約束の沖縄

神楽堂

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第2話 破壊工作訓練

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宮里たちは、連日、破壊工作の特訓を行った。
B-29の機体はとても大きい。
その機体に爆弾を取り付けなくてはいけない。
ひもの先に時限爆弾をつけ、それをぐるぐると振り回して敵機の機体に投げつけるのだ。
敵地での作業だ。
もたもたしていると、発見されて撃ち殺されてしまう。
1回で成功させないといけない。

基地では、B-29の実物大模型を作り、それを使って爆弾を投げつける練習を行った。
宮里も、はじめは爆弾を投げても敵機に届かなかったが、練習を重ねてだんだんと要領を得ていき、確実に投げることができるようになった。

しかし、敵の飛行場に降り立っての破壊工作となると、生きて帰れない可能性の方が高い。
空挺隊員たちの士気が下がることもあった。
そんな空気を察した隊長は、ある作戦を明かした。
「ここにB-29の詳細な説明書がある。陸軍航空隊は、これを解読し、B-29の操縦方法を理解した。万が一の際は、B-29を奪い、航空隊員がこれを元に操縦しておまえたちを本土に戻してやるとのことだ」

あの憎きB-29を奪い取る?!
空挺隊員たちは大いに沸いた。

こうして、破壊工作の特訓を続けていたが、一向に出撃命令は出なかった。

どうやら、戦局がさらに悪化し、サイパン出撃の拠点となる硫黄島が、米軍の攻撃を受けているとのことだった。

硫黄島に上陸した米軍は、多数の小型戦闘機を配備してきた。
B-29を護衛するための戦闘機である。
戦闘機は小型であるため、航続距離が短い。
そこで、日本本土に近い硫黄島に、
敵は多くの戦闘機を配備したのだった。

空挺部隊は、作戦の変更を余儀なくされた。

「我が空挺部隊は、硫黄島の飛行場に降下し、地上の敵戦闘機の破壊工作を行う」

訓練内容も、任務に合わせて変更された。
戦闘機は、爆撃機に比べると小型である。
手榴弾を機体の隙間や、エンジンに投げ入れることで破壊ができる。
さっそく敵機の模型を使い、手榴弾を投げ入れる訓練を行った。
手榴弾を着実に投げ入れないと、跳ね返って出てきた手榴弾に自分がやられてしまう可能性がある。

元々、精鋭部隊として編成されている空挺部隊であり、選ばれし者としての誇りもある。
訓練は皆、真剣に行っていた。

いつ出撃命令が出ても大丈夫。
皆、自分の力量に自信を持っていた。

しかし、出撃命令が出る気配はなかった。
軍の上層部は、硫黄島の奪還は絶望的と判断したのだった。
日夜、こんなにも特訓を重ねているのに、自分たちの活躍の場がない。
部隊内の不満が高まってきた。
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