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64.本戦ルール

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競技会4日目。今日は1年生によるクラス対抗とグループ戦がある。遂にこの日がきてしまった。

1組のみんなはもちろん校内戦のときより緊張している。それはカナもリンも例外ではない。テレビで放送され観客も桁違い。緊張は仕方がないことだ。

しかし、悪魔と戦うことによって死ぬかもしれないという緊張なか戦わなければならない。こんなことで緊張していては戦闘で足でまといになる。

戦ってみれば観客の目など気にならないわ!と会長に元気付けられたが、本物の戦闘の緊張はこんなものでは無いけれどね…。と小さく呟かれたその言葉の方がリン達1組には効いた。

「まもなく試合が始まります。新入生によるクラス対抗に出場選手は準備をしてください。」と放送が聞こえた。

カナ「いくよ!みんな!」

その一言でみんな気合をいれる。

一度整列するために観客がいるところで集まるがそのあとすぐに会場横にある大きな森へと配置される。

移動の際は場所をわからなくするために転移石というものを使う。人の魔法で距離を移動したら瞬間移動、モノを使ったら転移とそれぞれ名前が違う。転移する魔法を込められている石だから転移石。この石を作るには大勢の魔法師が必要であり量産はあまり出来ないが為に貴重である。転移石はA地点からB地点に移動という風に特定の場所の指定を行わなければならないのも量産できない理由だろう。

距離が遠くなれば遠くなるほどその分込めなければならない魔法が増える。転移石は完全な特注の商品なのだ。

会場から横の森の移動だけなので距離は遠くないが一クラスを一気に移動されなければならない為に使えるほどになるには時間が掛かる。試合が終わった時点でその石は発注され一年前から転移する場所が決められている状態なのだ。

一年前に場所が決められた場所。もちろん一年前では貴族がどの学校に進学するかも決まっていない状態。平等に配置されるがスタート地点は重要だ。この転移石はくじ引き。そして校内戦とは全く違うルールがある。森で戦いダウンと判定される魔法を食らえば脱落のルールは何も変わらない。変わるのは旗の存在。本戦では旗は存在しない。クラスの中から一人リーダーと呼ばれる人を決めてその人のダウンが確認されれば負けの本戦ルール。

そのリーダーは知らされるわけでもわかりやすい目印がついているわけではない。しかし1時間1度10秒だけアラームのような大きな音がなる。その音を頼りに他クラスのリーダーを探すのだ。

本物の森なために無限に逃げ続ける生徒が居たらどうするのか。と思う人も居たがしっかりと対策を立てている。本戦も魔法を測定する防弾チョッキのようなものを着用し、そこに発信機も着いている。スタート時点を目安とし明らかにおかしい移動はダウン認定される。が、そのダウン方法は執行されたことがない。逃げ続けるという戦略がどれほど恥ずかしい選択なのかを生徒であっても理解しているのだろう。

他のクラスのリーダーがダウンすることで勝利となるこの試合。この後にはグループ戦をも控えている。それは毎年大きな音に釣られ出会いがしらの戦いが発生し、その戦いの音でまた違う敵が集まる。ちょっとした乱闘になって試合が終わるためにクラス対抗は午前中に終了する。始まったのは9時。おおよそ3時間程度で勝負が決まるのだ。

乱闘でもそれは試合なのか、見る価値があるのか、でもこれはクラス対抗。協議会の目玉試合の一つ。新入生なりに努力する姿が好評であり、生徒たち自身も作戦の必要性を肌で感じられるから。

今転移が始まる。みんな瞳に光が宿りやる気に満ちているように見えた。
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