【R18】ルーシェの苦悩 ~貧乏男爵令嬢は乙女ゲームに気付かない!?~

ウリ坊

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旅行編

後日談 ルーシェ

*
 
 様々な事があった波瀾万丈な旅行から戻り、別の馬車に積んでいた荷持を紐解き、クロノ商会で購入してもらった商品を出して色々な物を試しに作ってみた。


 ウィルソンは旅行から戻ったその足で直ぐに王宮へと行ってしまった。
 淋しさもあるが、自分が長い間独占してしまったのだから仕方がないと言い聞かせた。
 旅行の疲れも取れないまま仕事行かせてしまった事には後悔したが、馬車の中でウィルソンは心配するルーシェに気にするなと笑っていた。 


 次の日。

 疲れが溜まっていて朝なかなか起きれなかったが、何とか学園へと向かった。
 いつまでも休んで入られない。
 そして学園が終わってから、厨房に運んでもらった購入した食材を並べ中身を確認していく。

「ルーシェちゃん、これはなんだ?」

 料理人のジェフさんはかなり興味津々で、これでもかと台に並んだ沢山の食材を手に取って見ていた。

「ジャニールの商品は侯爵邸でも置いてませんもんね!さて、これから色々試していきましょう!」

 台に並べた食材に向かい腕まくりをするルーシェ。
 一気に食べれるほど数は少なくないので、数日に分けて調理していくことに。

 ジャニールの商品はやはり日本食にかなり近い。
 一番の収穫はやはりお米だ。
 貰った穀物も鍋で炊いてみて成功したのて、早速食べてみたが口に入れた瞬間感動した。

(ん~!美味しい!!)

 諦めていたお米が食べられる日が来ようとは!
 厨房で見ていたジェフにも試食してもらう。
 つやつやモチモチのお米に初めて食べたジェフはかなり驚いていた。

「んっ!こいつは…なかなどうして、美味いな!」
 
 口に合ったのかジェフはそのあと無言で一皿平らげた。
 それからココ最近のルーシェの主食はもっぱら炊きたてのご飯だ。

 ウィルソンは5日、6日と経つがまだお屋敷には帰って戻っていない。
 この美味しいご飯を一緒に食べたいのだが、忙しく働いて大変な思いをしているのに贅沢は言えない。
 お屋敷の使用人達にもジャニールの食品を味見してもらった。特にジェフは他の食材も興味津々で食べていた。

「うんっ!美味しいねぇ~」
「ん~…私はちょっと苦手かも……」

 反応も人それぞれで、口に合う物もあれば合わない物もある。
 その中でもお米は一番の人気だった。
 腹持ちも良く、何より栄養バランスもいいからだ。
 ルーシェもそれに満足して、ジェフにもお米の炊き方を教え、今では主食にごはんを食べる人達も次第に多くなった。
 




 ◇



 数日後。

 ウィルソンがお城に泊まり込んでからすでに2週間以上が経つ。
 日にちが延びるたびにルーシェのため息も多くなる。

「ルーシェちゃん、大丈夫かい?目元に隈が出来てるよ…」

 休日に掃除をしていたルーシェとマーサ。
 明らかに様子のおかしいルーシェを心配そうにマーサが声を掛ける。

「大丈夫です。勉強してたら少し寝不足で…」

 そう言って窓を拭きながら無理矢理笑顔を作る。

「後は私がやるから、部屋で休んでおいでよ」

「いえ…本当に大丈夫です!それより早く終わらせちゃいましょう!」

 努めて明るく振る舞うが、マーサにはそれが返って痛々しく映る。
 ルーシェは必死に誤魔化そうとしているが理由はわかっている。
 本当は瞼も腫れていたのだが、マーサは言うのを躊躇っていた。
 無理をしているのがバレバレだ。

 マーサの様子に気付いていないルーシェは、手を動かしながら反省する。

(ダメだな…しっかりしないと。たかがこれしきのことで心配かけてどうするの!)
 
 確かに寝不足だったが、部屋に戻って一人になりたくなかった。
 
 近頃はこうして仕事をしている時でも、不意にボーッとしていることが多くなる。
 クラウスにも心配され自己嫌悪に駆られてしまう。


  
 あれだけ長い時間一緒にいれた分、ウィルソンと会えない今の反動は相当なものだ。
 自分が無理を言って忙しいあの人を旅行に連れ出したのだから仕方がない。
 始めの一週間くらいはまだ大丈夫だった。旅行での楽しい思いを余韻にそこまでは寂しくなかった。

 だか9日、10日…と帰宅が延びるに連れ、どんどん沈んでいく気持ちが抑えきれなくなっていく。

 仕事や学園に通っている時はまだ気持ちが紛れるのだが、夜寝る時が特に一番辛く寂しかった。

 お互い忙しく共にいる時間は短くても、夜に愛し合えていたからこそ満たされて充電出来ていた。
 今まではそれが日常で、でもそれがあるからこそ自分が不満も無く満足出来ていたんだと気付く。
 
 健康で規則正しい生活が取り柄のルーシェがなかなか寝付けず不眠になる。
 
 もしかしたら夜に帰って来ているかもしれないと期待して眠りが浅くなってしまうからだ。
 そしてウィルソンの夢を見ては途中で起き、誰もいないベッドに寂しさが込み上げ一人涙を流す。
 
(やっぱり、思っていた通りになった…ううん、それ以上に寂しい……)


 自分はこんなにも弱かっただろうか。
 一人で寝ていた時を思い出せない程自分の近くにウィルソンがいてくれた。

 仕事も終わりベッドで蹲りながら、自己嫌悪と寂寥感に苛まれる。




 ◇
 
 ◇




 
 今日で16日目。

 やはりウィルソンが帰ってくる気配はない。
 忙しい時でもここまで長い間王宮に泊まることは無かった。
 
 ベッドで座りながら周りを見渡すが、自分の部屋がどこか色褪せて見える。

 一人になると余計に考えてしまう。

 ため息をはき、暗い部屋のベッドで一人横になる。
 隣に置いてあるウィルソンの寝間着を引っ張りギュッと抱きしめながら匂いを嗅いだ。
 もう薄れてきているがまだ微かに香っている。
 
 最近では自分の安定剤の様に、こうしないと寝れなくなった。一人で寝ていた時が嘘のように。
 夜が途方もなく長く感じる。
 

(ウィル様……早く…会いたい……)


 こうしてまた長い長い夜が更けていく。






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