異世界×獣人×一妻多夫×マッチングアプリの、設定盛りだくさんな話。超ご都合主義なので苦手な人は注意! ※表紙はAIです

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜

由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。 初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。 溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。