吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

文字の大きさ
760 / 809
吸血少女は救いの手を差し伸べる

増える悪魔

しおりを挟む
 メイリーンと話していると、アスタロトが飛んできた。

「主人。挨拶したい悪魔と天使が来ているわぁ」
「面接は終わったの?」
「仕える意思があるのはねぇ」
「分かった。じゃあ、メイリーン、またね」
「うん。また」

 私はギルドエリアへと戻る。そこで悪魔界と天上界から来た悪魔と天使に会いに行く。もう私に仕える意思があるという事だから、既に全員女性になっていると思う。そのつもりでいよう。
 ギルドエリアの中央広場には、ざっと二十人以上の悪魔と天使が待っていた。挨拶するだけで、今日の夜は終わりそうかな。明日が祝日で良かった。
 問題は、悪魔と天使が睨み合っているという事。喧嘩になっていないという点から、こちらの出している条件を理解しているという事は分かる。
 そこでアスタロトが手を叩く。その音で全員の視線がこちらを向く。

「主人が来ているというのにぃ、誰も挨拶をしないっていうのは無礼が過ぎると思うわよぉ? 一体何をしに来たのかしらぁ?」

 アスタロトの言葉の端から怒りを感じる。私に仕えるという話で来ているはずなのに、私を置いてそれぞれで睨み合っているという状況をアスタロトは良く思っていなかった。一部の悪魔達が怯えている事が分かる。その中でも怯えていないのは、高位の悪魔って感じなのかな。天使の方はアスタロトが仕切っている事をよく思っていないのか、ジロッとアスタロトを睨んでいた。
 やっぱり悪魔と天使の敵対関係は、そう簡単に解消はしない。私という鎹がいるから、ここでは大きな喧嘩が起こらないだけだから、これも仕方ない。
 どうしようかと思っていたら、私の横にサンダルフォンが降りて来た。

「何だ。納得して来ていたのではないのか? ここで問題を起こすというのなら、貴様らを牢に閉じ込める事になるが?」

 サンダルフォンが来てくれた事で、天使達も大人しくなる。

「ありがとう、サンダルフォン」
「構わん。そちらから始めると良い。こちらは、改めて意志を確認する」
「えぇ、分かったわぁ」

 サンダルフォンが天使達の元に向かう。本当に私に仕える気があるのかの確認をしてくれるらしい。私に仕えるという事は、悪魔達との共同生活をするという事になる。ここでこのまま睨み合いを続けるという事は許されない。ルシファー達でさえ、ある程度自制してくれているから。
 なので、先に挨拶をしてくれるのは、悪魔達からになった。悪魔達は既に全員が女性になっている。ある意味で意志を固めてくれている証拠になる。天使も一応全員女性になっているのだけど、まだ隔たりがある感じだ。だから、サンダルフォンの確認が入る。
 アスタロトが私の後ろから抱きしめてくる。この態勢で面会をするらしい。アスタロトが睨みを利かせるという事だろうか。
 最初に来た悪魔はワニに乗って、肩に大きな鷹を留まらせている人型の悪魔だった。綺麗で魅力的な姿をしている。神様だったら、美の女神とかになってもおかしくないくらいだ。

「我はアガレス。三十一の軍団を率いる公爵だ。ルキフグス様の配下である。主に仕えさせて頂く。よろしく頼む」
「よろしく。アガレスは、何か得意な事とかあるの?」
「地震を起こす事が出来る。他に有用な力であれば、逃亡する者を引き戻す事も出来る。殲滅したい時に使えるだろう。後は、尊厳や気品を破壊する」
「尊厳や気品?」

 どういう事か理解できないけど、何だか物騒な感じに聞こえる。

「ああ。相手が持つ根源にある価値を破壊する。使う事はほぼないがな」

 価値を破壊する。相手が持つ価値を無にするという事かな。それによって何が起こるのか分からないけど、何となくヤバそう。

「ルキフグスの配下なら、ルキフグスに任せるのが一番かな。アガレスはそれでも良い?」
「有り難い。感謝する」

 アガレスもルキフグスの下で働くのがやりやすいだろうから、ルキフグスに後の事は任せる事にする。
 アガレスが下がると、次に来たのは綺麗な女性だった。アガレス同様に魅力的な身体をしているけど、どちらかというと優しげなお姉さんみたいな感じだ。

「私はヴァサゴ。二十六の軍団を率いる君主よ。よろしくね。力は、アガレスとほとんど同じね。違うのは、女性の愛をかき立てる能力があるわ」
「女性を魅了するみたいな感じ?」
「似たようなものだけれど、その人が持つ愛を増強するという認識の方が良いわ」
「なるほど。取り敢えず、ここでは封印で」
「そう? 繁殖とかに役に立つと思うのだけれど」
「いや、これ以上愛を増幅されると、私が困る事になりそうだから……」

 これが無差別に広がる力になった場合、ギルドエリアにいる女神達をはじめとした私への愛が深い人達にも適用される事になる。そうなると、今以上の愛を振りまいてくるようになるので、私が対応に困る。下手すれば十八禁だ。まぁ、ゲームの仕様上、そんな事にならないのは分かっているけど。サクヤさんと添い寝していた時もそういう事にはならなかったし。

「取り敢えず、ヴァサゴは開拓領域で開拓の手伝いをお願いしようかな」
「分かったわ」

 ヴァサゴの能力を全力で使える環境を用意出来るまでは、基本的に手伝いをしてもらう事にした。最近はグレモリーやパイモン達も同じように開拓領域の手伝いをして貰っているし。運搬や周囲の資源回収をしてくれるだけでも助かるしね。後は、時々派遣に出すくらいかな。
 ヴァサゴと交代で来たのは、犬だった。でも、背中から立派な羽が生えている。まるでグリフォンみたい。まぁ、身体は完全に犬なのだけど。

「わぁ、可愛い。あなたも悪魔なの?」
『うむ。我はグラシャラボラス。三十六の軍団を率いる総裁にして伯爵である。殺戮が得意なのである』

 可愛いのに物騒な事を言ってきた。いや、そういうのはギルドエリアに沢山いるか。

「そっか。じゃあ、派遣のメンバーになって貰おうかな」
『分かったのである!』

 滅茶苦茶威勢が良い返事なのだけど、見た目が柴犬みたいだから可愛いとしか思えない。なので、グラシャラボラスを撫で回す。もふもふ度で言えば、玉藻ちゃんとフェンリルに劣るけど、この毛並みも気持ち良くて好きかな。
 自分も撫でて欲しいと言わんばかりに、アスタロトが頬擦りをしてくるので、顔面を掴んで撫でてあげた。嬉しそうだから、これで良いだろう。
 グラシャラボラスと交代で来るのは、人型の悪魔だ。威厳のある女王様みたいな感じだった。

「私はガープ。六十六の軍団を率いる総裁にして君主。そして、アマイモン様の配下だ。人の意識を失わせ、感情を意のままに操る事が出来る。本来は召喚出来る時期も限られるはずなのだが……今は関係なくなっているようだ。これも主の力だろう」
「そうなの?」

 取り敢えず、アスタロトに確認してみる。

「そうねぇ。主人の力は理をねじ曲げるものだからぁ、あり得ない話じゃないわぁ」
「そっか。ガープは開拓領域の防衛を任せたいかな」
「承知した」

 ガープの能力である意識を失わせ感情を意のままに操るというのは、プレイヤーに対しても有効だと思う。だから、開拓領域に攻め込んで来た時の事を考えて、相手を無力化する手段を持つガープがいてくれると助かる。まぁ、しばらくは開拓領域が重なる事はないと思うけど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...