ジョブスキル『座敷わらし』で、幸せな家を作ります!

鹿音二号

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9.仲間です

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子爵はシュモークという優しげな騎士の人を部屋に入れてから、話し始めた。

「まず、君がどうして奴ら……あの襲ってきた者たちに会ってしまったのか、教えてくれるか」
「はい」

目が覚めて、水をもらおうと厨房に行こうとしたところから話した。けれど、偶然としか言いようがない。

「……奴らは刺客と見ていいだろう。剣も持っていた」
「あの、刺客って誰が狙われたんですか!?」
「分からない。その……聞けなかったのだ」
「え?……!?」

そうだ、ロダンと一緒に転がって、動かなくなった。

「ロダンは!?ロダンは無事なんですか!?」
「ああ、ロダンは無事だ。けれど……」
「ロダンが……あの刺客を、殺したんですか」
「……」

子爵は眉間に深く皺を刻んで、頷いた。

「そんな……」
「今は、部屋におとなしくしている。念のため、見張りをつけたが……」
「でも、私を助けようとして、ですよね?」
「状況が分からない。それも聞きたかった。だが、嫌なことを思い出させるかと思って……」
「大丈夫です。ロダンは……」

一通り、思い出せることはしゃべった。
どう考えても、ミカが危ない目にあっているのに気づいて助けてくれたとしか思えない。
なぜ、刺客に襲いかかって、返り討ちにしてしまったのか、それはわからないけれど。

「ロダンは話さないんだ。ブローたちが何があったか聞いてくれたが何も……もともとしゃべらない子だと?」
「はい。私も一度しかしゃべったことはないです。でも……仲間です」
「そうか。分かった」

子爵はミカの言いたい事を分かってくれたようだ。

「あの、ロダンに聞いてみます、私が」

子爵は労しそうな顔でミカを見た。

「……大丈夫かい?彼が君に襲いかかるとは思わないが」
「ええ、仲間ですから。それに、助けてくれたお礼も言いたいです」
「……分かった。けれど、気を抜かないでくれ」

何か、子爵は隠していることがあるのではないか。
そう思ったけれど、ミカは今はおとなしく頷いておいた。
ロダンがいるという部屋に行くと、さっきの客間と変わらないけれど、騎士がふたりドアの前に立っていた。

「解錠を」

子爵が言うと、騎士の一人が扉に向かった。

「鍵が閉まってるんですか!?」
「念のためだ」

そんな犯罪者みたいに、と一瞬怒りそうになったが……そうだ、彼は人を殺していたのだ。
まだ牢屋に入れられないだけマシだった。

「ロダン!」

彼はベッドに腰掛けていた。
前と変わらない無表情だったけれど、ミカを見ると少し目に光が瞬いた気がする。

「大丈夫?怪我はしてない?」
「……」

ゆっくりと、首を上下してくれて、ほっとした。
「あの、私を助けてくれたんでしょう……?ありがとう。命の恩人だよ」

またゆっくりと首が上下する。

「それで……君が、どうしてあそこにいたのか、知りたいんだ。言ってくれる?」

ロダンは少し考えるように視線を下に落とした。

「……君が、部屋を出ていって……」
「え?気づいたの?眠っていなかった?」
「……目が覚めた」

ロダンの部屋は隣だ。なのに、あの静かなドアの開け閉めに気づいたのだろうか。

「……それで、後をつけた」
「え!?全然気づかなかった!なんで?」
「……」

ふい、と顔をそむけるロダンの、無表情ながらに何かもどかしそうな気配を感じる。

「何を言っても怒らないよ、大丈夫」
「……、守ろうって……」
「守る?私を?」
「君は襲撃に気づいていたのか?」

子爵の鋭い言葉に、はっとした。そうだ、危険があるから、と分かっていたことになる。
しかし、ロダンは不思議そうに首を傾げた。

「……夜は……あぶないって」
「うん……?あ、あの家にいたときのこと!?」

そうだ、ミカも来た時に繰り返しみんなから聞いていた。
それがロダンに刷り込まれていたとしたら。
子爵がなんのことだと聞いてくるので、スラムにいたときの子供たちの掟を話す。

「だから、ミカを見守っていたと。なんという……」

苦笑した子爵は、どうやらロダンをいくらか疑わなくなったようだ。

「それが功を奏したな。刺客は……倒した黒い男たちは、どうして君は……殺したんだ?」
「ミカが……あぶないって。だから……」
「それでも、君の技量なら、殺す必要はなかったはずだ」

子爵が淡々と言って、やっとミカは何が聞きたいのか分かった。

「ロダン、どうして黒い人たちに、こう、暴力をふるったの?」
「……倒しちゃ悪かった?」
「そうじゃなくて……動かなくなるまでしなくてもよかったじゃない?」

何を言われているのかわからないと、ロダンは目をぱちぱちと瞬かせた。

「えっと……」
「いや、分かった、ありがとう」

子爵がすっとミカの前に手を出した。これ以上は話さなくていいという合図だろう。

「ロダン、疲れているだろう、今日はここでゆっくり休みなさい」

子爵は立ち上がった。

「鍵は掛けないでおこう。外に出たい時はそこに立っている人に声をかけなさい」
「……」

ゆっくりと、ロダンは頷いたのできっと分かってくれたはずだ。

「おやすみ、また明日」

手を振ると、戸惑ったように手を振り返してくれた。
部屋を出て、子爵が鍵をかけなくていいこと、ロダンが出たかったら静かに見守ること、と騎士に言っているのをぼんやりと聞いていた。

「……ミカ。ミカ」
「!は、はい」
「やはり疲れているんだろう。これで休むべきだ。部屋まで送ろう」
「……はい」

たしかに、体がだるい。
子爵はそっと手を引いてくれた。……その手がなかったら、ミカはひとりで部屋に帰られたかわからない。

「ミカ、いっしょに寝よう?」

部屋に帰ると、メレが自分のベッドの端を空けてくれた。

「きっと、ひとりだといろんなことを考えちゃうよ。私が、お兄ちゃんが怪我した時はいつもそうだったから」
「うん……」

半分まぶたが下がったミカは、それはいい考えだと思った。
ベッドに潜り込んで、メレのおやすみなさい、という言葉を聞いて、すとんと眠りの世界に落ちた。
――それから2日。ミカは高熱を出して寝込んだらしい。



起きたら、時間が経っていた。経ちすぎていた。
どうやらショックを受けて、子どもの体に負担がかかったらしい。
ずっと眠っていて、記憶がない。

子爵はすぐにミカを休ませなかったことを、執事やメイド頭に怒られたらしい。子爵のせいじゃないと、今度説明しなければ。
しかし、情けない。

「まだ小さいでしょう?そういうことは考えなくてもいいです」

お茶会でお茶を淹れてくれたメイドが、ミカの看病をしてくれた。
まだ安静にして、とベッドの住人のミカに水差しを差し出してくれながら、

「それよりも、休むことが大事です。食事は消化のいいものしか出せませんが、少しなら好きなものを厨房にお願いしますよ」
「いえ……なんでも美味しいので」

ちょっと味覚もきかなくなっているけど、パン粥だってとても美味しいのはわかる。

「そうですか。わがままがなくて、私はとても楽をしているんですよ。何でも言ってくださいね」
「……じゃあ……」

仲間と会いたかった。
そういうと少し会わせてくれることになった。

「……え?ロダンはだめなの?」
「ごめんなさい。彼は……」
「ミカに会えないって言ったら怒ったみたいで……なんか騎士の人と殴り合ってた」
「え!?」
「子爵さまが一生懸命説明してくれたら、分かったみたいで反省してる。けど、病み上がりのミカを見たら、どうだろうって」
「う、うん……」

どうしてそこまで。
と、思ったけれど、会えないのなら仕方がない。

「あ、ねえミカ!みんなスキル鑑定、してもらえるって!」

メレがめずらしくはしゃぐように言った。

「これでみんなのジョブ?が分かるよね?私も本当はどんなのか分からないから、これですっきりする」
「そうだね。……あっ!スキル鑑定!?誰がするの!?神殿は……」
「大丈夫だよ。私の鑑定もするからって、子爵さまは、えっと、コネ?使って、神殿じゃない大丈夫な人を呼んでくれるって」
「……そ、そう」

ほっとした。
自分のジョブが分かるのはいいことだが……突然だなあ、と思う。ミカが寝ていた間に何かあったのかもしれない。
ふと気がつくと、メレがミカをじっと見ている。
何か、嬉しいことがあったみたいににこにこ笑っている。

「楽しみだね、スキル鑑定」
「う、うん……?」

メレにとってはイベントのようなものなのかもしれない。少し恥ずかしそうに、

「だって、私以外はわからなかったでしょ?みんなどんなのを持ってるのかなって……気になるの」
「そうだね。たしかに」

自分のジョブかあ、となんとなく思いを馳せる。

(ぜったい地味だよね)

転生というアドバンテージはあるけれど、それだってそんなに勉強もしてこなかったダブル人生。
今だとせいぜい同年代の子よりものが分かっている程度だ。
それでもスキルが分かっている方が何かと今後便利だろう。
たしかに気になるなあ、とメレに笑いかけた。

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