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家に向かうとはしてもさすがに露出の多い服はよろしくないと着替えてから家へ向かう2人。

「絶対認めさせるから安心してね」というテオ。

テオは貴族という隠し事をしていたがそれはレイにも隠し事があった。レイには完全に関係を認めさせる切り札があった。それをまだテオは知らない。

テオの両親はレイをすぐ追い返すつもりだっただろう。しかしあまりにも綺麗な挨拶に丁寧な言葉遣い。家にあげさせる他なかった。

踊り子をやっていたと聞かされてなければどこかの令嬢と言われたら信じてしまうほどの完璧な振る舞い。テオもそれは予想外であり、両親と共に驚いていた。

次はレイの番。レイは自分の過去を話した。実はレイも貴族だったのだ。しかしそれは身分だけの話。子爵であるレイは裕福とは言えずとも幸せな毎日を送っていた。しかしレイが10歳になるころに不慮の事故で両親が死亡。それをチャンスだと言わんばかりに沢山の人が家にあるものを差し押さえ最終的に家も取られてしまったのだ。残された男女二人の幼い子供。

その話は貴族達の間で有名な話だがまさかその子供が踊り子をしていたなど聞いたことが無かった。レイは家の復活を目指すものの将来家を継ぐ弟は当時6歳であり、教育も十分に受けれていなかった為にレイは弟を学ばせる為にお金を稼ぐ道として踊り子を選んだという。

勘の鋭いテオにとっても衝撃的であり、さすがと言わんばかりにレイを見つめる。レイの本当の名はレイチェル。

レイチェルは言った。もしテオとの関係を認めてもらえるのなら子爵が復活した暁には子爵の力が手に入るでしょう。と。

問題だったのは平民との結婚。身分を持っているなら何の問題もなかった。テオが惚れたという女性。後は息子が何とかするだろうと二人の関係を認めてくれた。

レイチェルが考えたあらすじはこうだ。

昔から関係があった伯爵家と子爵家。子爵家が没落したと言われていてもまだ家紋の力は生きており伯爵家がそれを支えていたということになった。支え合ってきた2人はお互いにひかれあい婚約者になったとも。

その話は噂として広がり有名な話になった。美少年のテオがどの令嬢にも見向きもしなかったのはその時から2人は婚約者になるという話が出ていたのだろうと。レイチェルをみた人たちは「あの方にはかなわない」というほどの美貌だったため皆が納得した結婚話となった。

その話から2年が経つ。レイチェルの弟は19歳になり、小さな家だが踊り子とした稼いだお金で家も買えた。

少年が来なくても3年間街を出なかった理由は弟が街に居たからだった。レイチェルが21歳になり、弟も16歳になり頃合いだと思って街を出る決心をしたという。

しかし今では過ぎた話。結婚式はあげれていないが2人は無事婚約した。

彼女は待っていた。惨めな人生でも自分に寄り添ってくれる人を。彼女は選んだ。一途に思ってくれていたテオを。出会った日に、もしテオが家から出ていなければ、もしあそこで踊っていなければ、2人は出会わなかっただろう。偶然が重なり奇跡ともいえる2人の出会い。全てはタイミングかもしれない。運命という赤い糸で繋がれていたかもしれない。それは誰にもわからない。しかし、2人が笑い合えるのならそれが幸せというものなのだろう。
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