やり直しの人生、今度こそ絶対に成り上がってやる(本編完結)

カイリ

文字の大きさ
15 / 59

3-11 スコット侯爵領

 ルドルフに前回の記憶があるのではないかと懸念していたけれど、バルナバスに対する態度、使用人への暴言などを聞いていたらそんなことはない、と思い始めた。失敗した記憶があるなら、オリヴァーのように自分の行動を顧みる……、はずだが、自分が正しいと思っているルドルフに果たして反省などと言う言葉はあるのだろうか。

 間違っていないと思っているならば、前回と同じように進むのではないか。それならば自分に対する執着も頷ける。ただオリヴァーと計画して失敗したのだから、ルドルフの性格を考えたら切り捨てそうなものだ。やはりやり直した記憶など、自分にしかないのか、とオリヴァーはわずかながら寂しい気持ちになった。

 訓練場での一件でルドルフが機嫌を損ねてくれたのならば上々、と気分が晴れやかになっていたが、時間が経つと忘れてしまう短絡的なところもあってか、晩にはいつも通りに戻っていた。

 ルドルフが思い立ったように王都へ戻ると言い出したのは、ここにきてから一週間が経過してからだった。

「そろそろ戻ってこいと母上からのお達しもあってね」

 ルドルフが不在になってから王城内の均衡もわずかに崩れだしたのだろう。優柔不断でおっとりとしたところを除けば、フリードリヒは王としての才覚はある。彼が王となれば、このヴォルアレス王国は安泰だ。

 ルドルフなどに任せるより断然いいが、それでも傀儡として操るにはルドルフが最適だ。オリヴァーもそれを狙っていたし、味方に付いた新興貴族なども同じだ。国をよくするというよりも自分たちが住みやすい国にしようというエゴだ。

 自分が死んだ後のことは分からないし、もしかすると自分の死が起点となって時間が巻き戻ってしまったのかは分からないが、あの後も続いたとするならばオリヴァーとルドルフの行動でこの国の膿をだし切ることに成功したと言っても過言ではない。

「なあ、オリー。本当にまだ王都に戻らないつもりか?」

 いつになく真剣な眼差しにオリヴァーはため息を付きそうになって唇を噛む。

「学校に通うまではこちらに滞在する予定です」

 帰るつもりはないとはっきり意思表示をする。以前までのように曖昧な言葉で誤魔化そうとすれば、ルドルフは自分の都合のいいように解釈して後で困る。

「……どうしても俺の従者にはならないと?」

 声音が低くなり、機嫌の悪さが露呈してきた。どうやら本当に従者にするためわざわざスコット領まで来たようだ。断られたのが許せないのか。そもそもルドルフがオリヴァーを従者に指定したのではない。ルドルフがオリヴァーを従者に、と言えばスコット家は断らなかっただろうし、断るとしたら王家に背く覚悟をしなければならなかっただろう。

 やはり行動は不可解だ。断られるはずがないという自信を砕いてしまったのか。

 オリヴァーがゆっくり頷くと、ルドルフはガタンと派手な音を立てて立ち上がる。大股で近づいてくるとオリヴァーを壁に押し付け、ぐいとあごを掴まれ無理矢理に上を向かされる。

 炎のような赤い目がオリヴァーを捉える。

「誰に物を言っているのか、よく考えろ」

「……あなたの従者になるとしたら、それは王命が下された時です」

 グッと顎を掴む手の力が強くなった。

 丁度、視界に窓が入っていたオリヴァーはモスグリーンの髪が外で揺れたのに気付いた。その瞬間、バリンと激しい音を立てて窓が割れた。窓を背にしていたルドルフは反応に一瞬遅れる。

「っ、曲者か!?」

 オリヴァーはルドルフの手の力が緩んだのを感じて、手を振り払って足払いをするとそのまま組み敷く。扉の向こうに待機していた騎士たちは窓ガラスが割れた音を耳にしてすぐに室内へ入ってきた。足の下でルドルフが苦しそうな声を出しているが、これは非常事態だ。決してこれまでの憂さ晴らしをしているわけではない。彼の身を守るための仕方ない行動なのだ。だからやめるわけにはいかない。

「オリヴァー様、ご無事ですか」

 声をかけてきた騎士にオリヴァーは頷く。そこはまず王子の心配をしてほしいものだが、ルドルフの横暴さに城内の騎士、使用人は辟易している。ちょっとは痛い目に遭ってくれた方が清々するだろう。

「ああ、俺も殿下も無事だ。誰かが窓に向かって石を投げた」

 犯人を目撃していたが、オリヴァーは自分の胸の内に秘めておく。きっとこの状況を外で見たアランが助け舟を出してくれたのだろう。やり口はあまりに過激だったので当面の間警備が厳しくなるだろうが、折を見てオリヴァーが祖父に話をすれば解決する。どうせルドルフもそろそろ帰ると言っているわけだし、何より助けられた恩がある。

「第二隊に追わせます。殿下とオリヴァー様は一旦避難を」

「分かった」

 まだ組み敷いたまま苦しめてやりたかったが、オリヴァーは「失礼しました」と謝罪してからルドルフに手を差し出す。とっさの判断だったとは言え、自分よりも背が高かったルドルフを組み敷ける程度には力が付いているのに驚いた。祖父の訓練は無駄ではなかった。

 悔しそうにこちらを見上げ手を取ったルドルフに、オリヴァーは僅かな優越感を覚えた。
感想 1

あなたにおすすめの小説

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話

鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。 この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。 俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。 我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。 そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

【完結】やらかし兄は勇者の腕の中で幸せに。それくらいがちょうど良いのです

鏑木 うりこ
BL
レンとリンは不幸な一生を終え、やっていたゲームと酷似した世界に降りてきた。楽しく幸せに暮らせる世界なのに魔王がいて平和を脅かしている。  聖剣を棍棒的な何かにしてしまった責任を取るためにレンとリンは勇者アランフィールドの一行に加わる。 勘違いしたり、やらかしたり、シチューを食べたりしながら、二人の中は深まって行く。   完結済み、全36話予定5万字程の話です。 お笑い封印失敗しました_:(´ཀ`」 ∠): ⚪︎王子様の勇者アランフィールド×鍛冶師のレン(兄) 後半少しだけ ⚪︎魔王ルーセウス×薬師のリン(弟) で、構成されております。  一気に書いたので誤字脱字があるかと思います。教えて頂けたら嬉しいです。(話数を明記して頂けると探す時凄く助かります!)なお、誤字に見えてわざと効果として使っている場所はそのままになります。 多忙時、お返事を返す事ができない事があります。コメント等全て読ませていただいておりますが、その辺りは申し訳ございません。 後、ないとは思いますがAI学習とかさせないでね!

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

騎士は魔石に跪く

叶崎みお
BL
森の中の小さな家でひとりぼっちで暮らしていたセオドアは、ある日全身傷だらけの男を拾う。ヒューゴと名乗った男は、魔女一族の村の唯一の男であり落ちこぼれの自分に優しく寄り添ってくれるようになった。ヒューゴを大事な存在だと思う気持ちを強くしていくセオドアだが、様々な理由から恋をするのに躊躇いがあり──一方ヒューゴもセオドアに言えない事情を抱えていた。 魔力にまつわる特殊体質騎士と力を失った青年が互いに存在を支えに前を向いていくお話です。 他サイト様でも投稿しています。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました