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大きなかぶ編

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編集者は、俺の原稿を読み終わるとこう言った。

「『大きなかぶ』だね。みんなで協力するという流れ、悪くない」

「そうですか。それはよかったです」

「ただ、『大きな株』が、具体的にどの会社をイメージしたものか、読者に伝わってこないんだよ。フィクションだとわかっていても、読者はあの会社のことかな、と想像して読みたいものだからね」

「会社?」

「『大きな株』っていうくらいだから、大企業の株なんだろ?」

「いや、そっちの株じゃないんですけど……」

「株を抜いた後の、総会屋対策とかのエピソードもあると盛り上がったんだけどな」

「いや、そっちの株じゃ……」

「インサイダー取引スレスレの場面とかあってもよかったんじゃないかな」

だめだこりゃ。全然話が伝わってない。
俺は次の出版社へと向かった。

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