ホラー ~怨霊少女~

アイギス山本

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~怨霊少女~

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「━━━ねぇねぇ、知ってる…?学校の裏門から出た道の先に、小さな祠があって………夜中の零時に携帯で写真を撮ると………幽霊が写るんだって!」

「え~…?本当に~…?」

「ホントだって~!昨日部活の先輩に聞いたんだから~」

「そもそもさぁ…祠なんてあったっけ?」

「うーん…裏門から出たこと無いしわかんないなぁ~…」


 調子者で小柄なすず、人一倍オシャレに気を遣ってる彩香あやか、切れ長の目に高身長のクール美人麗香れいかの三人が…学校の昼休みに怪談話で盛り上がっていた。

 ━━━季節は夏休みも終わり、朝晩が少し冷えてきたとは言え…まだまだ夏の気配が残る暑い時季の事だった………三人の話が聞こえた周りも巻き込んで、次の土曜の深夜に肝試しをする事になったのだった………

 参加人数は十人…怪談話をしていた三人に、話を聞いていた野球部とサッカー部の男子三人…それから怪談話を教えた先輩と…先輩のクラスの人、合わせて男女二人ずつのちょうどペアになる形だ。

 ………深夜、学校の裏門の前に十人が集まり…これからペアで順番に"小さなほこら"で写メを撮って、正門前に集合する流れだ。


「━━よーし、全員ペアが決まったな?それじゃあ坂下木村きむらの先輩ペアが一番最初と最後に行くから、間は後輩組お前らで順番決めろよな?」

「「「はーい」」」


 男女に別れて、くじを引く………と見せかけて、女子は彩香と麗香は野球部の二人が狙いのようで「決まった~?何番だった~?」…と番号を聞き出し、狙い通り彩香はピッチャーの謙一けんいちと、麗香は4番バッターの隆介りゅうすけと…鈴はサッカー部のしゅうのペアとなった。




 ~~~彩香side~~~




「謙一くん怖いの平気…?私ちょっと苦手なんだよね…」

「俺は平気だぜ?だから俺に任せとけば怖くないさ!」

「ふふ…ありがと。じゃあ…手……握っても良いかな…?」

「お、おぅ…!」


(怖いの…というかビックリさせられるのが、苦手なだけなんだけど…上手く手も握れたし、来て良かった~)


 内心そんな事を考えつつ他愛ない会話を続けていると…目的地の"小さな祠"が見えてきた。

 二人揃って携帯で写真を撮ってみたけど………何も写ることはなくて…「結局噂か~…」と二人して笑い、正門前へと向かった。

 …何も起こらなかった為、少し緊張してた空気は無くなり…楽しく談笑しながら歩いて正門前たどり着くと━━━





 ━━━何故か…正門が開いていた………





 若干疑問に思いつつ…先に来ているはずの先輩達を探すと………学校の敷地に入っており、手を振っているのが見えた。


「よ、どうっだった?何か写ったか?」

「何も………先輩達はどうだったんです?」

「こっちもダメだね~何にも写らなかった」


 その後も麗香ペアに鈴ペアが合流したが、結局誰も幽霊が写らなかったと話し………最後の木村先輩ペアを残すだけとなった………しかし、もう着いていてもおかしくないのに…一向に木村先輩ペアは来なかった………


「…ったく!何してんだよあいつらは…!」

「ねぇ~…もしかして先に帰ったんじゃないの…?」

「…仕方無い、電話かけてみるか………うおぉっ!!?」


 坂下先輩が連絡しようと、携帯を取り出したところ……いきなり奇声をあげた…!

 皆が「どうしたんだ?」と携帯を覗き込むと………そこには━━━





 ━━━髪の長い女が"小さな祠"の横に立っていた━━━





 あ、あり得ない…!さっき見せてもらったときには何も写ってなかったのに…!

 不安に駆られた全員が、携帯の写真を確認してみると………全員………髪の長い女が写っていた………しかも━━━


「おぃおぃおぃ…!これ、どんどん近づいてってないか!?」


 そう…坂下先輩達の写真は、まだ小さな祠の横に女が立っていたが………私…麗香…鈴と………順番が進むにつれ、女が近づいてきていた…!そ、それに…!


「す、鈴の写真………ほとんど目の前じゃんに襲われたんじゃないか"と考え……背筋が凍った…

 しかし、誰かが声を上げる前に…正門に木村先輩達が佇んでるのに気付き…ホッ…として早く帰ろうと、全員で木村先輩達の元へ近づいた━━━


「遅かったじゃないか木村、心配…し………ひいぃいぃぃぃいぃいぃぃ!!?」

「っ!?きゃあああぁぁぁあぁあぁ!!!」





 ━━━そこに立っていたのは………顔に、携帯が、奥深くまで突き刺さり、血だらけになっている………木村先輩達だった…





 明らかに死んでいると思われる二人が…立っている事にすでに…今までにないほどの恐怖を感じていたが………畳み掛けるように………道の先から━━━携帯に写っていた"女"がこちらに近づいてきていた…!


「に、逃げろぉぉぉぉ!!!」

「い、いやぁぁぁぁぁ!!!」

「ヒィイィィィィィィ!!!」





 ━━━全員が………"女"から逃げるように校舎内へと入っていった………


 そこが、逃げ場の無い地獄だとは知らずに━━━





 ~~~坂下先輩side~~~





「はぁ…!はぁ…!何なんだ…!アイツはいったい何なんだ…!」

「し、知らないわよ…!」


 俺は今、一階の教室にペアだった優香里ゆかりと隠れていた…


「くそっ…!さっきの木村達の顔が、焼き付いて頭から離れない…!」


 …あの時、声をかけるのに一番近くまで行ったのは俺だった………その惨たらしい姿をハッキリと見てしまった…!

 どうしてこうなった…!俺はただ"あいつ"に肝試しを誘われて来ただけだって言うのに…!

 はぁ…!はぁ…!ヤバイ…!まだ心臓がバクバク言ってやがる…!


「な、なぁ…!何か言えよ…!お前もあいつらが死んだの見ただろ…!?」


 恐怖からか…誰かと話してないと不安でしょうがないのに、優香里はあれから一度も声を出そうとしなかった為………少し怒りを込めて隣を見ると━━━





 ━━ドアの隙間から伸びた髪が………優香里の喉を、マジック程の細さに締め付けていた………顔はパンパンに膨れ………目玉も飛び出してしまっていた━━





「━━ひ、ひいぃいぃぃぃいぃいぃぃ!!!?」


 慌てて距離をとって、教室から逃げ出そうとしたが………


「あ、あ、開かない…!!!開かない!!!くそっ!くそっ!開けよっこのっ!!!」


 ガタガタッ!と力の限り扉を開こうとするが………1mm足りとも開くことは無く…





 ………不意に………背後に気配を感じた………





 壊れた人形のように、ギギギ…と後ろを振り返ると━━━





 ━━あの女の幽霊が…首を締め付けたままの優香里を…髪で吊り上げた状態で、すぐ後ろに立っていた………





「は、はひ…ひぁ………ぅ………」


 あまりの恐怖に崩れ落ち、動けなくなった坂下に………女の髪が、まるで獲物を狙う蛇のようにユラユラ伸びてきた………


「ヒィッ……た…たしゅけ………」


 ガチガチと歯を鳴らしながら懇願しようとしたが━━━言い終わる前に、髪が一気に伸びて…





 見開いた目から侵入し……潰し、えぐり………耳から脳をかき混ぜ………鼻と口から大量に潜り込み、内臓を破裂させた………





「えbxjふぃskjdhxysっj!!!、、!!!!」


 そして、坂下は………声にならない悲鳴をあげ………ピクリとも動かなくなった………





 ~~~修side~~~





 修は一人…サッカー部の中でも一番の足の早さで、誰よりも早く校舎内へと逃げ込んだ後………ふと…このまま校舎内にいても追い詰められるだけだと考え、すぐさま裏口へと急いで向かっていた………


「はぁ!はぁ!冗談じゃない…!死んでたまるか…!」


 愚痴りつつも、スピードは落とさずに走り抜けると裏門が見えてきた…!

 門は閉まっていたけれど………よじ登れば簡単に越えられる程度の門だから、このままの勢いを殺さずに一気に上まで登ってしまったところで━━━





 ━━━ガッ!…と誰かに足を掴まれてしまった………





 恐る恐る…振り返ると………木村先輩がそこにいた…!





「ひぃ…………!」


 ………だが…悲鳴をあげる前に………物凄い力で引っ張られると、そのまま地面へ叩きつけられた…!


「がぁ"…!ぐべっ…!ぎゃ…!ぎっ…!」


 その後も、木の枝を振るかのように何度も…何度も……何度も地面に叩きつけられ………手足は折れ曲がり…内臓は破裂し…頭は潰れ、脳が撒き散らされ………やがて、骨という骨が粉々になった頃………掴んでいた足が千切れ………





 修"だった"ものが、べちゃっ………と遠くの方へ飛んでいき、地面のシミとなった………





 ~~~麗香・隆介side~~~





 私達二人は恐怖から少しでも離れて、安心できるように二階の自分達の教室に身を潜めていた………


「━━ねぇ………あの女の幽霊………何だと思う…?」

「あぁ?知るかよそんなの…!それよりこれからどうするかだろ…!」

「聞いて、幽霊の行動には意味があるはずなの。だからそれを解決するか取り除けば、助かる可能性があるはずよ…!」

「な、なるほど…!確かに映画とかだとそうだよな…!」


 先程まで恐怖で青い顔をしていた隆介だが………麗香の話に………まるで自分が主人公になった錯覚を起こしてしまった………ここは現実で都合のいい展開なんて、あるはずがないのに………


「それでね………あの女の幽霊に………どこか………見覚えがあるような気がするの」

「何っ!?ホントか…!?」

「うん………でも全く思い出せなくて………」

「そ、そうか………うーん………確か………身長は結構低かったよな…?髪は長くて腰近くまであったし………」


 二人がそれぞれ幽霊を思い出そうとするが………恐かったのと、離れていた為ほとんど覚えていなかった………


「そうだ…!さっきの写真がある…!」


 小さな祠で撮った写真に………幽霊が写ったことを思い出した麗香は携帯を取り出し、電源ボタンを押すが………何故か………画面は光らず、真っ黒いままだった………


「あ、あれ…?充電はまだまだあったハズなのに………」


 しばらく電源ボタンを押したり長押ししたりしたが………一向に携帯は画面が黒いままだった………


「あ~…!もう!何で…!」


 ………黒い画面に苛立ち………液晶部分に触れたところ━━━





 ━━━サワっ………と、髪の毛を触った感触が返ってきた………





「━━━ヒッッッ!!?」


 その感触がとても不快で………気味が悪くて………慌てて携帯を落としてしまった………


「お、おいっ…!どうしたんだよ!?」

「け、毛、毛が、髪の毛が…!画面にびっしりとッッッ!!!」


 隆介が慌てて床に落ちた携帯を見ると………うぞうぞうぞ…!と髪の毛が伸びて、こちらに近づいてきていた…!


「に、逃げるぞっ!!!」

「ま、待って…!━━きゃ、いやっ、放して!!!」


 麗香は腰が抜けていたのか………立ち上がることが出来ず………伸びてきた髪の毛に絡め取られてしまった………

 それを見た隆介は━━━麗香を置いて教室から出ようとした………





 だが━━━





 扉に手をかけた瞬間………ポケットに入れていた携帯から髪の毛が飛び出してきて、麗香と同じように捕まってしまった………





 そして………携帯に引きずり込まれだした………





「い、いや!いや!無理だからっ!入らないからっ!たすっ、助け…!━━━ひぎぃ!?ぎゃっ!がっ!げっ…!」

「がああぁぁぁ!!!放せ放せ放せ放せ放せ………ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」





 バキッ、ボキッ、ブシャッ………と携帯の画面に入る大きさに、折られ………縮められ………潰され………





 後に残ったのは………血だまりに浮かぶ二人の携帯だけだった………





 ~~~謙一side~~~





「━━━ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁ………」


 遠くから、隆介の悲鳴が聞こえる………謙一は一人、恐怖に震えながら………廊下で走り疲れた身体を休めていた……… 


「はぁ、はぁ、…何だよっ!あの女はっ!クソッ!死んでたまるか…!!!」


 呼吸を整えながら………左右どちらから来ても逃げれるように神経を尖らせていると━━━





 ━━━ピロリン、ピロリン………と携帯が鳴り出した………





 謙一はビクッ!としつつも………携帯を取り出し………着信画面を見ると━━━





 ━━━女の幽霊が写っていた………





「うわあぁああぁぁぁぁぁっ!!!」


 恐怖に駆られた謙一は………流石ピッチャーという具合に遠くまで携帯を投げた………

 カン、カン、カシャー………と離れていき………着信音が聞こえなくなると、少し安心して力を抜くと………





 ━━━ピロリロリン、ピロリロリン………と真後ろからさっきの着信音が聞こえてきた…!





 ビックリして振り向くと………投げたはずの、自分の携帯が床に落ちていて………幽霊から着信が来ているようだった………


「ああぁぁあぁぁあぁぁ!!!」


 ━━━今度は拾うのも恐くて、携帯を蹴り飛ばしたが………また…いつの間にか背後で携帯が鳴っており………恐怖に耐えられなくなった謙一は━━━携帯を何度も踏みつけ壊したのだった………


「はぁはぁはぁ…や、やった………ははっ…やってやったぞ…」


 力が入りすぎたのか………ひどく疲れたが…着信音がもう聞こえることが無い事に安堵して振り返ると━━━





 ━━━触れてしまいそうなほど近くに、女の幽霊が立っていた………





「ひぃああぁぁぁあぁあぁぁ!!?」


 謙一は驚きのあまり腰を抜かし…動けなくなったところで………女は謙一の口を大きく無理やり開けて、閉じれないようにした━━━

 ━━━そこで初めて謙一は女の顔を見たが………まるで…長時間水に浸かったようなブヨブヨの青い皮膚に………目玉が無く、暗く…大きな穴が開いた顔に………恐怖から涙が溢れた………

 すると………女は謙一に顔を近付けると………大きく口を開いた━━━





 ━━━そして、口から出てきた………蛆や…ゴキブリや…ムカデ等を………大量に謙一の口に流し込んだ………





「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」


 気持ち悪さと………身体の内側から喰い破られる感覚に………謙一は痙攣を起こしながら、悲鳴をあげると………動かなくなった………

 女の幽霊は満足したのか………いつの間にか消えていたが………謙一の身体からは、咀嚼する音が体内から続いていた………





 ~~~彩香side~~~





「━━━ちくしょー…!いったい私が何をしたって言うの…!」


 彩香は現在玄関に戻っており………外の様子を窺っていた………

 時折聞こえる悲鳴に………自分も殺されるんじゃないかと、不安と憤りを感じながら………正門に死んだ木村先輩達が居ないことを確認した彩香は………急いで正門から出ようと走り出した…!





 ………しかし………そんな彩香の行動を阻止するように………正門がひとりでに閉まりだした………





「ちょ、ちょっと!待って!閉まらないで!お願いぃぃ!!!」


 彩香の声も虚しく………目の前で正門は閉じてしまう………そして━━━いつの間にか背後に立っていた木村先輩達に取り押さえられてしまった………


「は、放して!!!放してよ!!!放せーーー!!!」


 ………彩香は渾身の力で振りほどこうと暴れるが………少しも動かすことができなかった………やがて…





 ……ひた…ひた…ひた……





 …と女の幽霊が近付いてくるのが見えて………恐怖のあまり、シャーーー…と尿を漏らしてしまった………


「いや…いや…いや………誰か………だれか………」


 そんな………顔を真っ青にして尿を撒き散らす彩香に━━━





「ふふふ………いい気味………少しは似合う格好になったんじゃない?」





 ━━━そんな声が聞こえてきて………視線を動かすと━━━そこには、今まで見たことがない…冷たい表情をした………"鈴"が立っていた………


「な、なんで………」

「何で…?そう………分からないなら教えてあげる………これはね………あなた達に自殺に追い込まれた"佐々木 春菜ささき はるな"と、親友だった私の━━━復讐なのよ!!!」

「は…るな…?こ、この幽霊が春菜だっていうのッ…!?」


 彩香は…目が飛びだすくらいに驚き………顔色は青から白へと変わっていった………


「長かったわ…この一年………あなた達に復讐するために、同じ高校に転校して…あなた達の事を調べあげて………お調子者のキャラを演じ、あなた達と仲良くなって…ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずぅぅぅっと!…全員が集まるように調整してたんだから………」


 …鈴は普段からは考えられないような口調と雰囲気を纏い………彩香達の罪と…怨みを述べ続けた………


「━━━あのクソ運動部三人にレ○プされて、脅されてたよね?それなのにあんたらは…それを知った時、あのクソと関係を持ったことに逆ギレして先輩どもと組んで麗香と一緒にリンチしたよね?…しかもご丁寧なことにその時の画像をクラス全員に送りつけ、辱しめて………自分達に逆らえないようにしていじめ続けたよね?ねぇ~?━━━そんな事して、許されると思ってんの」


 ………彩香は………それに答えることが出来なかった………ただただ顔色を悪くさせ、ガタガタと震えていた………


「━━━私は春菜を探し回ったわ……遺書は見つかっても死体がなかったから……見つけたのは3km下流の橋の支柱だった………春菜の顔や身体は酷すぎて誰か分からなくなる程だった………だけど幽霊になった春菜がそこに居てね?色々教えてもらったの………その時にね?誓ったの………絶対に許さないって…!」


 そこまで言うと…鈴は春菜の幽霊に向き直り優しい表情で話しかけた………


「春菜………この女を殺せば復讐は完了するけど………春菜も消えちゃうんだよね…?」

『………うん………復讐を果たしたら…思い止まることが無くなっちゃうから………』 

「そうだよね………それでね………私考えたの━━━





 ━━━春菜、私の中に入らない…?」





 その提案に、春菜は驚き…!否定した。


『………ダメ…!そんな事したら、鈴が………生きたまま怨霊になっちゃう………』

「ふふ………いいの。春菜とこのままお別れするより………私の中で一緒に過ごした方が何倍も嬉しいの」

『………鈴………』


 ………二人は見つめあい………そして………鈴の意志が堅いことを察した春菜は、『ありがとう………』と言い………鈴と重なるように消えた………





 ━━━しばらくの間、鈴は動かなかったが………やがてゆっくりと身体を動かすと━━━





 ━━━彩香の右目に指を突き刺し、かき回したあと………目玉を引っこ抜いた………





「ぎぃ"や"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!!」

「『ふふふ………心地良い悲鳴ね~………安心して?あなたは特別に、ゆっくりと………殺してあげる』」





 そう言うと鈴は、奪った目玉をコリコリ…と食べて、三日月のように口を歪めると━━━更なる恐怖を…彩香に与え続けたのだった………





   *****





 ━━━男女、合わせて九人が行方不明になった事件は…かなり大きなニュースになったが………手がかりが一切無く………何も進展が見られないため、数ヵ月もすると普段の日常に戻り………事件のことも忘れ去られていった………


『━━━ねぇ~?鈴?これからどうする?』

「…ん?どうするって?」

『だって…せっかく二人でずっといられるようになって………怨霊の力もそのまま使えるんだよ?━━━何か勿体無い気がして………』

「ん~…そうだね~………あ!じゃあさ、クソみたいな奴を探してさ………同じように殺さない?」

『それ良いね~!まるで正義のヒーローみたい!』

「でしょ~?━━━じゃあ今度の土日は、どっか遠くに行ってみようか?」

『賛成~』





 ………事件の後、鈴の様子が変わったことに………皆は気づいていたが………仲の良かった人が全員行方不明となったことで、ショックを受けたという認識で………心配はされても、疑問には思われなかった………





 そして………生きたまま怨霊となった少女は、人知れず………犯罪者どもを血祭りにしていったのであった………





 ~~~Fin~~~
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