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力の乱用は身を滅ぼす2
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「で?その理由ってのは?」
何やら考え込んでしまった俺に、痺れを切らしたのだろう。隣を見ると、難しそうな顔をして、首を捻っていた。俺が考え込んでいる間も、心の中を見ることの、何が嫌なのか、悩んでいたのか……。そう思うと、何だか申し訳ない。
せめて、今からでも、さっさと答えてあげよう。
「まあ、大した理由じゃないんだけどさ、そういう、些細な事で能力を使ってると、単純に、能力なしでは、生きていけなくなる気がしたんだよね」
「どういうことだ?」
……どうも、結論を、さっさと言おう。とし過ぎたがあまりに、間の説明が、言葉足らずになってしまったようだ。うーん。伝えるって、やっぱり、難しい。
「つまり、能力を使うと、その、情報に応じて……例えば、『この人イライラしてるから、近寄らないでおこう』……みたいに行動を変えるでしょ?」
「うん。まあ、そうだな。有益な情報を得られたなら、使わない手はないだろう」
「すると、使っていくうちに、その力なしじゃ、不安になっていくと思うんだ。例えば、目の前にいる人が、何を考えてるか、分からないと、満足に会話できなくなる……とかね」
「ええ……。いやまあ、それは、なる……かも、しれないが……」
最初こそは、若干、引いているようだったが、段々と言葉が、途切れ途切れになっていき……最終的には考え込んでしまった。
「いや、まあ、確かにその可能性は、あるだろう。それも低くない気がする。ただ……、何と言うか……よく思いついたな?」
どういう思考から、そんな言葉が出てきたのか、は、不明だが、どうやら褒められているらしい。褒められてる……んだよな?表情はどう見ても、飽きられてるんだけども。
「そうかな……?普通じゃない?多分、能力を持ってるから、現実的に考えられただけだよ」
俺は謙遜でも何でもなく、そう言うと、八束は
「どーだかね」
と俺に白い目を向けた。
そんな目を向けられるのは、納得がいかなかったので、抗議をしようとしたら、
「まあ」
と先手を打たれた。
……しかし、これが謝罪の可能性もある。そうなると、話も聞かずに、怒るのも違うだろう。怒らなくていいなら、それに越したことはないし。
と、ほんの少しの希望を胸に、耳を傾けることにする。
「お前が、傷つかないに、越したことはないからな。それでいいんじゃね?」
……謝罪ではなかった。なかったけども、どうやら、俺のことを思っているようだ。てっきり、血も涙もない八束のことだから、利点最優先で、反対してくるものだと思ってたけど。
……何と言うか、抗議する気も削がれてしまった。ぶつけられなかった物が、手にあまり、手持ち無沙汰になってしまったので、何となく、八束の方を見る。
「元の世界に戻ることを考えると、それこそ、能力が使えなくなる可能性もある訳だし、……俺としてはそっちの方がいいけど、心の中覗き中毒になってたら、能力ないのはきついだろうなあ……。まあ、何年かすれば、元に戻りそうな気はするけど、その辺は何とも言えないし」
ああ、なるほどね。
確かに、元の世界に戻ったら、能力がなくなる可能性が高いだろう。だって、前の世界には、魔力なんてもの、存在しなかったからね。もし、能力が使えたら、どういう原理だよ。と突っ込みたくなること、間違いなし。
そして、依存症みたいになってたら、確かに、元の世界に帰ったら、キツいだろうなあ。人と話すのが怖くなりそう。最悪、元の世界に帰れる方法を見つけても、帰らないかもしれない……。
そんな、『もしも』を考えて、ぶるり、と体を震わせる。
……自分で選ぶことなんだろうけど、いや、自分で選ぶから、こそ、かな。今では絶対に取らない選択肢を、自分から、取ってしまう。それって、なんかすごく怖くない?うまく言葉にできないけど、自分の大切にしてたものが、否定される感じ……。
そう思うと、やっぱり能力の乱用は、やめた方が良さそう。
人はいつかは、変わる生き物だけど、『人の心を見ないと、生きていけないから、元の世界に帰るのをやめる』なんてのは、どう考えても間違ってるから、予防できるに越したことはないだろう。
と言うか、俺は、帰った時のことまで、考えてなかった。帰りたくなかった……訳ではなく、帰れるビジョンが見えないから、その先が考えられなかったのである。さっき、八束に褒められたけど、八束の方が視野が広い気がする……。俺も見習わないとな。
「そういえば、折角、魔力の出し方も覚えたことだし、帰ったら、あのテレビ見ないとな?」
八束の声は弾んでいた。どうやら、あの……機械?を使うのが楽しみらしい。まあ、魔力を教わってから、まだ一回も使ってないもんなあ。気持ちは分からなくもない。
ただ、この調子だと、俺より先に、使い始めそうである。別にいいけど。
気を付けないといけないのは、テレビに映ったものの出来だ。ないとは思うけど、あんまりにあんまりな物を、映してしまうと、絶対に馬鹿にされる。想像力には自信があるから、ないとは思うけどね。
せめて、八束よりは、上のクオリティじゃないとなあ。
そんなことを、密かに思いながら、八束の言葉に頷いた。
何やら考え込んでしまった俺に、痺れを切らしたのだろう。隣を見ると、難しそうな顔をして、首を捻っていた。俺が考え込んでいる間も、心の中を見ることの、何が嫌なのか、悩んでいたのか……。そう思うと、何だか申し訳ない。
せめて、今からでも、さっさと答えてあげよう。
「まあ、大した理由じゃないんだけどさ、そういう、些細な事で能力を使ってると、単純に、能力なしでは、生きていけなくなる気がしたんだよね」
「どういうことだ?」
……どうも、結論を、さっさと言おう。とし過ぎたがあまりに、間の説明が、言葉足らずになってしまったようだ。うーん。伝えるって、やっぱり、難しい。
「つまり、能力を使うと、その、情報に応じて……例えば、『この人イライラしてるから、近寄らないでおこう』……みたいに行動を変えるでしょ?」
「うん。まあ、そうだな。有益な情報を得られたなら、使わない手はないだろう」
「すると、使っていくうちに、その力なしじゃ、不安になっていくと思うんだ。例えば、目の前にいる人が、何を考えてるか、分からないと、満足に会話できなくなる……とかね」
「ええ……。いやまあ、それは、なる……かも、しれないが……」
最初こそは、若干、引いているようだったが、段々と言葉が、途切れ途切れになっていき……最終的には考え込んでしまった。
「いや、まあ、確かにその可能性は、あるだろう。それも低くない気がする。ただ……、何と言うか……よく思いついたな?」
どういう思考から、そんな言葉が出てきたのか、は、不明だが、どうやら褒められているらしい。褒められてる……んだよな?表情はどう見ても、飽きられてるんだけども。
「そうかな……?普通じゃない?多分、能力を持ってるから、現実的に考えられただけだよ」
俺は謙遜でも何でもなく、そう言うと、八束は
「どーだかね」
と俺に白い目を向けた。
そんな目を向けられるのは、納得がいかなかったので、抗議をしようとしたら、
「まあ」
と先手を打たれた。
……しかし、これが謝罪の可能性もある。そうなると、話も聞かずに、怒るのも違うだろう。怒らなくていいなら、それに越したことはないし。
と、ほんの少しの希望を胸に、耳を傾けることにする。
「お前が、傷つかないに、越したことはないからな。それでいいんじゃね?」
……謝罪ではなかった。なかったけども、どうやら、俺のことを思っているようだ。てっきり、血も涙もない八束のことだから、利点最優先で、反対してくるものだと思ってたけど。
……何と言うか、抗議する気も削がれてしまった。ぶつけられなかった物が、手にあまり、手持ち無沙汰になってしまったので、何となく、八束の方を見る。
「元の世界に戻ることを考えると、それこそ、能力が使えなくなる可能性もある訳だし、……俺としてはそっちの方がいいけど、心の中覗き中毒になってたら、能力ないのはきついだろうなあ……。まあ、何年かすれば、元に戻りそうな気はするけど、その辺は何とも言えないし」
ああ、なるほどね。
確かに、元の世界に戻ったら、能力がなくなる可能性が高いだろう。だって、前の世界には、魔力なんてもの、存在しなかったからね。もし、能力が使えたら、どういう原理だよ。と突っ込みたくなること、間違いなし。
そして、依存症みたいになってたら、確かに、元の世界に帰ったら、キツいだろうなあ。人と話すのが怖くなりそう。最悪、元の世界に帰れる方法を見つけても、帰らないかもしれない……。
そんな、『もしも』を考えて、ぶるり、と体を震わせる。
……自分で選ぶことなんだろうけど、いや、自分で選ぶから、こそ、かな。今では絶対に取らない選択肢を、自分から、取ってしまう。それって、なんかすごく怖くない?うまく言葉にできないけど、自分の大切にしてたものが、否定される感じ……。
そう思うと、やっぱり能力の乱用は、やめた方が良さそう。
人はいつかは、変わる生き物だけど、『人の心を見ないと、生きていけないから、元の世界に帰るのをやめる』なんてのは、どう考えても間違ってるから、予防できるに越したことはないだろう。
と言うか、俺は、帰った時のことまで、考えてなかった。帰りたくなかった……訳ではなく、帰れるビジョンが見えないから、その先が考えられなかったのである。さっき、八束に褒められたけど、八束の方が視野が広い気がする……。俺も見習わないとな。
「そういえば、折角、魔力の出し方も覚えたことだし、帰ったら、あのテレビ見ないとな?」
八束の声は弾んでいた。どうやら、あの……機械?を使うのが楽しみらしい。まあ、魔力を教わってから、まだ一回も使ってないもんなあ。気持ちは分からなくもない。
ただ、この調子だと、俺より先に、使い始めそうである。別にいいけど。
気を付けないといけないのは、テレビに映ったものの出来だ。ないとは思うけど、あんまりにあんまりな物を、映してしまうと、絶対に馬鹿にされる。想像力には自信があるから、ないとは思うけどね。
せめて、八束よりは、上のクオリティじゃないとなあ。
そんなことを、密かに思いながら、八束の言葉に頷いた。
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