13 / 27
12.スキルとは?
しおりを挟む待ちに待った、みんなのスキル鑑定である。
昨夜はひとりで落ち着きたいと部屋で食べていた鑑定師の人も、朝食はみんなと食べた。
私にも君たちと同じくらいの息子がいてね、とにこにこしていたので、だいぶ回復したようだ。
けれど鑑定の時間が近くなると、真剣な顔で祈っていたので、きっとミカたちのような変わり種がいませんようにとか神にお願いしたのだろう。本当に申し訳ない。
――結果。
おかしなジョブスキルはいなかったようだ。
能力値が高かったり、珍しいものがあったりはあるけれど、少し人よりいいスキル、程度だった。
「ブローの拳闘士って、なんかかっこいーよねー」
ひときわ盛り上がったのは、ブローだった。
戦闘系のジョブスキルらしく、やはり身体能力が高いという。
ミカは、ちょっぴり、身体能力はよくなかったので、うらやましいと思った。
「では、スキルについて教えようと思います。使い方によっては危なかったり、うまく使えずにがっかりしてしまうことがあります。そういうことがないように、しっかり聞いてください」
「えー」
「えー、じゃないですよ!これからの君たちの人生がかかってるんですから」
鑑定師の人は意外とノリが良く、みんなで聞いているので大丈夫だろう。
「じゃあ、君だけひとりで悪いが」
「はい。さびしいですけど」
「早く終わるように頑張るよ」
別室で子爵との特別レッスンである。
スキルのことについてだけなら鑑定師の人が詳しいだろうけれど、ミカの場合は特殊すぎて何の話が飛び出すかわからない。一般的なスキルのことは誰でも話せるから、子爵が万が一のためにふたりきりで聞かせてくれるという。
別室で向かい合って椅子に座り、
「……では、話そう。随時、質問があれば聞くといい」
スキルとは……という簡単なおさらいと、ジョブスキルについて。
「ジョブスキルとは、ジョブになりうるスキル、ということだ。メレは治癒スキルだから治癒師だ」
「いっぱいあるスキルの、代表格のようなものですか?」
「間違ってもいないが……」
すこし悩んでから、細かく説明してくれた。
スキルは多種多様だが、前提としては大まかに2つに分けられた。
ひとつは、ジョブスキル。
誰しもひとつは持っているスキルで、これは『ジョブになりうる』スキルだった。
「ジョブというものは、例えば店をやっている人間がその店屋と認識されるようなものだ。八百屋なら八百屋の主人という言い方をするだろう?」
ちょっと幼稚だけれど、◯◯屋さん、という言い方だ。
前の世界の英語のジョブ……仕事と変わりなさそうだ。
「ジョブスキルは、そう呼ばれる範囲のスキルで限定的だ。そして、その人が所持したその一番高いレベルのものがジョブになる。一方、もうひとつの種類はジョブや能力値に関係なく経験値が貯まれば開花するスキル……特に呼び名は決まっていないが、一般スキルとでもいおうか」
「ジョブになるのがジョブスキルで、一般スキルというのは……私には『調理』というスキルがあったんですが……これがですか?」
「そうだ。それは家事をする人間がよく獲得する一般スキルだ」
「でも、ジョブスキルの『料理人』に……」
「ああ、同じ名のジョブスキルのを獲得するらしいな」
子爵は頭に軽く手を当てて、
「だが、あくまで別らしい、と聞いた。『料理人』なら『調理』出来ないと矛盾がある気がしないか?」
「そういうことなんですか?」
「と、私は思うがね。詳しいことは鑑定師に聞いたほうが良いだろう」
ここが私の限界だったな、と苦笑する子爵にミカは首を振った。
「……メレの場合だと、治癒スキルといってもいくつもある。治癒師は治す症状に合わせてジョブスキルが増えていくのだ」
「怪我なら怪我用、病気なら病気用……ということですか」
「そうだ」
「では、私の座敷わらしは」
「……それを聞かれるとな」
「冗談です」
「まったく。……つまり、ジョブスキルとはその人間の能力的な格付けだ。能力値はそれに合わせたものになる。強いジョブスキルであれば、強い人間。賢いジョブスキルだと賢い人間。器用なジョブスキルだと器用な人間。そして……」
子爵は一度言葉を切った。
「そのジョブは、人格にも反映する」
「……?あ、……」
ロダンだ。
彼のジョブスキルは『暗殺者』。
人を殺すことに特化した――
「攻撃的ではないが、殺すことについては並々ならぬ執着がある――というのが、スキル研究において常識だ。そして、何につけてもためらいがない」
「で、でも、ロダンはむやみに人を殺してなんて……」
「ああ、何事にも例外がある。その例外であってほしいところだ」
子爵は物憂げにため息をついた。
「今のところ、仲間……特にミカには心を開いて、言うことを聞いているようだ。ならばコントロールできると……いや、言い方が悪いな、ともかくこれ以上罪を重ねることがないようにできると思う」
「……はい」
「これは難しい話だ。ロダンといっしょに話し合おう。ともかく、人格すら左右するジョブスキルだが、結局のところそれは幼少の頃に獲得する。しかも……環境に影響を受ける」
「環境と言うと、住まいや親……ですね」
「その通りだ。その時までの生活の状況や、心身の状態……そういうものがジョブスキル獲得につながる」
「はい」
「メレは兄を治したいという強い思いと、以前から彼が怪我を負ってくることを心配していたからだろう。それが君の助力で一気に開花、高レベルに成長した」
「その、メレが高レベルなのも、何かおかしいんですか?彼女は私が連れ回していっぱい患者を診ていましたけど……」
「ああ、おかしいのだ。神殿の治癒師で最高峰と謳われる、30年君臨している司祭は、レベル59」
「…………え?」
聞き間違いかと思った。
「メレは、熟練の国の治癒師とほぼ同等だ。スキルの数などは分からないが、彼女にもさほど治癒師として不足しているスキルはないようだと聞いている」
「……それって、」
「……鑑定師の仮説が本当なら、君が高レベルに成長させた」
ディナータの渋い顔に、ミカは震え上がった。
「はわ……」
「どうして君のスキルを隠せと言ったか、理由は少し分かったか?」
「……もしかして、その解除?消えたかもしれないスキルを、取り戻したら……」
「ああ、私が考えつくだけでも国の軍事部や学府に重宝されるだろうな」
「重宝って……」
貴重だと思われるのだろうけれど、果たしてミカの人権は保証されるのだろうか。
……子爵の様子を見る限り、まあ期待はできなさそうだ。
「レベルというが、その言葉が指す本当は、ジョブスキルのレベルのことだ。それイコール自分のレベルでもある。レベルが上がるにつれて、新しいスキルを獲得できたり、能力値――ステータスが上がったりする」
「なるほど。では早くレベルを上げたければ、ジョブスキルを使い続ければいいんですね」
「そうだ」
「……でも、私はその、レベルが低いのがおかしいということですか……?」
「いや、レベル3というのは普通と考えていい。けれど、メレに経験値を付与し、高レベルに成長させたのなら……」
「たしかに、私に経験値がいっぱいないとおかしいんですね」
子爵はため息をつき、背もたれに体を預けた。
「……いくら君が抑圧された生活を送っていたとしても、いくら何でもおかしいのだ」
「どういう……?」
「抑圧されることもまあまあの経験値になるらしい。君の仲間にも、レベル5のものがいただろう?開花したのはつい最近で、それにしてはレベルが高い」
「そうなのか……ん?」
「?どうした」
「あ、いえ……」
ふと、思いついた。
(前世から引き継ぎポイントってこと……!?)
記憶があるのだ、経験値とやらも引き継がれている可能性は十分だろう。
(それなら、高レベルなのもわかる……)
ずっと苦しい生活だったのだ、仕事もしていたし、かなり経験値が貯まっていただろう。
(まあ、メレにあげちゃったけど……)
そうでもしなければ、ブローを助けることができなかった。なら後悔なんかするはずがない。
「……」
ミカが考えているうちに、子爵も何か考え込んでいる。彼は深刻そうだ。
「どうかなさったんですか?」
「……ああ、……スキルとは直接関係がないが……あの刺客の出どころが分かるかもしれない」
「え!?」
「……どうも、耳が早い連中がいる」
火事があった前後に、『小さな天使』のことを聞いて回る不審者が見られた。スラム街ではないが、下層民が住む区画まで現れたというのだからだいぶ接近されている。
「貴族の間では変わらず噂はないにもかかわらず、だ。……だが、私が君たちを連れて行っていたのは、誰かに見られただろうし……刺客を含め、それらすべてが同じ者らかはわからないが、メレのことを気にするものは確実にいる」
「……それは、早く話を決めないと……」
メレを子爵家の養子にする理由のひとつは、メレの身分をしっかりさせて、おかしな連中や国などの権力者に手を出されないようにすることだ。
「ああ、そうだな。……メレに、いま一度話すつもりだ」
ぐっと、子爵は膝の上でこぶしを握った。
15
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
小さな貴族は色々最強!?
谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。
本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。
神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。
その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。
転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。
魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。
ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
平凡な村人だと思われていた俺、実は神々が恐れる最強存在でした〜追放されたけど、無自覚チートで気づけば世界の頂点〜
にゃ-さん
ファンタジー
平凡な村人・レオンは、勇者パーティの荷物持ちとして蔑まれ、ある日「役立たず」として追放される。
だが、彼の正体は神々が恐れ、世界の理を超越する“創世の加護”を持つ唯一の存在だった。
本人はまったくの無自覚——それでも歩くたび、出会うたび、彼によって救われ、惹かれていく者たちが増えていく。
裏切った勇者たちは衰退し、彼を捨てた者たちは後悔に沈む。
やがて世界は、レオン中心に回り始める。
これは、最弱を装う最強が、知らぬ間に神々を超える物語。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる