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立派な魔法使いへ
立派な魔法使いへ
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翌日。朝ご飯を食べて、軽く走っていると、予想外のお客さんがやって来た。
「水琴!」
「へ? あっ、お母さんとお父さん?」
急に名前を呼ばれて振り返ると、お母さんとお父さんが立っていた。お母さんは、私に駆け寄ると、強く抱きしめてきた。
「はぁ……良かった。灰沢さんから無事だとは教えてもらったけれど心配で……」
「あ~……うん。大丈夫だよ。髪の毛は変わっちゃったけど」
「本当にね。それはどうしたの?」
「原因不明。でも、茜さん達が調べてくれてるから、そのうち分かるんじゃないかな」
「そうか。お師匠さんの事も聞いた。手を合せたいんだが」
「まだお墓は出来てないから合せる場所はないよ。茜さんも忙しいみたいで、家に帰って来られないみたいだし」
「そうか」
茜さんもだけど、教師陣は色々と大忙しみたい。いつもなら帰ってきて、いつの間にかベッドに侵入している茜さんが、昨日と今日は帰ってきていなかった。つまり、今は忙しいという事に他ならない。茜さんが帰ってこないとお墓の相談も出来ないから、師匠の遺灰は、今も収納魔法に入っている。そこにあるのが、一番安全だしね。
お母さんとお父さんは、少し話すと、そのまま帰って行った。私に家に帰ってきて欲しそうな感じもしたけど、私の現状とかを考えると、このまま学校にいた方が良いと判断してくれたのかな。
お母さん達が来てから、更に一週間が経つ。茜さんは相変わらず帰って来ない。私は、筋トレなどを始めて、大分身体が元通りに戻って来た。髪と魔力は変わらないけど。
今日も家の周りを走り込んでいた。体力の衰えも感じず、いつも通りいつまでも走っていられる。そうして汗を掻いた後、お風呂で流して朝ご飯を食べる。その途中で、メイさんが手紙を持ってきた。
「水琴様。冷音様からお手紙です」
「冷音さんからですか? メールで良いのに」
手紙を受け取って開いてみると、これからの学校の予定などが書かれていた。ついでに、それを知らせる学校側からのお知らせも一緒だ。
「再開は二月まで延期……期末テストは無しなんだ。まぁ、あんな事があったばかりだしね。それまではレポートを二つ仕上げる事……これ、絶対に私オンリーの課題だよね……」
「冷音様からは手紙を渡すようにという指示のみ受けております」
「そうですか……」
さすがに、冷音さんからの言伝はないみたい。
(普段通りの生活に戻れって事だろうなぁ。その方法がレポートってところが冷音さんらしいけど)
レポートに使えそうな知識は、師匠から受け継いでいるし、この受け継ぎに関してレポートにまとめるのも良いかな。とにかく身体の次は、頭を動かさないとね。茜さんの書斎も借りて、レポートを書きに向かう。もう師匠はいない。ここからは、私が自主的に学んでいかないと。次に会ったときに、あっと言わせるためにね。
そうしてレポート漬けの日々を二週間続けていると、茜さんが帰ってきた。
「ただいま~……」
「おかえりなさい。お疲れ様です」
「本当に疲れたよぉ……冷音ちゃんが、次に同じ事があっても対応出来るようにするとか張り切っちゃってさぁ。あんな事が二度も三度もあって欲しくないよねぇ」
「そうですね」
「後白ちゃんが帰ってきたよぉ。新設した白の間にいるからぁ。これが地図ねぇ。私は寝てくるよぉ……」
茜さんはそう言って、自室の方に向かって行った。私は茜さんから受け取った地図と茜さんが消えていった方向を交互に見てから、茜さんが言っていた事を理解して、屋敷を飛び出した。
白が帰ってきていると聞いて、ジッとしていられるわけもない。だから、茜さんも白の居場所を教えてくれたのだと思う。身体強化で全力疾走していると、十秒もしないで学校に着いた。見た目が大きく変わっていたけど、地図があるので、まっすぐに向かう事が出来る。そして、白の間の扉を開くと、白が白の間の中央で立っていた。
「ん? 水琴か。久しぶ……」
言葉の途中にも関わらず、私は白を抱きしめた。
「おかえり」
「ああ、ただいま。どうかしたのか?」
いつもの私と違うと感じたのか、白がそう訊いてくる。そんな白を放して、二歩下がる。
「物凄く遅れちゃったけど、白に返事をしようと思って」
そこで区切ってから、一度深呼吸をする。
「正直、私は白の支えになれるか分からない。私自身は、まだ十六年しか生きていない人生経験も薄い人間だから。でも、私を頼ってくれる白の力になりたい。そう強く思う。だから、白の申し出を受けるよ。どんな事があっても、白の隣にいる。いや、いさせてください」
告白の返事としては、ちょっとおかしい部分もある気がするけど、しっかりと白に言えた。
私の言葉を受けて、白は小さく笑った。
「そうか。ありがとう。なら、私も水琴に釣り合うようにならないとな」
こうして晴れて恋人同士と私達は、白の間のソファで横に並んで座った。恋人になったとしても、そこまで大きな変化はない。関係が変わっただけで、互いを見る目は変わっていないからかな。
「そういえば、この髪は元に戻らないのか?」
白が、私の髪を触りながら訊いてくる。あれから一ヶ月近く経っているけど、私の髪は元に戻る気配すらなかった。頭頂部くらいは黒くなっているかなと思って、鏡を使って何度か見たけど、全部白いままだ。
「うん。その気配はないね。魔力量のせいかもって話だけど」
「……なるほどな。それもそうか。今の水琴はヤツデの魔力を吸収して自分のものに変化させている。つまりは、水琴自身が源泉を保有しているのと同じ状態なわけだ」
「源泉? 何で、源泉なの?」
「ん。ああ……水琴には話してなかった。今なら話してもいいだろう」
そこからヤツデを含む化物達の正体について説明を受けた。結構衝撃的な内容だったので、聞き終えた後に、ちょっと呆けてしまった。
「大丈夫か?」
「あ、うん。大丈夫。確かに、その内容だと口外はしちゃ駄目だね。今回は、クライトンが知らなかったからヤツデを吸収する方法を取ったけど、知っていたらどうなっていたか分からないもん」
「そういう事だ。だから、水琴の身体の中に源泉が出来上がっている可能性がある。それが身体に影響を及ぼしているのかもしれないな。まぁ、後は検査を繰り返して探るしかないな。時間はまだまだある。焦らず進めていくのがいいだろう」
「そうだね。時間はあるもんね」
それから白と色々と話しながら過ごしていった。それは、この日だけではなく、これからずっと変わらない。ここが私の選んだ場所だから。
エピローグ────────────────────
ヤツデの復活から十五年と少しが経った。世界は、魔法を受け入れ、魔法学校への入学者は増えた。いざという時の戦力として数えられるという事も承知の上で入学している子がほとんどだ。中には、ただ研究をしてみたいって子もいるけどね。
私はと言えば、高校卒業後は魔法大学に入り、言霊の理論や情報集積魔法など様々な研究成果を残していた。それもこれも師匠の残してくれた知識と助言をくれる白のおかげだ。白は、私の実力だって言っていたけど。
そして、大学の卒業後は魔法高校の教師になった。師匠のように誰かを導ける立場になりたいと思ったのと、ここで働いた方が白と一緒にいられる時間が増えるからという不純な動機だったけど。因みに、学校の教師陣だけでなく、生徒達も私が白のパートナーという事は知っている。新任として紹介される時に白自らがそう言ったからだ。白曰く、誰にも私を渡さないために必要だったらしい。まぁ、私もこそこそしなくて済むから良かったけど。
ただ、最初の年は、白が実力のない恋人を囲うために雇ったと思われた。命知らずだなと思いつつ、実力を見せたら全員黙ったけど。
髪の方の進展はなく、結局身体の中で源泉のように濃い魔力があるせいという事で落ち着いた。さらに、これは予想外の事だったけど、私は既に無限転生に囚われているらしい。濃い魔力を持つせいで、魂そのものが死を拒否しているのだろうと白が言っていた。髪だけが白くなり無限転生に囚われた事から、白の呪いの近種かもしれないと思われる。つまり、白の呪いも魔力の濃度のせいなのではという仮説も生まれた。まだ仮説に過ぎないけどね。
教師になって九年も経ち、色々な子を送り出してきた。そして、今日は新たに門を叩きに来る新入生達が来る。私は、案内のために校門の近くに立っていた。新入生達を、体育館の方に誘導していった。
「ふぅ……今年も実力のある子が多いなぁ」
「教師が板に付いているわね、水琴」
後ろから声がする。聞き覚えのない声。でも、私は、その声の主を知っている。思わず出て来そうになる涙を抑える。そして、ゆっくりと振り返ると、やっぱり知らない女の子がいた。綺麗な黒髪を背中まで垂らしている少女は、私を見て微笑む。
「変わらないわね」
「これでも成長したんだよ。師匠」
「まぁ、立派なレディにはなったわね」
「魔法使いとしてだって、物凄く成長したんだから」
「それは楽しみね」
約束していた再会。それは、前とは逆の立場となって成立した。私が先生で、師匠が生徒。でも、私に取って、師匠は、永遠に師匠だ。
「水琴!」
「へ? あっ、お母さんとお父さん?」
急に名前を呼ばれて振り返ると、お母さんとお父さんが立っていた。お母さんは、私に駆け寄ると、強く抱きしめてきた。
「はぁ……良かった。灰沢さんから無事だとは教えてもらったけれど心配で……」
「あ~……うん。大丈夫だよ。髪の毛は変わっちゃったけど」
「本当にね。それはどうしたの?」
「原因不明。でも、茜さん達が調べてくれてるから、そのうち分かるんじゃないかな」
「そうか。お師匠さんの事も聞いた。手を合せたいんだが」
「まだお墓は出来てないから合せる場所はないよ。茜さんも忙しいみたいで、家に帰って来られないみたいだし」
「そうか」
茜さんもだけど、教師陣は色々と大忙しみたい。いつもなら帰ってきて、いつの間にかベッドに侵入している茜さんが、昨日と今日は帰ってきていなかった。つまり、今は忙しいという事に他ならない。茜さんが帰ってこないとお墓の相談も出来ないから、師匠の遺灰は、今も収納魔法に入っている。そこにあるのが、一番安全だしね。
お母さんとお父さんは、少し話すと、そのまま帰って行った。私に家に帰ってきて欲しそうな感じもしたけど、私の現状とかを考えると、このまま学校にいた方が良いと判断してくれたのかな。
お母さん達が来てから、更に一週間が経つ。茜さんは相変わらず帰って来ない。私は、筋トレなどを始めて、大分身体が元通りに戻って来た。髪と魔力は変わらないけど。
今日も家の周りを走り込んでいた。体力の衰えも感じず、いつも通りいつまでも走っていられる。そうして汗を掻いた後、お風呂で流して朝ご飯を食べる。その途中で、メイさんが手紙を持ってきた。
「水琴様。冷音様からお手紙です」
「冷音さんからですか? メールで良いのに」
手紙を受け取って開いてみると、これからの学校の予定などが書かれていた。ついでに、それを知らせる学校側からのお知らせも一緒だ。
「再開は二月まで延期……期末テストは無しなんだ。まぁ、あんな事があったばかりだしね。それまではレポートを二つ仕上げる事……これ、絶対に私オンリーの課題だよね……」
「冷音様からは手紙を渡すようにという指示のみ受けております」
「そうですか……」
さすがに、冷音さんからの言伝はないみたい。
(普段通りの生活に戻れって事だろうなぁ。その方法がレポートってところが冷音さんらしいけど)
レポートに使えそうな知識は、師匠から受け継いでいるし、この受け継ぎに関してレポートにまとめるのも良いかな。とにかく身体の次は、頭を動かさないとね。茜さんの書斎も借りて、レポートを書きに向かう。もう師匠はいない。ここからは、私が自主的に学んでいかないと。次に会ったときに、あっと言わせるためにね。
そうしてレポート漬けの日々を二週間続けていると、茜さんが帰ってきた。
「ただいま~……」
「おかえりなさい。お疲れ様です」
「本当に疲れたよぉ……冷音ちゃんが、次に同じ事があっても対応出来るようにするとか張り切っちゃってさぁ。あんな事が二度も三度もあって欲しくないよねぇ」
「そうですね」
「後白ちゃんが帰ってきたよぉ。新設した白の間にいるからぁ。これが地図ねぇ。私は寝てくるよぉ……」
茜さんはそう言って、自室の方に向かって行った。私は茜さんから受け取った地図と茜さんが消えていった方向を交互に見てから、茜さんが言っていた事を理解して、屋敷を飛び出した。
白が帰ってきていると聞いて、ジッとしていられるわけもない。だから、茜さんも白の居場所を教えてくれたのだと思う。身体強化で全力疾走していると、十秒もしないで学校に着いた。見た目が大きく変わっていたけど、地図があるので、まっすぐに向かう事が出来る。そして、白の間の扉を開くと、白が白の間の中央で立っていた。
「ん? 水琴か。久しぶ……」
言葉の途中にも関わらず、私は白を抱きしめた。
「おかえり」
「ああ、ただいま。どうかしたのか?」
いつもの私と違うと感じたのか、白がそう訊いてくる。そんな白を放して、二歩下がる。
「物凄く遅れちゃったけど、白に返事をしようと思って」
そこで区切ってから、一度深呼吸をする。
「正直、私は白の支えになれるか分からない。私自身は、まだ十六年しか生きていない人生経験も薄い人間だから。でも、私を頼ってくれる白の力になりたい。そう強く思う。だから、白の申し出を受けるよ。どんな事があっても、白の隣にいる。いや、いさせてください」
告白の返事としては、ちょっとおかしい部分もある気がするけど、しっかりと白に言えた。
私の言葉を受けて、白は小さく笑った。
「そうか。ありがとう。なら、私も水琴に釣り合うようにならないとな」
こうして晴れて恋人同士と私達は、白の間のソファで横に並んで座った。恋人になったとしても、そこまで大きな変化はない。関係が変わっただけで、互いを見る目は変わっていないからかな。
「そういえば、この髪は元に戻らないのか?」
白が、私の髪を触りながら訊いてくる。あれから一ヶ月近く経っているけど、私の髪は元に戻る気配すらなかった。頭頂部くらいは黒くなっているかなと思って、鏡を使って何度か見たけど、全部白いままだ。
「うん。その気配はないね。魔力量のせいかもって話だけど」
「……なるほどな。それもそうか。今の水琴はヤツデの魔力を吸収して自分のものに変化させている。つまりは、水琴自身が源泉を保有しているのと同じ状態なわけだ」
「源泉? 何で、源泉なの?」
「ん。ああ……水琴には話してなかった。今なら話してもいいだろう」
そこからヤツデを含む化物達の正体について説明を受けた。結構衝撃的な内容だったので、聞き終えた後に、ちょっと呆けてしまった。
「大丈夫か?」
「あ、うん。大丈夫。確かに、その内容だと口外はしちゃ駄目だね。今回は、クライトンが知らなかったからヤツデを吸収する方法を取ったけど、知っていたらどうなっていたか分からないもん」
「そういう事だ。だから、水琴の身体の中に源泉が出来上がっている可能性がある。それが身体に影響を及ぼしているのかもしれないな。まぁ、後は検査を繰り返して探るしかないな。時間はまだまだある。焦らず進めていくのがいいだろう」
「そうだね。時間はあるもんね」
それから白と色々と話しながら過ごしていった。それは、この日だけではなく、これからずっと変わらない。ここが私の選んだ場所だから。
エピローグ────────────────────
ヤツデの復活から十五年と少しが経った。世界は、魔法を受け入れ、魔法学校への入学者は増えた。いざという時の戦力として数えられるという事も承知の上で入学している子がほとんどだ。中には、ただ研究をしてみたいって子もいるけどね。
私はと言えば、高校卒業後は魔法大学に入り、言霊の理論や情報集積魔法など様々な研究成果を残していた。それもこれも師匠の残してくれた知識と助言をくれる白のおかげだ。白は、私の実力だって言っていたけど。
そして、大学の卒業後は魔法高校の教師になった。師匠のように誰かを導ける立場になりたいと思ったのと、ここで働いた方が白と一緒にいられる時間が増えるからという不純な動機だったけど。因みに、学校の教師陣だけでなく、生徒達も私が白のパートナーという事は知っている。新任として紹介される時に白自らがそう言ったからだ。白曰く、誰にも私を渡さないために必要だったらしい。まぁ、私もこそこそしなくて済むから良かったけど。
ただ、最初の年は、白が実力のない恋人を囲うために雇ったと思われた。命知らずだなと思いつつ、実力を見せたら全員黙ったけど。
髪の方の進展はなく、結局身体の中で源泉のように濃い魔力があるせいという事で落ち着いた。さらに、これは予想外の事だったけど、私は既に無限転生に囚われているらしい。濃い魔力を持つせいで、魂そのものが死を拒否しているのだろうと白が言っていた。髪だけが白くなり無限転生に囚われた事から、白の呪いの近種かもしれないと思われる。つまり、白の呪いも魔力の濃度のせいなのではという仮説も生まれた。まだ仮説に過ぎないけどね。
教師になって九年も経ち、色々な子を送り出してきた。そして、今日は新たに門を叩きに来る新入生達が来る。私は、案内のために校門の近くに立っていた。新入生達を、体育館の方に誘導していった。
「ふぅ……今年も実力のある子が多いなぁ」
「教師が板に付いているわね、水琴」
後ろから声がする。聞き覚えのない声。でも、私は、その声の主を知っている。思わず出て来そうになる涙を抑える。そして、ゆっくりと振り返ると、やっぱり知らない女の子がいた。綺麗な黒髪を背中まで垂らしている少女は、私を見て微笑む。
「変わらないわね」
「これでも成長したんだよ。師匠」
「まぁ、立派なレディにはなったわね」
「魔法使いとしてだって、物凄く成長したんだから」
「それは楽しみね」
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