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本編
聖女
本日2話更新してます。よろしくお願いします。
****************
それから何週間か経ったある日。とうとうクレアが『聖女』として表に立つことになった。
彼女が失われた王家の指輪を見つけたからだ。先代の王妃が何者かに奪われた《女神の指輪》と呼ばれるもの。代々王妃に受け継がれていた国宝級のものなのだが、ある時盗まれ、そこから国家権力の全てを使い探したが、今に至るまで見つかることがなかったのだとか。
『先見』に続き、王家の指輪も見つけ出したクレアを疑う者は格段に減った。
今の第一王子にも第二王子にもすでに婚約者が決まっているが、王太子はどちらになるかは決まっていない。第二王子が卒業してから決定する予定だ。
このまま第一王子か第二王子のどちらかと婚約させ、ゆくゆくは王妃として取り込もうと周りは考えているらしい。
だが、ここにそれを疑う者がいる。
第二王子のエミリオだ。兄である第一王子のミランとは仲の良い関係を築いており、将来は国王になるだろうミランの腹心として仕えるつもりだ。
だからどうにも怪しいクレアを、このまま兄の妃にするべきなのか深い猜疑心を持っていた。
まず、国宝である指輪をどこから見つけ出したのか問い詰めたが、クレアは答えなかった。神の啓示だ御神託だと言いはり、それ以上の追求は出来なかった。
そしてあのクレアの行動。兄であるミランに心酔している態度もとっているが、一歩学園に戻れば自分や他の有力貴族の子息にちょっかいをかけ、周りの反感を買っている。
これでは王妃どころか、聖女かどうかすら怪しい。
そんな中、エミリオは側近であるウィルソンの屋敷にお忍びで訪れていた。
クロウド侯爵家の応接間の一室で、密談が繰り広げられる。
ここにいるのは第二王子であるエミリオと、側近のウィルソン、そして護衛のグレンの三人のみ。
「本当に参ったよ、あの聖女には。僕を出し抜こうと必死に媚を売ってきて。煩わしいったらないね」
エミリオがソファーに優雅に腰掛け、脚を組みながらウンザリとした口調で話す。
「確かに見ていてもヒドイもんですよね。聖女様は…可愛い顔してるんですがね」
こちらも呆れた様に向かいのソファーに座りながら話す護衛のグレン。お互いに辟易している様だ。
「しかし、確証がない以上こちらも強くは出れないのが事実。せめて指輪の出所だけでもわかれば」
ウィルソンはグレンの隣に腰掛け、腕を組んでいる。
「そうだね。そうすればそこから聖女の思惑を崩せそうなんだけど…中々これが難しくてね」
「『影』からの報告は?」
「いや……『影』をつける以前の行動らしいんだ。だから尚のこと疑わしくてね」
「うーん。これはお手上げですね~」
三人は苦悶の表情を浮かべるのであった。
そんな中、エミリオが思い出したかの様にウィルソンに話題をふる。
「そういえば、ウィル…機嫌直ったの?最近いつにも増して機嫌悪かったけど」
「………」
ウィルソンはブスッとした顔をして黙っている。見かねたグレンがエミリオにこっそり話す。
「あのー殿下…ダメみたいですよ、その話題。聞くの禁止らしいんで」
「えぇ~!なになに、なんで?余計に気になっちゃうよ!」
◇
◇
その一方、そんな国の一大事に関わる話し合いをしているなど全く知らないルーシェ。
今日は学園の休日なのだが、朝からお菓子作りをしている。
ウィルソンに、大切な客人が来るのでお菓子を作ってほしいと言われたからだ。
ウィルソンともまだぎこちないが、少しずつ前の状態に戻りつつある。
自分でなかったことにしてくれと言ったわけだし、お互い悪くないからこそ、ルーシェとしても早く忘れて今まで通りにしたいのだ。
(大切なお客様って誰だろう?また偉い人なのかな?)
何も知らないので、楽しく調理している。
せっかく甘い物と一緒に出すのだからしょっぱい物の方が良いだろう。細かい好みまでは聞いてないし。
せっせと作り、出来上がりに満足した。これなら文句は言われないだろう。
「クラウスさん、出来上がりました!後はよろしくお願いします」
「おやおや、これは美味しそうですね。坊っちゃま方もさぞお喜びになることでしょう」
「そうだと良いのですが」
クラウスがワゴンを引いて二階まで運ぶ。
ルーシェは調理場で作り終えた疲労感に浸っていた。
「ルーシェちゃん、ご苦労様!」
調理場の入り口からマーサがヒョイッと顔を出す。
「あ、マーサさん。お菓子余分に作ったから皆さんで食べましょ?」
「まぁ!嬉しいね♪みんな呼んでくるよ」
マーサが使用人の皆を呼んでくる。休日だからいつもより少ない。
皆で和気あいあいとデザートを頬張っていると、クラウスがやってきた。
「お楽しみのところ申し訳ございません。ルーシェさん、坊っちゃまがお呼びでございます」
「え?私、ですか?」
「はい………なんでも先ほど作ったお菓子の説明をしてほしいと仰られております」
(坊っちゃんの大切なお客様。ってことはもしかしたら要人かもしれないってことだよね?そんな人に私が話して大丈夫なの?)
イヤな予感しかしない。
不安を抱えながらも、呼ばれたのだから行かなければならない。
逃げ出したい気持ちを押さえて応接室へと向かった。
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