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出会いを楽しむ吸血少女
仲直りのきっかけ
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用事を終えると、アヌビスさん達が私に一度頭を下げる。
「それでは私達も準備をして参ります」
「あっ! アヌビスさんは待ってください!」
それぞれの街に戻る前にアヌビスさんだけを呼び止める。余計なお世話かもしれないけど、ここを放っておく事は出来ない。
ホルスさんとマアトさんが帰った後、私、ネフティスさん、アヌビスさんが残る。二人は居心地が悪そうにしている。
「取り敢えず、ネフティスさんから言いたい事をどうぞ」
「えっ? で、でも……」
ネフティスさんは、これまで見た事がないくらいに自信がないような感じになっていた。元気一杯で、いつも笑顔でいる事が多いので、本当に珍しい。それだけ、何かしらの想いがあるという事だ。
「これから向こうでも顔を合せる事が多くなります。そうして伝えたい事に蓋をし続けても、辛いのはネフティスさん自身ですよ。特に負い目を抱いている場合は」
「っ!?」
ネフティスさんの手が大きく震える。やっぱり、何かしらの負い目を抱いているようだ。ネフティスさんの反応からそこは察しやすかった。
ネフティスさんは、私の肩を強く掴む。それだけの葛藤をしているという事だ。でも、黙り続ける時間は一分もなかった。
「アヌビス。本当にごめんなさい……謝っても許される事じゃないって事は分かってる。私が言っても説得力がないと思うけど、心を入れ替えているの。だから、その……」
ネフティスさんは、そこで口ごもった。でも、ネフティスさんの言いたいことを察したのか、今度はアヌビスさんが口を開く。
「……おっしゃりたい事は分かりました。ですが、私としても全てを忘れるという事は出来ません。ですが、イシス様も歩み寄ってはどうかとおっしゃる事がありました」
「イシスが……?」
「それにハク殿もそういう目をしていらっしゃる」
「ん? 私の名前……」
そういえば私の自己紹介をした覚えがない。なのに、アヌビスさんは、私の名前を呼んだ。そこに違和感を覚えた。
「オシリス様からお名前とどういった御方なのか聞いていますので」
「あっ……なるほど」
オシリスさんから聞いたというのなら納得だ。他の神様にも、それぞれの神様が知らせてくれていると思う。すんなり話を通すなら名前とかも全部言う方が良いしね。
「私は、皆が仲良くやってくれると嬉しいです。アヌビスさんに許す事の出来ない事情があるのなら、強要したいとは思いません。でも、少しでも話を聞いても良いと思えるのなら、少しずつ会話を重ねていきましょう。いつかは許せる時が来るかもしれません。人も神も時が経てば変わるものですから」
「……同意見です」
私の意見にアヌビスさんも頷いてくれた。
「それでは私は失礼します」
「はい。また後で」
「気を付けてね」
「……はい」
即座に蟠りが解ける事はない。
後は、これからネフティスさんが自分は変わったという事を証明していくだけだ。そのための時間がどの程度掛かるかは分からないけど、仲直りのきっかけが作れたのなら、私は嬉しいかな。
「それじゃあ、戻りましょう。もう受け入れが始まってると思いますし」
「そうだね。でも、その前に……」
ネフティスさんは、私の横に回ると、頬にキスをしてきた。
「私にチャンスをくれてありがとう」
「いえ、ネフティスさんが本当に仲直りしたいと思っていなかったら、こうして仲直りのきっかけが出来る事もなかったですから。ネフティスさん自身が強く思っていたから出来た事ですよ」
「ふふっ、そういう事にしておいてあげる」
ネフティスさんはそう言って私の頭を撫でると、私の手を取ってギルドエリアに転移した。
「それじゃあ、私は準備に参加してくるから。またね」
「はい。お気を付けて」
ネフティスさんを見送った後、ギルドエリアのマップを確認する。すると、既にいくつかの街がギルドエリアに来ていた。前回の神桜都市で要領を掴んでいる神様が多いので、事前準備を完璧に行っており、スムーズな入れ替えが出来ている。
色々な環境から来ているはずだけど、しっかりとギルドエリアに適合しているみたい。どちらかというと、ギルドエリアから向こうの環境を侵蝕している気がするけどね。
そんな事を考えていると、ギルドエリアが金色に光って、新しい街がやって来た。世界樹が一際強く光っていたから、世界樹が受け皿として力を使ってくれているみたい。その度に地面の栄養とか力を世界樹が吸い上げているみたいだけど、ギルドエリアの大地は、ほぼ無限の栄養と力が漲っているので、世界樹は実質無限の力を持っているに等しい。
「世界樹は大丈夫だとして、街と街の距離はちょうど良さそう。似たような環境の場所で固めてくれているはずだから、環境的問題も解決しやすい。ギルドエリアの人口も増えているから、人の受け入れも順調に出来てる。取り敢えず、今のところ問題はなしかな」
「そう……みたいね……」
後ろからニュクスさんが私を抱きしめる。何かいつもよりも力強い気がする。
「お母さん。今は忙しくないんですか?」
「ええ……少し様子をね……」
ニュクスさんは、大会のために色々と事務作業をしていたはずだけど、土地神様の街が来るという事で念のために様子を見に来たらしい。
ただ、それだけが用事じゃないみたいで、私の頭を撫で回したり、慈しむように抱きしめたりしていた。アク姉みたいに私成分を補充しているのだろうか。アク姉やアスタロトが酷いから、ニュクスさんがやっている事は可愛いものだった。
「ようやく……夜の神格を……手に入れたのね……嬉しいわ……」
どうやら私が【神格・夜】を手にした事を喜んでいただけのようだ。ニュクスさんと同じ神格を持つという事なので、より一層私を娘と認識出来るようになったのかな。
「多分、リリスのおかげですね」
「リリス……ああ……あの子ね……」
「知ってるんですか?」
「一応ね……悪魔でも……夜に関連するから……」
ニュクスさんは本当に夜の気配に敏感なのだなと思わされる。
「知り合いという訳では無いんですね?」
「そうね……神に抗う者が……リリスよ……」
どうやら過去に神様上等をしていたようだ。本当に仲良く出来るのか心配になる。まぁ、アスタロト達が仲良くやっているから大丈夫かな。
「私がいれば……リリスも……満足に動けない……だから……問題は……起こらないわ……」
「そうですね。でも、リリス自身問題を起こしたいとは思っていなさそうなので、そこまで心配しないでも大丈夫ですよ。私としっかりと契約していますから」
「そう……それなら安心ね……」
ニュクスさんはそう言って微笑みながら、私の頭を優しく撫でる。それと同時に、また地面が光り輝いた。新しい街が来たという証拠だ。念のためマップで確認しておく。
「砂漠みたい……でも、大丈夫かな。事前に砂漠を用意しておいたし」
「そうね……準備が出来て……偉いわ……」
「皆のおかげですよ。ちゃんと必要なものを纏めてくれていたので。それでも環境的に難しいものもありますけどね。そこはこれから解決していきます」
「ええ……頑張って……」
そこから順調に街が移ってきて、最後の一つが来てから五分くらいして、ようやく安堵出来た。取り敢えず、移転で大きな問題が起こらなくて良かった。
次は環境を整えるのと道作りをしていくだけだ。まぁ、そこを考えるのが大変なのだけどね。
「それでは私達も準備をして参ります」
「あっ! アヌビスさんは待ってください!」
それぞれの街に戻る前にアヌビスさんだけを呼び止める。余計なお世話かもしれないけど、ここを放っておく事は出来ない。
ホルスさんとマアトさんが帰った後、私、ネフティスさん、アヌビスさんが残る。二人は居心地が悪そうにしている。
「取り敢えず、ネフティスさんから言いたい事をどうぞ」
「えっ? で、でも……」
ネフティスさんは、これまで見た事がないくらいに自信がないような感じになっていた。元気一杯で、いつも笑顔でいる事が多いので、本当に珍しい。それだけ、何かしらの想いがあるという事だ。
「これから向こうでも顔を合せる事が多くなります。そうして伝えたい事に蓋をし続けても、辛いのはネフティスさん自身ですよ。特に負い目を抱いている場合は」
「っ!?」
ネフティスさんの手が大きく震える。やっぱり、何かしらの負い目を抱いているようだ。ネフティスさんの反応からそこは察しやすかった。
ネフティスさんは、私の肩を強く掴む。それだけの葛藤をしているという事だ。でも、黙り続ける時間は一分もなかった。
「アヌビス。本当にごめんなさい……謝っても許される事じゃないって事は分かってる。私が言っても説得力がないと思うけど、心を入れ替えているの。だから、その……」
ネフティスさんは、そこで口ごもった。でも、ネフティスさんの言いたいことを察したのか、今度はアヌビスさんが口を開く。
「……おっしゃりたい事は分かりました。ですが、私としても全てを忘れるという事は出来ません。ですが、イシス様も歩み寄ってはどうかとおっしゃる事がありました」
「イシスが……?」
「それにハク殿もそういう目をしていらっしゃる」
「ん? 私の名前……」
そういえば私の自己紹介をした覚えがない。なのに、アヌビスさんは、私の名前を呼んだ。そこに違和感を覚えた。
「オシリス様からお名前とどういった御方なのか聞いていますので」
「あっ……なるほど」
オシリスさんから聞いたというのなら納得だ。他の神様にも、それぞれの神様が知らせてくれていると思う。すんなり話を通すなら名前とかも全部言う方が良いしね。
「私は、皆が仲良くやってくれると嬉しいです。アヌビスさんに許す事の出来ない事情があるのなら、強要したいとは思いません。でも、少しでも話を聞いても良いと思えるのなら、少しずつ会話を重ねていきましょう。いつかは許せる時が来るかもしれません。人も神も時が経てば変わるものですから」
「……同意見です」
私の意見にアヌビスさんも頷いてくれた。
「それでは私は失礼します」
「はい。また後で」
「気を付けてね」
「……はい」
即座に蟠りが解ける事はない。
後は、これからネフティスさんが自分は変わったという事を証明していくだけだ。そのための時間がどの程度掛かるかは分からないけど、仲直りのきっかけが作れたのなら、私は嬉しいかな。
「それじゃあ、戻りましょう。もう受け入れが始まってると思いますし」
「そうだね。でも、その前に……」
ネフティスさんは、私の横に回ると、頬にキスをしてきた。
「私にチャンスをくれてありがとう」
「いえ、ネフティスさんが本当に仲直りしたいと思っていなかったら、こうして仲直りのきっかけが出来る事もなかったですから。ネフティスさん自身が強く思っていたから出来た事ですよ」
「ふふっ、そういう事にしておいてあげる」
ネフティスさんはそう言って私の頭を撫でると、私の手を取ってギルドエリアに転移した。
「それじゃあ、私は準備に参加してくるから。またね」
「はい。お気を付けて」
ネフティスさんを見送った後、ギルドエリアのマップを確認する。すると、既にいくつかの街がギルドエリアに来ていた。前回の神桜都市で要領を掴んでいる神様が多いので、事前準備を完璧に行っており、スムーズな入れ替えが出来ている。
色々な環境から来ているはずだけど、しっかりとギルドエリアに適合しているみたい。どちらかというと、ギルドエリアから向こうの環境を侵蝕している気がするけどね。
そんな事を考えていると、ギルドエリアが金色に光って、新しい街がやって来た。世界樹が一際強く光っていたから、世界樹が受け皿として力を使ってくれているみたい。その度に地面の栄養とか力を世界樹が吸い上げているみたいだけど、ギルドエリアの大地は、ほぼ無限の栄養と力が漲っているので、世界樹は実質無限の力を持っているに等しい。
「世界樹は大丈夫だとして、街と街の距離はちょうど良さそう。似たような環境の場所で固めてくれているはずだから、環境的問題も解決しやすい。ギルドエリアの人口も増えているから、人の受け入れも順調に出来てる。取り敢えず、今のところ問題はなしかな」
「そう……みたいね……」
後ろからニュクスさんが私を抱きしめる。何かいつもよりも力強い気がする。
「お母さん。今は忙しくないんですか?」
「ええ……少し様子をね……」
ニュクスさんは、大会のために色々と事務作業をしていたはずだけど、土地神様の街が来るという事で念のために様子を見に来たらしい。
ただ、それだけが用事じゃないみたいで、私の頭を撫で回したり、慈しむように抱きしめたりしていた。アク姉みたいに私成分を補充しているのだろうか。アク姉やアスタロトが酷いから、ニュクスさんがやっている事は可愛いものだった。
「ようやく……夜の神格を……手に入れたのね……嬉しいわ……」
どうやら私が【神格・夜】を手にした事を喜んでいただけのようだ。ニュクスさんと同じ神格を持つという事なので、より一層私を娘と認識出来るようになったのかな。
「多分、リリスのおかげですね」
「リリス……ああ……あの子ね……」
「知ってるんですか?」
「一応ね……悪魔でも……夜に関連するから……」
ニュクスさんは本当に夜の気配に敏感なのだなと思わされる。
「知り合いという訳では無いんですね?」
「そうね……神に抗う者が……リリスよ……」
どうやら過去に神様上等をしていたようだ。本当に仲良く出来るのか心配になる。まぁ、アスタロト達が仲良くやっているから大丈夫かな。
「私がいれば……リリスも……満足に動けない……だから……問題は……起こらないわ……」
「そうですね。でも、リリス自身問題を起こしたいとは思っていなさそうなので、そこまで心配しないでも大丈夫ですよ。私としっかりと契約していますから」
「そう……それなら安心ね……」
ニュクスさんはそう言って微笑みながら、私の頭を優しく撫でる。それと同時に、また地面が光り輝いた。新しい街が来たという証拠だ。念のためマップで確認しておく。
「砂漠みたい……でも、大丈夫かな。事前に砂漠を用意しておいたし」
「そうね……準備が出来て……偉いわ……」
「皆のおかげですよ。ちゃんと必要なものを纏めてくれていたので。それでも環境的に難しいものもありますけどね。そこはこれから解決していきます」
「ええ……頑張って……」
そこから順調に街が移ってきて、最後の一つが来てから五分くらいして、ようやく安堵出来た。取り敢えず、移転で大きな問題が起こらなくて良かった。
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