吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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吸血少女の歩む道

熱帯エリア探索

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 熱帯雨林を歩いていると、また嫌な予感がした。今度は、直後に攻撃が来たので、すぐに避ける事が出来ない。襲ってきたのは、小さな蝙蝠だった。名前は、血狂い蝙蝠。吸血蝙蝠と何が違うのだろうか。
 取り敢えず、短剣を振って斬り落とす。一撃で倒せるくらいに弱いと思ったら、アサルトバードの比にならないくらいの群れが襲い掛かってきた。

「うげっ!? 【追刃】【ラピッドファイア】」

 斬撃が連続する【追刃】と連続で短剣を振るえる【ラピッドファイア】を使って、襲い掛かってくる血狂い蝙蝠を斬り落としていく。
 その斬撃をすり抜けて、何匹かが噛み付いてくるけど、【硬質化】を使う事である程度は防げた。でも、一、二回は、ダメージを負う事になった。
 それで、血狂い蝙蝠の名前の由来が分かる事になった。私に噛み付いてきた血狂い蝙蝠達が、他の血狂い蝙蝠達よりも興奮していた。より好戦的になったと言った方が合っているかもしれない。

「あの小ささだと、ツイストダガーは、あまり効果無さそうなんだよね……ダメージは【硬質化】で抑えられる。このまま倒しきる」

 さっきの技二つで、大体倒す事が出来たので、残り十匹くらいを斬り落としていった。落としたアイテムは、血狂い蝙蝠の羽と血狂い蝙蝠の牙、血狂い蝙蝠の血が、それぞれ複数だった。

「はぁ……疲れる敵だったなぁ。血狂いの意味もよく分かったし。もしあのスキルがあったら、私も血を飲んで凶暴化するのかな。それなら要らないなぁ」

 血狂いの名前などから凶暴化の時点で、意識を失っている可能性がある。そうなると、まともに戦えるかも怪しい気がする。

「危険なスキルは、あまり手に入れたくないなぁ。でも、使いようによっては……」

 そんな考え事をしていると、耳に水が流れる音が聞こえてきた。音の聞こえる方に歩いて行くと、大きな川が流れていた。

「おぉ……アマゾン川的な? ピラニアとかいるのかな? ワニもいそう……てか、いたわ」

 ワニって言葉を出したのとほぼ同時に川からワニが顔を出した。地上はともかく水中で戦うのは分が悪そう。

「先に泳ぎ系統のスキルがないか見てみた方が良いかな? う~ん……いや、その時になったら考えよ」

 取り敢えず、この熱帯エリアを楽しく探索していく事にする。川を渡る事は、もう少し後に考える事にする。

「モンスターの種類は、さっきのとワニを合わせて三体かな。他には、レアモンスターが一体って感じかも。警戒はしておかないと。さっきは、嫌な予感が働いてくれたけど、いつもそうとは限らないもんなぁ」

 周囲を警戒しながら歩いていると、上から木々が揺れる音が聞こえ始める。すぐに、その場から飛び退く。すると、私のいた場所に木の枝が投げつけられた。

「やっぱり、猿か。あれの顔、滅茶苦茶ムカつくんだよね」

 まだスローイングチンパンジーに慣れていないので、ツイストダガーを抜く。

「出血状態の重ね掛けは、まだ試してないんだよね」

 ちょっとした思いつきで、ツイストダガーだけで戦う事にしてみた。もしかしたら、出血状態が重なる可能性もあるからね。
 勢いよく踏み切って、スローイングチンパンジーに突っ込む。こちらに向かって枝を投げつけてくる。その枝を【硬質化】を使った拳で砕く。

「【トリプルピアース】」

 ツイストダガーも短剣に属する剣なので、【短剣】の技もちゃんと使える。三回連続で、スローイングチンパンジーを突き刺していった。相手の状態異常欄を注視してみると、前と変わらない事が分かった。
 つまり、連続で刺しても出血状態が重なる事はないという事だ。もっと大きく出血させる事が出来るようになるには、武器の追加効果を強化するか、武器自体をもっと工夫するとかが必要になりそう。
 三連続の刺突で、スローイングチンパンジーのHPが二割削れる。血染めの短剣なら、三割から四割削る事が出来ると思うので、ちゃんと戦うのであれば、血染めの短剣に入れ替えた方が良いという事が分かる。

「現実的じゃないかな」

 スローイングチンパンジーから【操血】で血を取り出して飲みつつ、血染めの短剣に入れ替える。 
 スローイングチンパンジーは、まだ片脚で枝に掴まっている。あの三連撃では、地面に落とすまでいかないみたい。地面に着地すると、スローイングチンパンジーが、また枝を投げてくる。脚に【硬質化】をして、枝を蹴り砕き、地面に着いているもう片方の脚で思いっきり踏み切る。
 スローイングチンパンジーに接近して、短剣で斬りつけようとすると、いきなり胸倉を掴まれた。

「ええっ!?」

 ぐいっと引っ張られて、思いっきり地面に投げられた。スローイングチンパンジーの名前は伊達じゃないようで、地面に凄い勢いで激突してしまう。五割くらいの体力が失われたけど、同時に、スローイングチンパンジーの血を吸っていたので、すぐに三割は回復する。

「油断した。掴み攻撃もあるんだね。気を付ける事が増えた。舐めて掛かっちゃ駄目って事だね。冷静にっ……!?」

 私を地面に投げつけた後、すぐに調達したであろう枝を投げつけてくる。後ろに回りつつ、腕で地面を押して飛び起きる。私がいた場所に枝が突き刺さる。
 スローイングチンパンジーを睨むと、こっちを嘲笑ってくる。それに、また苛つきを覚える。

「……これスキルのせい?」

 異様なまでに苛つきを覚えてしまうので、何かがおかしいと感じ始めた。よっぽどの事が無ければ、普段は、そこまで苛つきはしないけど、このモンスターを相手にした途端、こんなに苛々するのは違和感がある。
 挑発とか煽りみたいな相手の思考を誘導するスキルがある可能性が考えられる。何か対抗する術はないかと考えようとした瞬間、スローイングチンパンジーが、手を叩きながら笑ってくる。
 それを見て、さらに苛ついた私は、スローイングチンパンジーがぶら下がっている樹の幹を思いっきり蹴る。すると、さっきよりも細い樹だったからか、幹からへし折れた。スローイングチンパンジーは焦りながら、地面に落ちてくる。

「【バックスタブ】」

 落ちてくるスローイングチンパンジーうなじに短剣を突き刺す。同時に、【操血】で血を取り出すと、スローイングチンパンジーがポリゴンに変わった。

「ん? 攻撃力が上がってる? 相手のスキルのせい?」

 相手の挑発系のスキルは、相手の思考を誘導する代わりに、攻撃力を上げてしまう効果があるのかもしれない。デメリット付きって考えると、使いどころに困りそうなスキルだ。

「状態異常に対抗出来るスキルは……」

 挑発系のスキルを受けると、感情を強制されるので、出来れば常に冷静でいたい。

────────────────────────

ハク:【剣Lv33】【短剣Lv30】【格闘Lv20】【拳Lv1】【蹴りLv1】【魔法才能Lv19】【支援魔法才能Lv19】【吸血鬼Lv22】【操血Lv15】【夜霧Lv9】【執行者Lv29】【硬質化Lv22】【豪腕Lv3】
控え:【HP強化Lv28】【物理攻撃強化Lv26】【速度強化Lv29】【運強化Lv16】【脚力強化Lv37】【毒耐性Lv1】【麻痺耐性Lv1】【呪い耐性Lv1】【沈黙耐性Lv1】【暗闇耐性Lv1】【怒り耐性Lv1】【眠り耐性Lv1】【消化促進Lv4】【言語学Lv9】
SP:46

────────────────────────

 耐性スキルの他に、【格闘】がレベル20になった事で、新しく【拳】【蹴り】のスキルが出ていたので、迷わずに取る。【拳】は、【豪腕】を手に入れてなかったら、取らなかったかもしれない。【投げ】に関しては、現状困ってないので、取らなかった。血の球を投げる機会なんて、ほぼほぼないだろうしね。
 耐性に関しては、【魅了耐性】ってのもあったけど、すぐに必要にならなさそうって思って取らなかった。

「ちゃんと耐性スキルを見つけられて良かった。【拳】と【蹴り】も手に入ったけど、装備枠が埋まってきたなぁ。装備するスキルの組み合わせも気を付けないと」

 スキルの装備枠は十五なので、スキルの組み合わせを考えつつ入れ替えをするようになるのも近いと思う。

「フレ姉とかアク姉は、スキルの厳選をしてるから、耐性スキルとかも後回しにしてるのかな。普通にメイティさんとか回復役がいるから、すぐに回復出来るだろうし」

 そうは思っても、少し気になるので、メッセージだけ入れておいた。すると、すぐに返事が来る。

『最近限界を感じたから取った』
『状態異常になりやすくなったから、取ったよ。ソロのハクちゃんなら、早めに取っておいた方が良いかも。控えでも効果はあるし、レベルは上がるから、装備枠の圧迫にならないよ。頑張って』

 二人とも取ったみたい。ソロだと、状態異常回復も自分でやらないといけないから、早めに取っておいた方が楽になるって事みたい。これで、あのスローイングチンパンジーの煽りにも耐えられると良いな。
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