吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

文字の大きさ
395 / 809
一周年の吸血少女

都合良くいかない探索

しおりを挟む
 紅葉さんの元に降りると、紅葉さんがビルの方に手を向けていた。すると、大鉈が紅葉さんの元に戻ってくる。私の白百合と黒百合の【共鳴】みたいなものかな。

「紅葉さん、ありがとうございました」
『いえ、ここまで圧倒できていたのなら、私の助けは要らなかったかもしれませんね』
「いえいえ、来て下さって助かりました。どう動きを止めようか迷っていましたから。それにしても、大鉈を投げてドラゴンを吹っ飛ばしたのは本当に凄かったですね。あれは紅葉さんの力なんですか?」
『私の力もありますが、この鉈が重いからでしょう』

 そう言って、紅葉さんが大鉈を私に差し出す。それを受け取ると、あまりの重さに取り落としそうになった。先端を地面に着けて、ようやく支えられる重量だ。ステータスが上昇するスキルをいくつも持っているから、私の力も相当高いはずなのだけど、この大鉈は支えられない。

「重すぎじゃないですか……?」
『私としては、重さで押し潰す方が楽ですので』

 紅葉さんは大鉈を軽々と持ち上げて肩に担ぐ。これが本物の鬼の力なのかな。それにしても激しく動いていたからか、紅葉さんの着物はかなりはだけていた。

「紅葉さん、服を直した方が……」
『これは……失礼しました。まさか、すぐに戦闘になるとは思わなかったもので。少々お待ちください』

 紅葉さんは一旦転移で消えると、動きやすいように袖が短くなり、裾上げされた着物で戻って来た。そうなると、脚が剥き出しなのではと思ったけど、股引のようなもの着ていた。ここら辺はゲームの配慮なのかな。ちょっとヘンテコな服装っぽいけど、紅葉さんがしていると、不思議と違和感はない。

『これでまた戦闘が起こっても大丈夫です。それにしても、清ちゃんから聞いていた話と少し異なりましたね。戦闘はないとおっしゃっていましたのに』
「今回の戦闘は私も予想外でした。これまであのモンスターがいたことはなかったので」
『なるほど。そういう事でしたか。では、ここからは何もなく探索が出来そうですね』
「はい」

 紅葉さんの様子も確認出来たので、さっきのエンカウントボスの報酬を調べる。吸血では【機関銃】が獲れていたけど、初討伐報酬としては、【エネルギー吸収】が手に入った。

────────────────────

【エネルギー吸収】:熱、電気、光、あらゆるエネルギーを吸収する事が出来る。吸収したエネルギーは解き放つことでダメージを与える事が出来るが、許容量以上のエネルギーを吸収すると自爆する。

────────────────────

 控えでは発動しないので、パッシブ発動というよりは任意タイミングで発動するアクティブ系スキルかな。正直、熱と光に関しては無効化を持っているから、あまり使い道がないように思えるけど、何か特別な使い道とかがあるのかな。要検証だ。
 そこからはいつも通りの探索だ。紅葉さんも一緒に手伝ってくれて、パソコン一台とUSBメモリが一つ見つかった。ようやくパソコンを見つけたので、これをアカリに渡して調べてもらう事にする。
 今日の探索を終えたところで、紅葉さんにお礼を言ってから別れた。
 そして、ギルドエリアに戻ってきた私は、アカリの作業部屋に移動する。

「アカリいる?」
「いるよ」

 アカリは裁縫をしながら、こっちを振り向く。メアリーがいないところを見ると、メアリーには別の作業をやって貰っている感じかな。

「これって直せる?」
「ん? 何これノートパソコン?」
「だと思う。ほら、USBメモリを手に入れたって話はしたでしょ?」
「うん」
「もしかしたら、ノーパソで見られるかもしれないじゃん? だから、直せないかなぁって」

 私の頼みに、アカリはパソコンを調べ始めてくれる。でも、眉を寄せているところから見るに難しいのかな。

「う~ん……正直、生きているパソコンを探す方が早いかも。基板が滅茶苦茶だし、色々と部品がないから。部品の作り方もよく分からないし、そこから探らないといけないかな」
「そうなんだ。それなら地下空間に行った方が早いかな。ありがとうね」
「ううん。力になれなくてごめんね」
「いいよ。駄目元だったし。そういえば、アカリはヘビーアームドドラゴンって知ってる?」

 ここで一応アカリに確認してみる。あのヘビーアームドドラゴンが前からいた可能性もあるから。

「私は知らないかな。どんなドラゴンなの?」
「身体中に銃を着けていて、私が使う反転物質みたいな攻撃方法があるって感じ」
「うん。やっぱり知らないね。態々訊くって事は、エンカウントボスか何か?」
「正解。廃都市エリアで遭遇したんだ。他の人も遭遇しているなら前からいるやつだと思ったんだけど、その感じだと今回追加されたやつなのかな」
「態々廃都市エリアに配置してるくらいだし、そうなんじゃないかな。もしかしたら、エリア限定のエンカウントボスかもよ?」
「そうなると、遭遇確率は上がるって事かぁ……探索の邪魔だからそうじゃない事を祈ろっと」

 正直、そこまでの脅威ではないけれど、あの機銃が万全に機能している状態では戦いたくない。エアリーが全部弾いてくれる事は分かっているけど、かなり面倒くさい相手という事に変わりは無い。エンカウントボスだから、遭遇する確率が低い事に賭けよう。

「ソイルちゃんが見つけた地下の空間に生きてるパソコンがあると良いね」
「まぁね。戦闘アンドロイド達の整備工場があると思うから、多分ある程度は生きてると思うけどね。それじゃあ、私はログアウトするね。そろそろ夕食だから」
「うん。またね」

 夕食の時間なので一旦ログアウトする。そして、諸々のやることを終わらせて、夜に再びログインした。今度はラングさんのお店に向かった。

「ラングさんいますか?」
「ん? おう、嬢ちゃんか。珍しいな。武器の直しか?」

 ラングさんは裏から出て来た。そして、すぐにカウンターに立つ。

「いえ、おかげさまで良い状態のまま使わせてもらってます。今日は別の相談で来ました」
「別の相談って言うと、銃か?」

 ラングさんには武器に関する相談を少ししている。だから、銃に関する事も知ってはいた。

「はい。今って、どのくらいの銃が作れますか?」
「そうだな……現状だとハンドガンとショットガン、アサルトライフルくらいだ」

 そう言ってラングさんが銃を並べてくれる。私自身は銃に詳しくないから、何となくの種類しかわからない。よく知っている人だったら、銃の名前とかが分かるのだと思うけど。

「う~ん……う~ん……やっぱり血ですぐに作るのは無理そうですね……」
「すぐには厳しいかもしれないな。近接武器と違って、一挺で全ての銃をカバーできる訳じゃないからな。素体だけ持つというのも厳しいだろう」
「じゃあ、現物を持たないと駄目ですよね。取り敢えず、一つずつください」
「毎度。大分高いが、金は大丈夫なのか?」
「自分の身体から出せるので大丈夫ですよ」

 適当に生産素材を身体から出せば、簡単にお金稼ぎは出来る。それに深海とかを歩いて調べても、金目のものを探す事は出来るし、お金で困るという事はない。
 まぁ、その前にまだまだお金は有り余ってるから、そういう意味でも全く困っていないのだけど。

「そうか。また何かあれば言ってくれ。武器も不調だったり、物足りなくなったら、すぐに改良してやる」
「はい。ありがとうございます」

 ラングさんにお礼を言ってから店を出る。これで銃系統のスキルもレベル上げ出来る。SP問題解決にも一歩近づけるかな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...