処女で恋人もできず39歳で不慮の死を遂げた私が、冷遇妃に転生した今世で幸せになれるまで【R18】

ウリ坊

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本編

諦めと期待

「関係ない? ハッ……、お前は、自分の発言に矛盾を感じないのか?」
「……それはどういった意味でしょう?」
「お前は俺の妻だ。関係ないという発言はおかしい。それに、俺はお前を道具などと言った覚えはない」
「妻……?」

 言われた言葉が信じられなくて、疑問がぽそっと口から漏れた。
 初めてアイザックに自分の妻だと言われた気がする。このひとに妻だと認識されているとは思っていなかった。
 そのくらい、婚姻を結んでからのアイザックの態度は酷く、冷遇されていると思わない日はなかった。
 だからこそ余計に言われていることが信じられないし、信じたくないのだ。
 
「では、陛下はっ……私に関心がおありだと、そう受け取ってよろしいのですかっ!?」

 キッとアイザックを睨み、強い口調で抗議の声を上げる。
 リアトリスに関心などないくせに、こういった場で言ってくるこのひとに怒りを覚える。

「構わん。言葉通りだ」
「――なっ……!」

 わざと否定しやすいように強調して言った言葉を、真っ向から肯定されてしまった。

(やめてっ……! どうして今さら、そんなことを言ってくるの!?)

 もう、誰かに心を許したくない。
 だったらバッドエンドを迎えて、誰でもいいから男と交わり、肉体だけ気持ち良くなって、何も考えずに快楽に溺れていたかった。
 選ばれるのはいつも他人で、諦めるのはいつも自分だった。
 それは生まれ変わっても変わらない。
 何度葛藤してきただろう。
 もう恋愛の表舞台に立ちたくない。
 どう頑張ってもアイザックはスカーレットと結ばれ、自分は断罪される。
 未来は決まっているし、自分もそれを望んでいて覆すことなどしたくないのに――

「っ……!」

 複雑な感情が胸の中で交錯し、どうしていいのかわからずに混乱する。
 見つめていた瞳からポロッと涙がこぼれ落ちた。
 本気の恋なんてしたくない……なのに心は、目の前のこのひとを求めるように、先ほどの発言を喜んでいる。

「情事の時にしか泣く姿を見せないお前が、どうしてここでは簡単に泣くんだ?」
「なっ……! そんなの、わかりませんわっ!」
   
 無神経な言葉にサッと頬に朱が差し、泣き顔で目の前の男を睨んだ。
 それをどう思ったのか、アイザックは珍しく笑っていた。

「お前がわからないのでは、俺はもっとわからん」

 そう話し、リアトリスを自らの腕の中へ引き寄せた。戸惑いを隠せず、アイザックの腕から逃れようと胸を押す。
  
「離してっ! それにっ、もう喋らないでくださいっ!」
「では、他で表現するしかなさそうだな」
「――んっ!?」

 考える暇もなく唇を塞がれた。
 ぐっと押したはずの腕は、胸元に添えるだけになり、重なる唇から抗議ではない甘い声が漏れる。
 
「っ、んっ……ふ、ぅ」

 キスは苦手だ。
 抱かれることよりも、さらに勘違いを助長する。
 抱かれている時は悦びを感じて夢中になれるが、キスは別の意味で頭がいっぱいになってしまう。
 しかもこんなに熱く、舌を入れて貪るキスはもっと苦手だった。
 
「お前の身体はいつでも従順だ」
「はぁっ……」

 ひとしきりキスを堪能したアイザックが、唇を離してぽつりと一言呟いていた。
 リアトリスはぼぅっとしたままアイザックの腕に抱かれ、ドキドキと高鳴る心臓と乱れた呼吸を落ち着かせていた。
 
「そろそろ、引き上げるか。それとも……ここでお前の痴態を、子供たちに見せつけるか?」

 指でリアトリスの顎を持ち上げ、意地悪く聞いてくるアイザックを見てようやく我に返る。

「――っ! か、帰りますっ……」
「それが賢明だろう」

 信じられない思いで目の前の人物を見つめ、わなわなと身体が恥辱に震える。
 アイザックの手を払い、赤くなった顔を思い切り横へ反らした。

(嫌いなはずなのに、どうして触れられることが嫌じゃないの……?)

 それがリアトリスには悔しくてたまらなかった。

 アイザックの背後を見ると、職員たちは子供の世話をしていて、リアトリスたちのことをなるべく見ないように配慮してくれている。
 子供たちは子供たちで、遊んでお腹が空いていたのか、こちらのことなど気にすることもなく食事を終えていた。

 これからお昼寝に入る子もいるので、リアトリスは職員に理由だけ告げて静かに帰ることになった。

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