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さて、タイムリープもののファンタジーを書くと決めたのはいいけど、もう少し内容を詰めないと。
やっぱり、自分自身の体験を基にした方が説得力あるだろうな。

私って時は戻せるけど、結果を変えているわけではなかった。
私の能力では、結果が分かる前の状態でないと、時を戻せないからだ。

人の運命って決まっていて、人は運命に抗えない。
そして、時を戻せても必ずしもいい結果になるとは限らない。
私は能力を持っていながらも、そんな虚しさを感じていた。

時を戻せても、運命は変えられない私……
よし、こういうテーマでお話を書いてみよう!
方向性が決まった。

あらすじを考えてみた。
主人公は、大好きな子に告白するがフラれてしまう。
時を戻して、何度でも告白にチャレンジ。
なんとか好きになってもらえるようループして頑張る、というお話だ。

私は毎日少しずつ、話を書き進めていった。

う~ん……
私はなんだか、主人公がかわいそうに思えてきた。

頑張っても頑張っても、主人公はフラれてしまう。
やっぱり、努力が報われる話の方がよいのだろうか。
主人公に感情移入してしまった私は、なんだか筆を進めるのが辛くなってきた。

仕方ない……能力を使おう……

「時よ戻れ!」

私は、執筆開始時に戻って書き直すことにした。

* * * * * *

時を戻した私は、次にこんな話を書いてみることにした。

大切な人が死んでしまうのを防ぐために、主人公が時を戻す話だ。

時を戻す能力は、自分のために使うよりも、誰かのために使う話の方がいいと思ったからだ。
私自身、この能力を人のためには使っていない。そういう罪悪感もあった。
私が書く物語の主人公には、時を戻す能力をぜひ、人のために使ってもらいたい。
そう思って、私は筆を進めた。


かくして、私は物語を書き終えた。
こんな話だ。

主人公の大切な人が事故で死んでしまう。
主人公は時を戻し、その事故を防ごうとする。
しかし、運命はなかなか強固であり、主人公の努力は実らない。
何度やり直しても、事故は起きてしまい、大切な人は死んでしまうのだ。
それでも主人公はくじけず、時を戻しループをし続ける。
主人公はついに運命に抗い、大切な人が死ぬことを防ぐことができた。

書き終えてから、私は思い出した。
そもそも、私はどんなファンタジーを書くつもりだったのかを。

時は戻せても結果は変えられない。
そういう、運命の重さのようなものをテーマにするはずではなかったのか。

運命は変えられる、というお話を書くのか、
運命は変えられない、というお話を書くのか。
私の中で、方向性がブレてしまった……

ハッピーエンドにするのか、
バッドエンドにするのか。
これは大きな問題だ。

作品の投稿期限が迫ってきた。

私は念じた。

「時よ戻れ!」
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