51 / 59
7-2 オリヴァー・フォン・スコットという男(R18)
しおりを挟む
オリヴァーが退避した後は混乱すると予想されていたため、オールディス伯爵領から出た後は帝都近くにある子爵領にある宿に避難していた。
アレクシスはパトリックと打ち合わせがあると言ってオリヴァーは先に部屋を案内された。どうせこのまま戻ってこないのだろうな、と思って、すでに風呂の準備がされていたのでオリヴァーはゆっくりと湯に浸かった。
ここまで来て一先ずは戦争が止められたのではないか、と安堵する。証拠は持ち帰れなかったが軍隊が突入していたのでオールディス伯爵が武器を大量に購入していたことや、ルドルフと共に戦争を企てていたことは白日の下にさらされるだろう。たった三ヶ月だったけれど、毎日、緊張状態が続いていただけに安心した途端に力が抜けた。どっと疲れが襲ってきて、オリヴァーはずるずると沈み込む。不眠気味だったのも相まって、瞼がゆっくりと降りてきた。寝てはいけないと思っていても体は素直だった。
「オリー兄様?!」
ぐらりと体をゆすられてオリヴァーは目を覚ます。湯はとっくに冷めていて、かなりの時間寝てしまっていたのだと悟る。
「風呂で寝るのは危険ですよ。それに体も冷めてるじゃないですか」
ぼんやりと顔を上げるとアレクシスが心配そうにこちらを見ている。別れる前までは鎧姿だったのに、今は寝間着に近いラフな格好だ。どことなく石鹸の香りもする。よく見れば髪の毛も濡れていた。
「風呂……、入ったのか?」
起こされたときは急ぎの用事でもあったのかと思ったが、わざわざ風呂に入る余裕まであったのだから来た理由が読めない。アレクシスはオリヴァーの問いに「え?!」と動揺する。ルドルフ絡みで悪いことでもあったのだろうか。例えば脱走したとか。そう考えたら一気に目が覚め、ガバッと立ち上がるとアレクシスも「うわ!」と驚いて半歩下がる。
「何かあったのか?」
「え! あ、いや、違うんです! 違うんです!!!! とりあえず服着てください!!!!!!」
アレクシスは棚に置いてあったタオルを引っ張るとオリヴァーに背を向けてタオルを突き付けた。なんだか処女みたいな反応だな、と思いながらタオルを受け取り、オリヴァーは風呂から上がる。バシャ、と水の跳ねる音が響くとアレクシスは大げさに体を震わせる。
「――お前」
オリヴァーが肩を掴むと、耳まで真っ赤になっているのが見えた。さすがにそんな反応をされれば、ここへ来た理由もうっすら分かってくる。けれど馬車の中で過去のことをほじくり返され、人でなしのようになじられたのは忘れていない。まあ、実際、人でなしなのだが。
「なあ、アレクシス」
「……はい」
「なんで俺の部屋に来たんだ?」
オリヴァーが性格悪くにやにやと笑いながら尋ねると、顔を真っ赤にしたアレクシスが意を決したように振り返る。
「あなたを抱きに来ました」
慣れていなさそうなアレクシスを揶揄って遊んでやろうと思っていたが、いざベッドの上で二人きりになって向き合うとこれまでにない緊張感がオリヴァーを襲った。逆に腹を括ったアレクシスは口づけをしながらオリヴァーを押し倒す。
「っ……」
舌が絡められて肩に置かれていた手が頬を撫でて、それから耳へと移動していく。ただ耳朶を揉んでいるだけなのに、指が動くと下半身が疼く。口を塞がれているせいでうまく呼吸ができず苦しくてたまらない。なんてことのない愛撫をされているだけなのに、どうしてこんなに翻弄されているのか。オリヴァーは思わず、アレクシスの体を押してしまった。
「……大丈夫ですか?」
心配そうというより怪訝な様子にオリヴァーはアレクシスを睨みつける。
「大丈夫そうに見えているなら、医者を呼ぶことを勧めるぞ」
「いや……、オリー兄様はこういうこと慣れてるでしょ?」
この時折出現するデリカシーが消失した発言は何なのか。
「人をあばずれのように言うな」
アレクシスは難しい顔をするだけで何も言わない。暗にではなく、あからさまに言葉を肯定している。それに対して不機嫌な顔をするとアレクシスはようやく口を開いた。
「俺だって我慢できないんですよ。止めないでください」
かなり必死そうな顔でそう言うと、アレクシスはオリヴァーの首元に噛みついた。べろりと舐められ甘噛みされる。
「ん!? っ、やっ」
正直なところ、男との性行為なんて痛いだけで気持ち良くないとずっと思っていた。だから今回もアレクシスがそれで喜ぶのなら、と自己犠牲の精神のようなものであったのに、気付けば下半身が反応していてアレクシスの腹部に触れている。身じろぎすると擦れて先から汁が溢れ出てきた。
「ちょっと触っただけなのに、気持ちいいんですか?」
「……は、あ?!?」
アレクシスが視線を下に向けると、びく、と自分のモノが震える。
「俺がキスして、触っただけでこんなになるなんて、他の奴にはどんな顔を見せてたんですか」
じろっと睨みつけられ、これまでの失礼すぎる発言は嫉妬から来ていたのだとオリヴァーは知る。そう思うとたった二歳だが年上の余裕を見せたくなるが、本音を言うと自分自身もこんなことは初めてで余裕なんて微塵もない。
「お前だけだ」
「……え?」
「俺がこんなになるのはお前だけだって言ってるんだよ!」
恥ずかしくてそんなことを叫ぶと、アレクシスががばっと覆いかぶさってきた。
アレクシスはパトリックと打ち合わせがあると言ってオリヴァーは先に部屋を案内された。どうせこのまま戻ってこないのだろうな、と思って、すでに風呂の準備がされていたのでオリヴァーはゆっくりと湯に浸かった。
ここまで来て一先ずは戦争が止められたのではないか、と安堵する。証拠は持ち帰れなかったが軍隊が突入していたのでオールディス伯爵が武器を大量に購入していたことや、ルドルフと共に戦争を企てていたことは白日の下にさらされるだろう。たった三ヶ月だったけれど、毎日、緊張状態が続いていただけに安心した途端に力が抜けた。どっと疲れが襲ってきて、オリヴァーはずるずると沈み込む。不眠気味だったのも相まって、瞼がゆっくりと降りてきた。寝てはいけないと思っていても体は素直だった。
「オリー兄様?!」
ぐらりと体をゆすられてオリヴァーは目を覚ます。湯はとっくに冷めていて、かなりの時間寝てしまっていたのだと悟る。
「風呂で寝るのは危険ですよ。それに体も冷めてるじゃないですか」
ぼんやりと顔を上げるとアレクシスが心配そうにこちらを見ている。別れる前までは鎧姿だったのに、今は寝間着に近いラフな格好だ。どことなく石鹸の香りもする。よく見れば髪の毛も濡れていた。
「風呂……、入ったのか?」
起こされたときは急ぎの用事でもあったのかと思ったが、わざわざ風呂に入る余裕まであったのだから来た理由が読めない。アレクシスはオリヴァーの問いに「え?!」と動揺する。ルドルフ絡みで悪いことでもあったのだろうか。例えば脱走したとか。そう考えたら一気に目が覚め、ガバッと立ち上がるとアレクシスも「うわ!」と驚いて半歩下がる。
「何かあったのか?」
「え! あ、いや、違うんです! 違うんです!!!! とりあえず服着てください!!!!!!」
アレクシスは棚に置いてあったタオルを引っ張るとオリヴァーに背を向けてタオルを突き付けた。なんだか処女みたいな反応だな、と思いながらタオルを受け取り、オリヴァーは風呂から上がる。バシャ、と水の跳ねる音が響くとアレクシスは大げさに体を震わせる。
「――お前」
オリヴァーが肩を掴むと、耳まで真っ赤になっているのが見えた。さすがにそんな反応をされれば、ここへ来た理由もうっすら分かってくる。けれど馬車の中で過去のことをほじくり返され、人でなしのようになじられたのは忘れていない。まあ、実際、人でなしなのだが。
「なあ、アレクシス」
「……はい」
「なんで俺の部屋に来たんだ?」
オリヴァーが性格悪くにやにやと笑いながら尋ねると、顔を真っ赤にしたアレクシスが意を決したように振り返る。
「あなたを抱きに来ました」
慣れていなさそうなアレクシスを揶揄って遊んでやろうと思っていたが、いざベッドの上で二人きりになって向き合うとこれまでにない緊張感がオリヴァーを襲った。逆に腹を括ったアレクシスは口づけをしながらオリヴァーを押し倒す。
「っ……」
舌が絡められて肩に置かれていた手が頬を撫でて、それから耳へと移動していく。ただ耳朶を揉んでいるだけなのに、指が動くと下半身が疼く。口を塞がれているせいでうまく呼吸ができず苦しくてたまらない。なんてことのない愛撫をされているだけなのに、どうしてこんなに翻弄されているのか。オリヴァーは思わず、アレクシスの体を押してしまった。
「……大丈夫ですか?」
心配そうというより怪訝な様子にオリヴァーはアレクシスを睨みつける。
「大丈夫そうに見えているなら、医者を呼ぶことを勧めるぞ」
「いや……、オリー兄様はこういうこと慣れてるでしょ?」
この時折出現するデリカシーが消失した発言は何なのか。
「人をあばずれのように言うな」
アレクシスは難しい顔をするだけで何も言わない。暗にではなく、あからさまに言葉を肯定している。それに対して不機嫌な顔をするとアレクシスはようやく口を開いた。
「俺だって我慢できないんですよ。止めないでください」
かなり必死そうな顔でそう言うと、アレクシスはオリヴァーの首元に噛みついた。べろりと舐められ甘噛みされる。
「ん!? っ、やっ」
正直なところ、男との性行為なんて痛いだけで気持ち良くないとずっと思っていた。だから今回もアレクシスがそれで喜ぶのなら、と自己犠牲の精神のようなものであったのに、気付けば下半身が反応していてアレクシスの腹部に触れている。身じろぎすると擦れて先から汁が溢れ出てきた。
「ちょっと触っただけなのに、気持ちいいんですか?」
「……は、あ?!?」
アレクシスが視線を下に向けると、びく、と自分のモノが震える。
「俺がキスして、触っただけでこんなになるなんて、他の奴にはどんな顔を見せてたんですか」
じろっと睨みつけられ、これまでの失礼すぎる発言は嫉妬から来ていたのだとオリヴァーは知る。そう思うとたった二歳だが年上の余裕を見せたくなるが、本音を言うと自分自身もこんなことは初めてで余裕なんて微塵もない。
「お前だけだ」
「……え?」
「俺がこんなになるのはお前だけだって言ってるんだよ!」
恥ずかしくてそんなことを叫ぶと、アレクシスががばっと覆いかぶさってきた。
150
あなたにおすすめの小説
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜
せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。
しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……?
「お前が産んだ、俺の子供だ」
いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!?
クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに?
一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士
※一応オメガバース設定をお借りしています
発情薬
寺蔵
BL
【完結!漫画もUPしてます】攻めの匂いをかぐだけで発情して動けなくなってしまう受けの話です。
製薬会社で開発された、通称『発情薬』。
業務として治験に選ばれ、投薬を受けた新人社員が、先輩の匂いをかぐだけで発情して動けなくなったりします。
社会人。腹黒30歳×寂しがりわんこ系23歳。
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
その男、ストーカーにつき
ryon*
BL
スパダリ?
いいえ、ただのストーカーです。
***
完結しました。
エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。
そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。
ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
平穏なβ人生の終わりの始まりについて(完結)
ビスケット
BL
アルファ、ベータ、オメガの三つの性が存在するこの世界では、αこそがヒエラルキーの頂点に立つ。オメガは生まれついて庇護欲を誘う儚げな美しさの容姿と、αと番うという性質を持つ特権的な存在であった。そんな世界で、その他大勢といった雑なくくりの存在、ベータ。
希少な彼らと違って、取り立ててドラマチックなことも起きず、普通に出会い恋をして平々凡々な人生を送る。希少な者と、そうでない者、彼らの間には目に見えない壁が存在し、交わらないまま世界は回っていく。
そんな世界に生を受け、平凡上等を胸に普通に生きてきたβの男、山岸守28歳。淡々と努力を重ね、それなりに高スペックになりながらも、地味に埋もれるのはβの宿命と割り切っている。
しかしそんな男の日常が脆くも崩れようとしていた・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる