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吸血少女の始まり
突然の強敵
周囲の音の感じから、大分人も少なくなってきたと思われるので、私も駆け回ってプレイヤーを探す事にした。
ここまでで気付いた事は、プレイヤー相手に【認識阻害】の効力は、薄いという事。モンスター相手には、不意打ちを決めやすくなったけど、プレイヤー相手だと、こっちの姿自体は見えているからか、普通に攻撃される。一応、アカリにも知らせておく事にした。
「いた」
森を走っていると、プレイヤーが歩いているところを発見する。向こうも私の接近に気付いて、槍を構えていた。
「フレ姉を相手にする良い練習になるかな」
フレ姉は、どのゲームでも槍みたいな長物を使う。なので、ある程度戦い方は分かるけど、このゲームで槍などがどういう仕様なのかは分かっていないから、そこを学ばせてくれれば良いなって考えていた。
「はぁっ!!」
突き出された槍を、首を傾ける事で避けて、そのまま懐まで接近する。相手は、全身を鎧で覆っている。でも、身体を動かすには、必ず隙間があるはず。脇から後ろに抜けて、背面を確認した時、ファッションかどうか分からないけど、皮で出来た部分を見つけた。
「【バックスタブ】」
【短剣】の技の一つである【バックスタブ】は、背面への攻撃時に、ダメージを一・五倍に上げる効果がある。相手のHPが二割削れる。
「ぐっ……」
ダメージを受けた相手は、後ろに振り返りながら、槍で薙ぎ払おうとしてくる。
私は、その回転に合わせて、そのまま相手の後ろに移動する。そして、隙だらけの膝裏に短剣を突き刺す。
「うぐっ!?」
いきなり膝に力が入らなくなったのか、相手は膝を突いた。相手のうなじがよく見える。
「【バックスタブ】」
クリティカル判定に加えて、ダメージが一・五倍になった事もあり、相手のHPは赤ゲージに突入する。そのまま突き刺さった短剣に力を入れて、さらに深く突き刺して、完全にHPを削り切る。
「硬いな……ここまで生き残る人達は、さすがに紙装甲じゃないか。槍の対処は、やっぱり接近戦かな。フレ姉なら、普通に対応してきそうだけど」
対フレ姉の練習にはならなかったけど、私の攻撃力不足が顕著に表れている事は分かった。
「あっ……そういえば、私って、今、ステータスダウン中か。それじゃあ、これまで出会って来た人達って、初心者に近い人達だったのかな。この状態でフレ姉に勝てるか、余計に心配になってきた」
調子に乗らず、自分のペースでいく事にした。
ゆっくりと移動をしていると、見知った後ろ姿を見つける。
「アク姉だ。アク姉は、絶対にちゃんと戦ってくれないからなぁ……そうだ!」
悪い事を思い付き、にやりと笑う。いつもアク姉には、色々やられているので、良い仕返しになるかもしれない。
そっとアク姉に近づいていく。そして、後ろから、その背中に飛びついた。
「アク姉!」
「わっ!? ハクちゃん? お姉ちゃんに甘えたくなったの!?」
嬉しそうに顔を輝かせるアク姉に、若干罪悪感を抱きながら、その首に噛み付いた。
「んんっ!?」
噛まれた事で違和感を覚えたのか、アク姉が驚く気配がした。
「ハクちゃん! 吸血してるでしょ!?」
「ふぃてないよ」
「喋り方がしている状態だよ! うぅ……変な感じがする……」
人に【吸血】を使った事がないので、知らなかったけど、された方は変な感じがするらしい。どんな感じなのか、後で詳しく訊いてみようかな。
そんな事を思いつつも、アク姉を吸血し続ける。味的には、普段の獣達よりも美味しいと感じる。その理由は、まず、獣臭さとかが全くない。寧ろ良い香りが血の匂いと共に鼻に抜けていく。その匂いのおかげで、血の匂いが半減していた。そこの理由が分からないので、何とも言えないけど、人に対する【吸血】は、嫌悪感が薄い。
味も生ゴミとかドブとか変な味とかじゃなくて、濃い血の味が広がるから、ちょっと嫌な感じはあるけど、これくらいなら、いつまでも吸える。
「ハクちゃん……さすがに、これ以上吸われると、私も倒れちゃうんだけど……それを狙ってる」
「ふん」
「うっ……まだ、姉さんを倒してないんだけど……」
「なら、わふぁふぃをこふへぎふれば?」
「最愛の妹を攻撃なんて出来るわけないよ。それに、せっかくハクちゃんから抱きついてくれているのに、それを振りほどくなんて勿体ない!」
一体何を言っているのだろうか。これがシスコンの行き着く先と思うと、ここまでのシスコンにならなくて良かったとしみじみ思う。まぁ、フレ姉もアク姉も好きだけど。
「イベント終わったら、絶対に仕返しするからね。倍返しだから」
アク姉のこの言葉を聞いて、少し後悔し始めていたけど、今更【吸血】を止めて解放するのも馬鹿みたいなので、このままHPを吸い尽くして、アク姉を倒した。
すると、目の前にウィンドウが出て来た。
『【吸血】により、プレイヤー『アクア』から【魔法才能】のスキルを獲得』
突然の事に私も驚いた。
「プレイヤーからも獲得出来るんだ。これまで全然獲得出来てなかったから、ちょっとびっくりしちゃった。それにしても【魔法才能】か……要らないかも……」
魔法使いになる予定もないので、【魔法才能】の使い道に、少し困る。イベント中の今考える事でもないので、この問題はイベント終了後まで放置しておく事にした。
「さてと、アク姉も倒したし、フレ姉探しを……」
フレ姉探しを再開しようかと思った瞬間、さっきフレ姉に会った時に感じた嫌な予感よりも更に恐ろしい程の嫌な予感がした。
私は、咄嗟に短剣を真後ろに向かって振う。直後に、私の腕から肩に掛けて衝撃が突き抜けた。それは、背後からの攻撃を防いだからだった。すぐに、短剣を両手で持って、相手の攻撃を受け止める。
私を攻撃してきた人は、綺麗な長い金髪の女性プレイヤーで、身体が浮いている事から、上からの一撃の可能性がある。
「凄い。よく分かったね?」
鍔迫り合いのまま無邪気そうな笑顔でそう言った彼女は、一旦後ろに退いた。後ろに退いてくれなかったら、あのまま潰されていたかもしれない。
私をジッと見ている彼女は、何故か少し寂しそうな表情をしていた。
「ちょっと似てるかも……」
彼女はそう言うと、すぐに表情が引き締まり、片手剣を構えてきた。私もすぐに短剣を構えるけど、心の準備が出来る前に、向こうから攻めてきた。
大振りで振られる片手剣を、短剣で受け止めるのではなく、受け流す。そうじゃないと、こっちが保たない。
「うっ……」
思った以上に重い一撃で、受け流してから反撃に繋げる事が出来なかった。そこから縦横無尽な攻撃が襲ってきた。目で追うのもやっとな攻撃に、ギリギリで反応して、受け流しているけど、攻撃の全て防げている訳では無く、掠っていく攻撃でHPがどんどん削れていく。
このままだとじり貧だ。こちらから攻勢に出られない以上、【HP吸収】も【吸血】も出来ない。
この人の動きは、確実にVR慣れしている。それも私より、ずっと上だ。ここは無理矢理攻勢に出るしかない。
攻撃を食らうのを覚悟して、一歩踏み込む。短剣を持っていない左腕が肩から斬り落とされたけど、こっちの間合いに入る事が出来た。
「【トリプルピアース】!」
三連続の突きを、彼女は剣の柄で正確に受けた。
「はぁ!?」
そんな芸当、私だって出来ない。どんな反射神経をしていたら、こんな曲芸が出来るのか。この技で、ある程度のダメージとノックバックを与えて、HPも少しは回復出来ると思ったのだけど、私の考えは甘かったみたい。
硬直時間という大きな隙を晒した私に、彼女の攻撃を防ぐ術はない。容赦なく剣が振われる。生き残る為に、どうにか耐えて欲しいと祈る。私の祈りは、祈った事とは、少し別の形で叶った。
振われた刃が、私に触れる事はなかったのだ。それは、私に触れる前に、私の後ろから伸びた槍に防がれたからだった。剣を防いだ槍は、そのまま彼女を押し戻す。
「下がってろ」
後ろから、フレ姉の優しい声がする。
「うん」
フレ姉の後ろに下がる。その時見たフレ姉の横顔は、少し怒っている感じがした。
「あなたのパーティーメンバー?」
「いや、ただの可愛い妹さ。イベント内じゃ、敵でしかねぇが、無残に倒されるところを、ただただ見ている事なんて出来ねぇんでね!」
フレ姉は、槍を構えて彼女に突き出す。彼女は、その突きを、難なく剣で防ぐ。それでもフレ姉の表情に焦りなどはない。冷静に、突きを繰り返していく。彼女は、正確に槍を捌いていた。
私が使った高速の突きを、何の技も使わずに剣の柄で受け止めるくらいだ。技を使っていないフレ姉の槍が防がれてもおかしくは無い。
フレ姉は、突きから薙ぎに替えて、彼女を大きく退かせる。
「中々に厄介だな」
「槍の扱いが上手いね。ちゃんと近づかないと私も危ないかな」
「よく言う。大して焦りもしていねぇくせによ」
「そんな事ないよ。あのまま突きを繰り返されたら、防戦一方だなとは思っていたし。やっぱり慣れた武器じゃないとキツいかなともね」
「ほう。サブ武器で挑みに来ているって事か」
「ううん。慣れた武器がこのゲームに実装されてないだけ。まぁ、そんな甘えた事を言っていたら、馬鹿にされちゃうかもだけど」
「何を意味分からない事を!」
フレ姉は、槍を勢いよく突き出す。彼女は、それを剣で受け流す。そして、今度は向こうから攻勢に出た。フレ姉に向かって、剣が横薙ぎに振われる。フレ姉は、それを柄で受け止めて、彼女に近づく。
そのまま間合いに入ったところで、石突きを跳ね上げさせて攻撃した。彼女は、身体を反らすだけで避けて、剣を引き戻し、今度は上段から振り下ろす。それは、槍の柄を使った受け流しで防がれる。
そこから攻防を入れ替えながら、戦闘が続く。互いに隙が生まれる技は使わず、純粋な槍術と剣術だけで戦っていた。間合いの内側に入られても、フレ姉は柄を短く持ったり、柄を使ったり、石突きを使ったりして、彼女を間合いの外側に退かせていた。
彼女の方は、フレ姉の槍の突きや薙ぎ、さらには石突きの不意打ちさえも剣で防ぎ、受け流していた。どちらも相手を好敵手と認めたのか、口の端を上げていた。そんな余裕がなかった私は、まだ自分が弱いのだと実感させられた。
ここまでで気付いた事は、プレイヤー相手に【認識阻害】の効力は、薄いという事。モンスター相手には、不意打ちを決めやすくなったけど、プレイヤー相手だと、こっちの姿自体は見えているからか、普通に攻撃される。一応、アカリにも知らせておく事にした。
「いた」
森を走っていると、プレイヤーが歩いているところを発見する。向こうも私の接近に気付いて、槍を構えていた。
「フレ姉を相手にする良い練習になるかな」
フレ姉は、どのゲームでも槍みたいな長物を使う。なので、ある程度戦い方は分かるけど、このゲームで槍などがどういう仕様なのかは分かっていないから、そこを学ばせてくれれば良いなって考えていた。
「はぁっ!!」
突き出された槍を、首を傾ける事で避けて、そのまま懐まで接近する。相手は、全身を鎧で覆っている。でも、身体を動かすには、必ず隙間があるはず。脇から後ろに抜けて、背面を確認した時、ファッションかどうか分からないけど、皮で出来た部分を見つけた。
「【バックスタブ】」
【短剣】の技の一つである【バックスタブ】は、背面への攻撃時に、ダメージを一・五倍に上げる効果がある。相手のHPが二割削れる。
「ぐっ……」
ダメージを受けた相手は、後ろに振り返りながら、槍で薙ぎ払おうとしてくる。
私は、その回転に合わせて、そのまま相手の後ろに移動する。そして、隙だらけの膝裏に短剣を突き刺す。
「うぐっ!?」
いきなり膝に力が入らなくなったのか、相手は膝を突いた。相手のうなじがよく見える。
「【バックスタブ】」
クリティカル判定に加えて、ダメージが一・五倍になった事もあり、相手のHPは赤ゲージに突入する。そのまま突き刺さった短剣に力を入れて、さらに深く突き刺して、完全にHPを削り切る。
「硬いな……ここまで生き残る人達は、さすがに紙装甲じゃないか。槍の対処は、やっぱり接近戦かな。フレ姉なら、普通に対応してきそうだけど」
対フレ姉の練習にはならなかったけど、私の攻撃力不足が顕著に表れている事は分かった。
「あっ……そういえば、私って、今、ステータスダウン中か。それじゃあ、これまで出会って来た人達って、初心者に近い人達だったのかな。この状態でフレ姉に勝てるか、余計に心配になってきた」
調子に乗らず、自分のペースでいく事にした。
ゆっくりと移動をしていると、見知った後ろ姿を見つける。
「アク姉だ。アク姉は、絶対にちゃんと戦ってくれないからなぁ……そうだ!」
悪い事を思い付き、にやりと笑う。いつもアク姉には、色々やられているので、良い仕返しになるかもしれない。
そっとアク姉に近づいていく。そして、後ろから、その背中に飛びついた。
「アク姉!」
「わっ!? ハクちゃん? お姉ちゃんに甘えたくなったの!?」
嬉しそうに顔を輝かせるアク姉に、若干罪悪感を抱きながら、その首に噛み付いた。
「んんっ!?」
噛まれた事で違和感を覚えたのか、アク姉が驚く気配がした。
「ハクちゃん! 吸血してるでしょ!?」
「ふぃてないよ」
「喋り方がしている状態だよ! うぅ……変な感じがする……」
人に【吸血】を使った事がないので、知らなかったけど、された方は変な感じがするらしい。どんな感じなのか、後で詳しく訊いてみようかな。
そんな事を思いつつも、アク姉を吸血し続ける。味的には、普段の獣達よりも美味しいと感じる。その理由は、まず、獣臭さとかが全くない。寧ろ良い香りが血の匂いと共に鼻に抜けていく。その匂いのおかげで、血の匂いが半減していた。そこの理由が分からないので、何とも言えないけど、人に対する【吸血】は、嫌悪感が薄い。
味も生ゴミとかドブとか変な味とかじゃなくて、濃い血の味が広がるから、ちょっと嫌な感じはあるけど、これくらいなら、いつまでも吸える。
「ハクちゃん……さすがに、これ以上吸われると、私も倒れちゃうんだけど……それを狙ってる」
「ふん」
「うっ……まだ、姉さんを倒してないんだけど……」
「なら、わふぁふぃをこふへぎふれば?」
「最愛の妹を攻撃なんて出来るわけないよ。それに、せっかくハクちゃんから抱きついてくれているのに、それを振りほどくなんて勿体ない!」
一体何を言っているのだろうか。これがシスコンの行き着く先と思うと、ここまでのシスコンにならなくて良かったとしみじみ思う。まぁ、フレ姉もアク姉も好きだけど。
「イベント終わったら、絶対に仕返しするからね。倍返しだから」
アク姉のこの言葉を聞いて、少し後悔し始めていたけど、今更【吸血】を止めて解放するのも馬鹿みたいなので、このままHPを吸い尽くして、アク姉を倒した。
すると、目の前にウィンドウが出て来た。
『【吸血】により、プレイヤー『アクア』から【魔法才能】のスキルを獲得』
突然の事に私も驚いた。
「プレイヤーからも獲得出来るんだ。これまで全然獲得出来てなかったから、ちょっとびっくりしちゃった。それにしても【魔法才能】か……要らないかも……」
魔法使いになる予定もないので、【魔法才能】の使い道に、少し困る。イベント中の今考える事でもないので、この問題はイベント終了後まで放置しておく事にした。
「さてと、アク姉も倒したし、フレ姉探しを……」
フレ姉探しを再開しようかと思った瞬間、さっきフレ姉に会った時に感じた嫌な予感よりも更に恐ろしい程の嫌な予感がした。
私は、咄嗟に短剣を真後ろに向かって振う。直後に、私の腕から肩に掛けて衝撃が突き抜けた。それは、背後からの攻撃を防いだからだった。すぐに、短剣を両手で持って、相手の攻撃を受け止める。
私を攻撃してきた人は、綺麗な長い金髪の女性プレイヤーで、身体が浮いている事から、上からの一撃の可能性がある。
「凄い。よく分かったね?」
鍔迫り合いのまま無邪気そうな笑顔でそう言った彼女は、一旦後ろに退いた。後ろに退いてくれなかったら、あのまま潰されていたかもしれない。
私をジッと見ている彼女は、何故か少し寂しそうな表情をしていた。
「ちょっと似てるかも……」
彼女はそう言うと、すぐに表情が引き締まり、片手剣を構えてきた。私もすぐに短剣を構えるけど、心の準備が出来る前に、向こうから攻めてきた。
大振りで振られる片手剣を、短剣で受け止めるのではなく、受け流す。そうじゃないと、こっちが保たない。
「うっ……」
思った以上に重い一撃で、受け流してから反撃に繋げる事が出来なかった。そこから縦横無尽な攻撃が襲ってきた。目で追うのもやっとな攻撃に、ギリギリで反応して、受け流しているけど、攻撃の全て防げている訳では無く、掠っていく攻撃でHPがどんどん削れていく。
このままだとじり貧だ。こちらから攻勢に出られない以上、【HP吸収】も【吸血】も出来ない。
この人の動きは、確実にVR慣れしている。それも私より、ずっと上だ。ここは無理矢理攻勢に出るしかない。
攻撃を食らうのを覚悟して、一歩踏み込む。短剣を持っていない左腕が肩から斬り落とされたけど、こっちの間合いに入る事が出来た。
「【トリプルピアース】!」
三連続の突きを、彼女は剣の柄で正確に受けた。
「はぁ!?」
そんな芸当、私だって出来ない。どんな反射神経をしていたら、こんな曲芸が出来るのか。この技で、ある程度のダメージとノックバックを与えて、HPも少しは回復出来ると思ったのだけど、私の考えは甘かったみたい。
硬直時間という大きな隙を晒した私に、彼女の攻撃を防ぐ術はない。容赦なく剣が振われる。生き残る為に、どうにか耐えて欲しいと祈る。私の祈りは、祈った事とは、少し別の形で叶った。
振われた刃が、私に触れる事はなかったのだ。それは、私に触れる前に、私の後ろから伸びた槍に防がれたからだった。剣を防いだ槍は、そのまま彼女を押し戻す。
「下がってろ」
後ろから、フレ姉の優しい声がする。
「うん」
フレ姉の後ろに下がる。その時見たフレ姉の横顔は、少し怒っている感じがした。
「あなたのパーティーメンバー?」
「いや、ただの可愛い妹さ。イベント内じゃ、敵でしかねぇが、無残に倒されるところを、ただただ見ている事なんて出来ねぇんでね!」
フレ姉は、槍を構えて彼女に突き出す。彼女は、その突きを、難なく剣で防ぐ。それでもフレ姉の表情に焦りなどはない。冷静に、突きを繰り返していく。彼女は、正確に槍を捌いていた。
私が使った高速の突きを、何の技も使わずに剣の柄で受け止めるくらいだ。技を使っていないフレ姉の槍が防がれてもおかしくは無い。
フレ姉は、突きから薙ぎに替えて、彼女を大きく退かせる。
「中々に厄介だな」
「槍の扱いが上手いね。ちゃんと近づかないと私も危ないかな」
「よく言う。大して焦りもしていねぇくせによ」
「そんな事ないよ。あのまま突きを繰り返されたら、防戦一方だなとは思っていたし。やっぱり慣れた武器じゃないとキツいかなともね」
「ほう。サブ武器で挑みに来ているって事か」
「ううん。慣れた武器がこのゲームに実装されてないだけ。まぁ、そんな甘えた事を言っていたら、馬鹿にされちゃうかもだけど」
「何を意味分からない事を!」
フレ姉は、槍を勢いよく突き出す。彼女は、それを剣で受け流す。そして、今度は向こうから攻勢に出た。フレ姉に向かって、剣が横薙ぎに振われる。フレ姉は、それを柄で受け止めて、彼女に近づく。
そのまま間合いに入ったところで、石突きを跳ね上げさせて攻撃した。彼女は、身体を反らすだけで避けて、剣を引き戻し、今度は上段から振り下ろす。それは、槍の柄を使った受け流しで防がれる。
そこから攻防を入れ替えながら、戦闘が続く。互いに隙が生まれる技は使わず、純粋な槍術と剣術だけで戦っていた。間合いの内側に入られても、フレ姉は柄を短く持ったり、柄を使ったり、石突きを使ったりして、彼女を間合いの外側に退かせていた。
彼女の方は、フレ姉の槍の突きや薙ぎ、さらには石突きの不意打ちさえも剣で防ぎ、受け流していた。どちらも相手を好敵手と認めたのか、口の端を上げていた。そんな余裕がなかった私は、まだ自分が弱いのだと実感させられた。
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