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一休さん編

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編集者は、俺の原稿を読み終わるとこう言った。

「読ませてもらったよ。『一休さん』」

「どうでしたか」

屏風びょうぶの中の虎を退治してくれ、と一休さんに頼むシーン、あるね」

「はい。それで、退治しますので屏風から出してください、と切り返すお話です」

「虎というのがどうもね……パンチに欠けるんだよ」

「虎なのに、ですか?」

「例えば……殿様は、絵の中の少女に恋をする。一休さんに頼むんだ。絵の中の少女を出してくれって」

「……なんか、痛々しいですね」

「二次元の彼女に恋をしている読者さんも多いから、共感されるんじゃないかな」

「はぁ、でも、これはトンチ話なので……」

どうやら、訪れる出版社を間違えたらしい。
俺は次の出版社へと向かった。

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