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1人の踊り子が大きな街のどこかで今日も踊る。彼女の名前はレイ。とても綺麗な顔立ちにスタイル抜群の体。

横切っただけでみんな足をとめてしまうという。それほどまでに美しい。

彼女の踊りに惹かれたものは彼女を忘れることが出来ない。惚れてしまったら最後、彼女以外のことは考えられないほどに心を奪われるという。

「私に惚れたら一生誰かを好きになれねぇぜ」これが彼女の口癖だった。

それでも人は誰かを愛すことをとめれるわけが無い。理性で自分を抑えれる人なら踊り子に惚れるわけが無い。

「私に惚れない方がいい。」踊り子のレイは少年にこう言った。

少年はいつも通っている道を使い買い物をしていた。いつもは人が少ない道なのに見慣れない人だかり。少年は気になって足を止める。身長が小さいせいでみんなが何を見ているのかが分からなかった。

諦めて去ろうとすると人の間から見えたキラキラした人物が踊っているのが目に入る。少年はなぜか惹かれてしまった。ちゃんと見てみたい。そう思った少年は必死に最前列に向かう。まだ子供の体はスルスルと人を避けて簡単に最前列に着いた。

その瞬間に心を奪われた少年。口を開け放心状態で踊り子に心を奪われたのだ。あまりにも綺麗で目が離せない。

踊りが終わり人々はまたこの場所で踊ってほしいと言わんばかりに沢山お金を投げる。踊り子レイは投げてくれた人に一人一人目を合わせ微笑む。

お金を投げ終え人が居なくなったところで踊り子が去ろうと歩き出したときに少年は踊り子に「あのっ。」と話しかける。大切そうに持っていた銀貨両手で握りしめて踊り子に渡そうとしたのだ。

少年の服はとてもお金に余裕があるように見えない。踊り子は断る。

「大切なお金でしょ?気持ちだけ受け取るわ。自分に使いなさい。」

少年は都合が悪そうに下を向く。

「そんな悲しそうな顔をしないで、君…名前は?」

「テオ。」

「そう。テオ…。貴方はまだ若い。すくすく成長する時期よ。ちゃんと食べてお金に余裕が出来たらそのお金をいただくわ。それじゃあね。」

「僕はどうしたらお姉さんとお近づきになれますか…」

少年は必死に訴えた。今、何も言わずに諦めたらきっともう会えない。直感でそう思ったのだ。しかし彼女は冷たい言葉で答える。

「私に惚れない方がいい。」

その一言を放ち彼女は背を向けた。

「貴方の名前だけでも教えてくれませんか。」

彼女は足を止めた。

「なぜ私が貴方に名前を教えないといけないの?」

少年は笑った。

「僕の名前を聞いたでしょ?名前を教えたのにお姉さんが教えてくれないのはフェアじゃないと思うけどね。」

急に言葉使いが変わった少年。さっきまでの少年とは別人のような口調。ビックリして振り返ったレイ。

少年はまた笑って話し出した。
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