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本編
諦めと希望
「……陛下は、馬で帰られないのですか?」
対面で座る男に、そう聞かずにはいられなかった。
「俺がいることが不服か?」
「そうではございませんが……」
スカーレットと孤児院に来た時は馬に乗って来たのに、帰りはリアトリスが乗ってきた馬車に乗って一緒に帰っている。
乗ってきた馬は馬車に繋がれて後ろを走っていた。
一人きりになって頭を冷やしたかったのだが、この男はそんな猶予も与えてくれない。
「俺と一緒にいれることを喜ばないのか? 前までのお前なら、とにかく俺の気を引こうと必死だったはずだ」
(そうよね。だけど、なんだかもう……そうすることに、疲れてしまったみたい)
色んなことがありすぎて、最近そんな気分になれなかった。
バッドエンドを望むなら、スカーレットの批判を買い、アイザックに媚びて嫌われ続けなければならない。
それが最善だとわかっているのに、どうしても行動に移せないでいた。
どうせ自分は利用されるだけされて、また放置されるのだから、投げやりになっているのかもしれない。
とにかく今は自分を放っておいてほしかった。
「結果がわかっているのに、努力することが億劫になっただけですわ。このまま足掻いても、変わるものなどありませんもの」
澄花の時の悪い癖だった。
すぐに結論を出して諦めようとする。
リアトリスに転生して少しは変われたと思っていたが、人間の根本はやはり変わらないようだ。
「愛されることを放棄したという意味か?」
本人の口から直接言われることに違和感を覚えるが、間違っていないので否定しなかった。
「お好きなように解釈してくださいませ。私はこの先、陛下がどなたを皇后にお迎えしようと、一切反対はいたしません」
アイザックを真正面から見据えて話した。
後悔はないし、覆すこともしない。
「その言葉、忘れるなよ」
「えぇ。もちろんですわ」
こう言ってしまえば話は早い。スカーレットでも他の女性だとしても、誰かが皇后に収まればもう文句は言えずに諦めるしかなくなる。
それに、明日にはスカーレット率いる使節団が隣国へ帰る。
アイザックがどう行動するのかわからないが、どちらにしろ、これで数日間抱かれていた夜は終わりを迎えるのだ。
(抱かれなくなると思うから、こんなに悲観的な気持ちになっているのね。前のようにアイザックと関わらなくなれば、次第にこの想いも消えていくわ)
自分の気持ちに決着をつけるときはいつもこうだ。
最初は悲しみで涙に暮れる日々を送るが、時間がすべてを解決してくれる。
一通り自分の気持ちを話せて満足したリアトリスは、静かに窓の外を眺めていた。
「――っ! 待って! 馬車を止めて!」
窓の外を眺めていたリアトリスが御者に向かい、突然大きな声を上げた。
「は、はいっ!」
「なんだ、急に……」
御者は驚いたようだが馬車を無理やり止めた。
アイザックも突然叫んだリアトリスに疑問の声を投げかけている。
「私は急用ができましたので、ここで失礼させていただきますわ。陛下はどうぞこのままお帰りください!」
アイザックの返事も聞かずにそれだけ話すと、リアトリスは外に飛び出していった。
そして先ほど通り過ぎた目的の場所に向かい駆けていく。
(どこっ……? どこに行ってしまったの!?)
孤児院の帰り道で良かったと、頭の片隅で思う。ドレスと高いヒールではとてもこんなふうに走れない。
対面で座る男に、そう聞かずにはいられなかった。
「俺がいることが不服か?」
「そうではございませんが……」
スカーレットと孤児院に来た時は馬に乗って来たのに、帰りはリアトリスが乗ってきた馬車に乗って一緒に帰っている。
乗ってきた馬は馬車に繋がれて後ろを走っていた。
一人きりになって頭を冷やしたかったのだが、この男はそんな猶予も与えてくれない。
「俺と一緒にいれることを喜ばないのか? 前までのお前なら、とにかく俺の気を引こうと必死だったはずだ」
(そうよね。だけど、なんだかもう……そうすることに、疲れてしまったみたい)
色んなことがありすぎて、最近そんな気分になれなかった。
バッドエンドを望むなら、スカーレットの批判を買い、アイザックに媚びて嫌われ続けなければならない。
それが最善だとわかっているのに、どうしても行動に移せないでいた。
どうせ自分は利用されるだけされて、また放置されるのだから、投げやりになっているのかもしれない。
とにかく今は自分を放っておいてほしかった。
「結果がわかっているのに、努力することが億劫になっただけですわ。このまま足掻いても、変わるものなどありませんもの」
澄花の時の悪い癖だった。
すぐに結論を出して諦めようとする。
リアトリスに転生して少しは変われたと思っていたが、人間の根本はやはり変わらないようだ。
「愛されることを放棄したという意味か?」
本人の口から直接言われることに違和感を覚えるが、間違っていないので否定しなかった。
「お好きなように解釈してくださいませ。私はこの先、陛下がどなたを皇后にお迎えしようと、一切反対はいたしません」
アイザックを真正面から見据えて話した。
後悔はないし、覆すこともしない。
「その言葉、忘れるなよ」
「えぇ。もちろんですわ」
こう言ってしまえば話は早い。スカーレットでも他の女性だとしても、誰かが皇后に収まればもう文句は言えずに諦めるしかなくなる。
それに、明日にはスカーレット率いる使節団が隣国へ帰る。
アイザックがどう行動するのかわからないが、どちらにしろ、これで数日間抱かれていた夜は終わりを迎えるのだ。
(抱かれなくなると思うから、こんなに悲観的な気持ちになっているのね。前のようにアイザックと関わらなくなれば、次第にこの想いも消えていくわ)
自分の気持ちに決着をつけるときはいつもこうだ。
最初は悲しみで涙に暮れる日々を送るが、時間がすべてを解決してくれる。
一通り自分の気持ちを話せて満足したリアトリスは、静かに窓の外を眺めていた。
「――っ! 待って! 馬車を止めて!」
窓の外を眺めていたリアトリスが御者に向かい、突然大きな声を上げた。
「は、はいっ!」
「なんだ、急に……」
御者は驚いたようだが馬車を無理やり止めた。
アイザックも突然叫んだリアトリスに疑問の声を投げかけている。
「私は急用ができましたので、ここで失礼させていただきますわ。陛下はどうぞこのままお帰りください!」
アイザックの返事も聞かずにそれだけ話すと、リアトリスは外に飛び出していった。
そして先ほど通り過ぎた目的の場所に向かい駆けていく。
(どこっ……? どこに行ってしまったの!?)
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