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ダストボックスの招き猫
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路上生活者が歩道にしゃがみ、手配師のさばく順番を待っている。
店の外のダストボックス(ゴミ箱)に、一匹の『雉キジトラ(猫)』が膨らんで座っている。
男(具流氏)が店のブックコーナーで立ち読みをしている。
「ピンポ~ン・・・」
元気良く「店」に入って来る女。
百地静子(店長)である。
「おはよう御座いま~す」
レジカウンターには茶髪にピアスの青年が居眠りをしながら、風に揺られる様にして立ってる。
青年Aはポケットに手を入れて、
「セ~(いらっしゃいませ)」
店の壊れたサインボート(看板)を見上げ、溜め息まじりで佇タタズむ百地龍太郎(オーナー)。
店内から静子の声が。
「アンタ! 何してるの」
「うん?・・・割れてるなあ・・・」
店の中に入る龍太郎。
バックルームのドアーが開いて、売り場に無精髭の青年がダンボール箱を抱えて出て来る。
龍太郎を見て、
「あ、オーナーさんですか?」
青年の『オーナー』の言葉に戸惑う龍太郎。
「オーナー? オレ? あッ、百地(モモチ)です。よろしくお願いします」
「ボク、杉浦です。こちらこそよろしくお願いします」
杉浦くんは汚いスニーカーを履いた、どことなくアカ抜けない青年である。
売り場の奥で気になる商品を整えている静子。
龍太郎は静子を指さし、
「あ、あそこに居るのが僕の妻です」
「え? 奥様ですか」
杉浦くんは静子の前に駆け寄り、
「始めまして。杉浦です。宜しくお願いします」
静子は振り向き、
「あら、アナタが杉浦クン? 伊藤サンから聞いているわ。ここのリーダーでしょう。頼りになりそう」
龍太郎は杉浦くんのだらし無い後ろ姿を見て、急に気安い言葉に変わる。
「そりゃあ、ベテランだもん。なあ、スギちゃん」
「いやあ、ただ長く居るだけですよ」
「そうだ。初めてだからチョコット面接でもしようか」
「ハイ。じゃ、この荷物を片付けてから」
龍太郎はレジカウンター内で無気力に立って居る青年を見て、
「それから、あのカウンターの・・・」
「林ですか?」
「ああ、彼が林クンか。林クンにも伝えて」
「はい」
龍太郎と静子が奥の事務所に入って行く。
突然、通路の端を一匹の大きなネズミが走って行く。
「キャ~、ネズミ!」
「ネズミ? おお、ネズミだ。懐かしいねえ。古い店だし、隣が米屋だからね」
「何言ってるの。ネズミなんかと一緒にお店なんか出来ないわよ」
「ええ! オマエだって鼠年じゃないか。ネズミは縁起が良いんだぞ」
龍太郎は通路に漂う異様な臭いに立ち止る、
「なんか臭クサくないか。この店」
「そこの廃棄物の袋じゃない」
「ああ、そうか。・・・あの蛍光灯に停まっているの、あれってハエじゃない?」
「そうね」
「ソウネって、冬なのに、何であんなに沢山居るんだろう?」
「そんなのアタシに聞かれても分らないわよ。ハエに聞いたら? 後で、殺虫剤で皆殺しにしてやるから」
龍太郎と静子は事務所の中に入る。
うす暗く狭い事務所。
二人は事務所の中を見回す。
錆て破れたシートの折りたたみ椅子。
落書きだらけテーブル。
奥には傘の忘れ物がビニールの紐で縛り、四束立て掛けてある。
椅子に腰かける二人。
「・・・こんな所で仕事するの?」
「慣れればなんて事ないよ」
「慣れれば?」
静子は龍太郎を不安そうに見る。
つづく
店の外のダストボックス(ゴミ箱)に、一匹の『雉キジトラ(猫)』が膨らんで座っている。
男(具流氏)が店のブックコーナーで立ち読みをしている。
「ピンポ~ン・・・」
元気良く「店」に入って来る女。
百地静子(店長)である。
「おはよう御座いま~す」
レジカウンターには茶髪にピアスの青年が居眠りをしながら、風に揺られる様にして立ってる。
青年Aはポケットに手を入れて、
「セ~(いらっしゃいませ)」
店の壊れたサインボート(看板)を見上げ、溜め息まじりで佇タタズむ百地龍太郎(オーナー)。
店内から静子の声が。
「アンタ! 何してるの」
「うん?・・・割れてるなあ・・・」
店の中に入る龍太郎。
バックルームのドアーが開いて、売り場に無精髭の青年がダンボール箱を抱えて出て来る。
龍太郎を見て、
「あ、オーナーさんですか?」
青年の『オーナー』の言葉に戸惑う龍太郎。
「オーナー? オレ? あッ、百地(モモチ)です。よろしくお願いします」
「ボク、杉浦です。こちらこそよろしくお願いします」
杉浦くんは汚いスニーカーを履いた、どことなくアカ抜けない青年である。
売り場の奥で気になる商品を整えている静子。
龍太郎は静子を指さし、
「あ、あそこに居るのが僕の妻です」
「え? 奥様ですか」
杉浦くんは静子の前に駆け寄り、
「始めまして。杉浦です。宜しくお願いします」
静子は振り向き、
「あら、アナタが杉浦クン? 伊藤サンから聞いているわ。ここのリーダーでしょう。頼りになりそう」
龍太郎は杉浦くんのだらし無い後ろ姿を見て、急に気安い言葉に変わる。
「そりゃあ、ベテランだもん。なあ、スギちゃん」
「いやあ、ただ長く居るだけですよ」
「そうだ。初めてだからチョコット面接でもしようか」
「ハイ。じゃ、この荷物を片付けてから」
龍太郎はレジカウンター内で無気力に立って居る青年を見て、
「それから、あのカウンターの・・・」
「林ですか?」
「ああ、彼が林クンか。林クンにも伝えて」
「はい」
龍太郎と静子が奥の事務所に入って行く。
突然、通路の端を一匹の大きなネズミが走って行く。
「キャ~、ネズミ!」
「ネズミ? おお、ネズミだ。懐かしいねえ。古い店だし、隣が米屋だからね」
「何言ってるの。ネズミなんかと一緒にお店なんか出来ないわよ」
「ええ! オマエだって鼠年じゃないか。ネズミは縁起が良いんだぞ」
龍太郎は通路に漂う異様な臭いに立ち止る、
「なんか臭クサくないか。この店」
「そこの廃棄物の袋じゃない」
「ああ、そうか。・・・あの蛍光灯に停まっているの、あれってハエじゃない?」
「そうね」
「ソウネって、冬なのに、何であんなに沢山居るんだろう?」
「そんなのアタシに聞かれても分らないわよ。ハエに聞いたら? 後で、殺虫剤で皆殺しにしてやるから」
龍太郎と静子は事務所の中に入る。
うす暗く狭い事務所。
二人は事務所の中を見回す。
錆て破れたシートの折りたたみ椅子。
落書きだらけテーブル。
奥には傘の忘れ物がビニールの紐で縛り、四束立て掛けてある。
椅子に腰かける二人。
「・・・こんな所で仕事するの?」
「慣れればなんて事ないよ」
「慣れれば?」
静子は龍太郎を不安そうに見る。
つづく
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