吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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出会いを楽しむ吸血少女

作業の効率化

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 ギルドエリアに戻ってきた私は、工場建設地へと向かう。ここでアカリが作業していなければ、アカリエに行けばいるだろう。
 まぁ、連絡すれば一発で分かるのだけど、こうして探す方が楽しいのでしない。
 アカリは工場の傍にある作業スペースに居た。

「アカリ」
「ん? ハクちゃん。素材作ってくれてありがとう。おかげで、作業が進んでるよ」
「どういたしまして」

 そう言いながらアカリを抱きしめつつ、頬にキスをする。

「どうしたの?」
「そういう気分だったってだけ。これお土産」

 アカリに【魔力作業台】と【匠の技】のスキルの書を渡す。

「えっ!? 何これ!?」
「何か隠された場所にあった。職人が次代のために残した技術みたいだよ。アカリにぴったりだと思ってね」
「えっ……でも、これって結構な価値が……」

 隠された場所にあったのとスキルの内容的に価値を見出したみたい。私としては、そこまで欲しいと思うスキルじゃないから、全然構わない。

「生産はそこまで重視しないし、アカリが持っていた方が良いでしょ? お返しは身体で良いよ」
「ハクちゃんが言うと冗談に聞こえないよ……」
「まぁ、冗談ではないしね。もうすぐ夏休みだし、お泊まりの機会は作れるから」
「……まぁ、良いけど。うわっ、ランク5だよ!?」

 どちらもランク5のスキルだったらしい。確かにそれは価値がありそうだ。これでアカリが楽になってくれると良いな。いや、その前に一つ問題があるか。

「あぁ……アカリには重い?」

 私は馬鹿みたいにスキルを得て、大量のSPを持っているけど、普通のプレイヤーであるアカリがどのくらいSPを保有しているかは分からない。

「ううん。ハクちゃんのおかげで、ある程度スキルの数が増えてるから、まだ余裕はあるけど、スキルの書でランク5ってかなり珍しいから」
「へぇ~、まぁ、ランク5ならぴったり取り返せるからマシだよね。まぁ、ランク6でも元が取れそうな気がするけど……」
「まだ上がってるの?」
「うん」
「ランク6の最大レベルっていくつくらいなんだろう?」

 【神秘の吸血鬼】は、未だに成長を続けているので、最大レベルは分からない。これで500まであれば、消費SPを回収出来るのだけど。

「さぁ? それで、どんなスキルなの?」
「ん? えっとね。結構凄いよ」

 アカリが少し離れたところで手を広げると、半透明の作業台が出て来た。大きさ的には、学校の机を三つ繋げたくらいの大きさだ。一人で作業するには十分な大きさだと思う。

「おぉ……魔力で出来た作業台って感じ?」
「うん。合成、錬金、調合がここで出来るみたい。具体的な道具も要らないみたい。今は分かりやすく台を作ってるけど、普通に素材を選択してその場で作り出す事も出来るみたい。急に必要になった時とかに便利だと思う」
「へぇ~、台を作った方が良い理由とかってあるの?」
「台を出せば同時にいくつもの作業が出来るって感じかな。台無しだと、一つだけしか出来ないみたい。それでも十分に凄いけど。【匠の技】は、器用さが滅茶苦茶高くなるみたい。それと、MP消費で作るものの品質が普通に作る時と同じになるらしいね。後半はともかく、前半はかなり有り難いかな。今の作業は精密さが重要になってくるし」
「なるほどね。やっぱりアカリが持っていた方が良いスキルじゃん」

 私が持っていても宝の持ち腐れになるだけだった。私の判断は間違っていなかったようだ。

「工場の方はどう?」
「まだだよ。今は発電所を改良していたところ。ライちゃんもお引っ越ししてもらう事になって悪いんだけどね」
「まぁ、電気の近くなら好きだと思うから大丈夫じゃない? それで、どんな発電所なの?」

 発電所の方は見に行っていないので、どんな発電所なのかは分からない。

「えっと、魔力融合炉を使った発電と無限に発せられる電気を調整する発電かな」
「何言ってるのか分からないんだけど」
「ん~っと、魔力と魔力を掛け合わせた時に生じるエネルギーをエネルギー変換器で電気エネルギーに変えるの。もう一つは、ハクちゃんがくれた天雷の針を使った発電なんだけど、天雷の針を天雷の魔力石に作り替えて、無限に電気を発するようにさせたの。それを変電所を経て供給する感じ」
「はぁ~……」

 中々に凄いものを建てていた。現実では建てる事なんて出来ないゲーム特有のものだ。それだけにそんなものをどうやって作ったのか気になるけど、多分図書館かドロシーさんの研究室で知ったのだと思う。

「てか、無限に出て来るなら、天雷の魔力石の方の発電だけで良かったんじゃない?」
「電力をいっぱい使う事もあるから、ちゃんと確保しておいた方が良いんだよね。使うのは工場だけじゃなくて、私の通常作業でも使ったりするから」
「なるほど」

 工場を安定的に稼働させるのと同時にアカリの作業でも使うのであれば、発電所が二つあっても良いと思う。どのくらい電力を消費するのかは知らないし、発電量も知らないし、言われても何も理解出来ないと思うけど。

「後は、爆発しても良いように遠くに建てたくらいかな」
「ん? 爆発?」

 不穏な言葉が聞こえてきた。アカリの発明は、基本的に爆発と共存しているのかと思うくらい爆発を聞く気がする。芸術か何かだと思っているのか。

「うん。一応、こっちに被害は出ないように調整してあるよ。結構大きな爆発になりそうだし……」

 発電所の爆発は、本当に大きなものになりそう。間違っても壊れないように管理が必要になるかもしれない。適任は今のところ一人しかいない。

「……ライに管理してもらうかな。他にも雷系の子を捕まえられれば良いんだけど……エレクじゃ施設管理は無理だし……」
「ハクちゃんなら、簡単にテイムしそうだよね」
「私は、女の子系のモンスターじゃないとテイム出来ないって思ってるけど。これまでがそうだし」
「全員女の子だもんね。スノウちゃんもエレクちゃんも漏れなく女の子だし」

 私としては、【色欲の大罪】を持っているから、テイム出来るのは女の子に限られてきそうな気がしている。ただ、これらを置いておいても根本的な問題があるけど。

「まぁ、そこら辺は運が絡むから、何とも言いがたいね。てか、下手に電気を沢山集めると、雷関係の神様が顕現してきそうで怖いよね。特別な材料に天雷の魔力石が当てはまる可能性も否定出来ないし」
「女神様がいるの?」

 私の知り合いの神様を全て女神だと思っているのかな。普通に男の神様とも知り合いになっているのだけど。いや、それだけ女性を寄せ付けると思われているのか。それでも浮気は疑われないから、信頼はされているのだと思う。

「雷の女神様には会ってないかな。トールさんとタケミカヅチさんとゼウスさんくらい。まぁ、ゼウスさんは、いつでも顕現出来るから来ないと思うけど。来たら、ヘスティアさんに怒られてヘラさんにも怒られるかもしれないし」
「まぁ、そうだね」
「それじゃあ、私は【降霊術】回りに戻るね」
「うん。ありがとうね」
「どういたしまして」

 ここでアカリとは別れて、次の街へと向かう事にした。
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