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ロンパリの人
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客足が止まった店内。
龍太郎が手持ち無沙汰に店の雑誌を立ち読みしている。
ふと顔を上げると通りを、傘の先に風呂敷をぶら提げ、肩に担いだ男が通り過ぎて行く。
男は雨でもないのに「赤いゴム長靴」を履いている。
何気なくその男の格好を観ている龍太郎。
龍太郎は店の周囲の環境が気に成り、
「店長! 俺、チョットその辺を視察してくる」
「視察? 早く帰って来てよ。これから忙しく成るんだから」
「分かってる。あ、そうだ。石田サン! 自転車貸してくれる」
「良いっスよ。でもあのチャリ、後ろのブレーキ利かないっスよ」
「危ないなぁ~。ツンノメルんじゃないか・・・。 ジャ、直ぐ戻ってくるから」
龍太郎は自転車に跨(マタガ)り、フラフラと店を出て行く。
ダストボックスの上で『雉トラ(招き猫)』が龍太郎を見ている。
「大丈夫かしら・・・」
心配そうな静子。
石田さんが、
「店長。オーナーって、前は何やってたんスか?」
「ええ?」
するとドアーチャイムが鳴り、小太りで背が低い職人風の男が素足に下駄(ゲタ)を履いて店に入って来る。
「いらっしゃいませ~」
下駄の音が店内に響く。
石田さんは男をチラッと見て品出しの為にバックルームに入って行く。
男はカウンターの前の新聞挿しからスポーツ新聞(東スポ)を一枚抜いて静子の前に持ってくる。
「いらっしゃいませ。百二十円になります」
その男は始めて見る静子に視線が定まらない(ロンパリ)。
「さ、寒いやねえ。やんなっちゃうねぇ。山は大雪だってよ。激(ハゲ)しいね~」
静子は昔、何処かで聞いたようなセリフに、
「え? あ、そうですか」
男は指先に小銭(コゼニ)をつまんで静子の眼の前に出す。
静子は男の仕草(シグサ)を見て、両手の平を広げ男の眼の前へ出す。
男は静子を見詰めながら、手の平に一枚ずつ小銭を落として行く。
静子は奇妙な代金の渡し方を見ながら、
「確かに。ありがとう御座います。またお越し下さいませ」
すると男は、あのロンパリの眼で恥ずかしそうに静子を見詰めて、
「あ、どうも」
店を出て行く『ロンパリの男』。
男は店の外で立ち止まり静子を見ている。
静子は何と無く変な客と思いながら、目を伏せる。
外のダストボックスの上で『雉トラ(招き猫)』が寝むそうに膨らみ、男を見ている。
まるで絵に成る様なドヤ街の風景である。
つづく
龍太郎が手持ち無沙汰に店の雑誌を立ち読みしている。
ふと顔を上げると通りを、傘の先に風呂敷をぶら提げ、肩に担いだ男が通り過ぎて行く。
男は雨でもないのに「赤いゴム長靴」を履いている。
何気なくその男の格好を観ている龍太郎。
龍太郎は店の周囲の環境が気に成り、
「店長! 俺、チョットその辺を視察してくる」
「視察? 早く帰って来てよ。これから忙しく成るんだから」
「分かってる。あ、そうだ。石田サン! 自転車貸してくれる」
「良いっスよ。でもあのチャリ、後ろのブレーキ利かないっスよ」
「危ないなぁ~。ツンノメルんじゃないか・・・。 ジャ、直ぐ戻ってくるから」
龍太郎は自転車に跨(マタガ)り、フラフラと店を出て行く。
ダストボックスの上で『雉トラ(招き猫)』が龍太郎を見ている。
「大丈夫かしら・・・」
心配そうな静子。
石田さんが、
「店長。オーナーって、前は何やってたんスか?」
「ええ?」
するとドアーチャイムが鳴り、小太りで背が低い職人風の男が素足に下駄(ゲタ)を履いて店に入って来る。
「いらっしゃいませ~」
下駄の音が店内に響く。
石田さんは男をチラッと見て品出しの為にバックルームに入って行く。
男はカウンターの前の新聞挿しからスポーツ新聞(東スポ)を一枚抜いて静子の前に持ってくる。
「いらっしゃいませ。百二十円になります」
その男は始めて見る静子に視線が定まらない(ロンパリ)。
「さ、寒いやねえ。やんなっちゃうねぇ。山は大雪だってよ。激(ハゲ)しいね~」
静子は昔、何処かで聞いたようなセリフに、
「え? あ、そうですか」
男は指先に小銭(コゼニ)をつまんで静子の眼の前に出す。
静子は男の仕草(シグサ)を見て、両手の平を広げ男の眼の前へ出す。
男は静子を見詰めながら、手の平に一枚ずつ小銭を落として行く。
静子は奇妙な代金の渡し方を見ながら、
「確かに。ありがとう御座います。またお越し下さいませ」
すると男は、あのロンパリの眼で恥ずかしそうに静子を見詰めて、
「あ、どうも」
店を出て行く『ロンパリの男』。
男は店の外で立ち止まり静子を見ている。
静子は何と無く変な客と思いながら、目を伏せる。
外のダストボックスの上で『雉トラ(招き猫)』が寝むそうに膨らみ、男を見ている。
まるで絵に成る様なドヤ街の風景である。
つづく
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