吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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一周年の吸血少女

順調な道程

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 新しい大陸には、大きな山があった。かなり高い山だ。もしかしたら、雲よりも高いかも。山脈の山よりも高いかな。ただ、山は結構遠いので今日中に行くのは無理そうだ。その前に深い森があるから、そこを抜けないといけない。

「エアリー、どこか安全そうな場所はある?」
『……分かりません』
「そっか。ラウネとソイルはどう?」
『分からない……』
『木がなくなってる場所ならあるの』
「あっ、そこかも。案内をお願い出来る?」
『うんなの!』

 再びフェンリルの上に乗って、ラウネの案内に従いながら進んでいく。その途中で、玉藻ちゃん達も合流した。私が海から離れた事を感じ取ったらしい。これで万全の状態になる。
 森の中にいたのは、廃都市エリアのモンスター達だった。その中に見覚えのないモンスターも交ざっていた。それは、犬型の機械でドーベルロイドという名前らしい。沢山いるので、吸血をしていったけど、結局持っているスキルしかなかったので、エアリー達に任せる事にする。
 そうして進んでいき、日が沈んだ頃にセーフティーエリアに着いた。結構広い場所で木々は一切生えていない。一目で安全な場所だと判断出来る。まぁ、こういうところに罠を仕掛けているというパターンもあるかもしれないけど、前回の探索型イベントでも似たような場所が安全だったので大丈夫なはず。

「ここで休憩を挟んでから、また出発するね」
『うむ。夜明けを待つということじゃな』
「ううん。一、二時間くらい休んだら出発するよ。まだまだ山までは遠いから」
『かなり高い山ですが、登るおつもりですか?』
「うん。一番目立つ場所だから、何かしらあるかもしれないし。そのためにもここで一旦休憩」

 座っているフェンリルに身体を預けるようにして寝っ転がる。すると、隣に玉藻ちゃんが来て、尻尾を掛けてくれる。おかげで、かなり暖かい。まぁ、暖かろうが寒かろうが、あまり関係ないのだけど。もふもふに包まれて、一旦眠りにつく。二時間近く睡眠し、目を覚ますと、フェンリルが大きくなっていて、私の周りに玉藻ちゃん達が集まっていた。エアリーだけは起きていて、周囲を見回していた。
 玉藻ちゃんの尻尾から抜け出して、エアリーの元に移動する。

「エアリー、ちゃんと休んだ?」
『はい。先程起きたところです。ひとまず、周囲に人はいないようです』
「まぁ、ここまで一気に来るようなプレイヤーは少ないだろうね。途中に海があるわけだし。あの山の方は何か分かる?」
『いえ、まだ距離がありますので』
「そっか。まぁ、見た感じでも、まだ遠いもんね」
『周囲のモンスターは、変わらず機械系です』
「そっか。それなら、皆で対処出来るね。山までは変わらないかな。ヘビーアームドドラゴンが出てこないと良いけど」

 一応、ここまでヘビーアームドドラゴンは出ていないので、このまま出てこない可能性もあると思う。ただ、森の中にいるのが機械系モンスターである事と、このセーフティーエリアが森の序盤ら辺にある事を踏まえると、奥まで行った時に出て来るのではと思ってしまう。その時は、多分高機動型戦闘アンドロイドも出て来るかな。
 それから十分くらいで、皆が起き始める。一人くらいぐっすりと寝ているかと思ったけど、全員しっかりと起きた。起きてすぐに移動はせずに、私が持ってきた料理でご飯を食べてから出発する。そうじゃないと、【飢餓】が発動しちゃうし。
 戦わないで良いと言っても、万全の状態にはしておきたいから、道中でも軽く摘まんでいる。何も知らない人が見たら、ただの食いしん坊にしか見えないかもしれない。
 それから一時間くらい進んだところで、エアリーがフェンリルに乗っている私の横にやって来る。

『お姉様。この先にヘビーアームドドラゴンがいます。他にも高機動型戦闘アンドロイドもいそうです』
「うわぁ……嫌な方の予想が的中した……倒せる?」
『多少時間が掛かりますが、ソイルとラウネもいますので、どうにかなるかと』
『でありんしたら、わっちの蜘蛛も先行させんしょう。拘束くらいでありんしたら出来んすから』
「ありがとうございます」

 そう言うと、胡蝶さんがニコッと怖い笑みを向けてくる。それで、何故だろうと思ったけど、私の口調の事だと気付いた。

「ありがとう」

 そう言うと、満足げに頭を撫でてくる。清ちゃんは私が慣れるまで待ってくれると言ってくれたけど、胡蝶さんは矯正する気満々だった。いや、どちらかと言うと調教の方が近いのかな。
 それはさておき、胡蝶さんが大量の子蜘蛛を先行させていき、エアリー、ソイル、ラウネが次々に倒していった。その証拠に、あちこちで激しい音が聞こえていた。その攻撃から抜けてきたモンスターは、紅葉さんが大鉈を叩き付けて一撃で倒していた。抜けてきたと言っても無傷ではなく満身創痍だったから、紅葉さんも楽そうだった。
 そんな中で、フェンリルが周囲の臭いを嗅ぎ始めた。

「どうしたの?」
『いや、恐らく目の前の山だと思うが、何か大きな力を感じる。その正体までは分からないがな』
「大きな力? 私は何も感じないかな。玉藻ちゃんはどうですか?」
『威圧感のようなものは感じるのう。妾もそれが何かは分からんのじゃ』
『セイちゃんも何か感じているみたいですが、敵意のようなものではなさそうですね』

 フェンリルだけでなく、玉藻ちゃんやセイちゃんも何かを感じているらしい。セイちゃんが落ち着いているから、敵意はないみたいな感じらしいけど、ちょっと気になる。

「胡蝶さんは何か感じる?」
『わっちは感じんせんね。恐らくは、それなりに格がありんせんと感じねえのでありんしょう』
「玉藻ちゃんは格があるの?」
『中々に失礼な事を訊くのう。これでも妖都を治めておるのじゃぞ。それなりどころか、かなりの格があるに決まっておろう!』

 玉藻ちゃんは胸を張りながらそう言いつつ、私の頭に尻尾を乗せてくる。

「大分色々持ってますけど、私も足りないんだ。やっぱり神の力は必要って事かな」
『貴様が感じないのは、同種の力だからとも考えられるぞ』
『ふむ。一理あるのじゃ。燃えているものに、更に火を与えたところで何も変わるまい。それと同じじゃ』
「なるほど?」

 私と同種の力と言われても、私の力に色々な種類がありすぎて、どれのことなのか分からない。もしかしたら、色々と混ざっているからこそ、何も感じないという状態なのかもしれない。
 まぁ、結局のところ何も分からないので、皆に警戒を促しておく。ここで【北欧主神の全知】を使えば教えてもらえるだろうけど、それをすると、さすがにつまらないので、少し我慢しておく。もう少し自分で情報を集めてみたいしね。
 そんな調子で進んでいき、山の麓にあるセーフティーエリアまで移動する事が出来た。
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