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決着
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「本日、〇〇マリーナで男性の遺体が発見されました。佐々木裕也さん、24歳。遺体には、刺された跡があり、殺されてから海中に投棄されたものとみて、警察は捜査本部を設置……」
なんと! 携帯の持ち主、佐々木裕也は殺されていたのか……
どうりで、本人が探しに来ないわけだ。
沙紀は裕也の死を知っているのだろうか?
しかし、沙紀からは普通にメールが来た。
沙紀は遠いところに旅行に行っているので、こちらで起きた殺人事件のニュースは放送されていないようだった。
いずれは、沙紀も真相を知ることになるだろう。
沙紀は、死んだはずの裕也とメールをしていたことになってしまう。
俺は、その後も沙紀とのメールを続けていた。
自意識過剰と言われてしまうかも知れないが、本物の裕也よりも、俺の方を沙紀は気に入っている。そんな気がしてきた。
そもそも、本物の裕也は死んでしまっている。
俺が裕也の代わりに、沙紀の新しい彼氏になりたい。
そんな妄想すら抱いてしまう。
もちろん、それは叶わぬ願いだ。
裕也とは似ても似つかない俺の姿を見れば、沙紀はショックを受け、幻滅するであろう。
しかし、俺は沙紀とのバーチャルな恋愛にすっかりはまってしまっていた……
沙紀はメールで、今の裕也は優しくて大好き、なんて言ってくれる。
その愛のささやきが、ダメ人間である俺の自己肯定感を上げてくれた。
過去の裕也のメールを読み返しているうちに、俺は沙紀が急に旅行に出た理由が想像できた。
沙紀は、裕也からの束縛から逃れるために、裕也に黙って長期の旅行に出たのだろう。
裕也のメールは、沙紀の行動をいろいろ指図するものが多かったが、俺が書くメールは、沙紀の話に共感する内容で書くことがほとんどだ。
それで、裕也が優しくなったように思えたのだろう。
俺は沙紀にメールした。
「沙紀が旅行に行った理由、分かったよ」
さすがに、返信はなかった。
それはそうだろう。
束縛から逃れるため、なんて本人が言えるはずがない。
そろそろ潮時だ。
いずれ、携帯の料金が未納になって、使用が止められるだろう。
今のうちに、沙紀に真実を打ち明けよう。
裕也は亡くなっている。
そのことを沙紀はまだ知らない。
いつまでも騙し続けるのは心苦しい。
そう決意した時、沙紀からの返信が来た。
「明日、帰るね。並木通マンション505号室で13時に会いましょう」
そうか、ついに帰ってくるのか。
俺は、本物の沙紀に会いたいと思っていた。
それが叶うのだ。
そして、本物の沙紀に面と向かって真実を伝え、俺の恋心も伝える。
沙紀は、恋人の死にショックを受けるだろう。
そして、俺の姿を見て、沙紀はきっと、がっかりするだろう。
それでもいい。
俺のバーチャルな恋愛は、明日で終わる。
なんと! 携帯の持ち主、佐々木裕也は殺されていたのか……
どうりで、本人が探しに来ないわけだ。
沙紀は裕也の死を知っているのだろうか?
しかし、沙紀からは普通にメールが来た。
沙紀は遠いところに旅行に行っているので、こちらで起きた殺人事件のニュースは放送されていないようだった。
いずれは、沙紀も真相を知ることになるだろう。
沙紀は、死んだはずの裕也とメールをしていたことになってしまう。
俺は、その後も沙紀とのメールを続けていた。
自意識過剰と言われてしまうかも知れないが、本物の裕也よりも、俺の方を沙紀は気に入っている。そんな気がしてきた。
そもそも、本物の裕也は死んでしまっている。
俺が裕也の代わりに、沙紀の新しい彼氏になりたい。
そんな妄想すら抱いてしまう。
もちろん、それは叶わぬ願いだ。
裕也とは似ても似つかない俺の姿を見れば、沙紀はショックを受け、幻滅するであろう。
しかし、俺は沙紀とのバーチャルな恋愛にすっかりはまってしまっていた……
沙紀はメールで、今の裕也は優しくて大好き、なんて言ってくれる。
その愛のささやきが、ダメ人間である俺の自己肯定感を上げてくれた。
過去の裕也のメールを読み返しているうちに、俺は沙紀が急に旅行に出た理由が想像できた。
沙紀は、裕也からの束縛から逃れるために、裕也に黙って長期の旅行に出たのだろう。
裕也のメールは、沙紀の行動をいろいろ指図するものが多かったが、俺が書くメールは、沙紀の話に共感する内容で書くことがほとんどだ。
それで、裕也が優しくなったように思えたのだろう。
俺は沙紀にメールした。
「沙紀が旅行に行った理由、分かったよ」
さすがに、返信はなかった。
それはそうだろう。
束縛から逃れるため、なんて本人が言えるはずがない。
そろそろ潮時だ。
いずれ、携帯の料金が未納になって、使用が止められるだろう。
今のうちに、沙紀に真実を打ち明けよう。
裕也は亡くなっている。
そのことを沙紀はまだ知らない。
いつまでも騙し続けるのは心苦しい。
そう決意した時、沙紀からの返信が来た。
「明日、帰るね。並木通マンション505号室で13時に会いましょう」
そうか、ついに帰ってくるのか。
俺は、本物の沙紀に会いたいと思っていた。
それが叶うのだ。
そして、本物の沙紀に面と向かって真実を伝え、俺の恋心も伝える。
沙紀は、恋人の死にショックを受けるだろう。
そして、俺の姿を見て、沙紀はきっと、がっかりするだろう。
それでもいい。
俺のバーチャルな恋愛は、明日で終わる。
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