吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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出会いを楽しむ吸血少女

炎海エリア

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 翌日。バイト終わりにログインして、悪魔の住宅街の方を見に行くと集合住宅が三軒程増えていた。そこからメイド悪魔達が屋敷に通っているのが見える。交代交代で管理をしている感じかな
 その中で、フェネクスが屋敷から出て来て、私の元に駆け寄ってきたので、抱っこしてあげる。そこにアマテラスさんがやって来る。
 アマテラスさんは、私が抱き上げているフェネクスの頭を撫でる。

「今日は出掛けないのじゃ?」
「いえ、これから出掛けるところです。一応、集合住宅がどうなったかだけ確認しに来たという感じですね」
「そうか。気を付けるのじゃぞ」

 アマテラスさんは、私の頭を撫でると、そのままどこかに飛んでいった。その入れ替わりで、クシナダさんとウカさんがやって来た。

「ハクちゃん、こんにちは」
「こんにちは、ウカさん、クシナダさん」

 二人と一緒に歩いて転移ポータルの方に向かう。

「畑の様子はどうですか?」
「ソイルさんとラウネさんのお世話が的確ですので、収穫までが早いですね。現在では、一日に収穫が三回行えますね」

 私が与えられた祝福の効果などもあり、生長速度が異常なまでに高くなって、一日に何回も収穫が出来るようになっているらしい。道理で、畑に機械人形の皆が常駐しているわけだ。でも、そこまで収穫が何回も出来るのなら、気になる事がある。

「土は大丈夫ですか?」

 収穫ばかりして、何度も植えていたら土が痩せそうだと思ってしまった。祝福の効果で、そんな心配はしなくても大丈夫なはずだけど、それでも気になってしまう。

「大丈夫です。土はずっと元気なままですよ」
「作物の生長が遅れるって事もないから、全然問題ないね。水もレインちゃんが全体に均一になるように撒いてくれるし、畑が駄目になることはあり得ないかな。私達も管理しているからね」
「それなら良かったです」

 畑が順調なのは良い事だ。牧場も順調のはずだから、食堂のメニューとかも増えている。デザートやお菓子も沢山出来ているので、皆の食事情も充実していた。イザナミさんが満足げにサクヤさんと一緒に食堂から出て来る姿も何回も見ているので、神様達も満足している事が分かる。

「闘技場も完成して、お腹を空かせる神も増えるだろうから、畑も広げた方が良いかもね」
「畑を広げる先は決めてあるので、足りなくなったら広げられます。足りない作物を的確に増やす形で進められるので、もし気付いたらソイル達に言ってあげてください」
「オッケー」

 そんな畑話をしている間に、転移ポータルの傍に来た。

「アスタロト!」

 私が呼んだら、アスタロトがすぐに飛んできた。

「はぁい」
「ゴエティアに入って。探索に行くよ」

 飛んできたアスタロトをゴエティアに入れる。そして、近くにいたクシナダさんにフェネクスを預けた。

「それじゃあ、フェネクスは良い子にしててね」
「了承」

 フェネクスは、クシナダさんに抱っこされたまま手を振っていた。なので、私も手を振り返す。クシナダさんは慣れたように、フェネクスを抱いたまま手を振っていた。ウカさんも手を振って送り出してくれる。

「いってらっしゃい」
「はい。いってきます」

 皆に挨拶してから、私は南の新しいエリアである炎海エリアへと向かった。炎海エリアは、赤い大地に常に炎が纏わり付いているようなエリアだった。地面はあるけど、その全体が炎に包まれているので、炎の海にも見える。空を飛べるか、炎を無効化出来るスキルを持っていないと、探索は厳しいだろう。
 まぁ、私はどちらも持っているから、何も問題ない。でも、一つ気になる事があった。

「何だろう? 変な感覚がするようなしないような……」

 炎海エリアに入ってから、何かよく分からない気配を感じている気がする。でも、気のせいな気もする。取り敢えず、今は無視して探索をしよう。

「【召喚・フラム】【召喚・ニクス】」

 フラムとニクスを召喚して、アスタロトをゴエティアから出す。

「熱いわねぇ。でも、ここに魔法陣はないわぁ」
「そっか。取り敢えず、フラムはモンスターの拘束をお願いね。ニクスは、私達の周囲にいて。吸血をし終えたら、殲滅を頼むから」
『ああ』
『キュイ!』

 ニクスは、私の肩に留まりながら頷く。フラムを抱えて、地面の近くを飛びながら探索をしていく。アスタロトは、この環境でも本当に大丈夫なようで、熱いと言いながらも平然と付いてきていた。
 そうしている内に、モンスターの反応がいくつも出て来る。その全てが、動きを止めていた。フラムによるものだ。その方向に向かっていくと、炎のドレスと王冠を被った炎の女王がいた。炎の女王は、私達を見つけると炎の兵士を生み出していった。灰の女王と同じ類いのモンスターらしい。でも、炎の兵士もフラムが動きを止めているので、何も出来ない。
 フラムが動きを止めてくれている間に吸血で、その存在ごと吸い取っていった。炎の女王二体と炎の兵士二十体を吸血した。それでも、新しく手に入れたスキルは、この【炎化】一つだけだった。

────────────────────

【炎化】:身体を炎に変える事が出来る。

────────────────────

 最近控え系のスキルが減った気がする。いや、元が多すぎたのかな。控えでも発動する強スキルが多いし。それを考えると、バランスを調整していると言えなくもない。
 そのまま炎の女王と炎の兵士を次々に倒していったけど、やっぱり新しいスキルはなかった。
 他のモンスターを探して飛んでいくと、雷霊のイレの炎版みたいな炎霊が現れた。その炎霊からも、特に新しいスキルは手に入らなかった。

「う~ん……スキル的には外れエリアになるのかな。まぁ、良いか。二人とも倒す時は、私達に十分近づいてからにして。もしかしたら、仲間になりたい子かもしれないから」
『敵意の有無を確認してから倒せば良いって事だな?』
「そういう事。ニクスも良いね?」
『キュイ!』

 ニクスも頷いてくれているので、ちゃんと伝わった事が分かる。ニクスの頭を撫でてあげてから、アスタロトを見る。

「アスタロトは、何か感じる?」
「さっきと同じよぉ。魔法陣はないわぁ。ただぁ……」

 アスタロトは言葉を区切って、難しい表情になる。

「どうしたの?」
「分からないわぁ。魔法陣とは違う何かを感じるような気がしなくもないって感じかしら」
「アスタロトも? 私も似たような感じがする。本当に曖昧なんだよね」
『私も感じているぞ。何となくおかしいようなという感じだが』
「えっ、フラムも? う~ん……本格的に怪しくなってきたね。取り敢えず、何か気付いたら報告してね」
「ええ」
『ああ』
『キュイ!』

 ニクスも返事をした。ニクスも感じているのかは分からないけど、可愛いので頭を撫でてあげた。気配があるのかないのかも分からないくらい曖昧なもの。だけど、全員が感じているという事は、絶対に気のせいではない。
 炎海エリアには、何かがある。
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