【R18】復讐を決意した傷もの令嬢は、魅惑の王弟殿下に甘く翻弄される 〜契約結婚の条件に夜伽が含まれていたなんて聞いてません!〜

ウリ坊

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建国祭 2

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「お待たせして申し訳ございません。本日の殿下は、いつも以上に美貌に磨きがかかってますね」

 見慣れたと思っていた美しい容姿だが、改めて隣の王弟殿下を眺めてから、しみじみと言葉を吐いた。

「仕方ないだろう? 俺は何を着ても似合ってしまうからな」

 美しく口角を上げ、艶やかに微笑むとまた後方から黄色い声が漏れている。
 
「はあ……左様でございますか。たしかに殿下は質素な服装でも一際目立ちそうですね」

 イクシオンは自分の容姿の非凡さをわかっているだけに、否定などはしない。
 呆れたように一言返すと、出口に向かい歩き出した。
 衣装部屋から出ると外は真っ暗になっている。遠くに町が僅かに見え、そこはランプがたくさん灯り、庶民たちの祭りが開かれている。
 長い廊下を歩きながらイクシオンが口を開く。
 
「お前もよく似合っているぞ。俺の隣を飾るに相応しい姿だ」

 自分が選んだからか、オリビアの姿を見て頷きながら話している。
 悔しいがイクシオンのセンスの良さにはオリビアも納得していた。

「殿下の隣では私など霞んでしまいますが、本日は別行動ですので気は楽です」

「……まぁ、そうだな」

 淡々と話すオリビアの隣で、イクシオンは歯切れの悪い返事を返している。

「申し訳ございませんが、殿下も以前説明した通り、ご協力をよろしくお願いいたします」

「騒ぎが起きたら即座に駆け付ける、だったな」

「はい」

「暴れるつもりか?」

 物騒な感じで聞かれるが、表情は崩さず淡々と答えていく。

「おそらくそうですね。その場合、私ではなく、相手が暴れると思いますが」

「お前がどれだけ暴れても加勢してやるから、思い切りやってこい」

 まるでオリビアがジャンを殴りにでもいくような言い方だ。
 イクシオンが暴れるオリビアと共にジャンを懲らしめてる場面を想像したらとても可笑しくて、思わず笑ってしまった。

「ぷっ、はははっ……! そんなこと言われたら、本当に暴れてしまいますよ?」

 笑ったまま見上げたら、イクシオンもオリビアを見て微笑んでいた。

「俺はまったく気にしないぞ。どんな時でもお前の味方だ」

 愛しい者でも見るような慈愛に満ちた表情と台詞に、ドキッと心臓が大きく跳ねた。

「――っ! あ、ありがとうございます……」
 
 いつも揶揄からかうようなことしか言わないのに、絶妙なタイミングで意表を突くような発言をするのだからたまらない。

 ドキドキと高鳴る鼓動に耐えきれず、パッと顔を反らしてお礼を言う。

「もちろん対価はもらうがな」

 対価と聞いて平静さを取り戻す。
 そう言ってもらったほうが現実的で気が楽だった。
 
「私が殿下にあげられるものなど何もありませんが?」

 今度は視線を合わせて言葉を返すと、立ち止まったイクシオンは屈んで目線を合わせ、オリビアの開いた胸元を指先で軽くつついた。

「この体で払ってもらおうか」

 目を細め艶やかな笑みで近づいたかと思うと、耳元でこそっと囁かれる。
 
「かっ……、考えておきます」

 どこまでも自分を翻弄するイクシオンに悔しさを覚えて、わざと曖昧に答えてみた。

「否定はしないんだな?」

「殿下の行動次第ということです」

「クククッ、お前もずいぶんあしらい方が上手くなったな」

 どうせ最後はイクシオンの発言通りになるのだから、少しは困ればいいのだと意地悪く考えてしまう。

「殿下と共にいたら嫌でもこうなります」

「それはいい傾向だ」

 笑いながら再び足を進めるイクシオンに、オリビアも前を向いて歩き出した。
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