吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

文字の大きさ
685 / 809
出会いを楽しむ吸血少女

企画と開放

しおりを挟む
 翌日。バイト終わりにログインした。音楽フェスの担当者は、ニュクスさんと相談してヘスティアさんになった。ヘスティアさんも任せてと言っていたので信用して良いと思う。

「ハクさん」

 ログインした直後にヘスティアさんが紙束を持ってやって来た。それはフェスに関する事を纏めた企画書的なものだった。

「基本的に演奏を聴く感じのものと一緒に盛り上がって踊る感じもので分けようと思うの」
「会場じゃなくて時間で分ける形ですか。良いと思います。早めの時間は聴くタイプ。中盤からは皆で盛り上がるタイプにしましょう。最後はヘトヘトになるくらいが丁度良いと思います。ここで盛り上げられれば興味を持った人が音楽を勉強したいってなりますかね?」
「どうかな。可能性はあると思うけど」
「なら、音楽教室を作る事も考えておきますかね。人数的には四時間くらいでしょうか?」
「そのくらいが丁度良いかもね。きっちりとした時間は決めないで、最後は自由に盛り上がって貰うでも良いと思うかな」
「なるほど。そっちでいきましょう。基本は立食形式で、ところどころに椅子を配置。これだとファッションショーに使う建物は使えそうにないですね」
「うん。最後のページに一応設計図を載せておいたから」

 言われた最後のページを見ると、屋内施設というよりは、野外ステージという形だった。まぁ、こっちの方が人数キャパを深く考えずに済むから良いのかな。騒音問題にも発展しそうなので、会場の候補は街から離れた場所になる。

「昨日のうちに音の響きを確認しておいたから、この辺りなら問題はないよ。時間制限を付ければ、いつでも使えると思う」
「ここの人達は昼夜問わず起きていますけど、時間制限要りますか?」
「…………要らないかな。ここら辺は皆と相談かな。会場の広さはこれで大丈夫?」
「土地的な問題がないのならオッケーです。後ろの方まで音が聞こえるようにする工夫が必要ですが……後半のライブの時はスピーカーを使えるようにするくらいですかね。そうなるとエレキが必要になるのかな……ここら辺はアカリとメイティさんにも相談しましょう」
「ふむふむ。あっ、なるほど。皆で騒ぐから音が聞こえなくなる可能性があるのね。分かった。そっちの方向で相談してみる。エレキとかはよく分からないけど、相談したら分かるよね?」
「はい。大丈夫です」
「了解。取り敢えず、この調子で進めていくね。それじゃあ、また報告するね」
「はい。お願いします」

 ヘスティアさんは手を振って屋敷の方に戻っていく。改めて情報を纏めてアカリに相談するのかな。こっちはヘスティアさんに任せて、私はギルドエリアの商店街の開放をするために移民ギルドエリアに降りる。

「おぉ、君か」
「ソロモンさん。こちらで用意した家はどうですか?」
「問題ない。助かっているよ。ここで警備をすれば良いという事だったな?」
「はい。あまり商店街には入らなくても良いです。馬鹿が問題を起こした時に弾き出すお仕事です」
「分かった」

 ソロモンさんはそう言って去って行った。直後にルキフグスがやって来る。

「ルキフグス。そろそろ開けるけど、大丈夫?」
「はい。周囲からの監視網も問題ありません。ここの警備にはザフキエルの協力も取り付けました。完璧な布陣ではありますが、我々に出来るのは事後対処。問題の抑制に繋げるには、見せしめが必要になります。誰かしらを張り付けにして見せしめを演出しますか?」
「アスタロト辺りは私がやったら喜びそうだけど、相手は人間だから基本的に人間を張り付ける必要があるよね。それは無しの方向で」
「分かりました。では、最初の問題を起こした者を張り付けにします」
「お手柔らかにね。別に追い出すだけでも構わないから」
「はい」

 最後の打ち合わせをした後にルキフグスが去って行く。続いてヤトノカミさんがやって来る。

「話し合った通りで構わないな?」
「はい。テューポーン達も周囲で見守っているので、基本的に大丈夫だと思いますがよろしくお願いします」
「ああ」

 ヤトノカミさんも街の方に入っていく。他にもアキレウスさんとかにも話をしていき、警備状態を万全とする。テューポーン達にも挨拶をしていって、設定の再確認をした後にギルドエリアの商店街を開放する。
 これによって街の転移ポータルが増えて、商店街に繋がるものが出来上がる事になる。私は街から離れた山の上で様子を見る。あそこの近くにいるとバレる可能性もあるから。双眼鏡とか使えばある程度把握は出来るしね。

「あっ、初めてのお客さんだ」

 早速四人組がやって来た。男女の四人組で、色々お店を見ている。そして、外に居るテューポーン等を見て驚いていた。すぐに武器を出していたけど、戦闘禁止エリアとなっている表示が出たからか、少し戸惑いながらも武器を仕舞った。

「うん。大丈夫そう。注意書きは読んでくれるかな」

 テューポーンに気付いてから、看板にも気付いてくれた。そこにはこのエリアでの注意事項がしっかりと書かれている。定期的に配置しているから、割とどこでも読む事が出来る。それを読んだからか、全員武装解除をした。一方的に攻撃を受ける可能性があるから、万が一を排除したのかな。しっかりしたプレイヤーが最初のお客さんで良かった。
 色々と買い物をしてからプレイヤー達は去って行った。

「ふぅ……初めから問題とか起こらなくて良かった」
「品揃えを喜んでいたわぁ」

 いつの間にかアスタロトがやって来ていた。どうやら自主的に見回りをしてきてくれたらしい。

「一番何ではしゃいでた?」
「服と布製品ねぇ。武器は男の方がはしゃいでいたわぁ」
「まぁ、そこら辺は考え通りかな。値段に関しては?」
「値段については何も言っていないわぁ。妥当な値段という感じねぇ」
「まぁ、そのくらいが丁度良いかな。あまり安すぎて他の人達のお店に閑古鳥が鳴いたら困るし」

 基本的には安すぎずある程度高いくらいの値段にしている。それでも妥当と思ってくれたのなら、性能だけではなく、見た目の綺麗さなどからも価値を見出してくれたのだと思う。
 その後もぽつぽつとプレイヤーがやって来る。
 基本的に家具とか戦闘に関係ないものが多いけど、それでも購入者は割といるみたい。こそこそとアスタロトが聞き耳を立てて情報を収集してくれる限りでは、既に家やギルドエリアを持っている人達が家を飾りたいと思って購入している感じみたいだ。

「売れ行きは好調ねぇ」
「うん。補充は上手くいってる?」
「見た感じ大丈夫よぉ。分担が上手くいっているわぁ。警備の巡回もあるから問題も起こりそうにないわぁ」
「今のところね。しばらくは監視を続けよう」
「はぁい」

 アスタロトはそう言って私を抱きしめてくる。アスタロトからしたら、こうして抱きついていられる事が嬉しいのかもしれない。アスタロトを背もたれにして、街を覗くという若干ヤバい人のような状態だけど、今はこれが重要だからちゃんと監視を続けていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...