吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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出会いを楽しむ吸血少女

ちょっとした大会

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 アーサーさん達との談笑を終えた私は、屋敷を後にして、ヴィヴィアンさんに牧場を建てて良いかの確認をして、牧場の場所を決めた。簡単に設置して、牛たちの移動をしていく。アヴァロンに入ると、モルガンさんの妹さん達が手伝ってくれたので、割と早く終わった。モルガンさんの妹さん達は、長姉のモルガンさんから、モーロノエーさん、マゾエーさん、グリーテンさん、グリートーネア、ティーロノエーさん、ティーテンさん、ティートンさんというらしい。
 牛の移動を終えた後は、そのままモルガンさんの屋敷に連れて行かれて、着せ替え人形のようになっていた。光が作った服でよくやっている事なので、全く不快に思わずノリノリでやっていた。

「皆で服を作って、誰が一番ハクちゃんに似合う服を作れるか競いませんか?」

 モーロノエーさんがそう提案した結果、モルガンさん達姉妹間の争いが勃発する事になった。決まった瞬間に、全員が行動し始めて布の調達などに動いた結果、神様住宅街の方にも話が広まっていき、参加者が更に増える事になった。
 そのため大会の運営者が必要になり、ニュクスさんが担当してくれる事になった。因みに審査員には、ニュクスさん、アストライアーさん、アスタロト、アカリが務める事になっていた。
 私がメア達の様子を確認するために動いている間に決まっていったらしく、後になってニュクスさんから聞かされた。

「何か凄い事になっちゃった……」
「楽しみね……ルールも決めたわ……」

 ルールは、試着無し。製作期間は一ヶ月。他者への妨害の禁止。それが確認された場合失格処分となる。複数人による合作は許可される。参加権は、女性である事。優勝者には、私を抱き枕にする権利が与えられる。

「私の知らないところで、何か凄い権利が発行された気がするのですが」
「アカリから……許可は得たわ……」

 アカリから許可が出たのなら良いのかな。まぁ、そこら辺の意図を後でアカリに訊いておこう。正直、女神様達なら抱き枕にされても特に困る事はないし、私も嫌ではないから良いとは思う。今の状況だと、ギルドエリア内とか神界でしか出来る事がないし。
 外が落ち着いたら、フレ姉やアク姉が教えてくれる事になっているから、その時までは大人しくしている。外の探索はしたいけど、ギルドエリアの整理とか色々と後回しにしていた事も多くあるので、そこら辺を進めていく時間にしている。その一つには、皆との交流もあるし、私も安まるという利点がある。

「まぁ、私もいいですけど。審査員の選抜基準って何だったんですか? アカリはまだ分かるんですが、アストライアーさんとアスタロトが分からなくて」

 ニュクスさんは運営と母という立場からという事が考えられる。アカリも私の幼馴染みで恋人だから、私の魅力を十分に知っており、それを引き立てているか、新しい魅力を引き出しているかの判別が出来るという面がある。
 でも、アストライアーさんとアスタロトが選ばれた理由が分からなかった。

「アストライアーは公平……それと監視員……アスタロトは面白半分よ……」

 アストライアーさんは、不正を正すために審査員兼監視員として選ばれたらしい。アスタロトは話を聞いて面白そうで立候補したみたいだ。まともに審査員をするつもりはあるのだろうか。まぁ、真面目にやれと言えばアスタロトはやるだろうから大丈夫かな。

「でも、お母さんは忙しくなりそうですね」
「そうね……でも……色々なあなたを見られるのは……楽しみよ……」

 ニュクスさんはそう言って、私を抱きしめながら頭を撫でる。

「それじゃあ……会場の設営を……モートソグニルに依頼するから……もう行くわ……」
「はい。教えてくれてありがとうございました」
「ええ……」

 ニュクスさんは、最後に頬を撫でてから去っていった。私もアカリがいるであろう作業部屋に向かう。

「アカリ」
「ハクちゃん。話は聞いた?」
「うん。ニュクスさんからね」
「そっか。参加する人数が多くなるから、割と大変そうだよね。ニュクス様が参加者を纏めて、私達に色々と確認をして日程が決まる感じみたい」

 確かに、現実での時間もある私達に合わせないと色々と困るか。そこら辺はニュクスさんが調整してくれるらしい。

「アカリは参加しないの?」

 私が一番疑問に思っていたのは、この大会のようなものにアカリが参加しない事だった。私の服を作るのなら、アカリが絶対に参加するだろうと思っていたからだ。

「うん。私が有利過ぎるし、ギルドエリアの皆に楽しんで欲しいから。皆ハクちゃんの事が大好きだから抱き枕にさせてあげたらやる気が出るかなって思ったら、想定以上に皆が燃え上がっちゃった」

 アカリは苦笑いしながらそう言った。どうやら私を賞品に出した事により、皆のやる気が急上昇しているらしい。空前の服飾ブームが始まろうとしていた。

「アカリは良いの?」
「うん。だって、ハクちゃん色々な女神様にハグされてるでしょ?」
「うん」
「それに唇はないけど、色々とキスされてるでしょ?」
「うん……」

 全て事実過ぎて、若干気まずい。浮気がバレたみたいな気まずさは、こんな感じなのかな。浮気だとしたら、私が堂々とし過ぎている気がするけど。

「それなら抱き枕くらいは今更かなって」

 確かにそれを言われると、そうかもしれない。フレイヤさん、アフロディーテさん、ハトホルさんに捕まると大抵そうされるし。

「私は次の旅行で可愛がって貰えるしね」
「アカリからそう言うなんて珍しいね。私はここでも良いけど」

 アカリの腰を引き寄せて首にキスをすると、アカリの方からも抱きついてきた。アカリも旅行を楽しみにしているって事だ。私もち大分楽しみになってきた。アカリとイチャイチャしていたら、入口の方から視線を感じた。
 そちらを見てみると、グレモリーが口を押えてにんまりとしながら見ていた。思わず、アスタロトにやるように水を生み出して目に飛ばしてしまった。

「うわっ!?」

 グレモリーは、上体を反らして避けていた。アスタロトなら、自分から当たりに行って喜ぶから、悪魔全員がドMであるわけではないという事が分かった。

「はぁ……はぁ……心臓が止まるかと思ったわ……」
「全く覗き見するからだよ。でも、皆はアスタロトとは違うんだね」
「ん? どういう事?」
「アスタロトはお仕置きすると喜ぶから」

 私がそう言うと、グレモリーはドン引きというような表情になっていた。

「アスタロトも貴方様に出会って変わったわね……」
「まぁ、それはどうでもいいや。グレモリーは、アカリに用事?」
「ええ。布を頂戴しても良いか確認にね」
「はい。共有倉庫の中のものなら良いですよ。ある程度種類を分けてあるので、多分分かり易くはなっていますから」
「分かったわ。ありがとう」

 グレモリーは、アカリにお礼を言いながら額にキスをしてから去って行った。アカリは、突然の事だったので、少し驚いていた。ちょっとムッとしたので、私もアカリの額にキスをする。

「それじゃあ、ギルドエリアをどう整理するか考えてくるから、また明日ね。色々と落ち着いたら生産も教えて」
「うん。またね」

 最後にアカリにキスをしてから、作業部屋を出て行った。グレモリーにキスをされているアカリを見たら、ちょっと嫉妬しちゃった。嫉妬の大罪は、私が持っていて当たり前のものだったのかもしれない。
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