吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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東方の守護者の吸血少女

スノータウンの地下にあるアジト

 スノータウンの近くまで戻ったところで、フェンリルとレインには帰って貰った。ここまで街に近いと、他のプレイヤーから絡まれる可能性も否定できないからね。街を一周しながら足元に封じられている空洞がないか調べていく。
 すると、地下への入口を発見出来た。てっきり氷で封じられていると思っていたけど、普通にマンホールみたいな感じで閉じられていた。蓋に上方向への力を付与して開く。こういう時【支配(力)】を持っていると自分の手で開けたりしなくて良いから楽で良い。現実でこんな事をしていたら腕の筋力が無くなっていきそうだけど。
 蓋を開けて中に落ちつつ、蓋を閉める。三メートルくらい落ちて着地する。そこからさらに、下り階段が続いていた。そのまま下っていくと、アークサンクチュアリから離れた場所にあったアジトみたいな場所があった。結構広く続いている。

「こっちは結構片付いてるなぁ。てか、これを上に気付かれず作るって怖いなぁ」

 降りた先にある広い空間には何も無い。ただの大きなテーブルが置かれているだけだ。そのテーブルに仕掛けがあるかと思ったけど、本当にただのテーブルみたいだ。

「部屋は六部屋か。この感じだと、あまり情報はなさそうかな」

 そう思いながら、一番奥にある部屋に入ってみると、壁や天井に血が飛び散った部屋だった。

「おぉ……あっ、靄だ」

 部屋の中央に青い靄があった。全て持ち去られた後かと思ったけど、こういう情報は残っているみたいだ。靄を固めると、鍵が出て来た。小さくて古い鍵だ。

「どこの鍵だろう? 部屋の鍵っぽくはないかな」
「じゃあ、小物入れか机の引き出しの鍵とかかもしれないわね」
「わっ!? アストライアーさん!?」

 いつの間にかアストライアーさんが後ろにいた。祈りを捧げた覚えはないので、アストライアーさんの方から飛んできたのだと思う。

「ちょうど調べようと思っていたところにあなたがいたのよ。それにしても便利な能力ね。失われたものを復元するみたいなところかしら?」
「そんな感じだと思います」
「ここの部屋には、鍵を使えそうな場所はないわね。それにしても、酷い部屋ね」
「はい。アストライアーさんの方で調べた内容で、こういう部屋に関する事ってありますか?」
「人を叩いて弄んでいるだけよ」

 やっぱりクソ集団というのは変わらないようだ。

「そういえば、天聖教の教会にも似たような部屋がありました」
「ああ、山の上の聖堂ね。あそこは一度邪聖教に乗っ取られた場所みたいなのよ。その時に天聖教の人間が拷問させられたらしいわ。大分古い文字で簡潔に書かれていたわ」
「そうなんですね」

 パッと思い出した事だったけど、意外な新情報が出て来た。もしかしたら、邪聖教関係はアストライアーさんと出会ってからが本番だったのかもしれない。

「じゃあ、ここでも同じように……」
「いえ、恐らくここでは普通の人に対してやられていたと思うわ。ストレス発散用みたいね」
「分かるんですか?」
「私が調べた中で、そういった場所が多かったわ。邪聖教のみじゃなく、他の悪も同じね。さっ、次の部屋に行くわよ」
「あ、はい」

 アストライアーさんは、平然としているように見えて、拳は固く握られていた。やっぱり怒りは感じているみたいだ。だからこそ、私はアストライアーさんを信じられる。
 次の部屋には、本棚が多く並んでいた。でも、中身は全てない。でも、本棚自体に仕掛けがある可能性もあるから、軽く調べて行く。

「毎度思うんですが、こんなに本を持っていく必要あるんですかね?」
「熱心な読書家でもいたのかしらね。でも、組織のボスは大抵本棚にいっぱいの本を持っているわ。もしかしたら、悪の組織は本を読む習慣でもあるのかもしれないわね」
「全部読んでるんですかね?」
「見栄のためって事?」
「可能性はありそうじゃないですか?」

 沢山本が並んでいる部屋にいたら、それだけで頭がよく見える気がする。実際にそこの本を読んでいなくても、相手からは分からない。相手から見たら、油断出来ない相手だと誤認させる事が出来るかもしれない。

「まぁ、そうね。でも、組織の運営には頭も必要よ。丸投げしているのもいるけど」

 参謀役がその役割を担っているみたいな組織のことかな。どちらにせよ、組織の頭には組織を導く求心力が必要になる。そういうものを持った人が邪聖教にもいたのだろうか。
 ただ、これを話すアストライアーさんは、ちょっとため息交じりだった。そういう組織をよく知っているような感じだ。

「神様界隈でもそういったことが?」
「う~ん……私達の神界では組織と言う程のものはないかしらね。一応、オリュンポスの十二神とかはあるけれど」
「へぇ~、何か知ってる気がする……あっ! ヘスティアさんが言ってたんだ」

 オリュンポスに行った時に、ヘスティアさんが胸を張りながらそう言っていた事を思い出した。

「そうね。ヘスティア様も十二神の一人よ。知っているの?」
「家に住んでます」
「え?」

 アストライアーさんは、ヘスティアさんが私のところにいるという事に驚いていた。ヘスティアさんやアテナさんから聞いていないみたい。

「私の屋敷にヘスティアさんの部屋があるんです。そこに顕現して楽しそうに暮らしていますよ。最近は、私の恋人が作っている工場に興味津々みたいですね」
「そうなのね。確かに、ヘスティア様なら顕現が可能ね。あの方も割と自由人なところがあるから、オリュンポスに居なくても気にならないのよね」
「そうなんですか?」
「そうよ。私と同じように地上にいる事もよくあったから」

 確かに、ヘスティアさんは、最初に会った溶岩エリアに顕現出来る場所があった。だから、あまり神界にいなかったというのもその通りなのかもしれない。

「じゃあ、アストライアーさんも自由人って思われていたんですか?」
「私は、地上を正していたから、自由人とは思われてないと思うわ」

 アストライアーさんは、自信満々に答える。そこで、アテナさんから念話を思い出した。

「ああ……そういえば、アテナさんは正義狂いって言ってましたね」
「あの子も似たようなところがあると思うけれど。割と頑固だから」
「でも、私は可愛い神様だと思いましたよ?」

 アテナさんには、ちょっとツンデレみたいな感じがある。そこが可愛らしい神様だという印象が私にはあった。

「まぁ、そういうところもあるわね。容姿を褒められると、途端にニコニコし始めるから」
「そうですよね。それにヘラさんも結構楽しい方ですよね」
「ゼウス様が浮気しなければね」
「あぁ……」

 それには同意見だ。ゼウスさんが浮気せずにいれば、ヘラさんはただの良い神様という印象しかない。お茶会は楽しいし。ヘベさんが毎回出してくれるケーキも絶品だしね。

「こっちの本棚には何も無かったわ」
「こっちもです。隠し部屋があるような感覚もないですし、この部屋には本当に何もないみたいですね」
「そうね。次の部屋に行きましょう」

 本棚の部屋には、特に隠されたものはなかった。ただ単にアストライアーさんとの会話が弾んだだけで終わった。
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